Jun 30, 2024
ジャングルの異変
祭壇の遺跡では、
アーネストが作った木の枝の杖を支えに
アンドレアが立ち上がっていた。
これでなんとか歩けそうよ。
と言っている。
お医者さんなのに器用なのね。
こういう環境には慣れてるからね。
仕事の後の葉巻がうまいんだ。
それで、これからどうします?
グリーンマンが襲ってきたとなると、
これ以上探索を続けるのは危険だな。
調査は中止してアイスたちのいる集落の遺跡に戻ろう。
そして予定通り明日にはマークの集落に帰ることにするよ。
伝聞とはいえ、ここの祭壇や
集落跡の遺跡の由来もわかったし、
フミコとハンスさんの頭蓋骨を
魔術師の呪文で蘇らせてもらう、
という仕事も残っている。
マークの集落に戻ってからも
やるべきことはあるぞ。
調査結果はどこかに公表するんですか。
それはまだ思案中だよ。
会話できるチンパンジーから聞いたとか、
それもトカゲ人間からの
又聞きだったとかいうと信憑性に。
こうして一行は祭壇の遺跡を後にした。
しかし。
ボートがなくなっていますよ。
しっかりロープで結びつけたはずなんだけど。
ロープは噛みちぎられています。
グリーンマンの仕業かしら。
あの抜け道を通っていくしかない。
昼前に見つけておいてよかったなあ。
でもジャングルに出てからの
ルートが全然わからないんだけどね。
しばらく進むと、
リンリンに出会った。
グリューンを怒らせたでしょ。
ボートが無くなっていたんだ。
リンリンが先導している。
このあたりのジャングル一帯が
ざわついています。
この洞窟のような細道を
崖に沿って下れば
谷の渓流に着きます。
そこから川沿いに下れば古い橋が。
ありがとうリンリン。
そこからならわかるわ。
とリンが言った。
毒蜘蛛たちが興奮して騒いでいる。
仲間を呼ぶらしい
獣の遠吠えも聞こえてくる。
肩貸そうか。
大丈夫、なんとか歩けるから。
と言っている。
グリーンマン、考えを変えて、
フミコの頭蓋骨を取り戻そうと、
頭蓋骨の入っている、
アーネストのリュックを奪い取ろうとしたのかしら?
話を聞くとどうもそうじゃないらしい。
奪われそうになったのは、
アンドレアのリュックだそうだよ。
とラッセルとリンが話している。
解説)
続きます。
Jun 29, 2024
リザードとの会話
アイスが建物の中に案内されると、
リザードが待っていた。
おお来たかね。
はるばる、ここまで来てもらって
ご足労をかけたな。
我々は水中はちょっと苦手なんだ。
ここではマスクを取って大丈夫だよ。
あなたがリザードね。
なぜ私がここに来るのを知ってたの?
とアイスが言った。
ふむ。もっともな質問だな。
せっかくだから詳しくわけを話してやろう。
この都は大昔に、我々地底に住むレプティリアンと、
地上の魔族が仲良く暮らしていた時代に、
協力して作り上げたものだ。
しかし今では見る影もなく廃墟となってしまっているがね。
ただここには我々にとって大切なものが
いくつか残されている。
それで侵入者を知らせる仕組みになっているのさ。
昨日、君たちは集落の遺跡の調査に来て、
地下室へ通じる階段を見つけただろう。
その時仕掛けが作動して我々に異変を知らせた。
私が来てみると、君たちは遺跡の前の広場で
野営していた。昨日の夜のことだ。
そこで私は君たちの言うところの
光学迷彩服を着込んで
すぐそばで君たちの会話を聞いていたんだよ。
君が水槽を調べたいって言ってたから、
待っていたんだ。
あなたはここに住んでいるの?
とアイスが訊いた。
ここには普段誰も来ないよ。
我々は南極の地底や月の裏側にいる。
だが距離は問題じゃない。
移動手段があるんだ。
それってもしかして鏡の扉のことね。
マークの集落に住む魔術師フラハが、
古代の魔族の人々は鏡の扉を使って
いろんな場所と行き来していたっていう
伝承があるって言っていたわ。
なかなか鋭いな。
鏡の扉は魔族の持つ魔力で生まれるが、
我々も相似した科学技術を持っていた。
大昔には協力しあって技法を高めあったんだ。
我々の月の扉を見てみるかね。
リザードは廃墟の一室にアイスを案内した。
ここも見えないバリアで守られているから、
マスクの必要はないよ。
とリザードが言っている。
そんな共存共栄の場であった都が
水没するなんて、何が起きたの?
とアイスが聞いた。
元はと言えば、我々の仲間同士で起きた戦いなんだよ。
その結果ここに住んでいた魔族たちを
巻き込んでしまったんだ。
ここは我々の首都ではなかったけれど、
威嚇と嫌がらせのために水没されられたんだ。
魔族たちのほとんどは、
鏡の扉を使って異世界に移住していった。
追跡を避けるために扉は消滅し行方はわからない。
地上に残ったわずかな魔族だけが、
戦争の終結まで持ち堪えていたが、
平和になってリーダーだった魔術師フミコが死ぬと、
彼らもやがて四散していった。
あなたはなんでも知ってるのね。
まるで大昔からずっと生きていたみたい。
グリーンマンっていう
不思議な緑の生き物のこともご存知?
私は長寿というより、
何度も再生を繰り返しているだけなのだよ。
グリーンマンは特別な存在でね。
遺跡の近くで奇妙な動植物や
知能の高いゴリラやチンパンジーが生まれるのは、
一帯にかけられた魔術のせいなんだが、
それをかけたフミコという魔術師が
特別に可愛がっていた、植物と人間が融合した
不死に近い生き物だ。
あれには鏡の扉を使って三つの遺跡を行き来できる
呪力と呪文をフミコが授けたから、
どこにでも出没するぞ。
ジャングルでリンリンという名のチンパンジーに出会ったら、
グリーンマンのことを聞いてみるがいい。
そいつならいつも近くで暮らしているから、
グリーンマンをよく知っているはずだ。
そのリンリンから聞いたのだが、
フミコに可愛がられていたグリーンマンは、
ずっとフミコの言いつけを守り、
今もフミコの蘇りを願っているという。
思えば哀れな話ではある。
白骨化してしまうと我々の再生技術でもそれは難しい。
ところが魔族の中にはそれができるものがいる。
我々にとっても彼らの魔術というのは深淵なものなのだよ。
こんな形で魔族のことを知る人間に接触できたのも
何かの縁かもしれないな。
私が手助けするというのは協定違反なんだが。
そういうとリザードは立ち上がり、
壁に向かって何か操作をした。
すると壁のプレートに文字が浮かび上がった。
そこには、蘇生に使われる呪文が書かれている。
魔族の使う呪文の研究のために、
フミコを弔った魔族から我々が聞き取ったものだ。
もちろん彼らもその呪文を唱えて
フミコの蘇生を試みたがうまくいかなかった。
フミコを甦らせるほどの呪力を持った魔術師は、
もう集落にはいなかったのだよ。
書き留めてそんな魔術師がいれば教えてやればいい。
なに、書くものをもっていないのか。
だったらこのカメ新聞をやろう。
そこに書き留めておけばいい。
なに、筆記用具も持っていないのか。
だったらサインペンを貸してやろう。
おお、もうそろそろおやつの時間だな。
帰らないと。
私もあまり遅くなると佳奈たちが心配するので、
帰らないと。
登り階段までは遠い。
外で待っているマービーに
送ってもらうといいだろう。
あ、最後に。あのマービーっていうのはなんなの?
水没した環境は変えることができなかったが、
戦争が終わり、都の喪失を惜しむ声もあり、
せめて都の一部を再興しようという計画があった。
フミコもまだ生きていて、
彼女の魔法と我々の力である程度環境を変えたんだ。
それも大昔の話だが、
こんなバリアのある建物が残っていたり、
上方から光が差し込んで
水中が明るいのはそのせいだよ。
フミコが亡くなり、我々も手を引いて、
計画は中断してしまったが、その名残は残っている。
マービーに案内してもらうといい。
マービーは、その後で生まれた。
多分魔法の影響で生まれたグリーンマンのような
人と魚の融合した変異種なのだろう。
普段なにをしてるのかよく知らないが、
気のいい娘で、水が苦手な我々は、
ここに来た時に世話になっているんだ。
リザードは何やら呪文を唱えて
月の扉の向こうに消えていった。
アイスがマービーに話すと、
マービーは、
じゃあ農園でも見てみる?
と言った。
手入れはほとんどしてないのよ。
ところで、
人魚っていうとロマンがあるけど、
半魚人っていうと怖いのは何故かしら。
などと話している。
アイスは階段の見える場所まで
マービーに送ってもらい、
水没した都を後にしたのだった。
解説)
続きます。
リザード=レプテュリアンについて。
リザードと名前をつけたのは今回が初めてですが、
リザードは、レプティリアン(トカゲ人間)という名称で、
これまで何度か登場しています。
レプティリアンが、
初めて登場したのは、2022年のハロウィーンで、
トカゲ人間の仮装をした鷲尾翠に
仲間だと思って声をかけたのが最初です。
2022年10月8日「コスプレの愉しみ そのなな」
その後、鷲尾翠を尾行したレプティリアンは、
探偵事務所に現れます。
2022年10月11日「お祭りの日々」
この時これまでの人類との関わりを話しています。
2022年10月12日「お祭りの日々 そのに」。
リザードが探偵事務所に探し物の依頼をしたのは、
2023年1月28日「探し物の依頼と春節の踊り」で、
見つけてもらってお礼をした話は、
2023年2月9日「新聞と帽子のお礼など」
に出てきます。
リザードとアイスはハロウィーンの広場で、
すれ違っている可能性がありますが、
二人とも覚えていないのでした。
Jun 28, 2024
地底の都
集落の遺跡の地下室では、
佳奈とマークが、
潜っていったアイスの帰りを待っていた。
マークも水浴びしない?
気持ちいいよ。
僕はここで見張ってる。
などと話している。
アイスは井戸のようなところから
底の方に続く階段を眺めていた。
これはすごい。
潜っていくと石段はさらに続いている。
水底にたどり着いたようだ。
ここは確かに都の跡だ。
その時
行手から何かやってくるのが見えた。
あらやっぱり来てた。
と言っている。
こんにちわ。
怖い犬みたいなマスクしてるけど、
あなたアイスでしょ。
私はマービー。
初代の誰かに似てるって言われるけど、
人間でも人形でもないのよ。
とマービーは言った。
地下に都があるかどうか、
確かめにきたんだってね。
ご覧のように確かにここにあるわ。
今はもう誰も住んでいないけど。
とマービーはいった。
実は私、あなたを迎えに行くように言われて来たの。
階段のところから来るのなら、
このあたりを通るんじゃないかなって。
今、珍しくリザードが来てるのよ。
向こうであなたを待ってるわ。
アイスはマービーについていくことにした。
ここは結構広いからねー。
底の方に何かが動いている。
あれはゴルゴーって言って、
捕まると大変な目に遭うわよ。
山のような地形のかなり上の方に
その建物はあった。
あそこで待ってるわ。
解説)
続きます。
Jun 27, 2024
リンリンの話
最近視力が衰えて、
つい人間の使うメガネを試してみたくなりまして。
とチンパンジーが言った。
君は人の使う言葉が話せるのかい。
はい。申し遅れましたが、
私はリンリンと言います。
ハンスさんが名前をつけてくれました。
えっ!
ハンスって、もしかして私の父のことじゃない?
とリンが言った。
その上着はドイツ軍の軍服でしょう。
この服は別の人からの貰い物なんですよ。
長生きしてると、色々事情がありまして。
あなたがリンさんですね。
ハンスさんから写真を見せてもらったことがあります。
ねえ。父は生きてるの?
ハンスさんはもう随分前に亡くなりましたよ。
みなさんは湖の祭壇の遺跡から来ましたね。
僕はあそこには入れない。
入るとグリューンに怒られます。
グリューンて、誰?
ああ、ドイツ語で緑っていう意味ね。
グリーンマンのことでしょう。
そう呼ぶ人間もいますが、
ハンスさんはグリューンって呼んでたんです。
あなたはどこに住んでるの?
このすぐ近くですよ。
久しぶりに人間と話せて楽しいなあ。
リンリンはクラウドに
メガネを返している。
ねえ、父のことをもっときかせて。
とリンが言った。
いいですよ。私の家でお話しましょう。
少しだけ離れたジャングルの中に、
リンリンの棲家があった。
ここが私の家です。
どうぞ、寛いでください。
何もありませんが。
リンリン君とやら。
君は人の言葉を話せるチンパンジーのようだが、
もしかしてマークの集落の外れに住む、
ゴリラのシーザーのお仲間なのかな。
とクラウドがきいた。
彼は僕よりずっと年下で弟のようなやつです。
僕たちはなぜか知能が高く生まれついたんです。
シーザーは人間になりたがっている。
でも僕はジャングルの中の方がいい。
ここはグリューンが守ってくれるので安全ですし。
ねえ、父は亡くなったって言ったけど、
それはいつのこと?
どんなふうに亡くなったの?
このスケッチブックは父のでしょう。
とリンが尋ねた。
そんなに一度に幾つも質問されても。
リンリンはバナナを出してきてみんなに配った。
食べごろになるまで、
印をつけてとっておいたものです。
甘くて美味しいですよ。
まず、ここの遺跡についてお話ししましょう。
ここははるか昔、魔族たちの住む都でした。
魔術を使う人々の暮らす都は大いに栄えましたが、
ある時戦いがあって、戦いを好まぬ多くの人々は、
都を捨てて安息の地へ去っていったのです。
でもフミコという魔術師と少数の人たちだけが残り、
強力な呪力を持つフミコは、
この土地全体に魔法をかけて都を守り抜いたのです。
やがて戦いが終わり平和な時が訪れましたが、
残された住民はわずかばかり。
フミコもやがて亡くなり、湖の祭壇に埋葬されました。
時が過ぎ住民たちも四散していき、都は滅びました。
住民たちの一部は周辺の様々な部族に混じって、
神話や伝説の中に都の物語を伝えたといいます。
私が生まれたのはそのずっと後です。
フミコがジャングルにかけた魔法と、
住民たちが長い間生活に使っていた魔法が影響して、
私やシーザーのようなものが生まれたと言われています。
グリューンは私たちよりずっと長寿で、
生前のフミコに可愛がられていました。
グリューンはフミコの言いつけを守って、
今でもこの土地を守っているのです。
もう一つグリューンが願っているのはフミコの復活です。
いつか魔術師が現れてフミコを復活させてくれると
信じているのです。
ここまでお話しして、これからが
私が生まれた後のこと、ハンスさんのことです。
偶然遺跡を発見したハンスさんたちは、
当然ながらグリューンに目をつけられました。
でも最初は調査隊の中に魔術師がいて、
フミコを復活させてくれるかもしれないと、
期待もしていたようです。
けれど、ハンスさんが
フミコの頭蓋骨を持ち去ろうとしたことを知り、
不安に駆られて襲ってしまったんです。
グリューンは話すことはできませんが、
私と意思を伝え合うことができるんです。
それを聞いて、私はハンスさんの介抱をしたのです。
薬草の効力でハンスさんは奇跡的に命を取り留めました。
ハンスさんは、私に人の言葉や様々なことを教えてくれました。
同時に、私からこの都の由来やフミコのことを知り、
この遺跡のことは公表しない。もし人間の世界に戻れたら
復活の呪文を知っている魔術師を探して、
必ず連れてこようとグリューンに言いました。
その証に、日誌に使っていたスケッチブックと
フミコの頭蓋骨を入れた自分のバッグを、
グリューンに預けたのです。
でも残念ながら、体力が回復せず、
いつか娘のいる国に帰りたいといいながら、
ハンスさんは亡くなりました。
あなた方は前に一度調査に来たでしょう。
グリューンはその時のあなた方の会話を覚えていて、
再調査に来ることを知り色々と考えていたようです。
みなさんの前にわざと姿を現したり、
わざとスケッチブックとフミコの頭蓋骨を置いて、
あなた方に見つかるようにしたのです。
でもね。僕は、グリューンに、
そう仕向けたのはフミコの意思かもしれない。
とも思っているんです。
グリューンがずっと大事にしていた
フミコの頭蓋骨を人間に差し出すなんて、
すごく大胆なことですからね。
じゃあグリューン、あのグリーンマンは、
もう私たちを襲わないのね。
それはそうとも言い切れません。
グリューンには強力な魔法がかけられているんです。
この遺跡から何かを持ち去ろうとする者、
よこしまな意図が感じ取れる者には
その魔法が発現して襲いかかるかもしれません。
あと、君の長い長い話は興味深かったんだが、
長い長い歴史の途中で生まれた君が、
なぜそんな大昔のことを知っているだい。
それはもちろんトカゲ人間に聞いたんですよ。
トカゲ人間は、ごく稀にジャングルに
リクガメを探しに来るんです。
それは初耳だな。
私も話すのは初めてです。
昔々、魔族と地底に住むトカゲ人間は
この都で仲良く暮らしていたんですよ。
戦争があったというのは、トカゲ人間同士の戦いです。
その争いに、一方のトカゲ人間たちと
仲良くしていた魔族の人々は巻き込まれたんです。
さっきそう言わなかったですか。
言わなかったぞ。
質問してもいい?
私のお父さん、ハンスは亡くなったんでしょう。
父のお墓はどこにあるの?
お墓なんてありませんよ。
ハンスさんの頭蓋骨は、シーザーが持ってます。
家宝にするって言ってました。
えええ。
それ私と佳奈がもらったよ。
怪我してたシーザーを、医師のアーネストさんに
紹介したら、お礼にって貰ったの。
いらないって言ったんだけど根負けしちゃって。
ふーん。そうでしたか。
シーザーは若くて何も知らないはずですけど。
ハンスさんは国に帰りたがっていたし、
ここでお墓を作って埋めちゃうより、
人間になりたがっているシーザーなら、
人と接触する機会も多いだろうと思って、
渡しておいたんですが。
でもシーザーはリンさんがハンスさんの娘さんだと
知ってたのかなあ。
なんか直感が働いたのかもしれませんね。
ゴリラ感というやつですか。
あなたたちってみんなお仲間でしょう?
なぜシーザーはグリューンに襲われたの?
元々私たちはこの地域を守る何かの役目を持って
生まれたと言われています。
シーザーは人間になりたがっているので、
グリューンにはあまりよく思われていないんですよ。
それで遺跡の近くで出会うと、
たまに噛みついて脅かすんです。
噛まれてもゴリラだから植物にならないですけど。
おお、長い長い話に
時が経つのを忘れていたようだ。
まだ聞いてみたいことが山ほどあるが、
もう昼過ぎになってしまったぞ。
遺跡に戻らないと。
ブラッドたちが心配している。
そうね。
これ急いで食べ終わったら戻りましょう。
リンリンはクラウドから
スペアのメガネをもらって喜んでいる。
強力な魔術師だったら、
ハンスさんを甦らせることができるかも。
蘇ったら一緒にまた遊びに来てねー。
と言っている。
長大な歴史ロマンでしたね。
長すぎて途中で小説になっちゃうかと思いましたよ。
魔法で人が生き返る話が出てくるとなんともね。
リクガメを探しに来るトカゲ人間ってなんでしょう。
リンリン、まだ手を振ってるよ。
フミコっていう人の頭蓋骨は今、誰が持ってるの?
アーネストが、あのバッグに入れたまま保管してる。
地下の都のことや、光る石のこと、
ハンスが副葬品を隠した場所のことなんか、
聞けなかったね。
一度には無理だよ。
みんなと合流してから、
相談してあとでまた来てみよう。
ラッセルたちは祭壇の遺跡に帰りついた。
探してたんですよ。
心配かけて悪かったね。
ジャングルに抜ける通路を見つけて、
会話のできるチンパンジーと出会って、
色々話を聞いてるうちに長引いちゃって。
それが、
大変なんです。
アンドレアが噛まれちゃって。
おお、どうした大丈夫か。
治療薬の軟膏を塗っておきましたから。
とアーネストが言った。
こちらに戻ってきても
みなさんの姿が見えないので、
遺跡の中を探していたんです。
光る石の近くに行ったら、
草陰に隠れていたグリーンマンと
出くわしてリュックを取られそうになって
格闘になっちゃって。
格闘中に脛を噛むなんて反則よ。
脛っ齧りじゃあるまいし。
とアンドレアが悔しそうに言っている。
アンドレアの足から、
草の芽が吹き出している。
大丈夫、見かけはショックですが、
じきに治りますよ。
とアーネストが言った。
リンリンの話によると、
グリューンはフミコの頭蓋骨を
計画的に私たちに託したんだし、
私たちを襲わないんじゃなかった?
例外はあるって言ってたよ。
とリンとクラウドが話している。
解説)
続きます。
Jun 26, 2024
洞窟の探検
祭壇の遺跡のある岸辺に残った
ラッセルとリン、クラウドたちも、
探索を始めようとしていた。
やっぱりここは、
何度来てもロマンだなあ。
君ならそういうだろうと、
マークが言ってたよ。
とクラウドが言っている。
この奥は行ってみたの?
そっちはまだ探索していません。
奥まったところの岩陰に洞窟があった。
あれは自然にできたものかなあ。
3人はどんどん進んでいった。
これは人工の抜け道らしいぞ。
道は延々と続いている。
時々穴の空いた天井部分から
光が差し入っている。
上り坂が続いて、
ようやく出口が見えてきた。
とうとうジャングルに出ましたね。
これ以上進むと、
遺跡から離れちゃうな。
少し休憩して、遺跡に戻ろう。
湧き水があるね。
顔でも洗ってくるよ。
とクラウドが言った。
この抜け道のことは、
日誌には書かれていなかったわよね。
とスケッチブックを確かめながら、
リンが言っている。
湖の洞窟にある祭壇の遺跡まで
陸路で行けるルートで、
特に重大な発見ということでもないだろうからね。
とラッセルが言った。
ああ、さっぱりした。
あれ、この辺に置いたはずなのに、
メガネが見当たらない。
その時アーチ状の岩棚の上に
服を着たチンパンジーが現れた。
クラウドのメガネをかけている。
チンパンジーは
メガネちょっとお借りしました。
と言っている。
解説)
続きます。
Jun 25, 2024
再び湖の洞窟へ
ラッセルたち6人は、
途中の谷川で、見慣れぬマントヒヒもどきに
遭遇したりしながら。
時間は省略するかのように流れ、
一行は湖の洞窟に到着した。
ここから降りるのが一苦労なのよね。
と言っている。
一行はボートで往復して、
遺跡のある岸辺に上陸した。
これから探索を始めるんだけど、
範囲が広いから、二手に分かれようと思う。
ブラッドたちはボートで周辺の洞窟を
探索してくれないか。
天然のものに見えるけど、
中に遺跡が残されているかもしれない。
とラッセルが言っている。
祭壇のある遺跡はこのすぐ奥だ。
僕たちはリンとクラウドとマークが
昨日調べた場所から
さらに範囲を広げて探索する。
昼過ぎにいったん祭壇跡に集まって、
午後からの方針を決めよう。
ということで、
ブラッドとアーネストとアンドレアは、
ボートで湖に漕ぎ出した。
この湖は割と広いのね。
何か変わった生き物でも棲んでるのかしら。
水へびもどきが、湖面を
気持ちよさそうに泳いでいた。
一見洞窟風だけど、
奥は浅くてただの岩の窪み
という地形も多い。
一行は滝の洞窟の近くの
岸辺に上陸した。
岸辺づたいに行ける
洞窟があった。
うわ。これは。
そこは蝙蝠のねぐらだった。
退散しよう。
とブラッドが言っている。
解説)
続きます。
Jun 24, 2024
地下室の秘密
谷の集落の遺跡に残った
佳奈とアイスとマークは、
早速昨夜見つけた
地下室に降りていくことにした。
ここが何かのはずみで開いたのよ。
と佳奈がマークに言っている。
3人は地下の部屋に到着した。
昨日と変わっていないわね。
この部屋への降り口は一つだから、
グリーンマンが来たらすぐわかるわ。
アイス先輩、突然ですけど、
私が潜って調べてきていいですか。
と佳奈が言った。
うーん、折角冒険できると思ったのに。
でも佳奈はCGになりたて。
いいわよ。何事も経験しなくちゃね。
でも先輩って呼ぶのはやめて。
じゃあ、ボスとか尊師とか。
それならいいかも。
あ冗談よ。アイスでいいからね。
佳奈は早速階段の隅に行って、
水着に着替えて来た。
私急いで準備したので
学生の時に使ってた
スクール水着しか持って来てなくて。
水着はなんでもいいのよ。
学生時代素潜りは得意だったんです。
マイヨールに迫ると言われてて。
じゃ100メートル近くはいけるのね。
いえそんなには。
じゃあ、行きます。
あ、飛び込むのはそっちじゃなくて、
この手前の枠の中の方。
そっちは底が見えているでしょう。
ここなんですね。
では、改めて。
気をつけてね。
と言われている。
佳奈は潜ってみた。
井戸の中のような狭い空間を抜けると、
なんとそこは想像を絶する
広がりを持った水中世界だった。
佳奈は戻ってきた。
ぷふーと息を吐いている。
やはりアイスの言ってた通り、
すごく広くて、
石の階段がずっと下の方まで続いていました。
もっと先まで行きたかったんですが、
とても息が続かなくて。
やっぱりね。
こうなったらあとは任せて。
とアイスが言って上着を脱ぎ始めた。
アイスはリュックのカバーを開けると、
中から機材を取り出している。
それ、何でしょう。
あ、ケルベロスの。
佳奈も重装備の新人研修で使ったでしょう。
有毒ガスの発生する地域に備えて持って来てたの。
それ本部の整備部から借りて来たんですか。
長年やってると、こういうのも溜まってくるのよ。
けっこう怖い顔のマスクだね。
とマークが言っている。
セットだから仕方がないのよ。
やっと冒険ができる。
来た甲斐があったわ。
と言いながら、アイスは水中に
飛び込んで行った。
CGって、どういう組織なの?
私も入ったばかりで詳しくは。
などと話している。
解説)
続きます。
Jun 23, 2024
朝の遺跡前広場で
夜が明けた。
あーよく寝た。とゴリラが言っている。
あ、おはよう。
僕のメガネどこかな。
などと言っている。
ハヨーオッキーテ、ハヨーハヨー、
と聞こえる野鳥の囀りに、
佳奈も目を覚ました。
おはよ。
あれ何の鳥でしょう。
みんなもう食事を始めてるわよ。
と言われている。
アフリカの神話や伝承って色々あるんだろうね。
リンとクラウドは随分調べたっていうじゃないか。
私こっちに来て日が浅くて何も知らないの。
手軽に読める本ってある?
とアンドレアが訊いた。
そうねえ。アフリカの民話を集めた本なら
「口をきくカポックの木」っていう
アンソロジーがあるわ。
この遺跡とは全然関係ないけど面白いわよ。
などと話している。
君と佳奈はCGなら、
二人で大抵のことに対処できるだろうけど、
湖の洞窟の場所は知らないんだろう。
何かの時に場所を知ってる人が
一緒にいた方がいいんじゃないか。
谷川の渓流沿いに遡って、
目印になる橋を渡って見える湖にあるんでしょう。
何とかなるわよ。
いや、だったら僕もこっちに残るよ。
ラッセルに掛け合ってくる。
とマークが言った。
昨日の様子だと、
またグリーンマンと遭遇することもあり得るからね。
薬も分けて渡しとく。傷口に塗り込むんだ。
とアーネストが言った。
あれ、何の音?
象たちが水場に向かってるんだよ。
ここはアフリカだから。
ワニもどきが今日も暑くなりそうね。
などと言っている。
かくてアイスと佳奈とマークを残し、
ラッセルたちは
湖の遺跡に出発した。
解説)
続きます。
Jun 22, 2024
遺跡前広場の夜 そのに
持参した食料で夕食を済ませた後、
みんなデザートにバナナなどを食べながら歓談している。
それで、明日の予定は決まったのかい?
とマークがラッセルに聞いた。
今クラウドとも相談して決めたんだけど、
明日の調査は重点的に湖の洞窟に絞ることにした。
今日のみんなの報告で、遺跡群の全体像は
ほぼ確定できたけれど、
あそこだけは、天然の洞窟などが混在していて、
よくわからないんだ。
あとみんなも知ってるように、
前にこの遺跡を訪れて遭難した探検隊がいて、
残されていた日誌からいろんなことがわかった。
湖の遺跡が重要な墓所だったこともわかって、
それも明日の調査場所に選んだ理由の一つだ。
あとね。みんなに調査を依頼した
地下への降り口は見つからなかったけれど、
30日間も調査したという前の探検家の日誌にも
そんな記述は出てこないので、
僕たちが日数をかけて探しても
見つけられる可能性は低い。
というのが結論。
それで、明日一日湖の遺跡を調査したら、
一旦ここに戻って宿泊して、翌日、
マークたちの集落に引き上げることにします。
日程を早めた理由は、
何と言ってもグリーンマンのことだ。
医師のアーネストにも参加してもらって、
何とかなると思っていたんだけど、
全滅した遭難者の日誌を読んで、見通しが甘かったなと。
今日だけで2回も目撃されているし、
犠牲者が出るのは絶対避けたいからね。
了解。
でも私ちょっと気になっていて、
ここの遺跡で確かめてみたいことがあるの。
とアイスが言った。
なんだい?
ここの集落あらかた見て回ったけど、
まだ調べきれていないところがある。
あの地下室の水槽の中よ。
もしこの集落の地底に都があったなら、
見つかっている地下への降り口はあそこだけ。
ということは、
水の底に階段が続いているっていうことなの?
とリンが言った。
それを確かめたいの。
わかった。水没した地底の都か。
もしそうだとしたらロマンだなあ。
じゃあその調査はアイスと佳奈に任せるよ。
みんなは湖の洞窟の調査だ。
日没までにここに戻ってくるということでね。
とラッセルが言った。
明日の予定が明かされると、
みんなは散会して思い思いに
寝支度をしたり自由行動を始めた。
グリーンマンの夢でも見そう。
と佳奈は思っている。
お父上ヨハネスさんのことはなんと言っていいか。
とクラウドが言っている。
僕は直接面識はなかったけれど、
探検家として尊敬してたんです。
随分昔に消息不明になってから、
ずっと探していたんだから、
どんな形にせよ見つかってよかったわ。
でもね。本当はあの頭蓋骨、
私も父じゃない気がしてるの。
きっと日誌にあった古代の魔族のものよ。
確かめる方法はあるんですか。
マークが集落の外れに住む魔術師フラハなら、
蘇らせることができるかもしれないって
言ってたわ。
やっぱりそういう話になるんですね。
寝つかれない佳奈は広場を散歩していて
アンドレアを見かけたので声をかけている。
私が見たグリーンマン、
あなたの見たのと同じ個体なのかなあ。
どうなんでしょう。
同じだとしたら、すごいね。
私とあなたに、ほぼ同時刻に目撃されてたんだから、
相当離れた遺跡の間を移動してたことになる。
それともあんなのが何匹もいるのかなあ。
逃げ足早かったからねー。
それにみんな人を襲うって言ってたけど、
私を襲って来たわけじゃない。
ただこっちを観察してただけみたい。
隙を窺ってのかもしれない。
それもそうだねー。
アイスも散歩していて、
アーネストに出会った。
どうも寝苦しい夜ね。
防虫スプレー使う?
あら浮かない顔でどうしたの。
アイス。
実は君と佳奈はCGに所属してるって聞いたんだが。
ああ、そのことね。
指名手配のこと気にしてるなら心配しないで。
今は休暇中だし、今回の探検については
いっさい本部に報告しないってラッセルと約束してるの。
知ってたのかい。
一目見た時にわかったわ。
あなたは有名人だし、
あなたの顔のイラスト入りのTシャツもあるのよ。
それ別人だよきっと。
アイスはアーネストと別れて
広場の周辺の散歩を続けた。
夜の散歩もいいものね。
あ、流れ星だ。変な動き。
円盤なのかな。
今度はマークに出会った。
どうしたんです。
獣が集まってるんだ。
なんですかあれは。
それはジャッカルに似た獣の群れだった。
皆殺しにしますか。
え、いや、様子を見ているだけのようだ。
きっと人間が珍しいんだろう。
解説)続きます。
Jun 21, 2024
遺跡前広場の夜
ラッセルとアイスと佳奈は
焚き火を始めていた。
遺跡の建物の中で寝ないんですか。
雨も降りそうもないし、外の方が気分がいいよ。
そろそろ日が暮れるわね。
この虫除けスプレー使う?
などと話している。
あの地下の部屋はなんだったんだろう?
公共の水汲み場かなあ?
古代ローマみたいな公衆浴場だったとか。
おや、クラウドたちが戻ったようだよ。
やあやあ、
みなさん何か成果はありましたか?
光ってる石みたいなものを見つけたけど、
洞窟は想像以上に広すぎて、
確認できたのは祭壇のある遺跡の周辺だけ。
地下への降り口は見つからなかったわ。
とリンが言っている。
そこにブラッドたちのチームも
戻ってきた。
山の傾斜を降りるのに手間取って
ちょっと遅くなっちゃったな。
と言っている。
地下への降り口は見つからなかったけど、
前に来ていた探検家のものらしい頭蓋骨と
遺品を見つけたよ。
とブラッドが言った。
みんなはリュックを置くと、
焚き火を囲んで今日の探索の様子を
それぞれ報告しあっている。
一番最初に話題になったのは、
佳奈とアンドレアが目撃した、
木の枝を全身に纏った生き物の話だった。
それは多分グリーンマンだよ。
僕は実際には見たことがないんだが、
襲われた人から伝え聞くところによると、
そんな格好をしているらしい。
とマークが言った。
私の部下もゴリラのシーザーもそんな感じだと言ってたな。
あれに噛まれると傷口から木の芽が芽吹いて、死に至る。
確認はできていないが、やがてグリーンマンになってしまう。
と現地の住民の間では言われている。
でも住民の使う薬草を元に治療薬を開発したから
早めに手当てをすれば大丈夫だよ。
とアーネストも言った。
そうそう、リン。
君はドイツ語ができるだろう。
頭蓋骨と一緒にあったバッグの中に、
スケッチブックが入っていて、
ドイツ語で書かれた文章があったんだ。
読んでもらえるかな。
とブラッドが言った。
もちろん。
リンはバッグとスケッチブックを見て
驚いた様子で言った。
それって、父の使っていたものよ。
リンはスケッチブックを開いた。
何枚も、遺跡の建物のスケッチが描かれている。
後半は文章になっていた。
この筆跡は確かに父のものだわ。
5月5日
今日でこの未知の遺跡に来てもう30日目だ。
伝承にあるストーンサークルを探すのが目的だったが、
サークルの近傍で古びた石の門を見つけたのが
最初の思わぬ発見だった。
周辺を何度か探索するうち、
山上の遺跡に次いで湖の洞窟の遺跡や
谷の集落の遺跡を発見した。
建築様式が共通しているので、
同じ文明のものだと推定できる。
5月6日
興味深いのはこの一帯には特異な動植物の分布が見られ、
しかもそれが遺跡のある地域と重なっていることだ。
動物学者や植物学者たちはむしろそちらに夢中になったが、
仲間は次々に行方不明になってしまった。
事故なのかジャングルで獣に襲われたのか理由はわからない。
とうとう生き残ったのは私一人だ。
5月7日
湖の洞窟にある遺跡はやはり墓所だった。
頭蓋骨と副葬品を見つけた。
頭蓋骨は古代人の骨格を知るための
貴重な資料になる。
埋葬されていたのは身分の高い貴人だったようで
副葬品は宝石で飾られた首飾りや
大きな人の背丈ほどもある鏡板など、
かなりの点数に上る。
5月8日
副葬品の収集は進めているが、
一人ではとても全て持ち帰ることができない。
何とか帰りついて改めて調査に来る時まで、
宝飾品目当ての墓荒らし対策として、
一箇所に隠して保管しておくことにした。
ページが破けていて日付が飛んでいるわ。
5月10日
緑の怪物に襲われて噛まれたせいか、
体がもう動かない。
傷口からは緑の芽が吹き出している。
僕もあんな姿になってしまうのだろうか。
地下への降り口のことは書かれていないようだね。
父たちは偶然この遺跡群を発見したみたい。
その頃はマークたちの集落もなかったはずだから、
こんな奥地に来るまで相当苦労したはず。
30日も探索していたっていうんだから、
降り口があればきっと見つけたはずよ。
やはり地下の都っていうのは
言い伝えに過ぎなかったのかなあ。
副葬品を保管したって書いてあるけど、
その場所は?
書かれてない。日付が抜けてるのよ。
この日誌の最後に出てくる、
緑の怪物ってグリーンマンのことじゃない?
もしグリーンマンに噛まれて自分も変化して
グリーンマンになったとしたら、
この頭蓋骨は君のお父さんのものじゃなくて、
彼が持ち歩いていた古代人の頭骨ってことにならない?
とブラッドが言った。
そういえばすぐには確言はできないが、
男性のものにしては小ぶりで華奢だね。
とラッセルも言った。
でも体が動かなくなって、
そのまま死んでしまったとも考えられるわ。
とリンはつぶやいた。
解説)
続きます。
Jun 20, 2024
山の遺跡の探索
ここは清々しい広場みたいな感じね。
とアンドレアが言っている。
城壁のような壁に囲まれてることは、
最初の谷の集落の遺跡と同じで、建築様式も似ている。
装飾用の門といい、
ここは別荘とか、離宮のようなものじゃなかったかと、
ラッセルやクラウドは言ってるんだ。
標高も少し高いから気象も多少違うのかもね。
それらしい大きな建物が一つある。
他にも住居群がいくつかあるが、
石造りの建物の中はどこもがらんとしていた。
ただ二階からの眺望はどこもいい。
探索を始めて数時間たち、
地下への降り口も見つからないので、
アンドレアは休憩して
風に吹かれながら眺めを楽しんでいた。
あら。あんなところに。
遺跡の中に侵食して繁茂している草木に茂みに
何か生き物が動くのを見つけた。
アンドレアは二階から駆け降りて、
生き物を追いかけた。
その生き物は背後にあった階段を登って、
近くの住居に飛び込んだ。
アンドレアは後を追っていく。
アンドレアの声を聞いて
ブラッドとアーネストもその生き物を
探したが、逃げられてしまったようだ。
どこだどこだ。
あっちに逃げたみたい。
あっちってどっちだ。
アンドレアは、そういえばさっきの。
と言って、
生き物を追いかけていたときに
建物の部屋の隅で見かけたものを思い出した。
確かめに戻ってみると、
それは頭蓋骨と古そうなバッグだった。
しばらくのち、
呼ばれて来たブラッドがバッグを開けると、
バッグの中にはスケッチブックが入っていた。
このスケッチブックは、日誌みたいなもののようだよ。
何枚もの遺跡の建物のスケッチの後に、
日付つきの文章が書いてある。
僕たちがこの遺跡を発見する前に、
ここを発見して訪れた人がいたんだ。
なんて書いてあるんだい?
ドイツ語なんで、よくわからないなあ。
その頭蓋骨の人が書いたのかなあ。
多分ね。
どうしよう。お墓掘って埋めようか。
書いた人の身元がわかれば、
遺族に届けた方がいいと思うよ。
とアーネストが言った。
一行は探索も一通り終わったので、
休息して帰ることにした。
この水盤からは、
信じられないことに今でも水が流れている。
やはりこのあたりには、
不思議な魔法でもかかってるんじゃないか?
とアーネストが言っている。
帰路に着く前に軽く腹ごしらえして行こう。
これ、アイスにもらったカメパンなんだけど食べない?
元気が出るよ。
ありがとう。え、アイス?
ああ今わたしダイエット中なの思い出したわ。
とアンドレアはいった。
日がそろそろ傾きかけてるね。
地下への通路は見つからなかったけど、
あの日誌から何かわかるかもしれない。
ドイツ語読める人っているの?
リンはベトナム人だけどドイツで育ったらしいから、
彼女読めるんじゃないかな。
とブラッドは言った。
それにCGは何ヶ国語も習得してるんだろう。
え、調査隊にCGがいるのか?
とアーネストが言った。
アイスと佳奈はCGだって聞いたよ。
あ、これオフレコだったっけ。
僕はその国際組織に指名手配されてるんだぞ。
彼女たち、休暇で遺跡調査に参加してくれてるんだ。
遺跡のこともマークの集落のことも
口外しない約束だから多分大丈夫だよ。
実は私もCGに指名手配されてるのよ。
と打ち明けそうになったが、
アンドレアは黙っていた。
解説)
続きます。
Jun 19, 2024
ブラッドたちのチーム
ブラッド、アーネスト、アンドレアの3人は、
急勾配のジャングルの斜面を登っていた。
アンドレアはかなりのハイペースだ。
ジャングル慣れしているブラッドと
アーネストが、彼女タフだねえ。
と話している。
行手に何かいる。
蛇が鎌首をもたげて威嚇している。
これはこの地域限定の猛毒なやつだよ。
とアーネストが言った。
次の瞬間、
一発の銃声と共に蛇の頭は吹き飛んでいた。
驚いたなあ。
君は健脚ぶりといい、
今の物腰といい、ただものじゃないね。
まあ、人には色々事情があるのよ。
とアンドレアが言った。
山の山頂にはストーンサークルがあるが、
話がどんどん逸れていきそうになるので、
目指す遺跡はそこではなく。
遺跡はそのさらに奥にあった。
石のアーチが目印だ。
おお、着いたようですね。
しかし、こんなところに門とは不思議だなあ。
とアーネストが言っている。
なぜか石の門がいくつもあるんです。
装飾用じゃないかとラッセルは言ってましたが。
この先に。
とブラッドが言いながら先導している。
この入り口を抜けると、
最初の谷の遺跡みたいに、
円柱付きの石壁で囲い込まれた遺跡群があるんです。
ブラッドたちは、
遺跡の中に入っていた。
解説)
続きます。
Jun 18, 2024
洞窟の遺跡
クラウド、リン、マークの3人は
ボートに乗って滝の奥の洞窟に漕いで行った。
こんな不便なところに建物を作るなんて。
ここは遺跡と言っても、祭壇がメインなのよね。
特別な時だけに使われたんじゃない?
などと話している。
洞窟の奥にある岸辺にボートを係留して、
一行は上陸した。
この奥が開けているなんてね。
地上のジャングルからは
滝の注ぐ深い穴にしか見えない。
一行が石造りのアーチを抜けると。
石の灯籠のようなものが並んでいる。
ラッセルがいたら、
ロマンだって、言うだろうなあ。
祭壇のようなものがある。
何に使ったのかわからないけど、
結構雰囲気出てるなあ。
と言っている。
記録用に撮影しておくよ。
記念写真もとる?
とクラウドが言っている。
リンは、これまでに収集した伝承を
書き溜めた黒いノートを取り出して読んでいる。
ここについての言い伝えは
ほとんどないのよ。
集落の特別な祭祀に使われていた神殿とか、
墓所だったのか。
周辺の崖に残っている横穴式住居のような
洞窟をいくつか探索したのち、
3人は休憩することにした。
あれ、その水筒はドイツ軍の使ってたものだね。
ええ。私は養女で父はドイツ人だったの。
この軍帽も父からもらった。
父は探検家だったけど、アフリカのジャングルを
探検に行ったきり行方不明になってしまった。
リンは一枚の写真を
バッグから取り出してマークに見せた。
なかなかハンサムな人だね。
ヨハネスって言うんだけど、
みんなにハンスって呼ばれてた。
私が探検家になって、この地域に興味を持ったのも
元々はそれがきっかけよ。
あとね、
この水筒は蓋がカップになってるから便利なの。
この近くには他にも住居跡や洞窟があるみたいだし、
半日で全部探索するのは難しいね。
壁画や文字の類も見つからなかった。
そろそろ切り上げて戻りましょうか。
リンとクラウドが帰り支度をしていた時
洞窟の一つを見に行っていたマークが
二人に叫んだ。
今、何かこの大きな岩のあたりで音がしたんだ。
音を立てた後、素早く草陰に潜んで
その様子を見ているものがいたが、
誰も気が付かなかった。
3人が岩を調べると、
岩の裏側に人が通り抜けられるほどの隙間があり
そこを抜けると小さな部屋になっていた。
あれは何?
なにか光ってるみたいだよ。
解説)
続きます。
Jun 17, 2024
クラウドたちのチーム
クラウドとマーク、リンは、
古代遺跡の集落跡から程近い、
渓流沿いに進んでいた。
前回のこの川沿いの遺跡の調査には
マークとリンもサポート役で同行したので、
3人とも道筋は知っている。
あれはサイ?
水牛みたいにも見えるなあ。
このあたりには奇妙な動物がいるんだよ。
突然変異種が多いと言うのか。
伝承によると、土地にかけられた
魔法のせいだって。
歩きにくいけど、
密林を切り払っていくよりマシだね。
迷うこともないし。
これは新種のワニ?
ワニのつもりのトカゲでしょう。
あの古い橋が目印だ。
とクラウドが言って、
右手の茂みに分け入っていく。
一行は橋を渡っていく。
ここから少し登りだけど、
もうすぐ着くはずだね。
やや見晴らしのいいところに出たので、
マークは双眼鏡を覗いている。
ああ、あそこだ。
あの滝の奥が洞窟になっているんだ。
前回の探索で使ったボートが岸辺に置いてあるはず。
そこまで降りていくのが一苦労なのよね。
と言っている。
解説)
続きます。
Jun 16, 2024
ラッセルたちの探索
ラッセルたちの調査は続いていた。
ざっと全体を歩いて見たけど、
地下への降り口は見当たらないわね。
あそこの壁怪しくない?
ただの瓦礫の山に見えるけど。
その頃、一人で広間を探索していた佳奈は
奥の暗がりに奇妙な人影のようなものを見た。
人影を追おうとした佳奈は焦って瓦礫につまづいて、
すっ転んでしまった。
その時壁にぶつかった拍子に、何かが作動して、
どこか外の方で大きな音がした。
こっちには誰もいないよ。
と駆けつけたアイスが言っている。
大丈夫?
ええ。転んだだけです。
何か大きな音がしたみたいだけれど。
3人は音のした方角に
いってみることにした。
外に出ると、最初通った階段のそばの
石畳の中に地下への階段がひらけている。
こんな仕掛けが。
早速降りてみよう。
石の階段が続いている。
アイスたちは地下のフロアに
降りた。
しかしその先は行き止まりだった。
水をたたえた水槽のような部屋になっている。
うーん、ここで行き止まりか。
ここにも何か仕掛けがあるのかな。
3人は部屋を調べたがなにも見つからなかった。
あ、もうこんな時間。
そろそろみんな戻ってくる頃よ。
了解。今日の探索はここまでにして、
いったん遺跡前の広場まで戻ろう。
地上に出ると、夕闇迫る空を
コウモリの群れが舞っていた。
あれって人間の血を吸う奴ですか?
と佳奈が聞いている。
解説)
続きます。
Jun 15, 2024
探索の開始
さて、みなさん。
これから調査を開始しますが、
昨日の打ち合わせでお話しした通り、
ここで3人ずつ3つのグループに分かれて、
それぞれの遺跡で調査を始めていただきます。
今日はこの広場で野営する予定なので、
日没前にはここに戻ってきてください。
持ち寄った今日の調査結果を検討の結果、
明日からの方針を決定します。
グループの編成メンバーは?
ここは私ラッセル、川の遺跡はクラウド、
山の遺跡はブラッドがリーダーを務めるので、
どのグループに参加するかはお好みで。
じゃあ私はラッセルのグループに。
とアイスが言った。
もう移動せずにここで調査を始めればいいんでしょう。
では私もアイス先輩と一緒がいい。
と佳奈が言った。
私は相棒のクラウドと一緒に。とリンがいい、
僕も涼しそうだし川沿いの洞窟探検がいいねとマークが言った。
残ったのはブラッドのグループか。
山登りのジャングルはグリーンマンが出そうだね。
僕が同道しよう。とアーネストが言った。
私は突然の参加だし
最後に空いてるグループに入れてもらう。
とアンドレアが言った。
メンバー編成が決まったので、
クラウドとブラッドのグループは
それぞれ目的地に向かって行き、
アイスたち3人は早速調査を開始した。
この円柱の並ぶ奥は城壁のようになっていて、
その壁に囲まれた中に集落の遺跡があるんだ。
とラッセルが言っている。
石壁に設けられた入り口を
潜り抜けると、
そこは石造りの住居が点在する集落跡だった。
建物が隣接して、
入り組んだ迷路のような場所もある。
二階建ての住居もあり、
しかしそれぞれの屋内は
大抵がらんとしていた。
祭壇みたいなものもあるけど、
特に降り口みたいなものは見つからないわね。
でも風情にロマンを感じるだろう。
とラッセルが言っている。
解説)
続きます。
Jun 14, 2024
谷の遺跡へ
翌朝、クラウドの家の前には
調査隊のメンバーが順次集まっていた。
やあ、アンドレア、おはよう。
君が参加してくれるとは意外だったけど、
人数が揃って助かったよ。
とマークが言っている。
私自身も意外な展開だったわ。
とアンドレアは言った。
これで全員揃ったね。じゃあ出発しよう。
とラッセルが言っている。
9人は目印の門を潜って出発していった。
今日も暑くなりそうだね。
言っている。
一行は昨日佳奈たちが散歩した
薬草の群生地域を過ぎていく。
人数多すぎじゃない?
やがて集落の外れの
魔術師の家の前を通過した。
マークはフラハに挨拶している。
一行は高台の起伏が緩やかな
地域を歩んでいる。
遺跡は谷間にあるんだ。
険しい下り坂のジャングルを
抜けなくてはならない。
なんとも深山幽谷ですなあ。
これ降りるの?
と言っている。
というわけで一行は
果敢に急勾配のジャングルを踏み分けていったが、
時は省略するかのように流れて。
一行は谷底の川辺まで到達した。
あ、象が行水してますよ。
ここはアフリカだからね。
この川筋をそれて西に行くと
そこに集落跡の遺跡があるはずだ。
一行がしばらく進むと、
木の茂みの間から光が差し、
小さな広場のようなところに出ると、
そこに石造りの建物があった。
ここだここだ。
前来た時と変わらないね。
と、クラウドたちが話している。
解説)
続きます。
Jun 13, 2024
午後の打ち合わせ
午後になり、クラウドの家では
全員集合して遺跡調査の
すごく長い打ち合わせが始まった。
みなさん。
明朝から遺跡調査に出かけます。
初めて参加された人もいるので、
これまでの調査の経緯と、
わかっていることなどをお話しします。
これまでにこの集落の割と近くの谷に
三つの遺跡があることが確認されており、
私クラウドとラッセル、ブラッドの3人で
1回目の調査を行なっています。
一つの遺跡は古代の集落跡。
一つは川沿いの洞窟にある古代の建造物、
一つは山沿いにある建造物です。
前回の調査では、
いずれも場所だけ特定できたということで、
本格的な調査は今回が初めてと言っていいでしょう。
元々私とリンが現地に伝わる古い伝承を元に、
この地域の調査を始めたのがきっかけでした。
伝承によると森の谷の奥に豊かな都があり、
そこは彼らの魔法で守られていたというのです。
魔術師のフラハが魔族が暮らしてたと言ってたわ。
とアイスが言った。
それも一つの伝承ね。
伝承はいろんな部族に伝わる神話や伝説の中に
さまざまな表現で断片的に残されていたの。
それを何人もの異なる部族の長老から聞き取って、
総合してみた結果、あの谷の集落跡の位置が特定できたのよ。
とリンが言った。
言い伝えには地底の国というのもあった。
伝承を読み解くと、発見された三つの場所は
地底で結ばれていたという話も出てくるんだ。
ロマンだね。
とラッセルが言った。
トカゲの顔をした地下に住む人と
仲良くしてたっていう伝説もあるわ。
それでともかく、今回の調査の目的の一つは、
地下への入り口を見つけること。
それで初日から3班に分けて、
三箇所の遺跡の調査を同時に行うことにしました。
どこかで入り口が見つかれば、
翌日からそこを中心に集中探索を行います。
翌日って、向こうで泊まるんですか。
その谷までは割と近いんでしょう。
毎日往復すれば?と佳奈が言った。
距離は近いとはいえ、ジャングルで
急斜面で険しいんですよ。
猛獣や毒蜘蛛や毒蛇や
グリーンマンもいて危険も多いですから。
とクラウドが言った。
期待してはいないんだけど、財宝がある可能性は?
とブラッドが言った。
ないとは言えないな。だとすると、
守護神みたいなのがいて守ってる可能性もある。
グリーンマンって、もしかして
遺跡全体を守ってるんじゃないですか?と佳奈が言った。
人間が噛まれると大変なことになるって、
アーネスト先生が言ってたわ。
アーネストに会ったのか。
たしかに彼なら治療法を研究している。
これから僕が行って、
調査に参加してくれるように頼んでみるよ。
とマークが言った。
さすがこの集落のリーダー。そうしてくれると嬉しいわ。
調査には危険が伴うから、私たちからは言いにくかったのよ。
とリンが言った。
私も付き合うわ。そのアーネストっていう人、
知らないの私だけみたいだし、
調査に出かける前に会っておきたいの。
とアイスが言った。
かなり長い打ち合わせが終わったようだ。
アイスたち出かけちゃった。
私たちもコーヒーでも飲みに行かない?
美味しいお店があるのよ。
夜は酒場だけど、昼間はコーヒーも出してるの。
とリンが言っている。
あの門がクラウド家への目印なのね。
覚えやすいでしょう。
ここなの。豹変亭っていうのよ。
面白い名前ね。
アンドレアがいらっしゃいと言っている。
いい感じのお店でしょう。
最近できたのよ。
そーね。
さて、いよいよ明日から遺跡調査に出発か。
店は昼過ぎから結構賑わっていた。
リンはよくくる客だけど、
連れの子は誰かな。
昨日到着した調査隊のメンバーらしいよ。
遺跡の調査が始まるんだって。
遺跡といえば財宝ね。
ジゾックスを再興するために
私たちも財宝を探しに行こうか。
医師のアーネストの家を訪ねて、
遺跡調査への参加を承諾してもらったマークたちが、
アーネストと店の前で立ち話している。
君がOKしてくれて助かったよ。
今日も暑いしアーネストとアイスとは初対面だし
軽くビールでも飲まないか。
いいね。
3人は店にリンと佳奈が来ていたことを知って
同席することにした。
ビールを運んできたアンドレアが
昨年捕まえ損なったジゾックスの団員だったことに、
アイスは気が付いていない。
ところでさ、チームは3つのグループに分かれて
遺跡調査をするんでしょう。
今の参加メンバーだと、総勢8名で、
1つのグループは二人になっちゃうよ。
誰かもう一人参加して貰えば?
と佳奈が言った。
確かにそうだけど、危険が伴うからなあ。
とマークが言った。
おいおい、僕を勧誘したばかりだろう。
とアーネストが言った。
君はプロだから特別なんだよ。
やっぱりあの女は昨日見かけたCGのアイスだった。
でも私のことに気がついていないみたいだった。
あなたはただの団員だから顔も名前も覚えられてないのよ。
なんてことでしょう。
そうそう、調査隊のメンバーを
1名募るみたいな話をしていたわ。
それはちょうどいい。
あなたが応募していってらっしゃい。
え、私が?
アイスに復讐したいんでしょう。
チャンスがあるかも。
それと財宝を見つけたら、しっかり持ち帰ってね。
とローズが言っている。
解説)
続きます。
Jun 12, 2024
フラハとの長い会話
魔術師フラハの家を訪れた
アイスとマークは、
家の中に招かれていた。
お邪魔します。
おや、屋内は見かけより広いですね。
やはりこの家も魔術劇場みたいに
魔法陣の上に建っているんですか?
とアイスが言った。
魔術劇場!!
君はハリーを知っているのか。
ええ、私たちのベーカリーのある広場に、
魔術劇場が出現して、今は隣に住んでるんです。
フラハさんもハリーをご存知で?
ハリーとは古い付き合いだよ。
もっとも彼があの移動式の魔術劇場で
世界中を巡回し始める前のことで、
彼がカーミラと結婚する前のことだから、
もう何百年も会ってないが。
ハリーをご存知なら話は早い。
ハリーは鏡の扉という異世界への出入り口を作れるんです。
実は私もそんな扉を通って、
兵士たちが暮らす村に行ったことがあるんです。
その村は戦時中ながらドイツ軍と米軍兵士が
協力しあって運営している孤立した世界でした。
そして驚いたことに、彼ら住民ののほとんどは
フィギアに宿った精霊が人間に姿を変えていたのです。
ふむふむ。まあ座って話そう。
そこで、お尋ねしたいのは、
マークは砂漠で嵐に遭遇して、戦時中だった世界から、
この世界に来たと言っている。
だとすると鏡の扉と砂漠の嵐は、同じように
異世界との出入り口だと考えてみたんですが、
そんな理解でいいんでしょうか。
難しいことを聞くなー。
砂漠の嵐も鏡の扉も、同じような異世界との通路だが、
砂漠の嵐のような通路は魔術では生み出すことはできない。
あれはこの世界の仕組みに関わるような
別の力が生み出した幽冥界との通路なのだよ。
これまでマークには言ってなかったが、
マークは確かに元はフィギアの精霊だ。
おそらく君が体験した村と同じように、
誰かが想像して生み出した戦争中の世界の中で、
兵士として生きていたのだろう。
そこで時空を越える嵐に巻き込まれたのだが、
直接こちらの世界に運ばれたわけではない。
確かに僕は風ばかり吹いている
砂漠のピラミッドのある世界に辿り着きました。
とマークは言った。
そこは幽冥界と呼ばれている世界だよ。
そこでまた偶然嵐に遭遇して、マークはこの世界に来たわけだ。
もっとも偶然とは別の力が作用したのかもしれないが。
何かの力が私をここに呼んだということですか。
そうかもしれないし、そうでないかもしれない。
話はまだ終わっていないぞ。
そのような嵐のような出入り口は、
魔法で生むことも無くすこともできないが、
鏡の扉というのは、強力な呪力を持つ魔術師なら、
魔術で生み出すことができるのだ。
もっとも呪力の他に特殊な呪文が必要なのだが。
そういえば、ハリーや、娘のヴィヴィアンが
分厚い本を抱えてるのをみたことがあるわ。
とアイスが言った。
そうそう、それが呪文の作り方が書かれた
解説本なのだ。赤い表紙の本だ。
黒い表紙の方は薬草や毒草の調合法が書いてある。
それにあいつ娘がいるのか。
ヴィヴィアンは養女だそうだけど、
魔族とヴァンパイアのハイブリッドで、
悪魔に変化した女性よ。
これがお転婆で、やたらにものを大きくしたり、
動物や人形を人間に変えたりするの。
なんと悪魔なのか。
動物や人形に宿っている精霊や
いわゆる「つくも神」を目覚めさせるんだろう。
そういう呪文なら私も知っているぞ。
もちろんその精霊自身の力や意志が肝心で、
なんでも叶うというわけではないが。
そうそう、君たちは谷にある
遺跡を調査しているらしいな。
あの遺跡を作ったのは古代の魔族だよ。
彼らは、鏡の扉を使って自在に
別の地域と行き来していたという伝承がある。
また彼らはこの地域全体に魔法をかけた。
その力は長い年月を経てさすがに薄らいではいるが、
それでも結構変わったことが起こるんだ。
動植物の成長が早かったり、グリーンマンが現れたりね。
そんなわけだから、
遺跡のどこかに呪文を書きつけた
痕跡があるかもしれないな。
その呪文を唱えれば、鏡の扉が現れるっていうこと?
魔力を持たない者が唱えても何も起きないさ。
それにそんなものを作ると、
夢食いたちを呼ぶ恐れもある。
すごく長い話になっちゃったね。
マークはやっぱりフィギアの精霊だったんだ。
昔の世界は僕の前世みたいなものだから、
もう関係ないけどね。
それから昨日の夕食のことだけど、
なぜあれほど肉や野菜や果物が豊富なのか、
疑問だったんだけど、その謎も解けてよかった。
とアイスが言った。
あれあそこの家は、何かのお店?
わりと最近オープンした酒場だよ。
豹変亭っていうんだ。
新しくこの集落に住み着いた二人の女性が
経営してる。今度のみに行こう。
集落はかなり広い地域に跨ってるから、
迷子になりそう。
すぐに慣れるよ。この目印の門を潜れば、
もうすぐクラウドの家だ。
豹変亭では、ローズがアンドレアと話していた。
今、道を横切っていったの、
アイスに似てたわ。
他人の空似じゃないの。
まさか、こんなジャングルの奥地の
辺境の集落にまで、
CGの追手が来るなんて考えられない。
メイヴ復活作戦の時の屈辱は忘れられない。
彼女の顔を見間違えるはずはないわ。
とアンドレアは言っている。
それはともかく、
お客さんが呼んでるわよ。
テーブルでは、ロドリゲスが、
ビール、あとふた缶ください。
と言っている。
解説)
続きます。
豹変亭のローズと団員(初めてアンドレアと命名)は、
CGに恨みを持つ陰謀組織ジゾックスの残党で、
かって魔王メイヴを復活させようとして、
CGやヴィヴィアンに阻止された過去があります。
このエピソードは、
2023年5月21日に、ローズたちが町に来るところから始まり、
飛び飛びに描かれて、
2023年7月22日のヴィヴィアンと
メイヴとの対決で完結しています。
途中に海賊船長の話や、
仮想現実体験装置の話などが入り込んでいるので、
ストーリーを辿りにくいですが。
逃げ延びたローズたちは、
国際警察機構やCGの追跡から逃れて、
この集落に潜伏していた、
という設定なのでした。
Jun 11, 2024
アーネスト
佳奈たちはシーザーの傷の手当てをしてもらうため
アーネストの家に向かっている。
アーネストの家は
渓流の際にあった。
ちょうど戸口に
アーネストが立っていて、
佳奈たちに気がついたようだ。
二人はシーザーの
傷の手当てが終わるのを待っていた。
ここは先生の自宅兼診療所なの。
やあ治療が済んだよ。
関節がやられていたから、
ねじ釘を打ち込んで
セロテープとホッチキスで
補強しておいたからもう大丈夫。
あ、今のは冗談だよ。
先生は冗談が好きなの。
君たちは遺跡調査のために
谷に向かうんだろう。
あのあたりにはグリーンマンがいるから、
気をつけたほうがいいぞ。
グリーンマンって人間なんですか?
元人間と言えるのかもしれない。
原住民は森の精霊だと言ってるがね。
ゴリラなら大丈夫だが、
人が噛まれると感染して大変なことになってしまう。
ここではその治療研究も行っているんだ。
患者さんがいるんですか?
いるよ。会ってみるかい。
二人は病室に案内された。
ベッドに横たわった青年のそばに
銃を携えた兵士らしき男が
新聞を読んでいる。
あ、先生。
調子はどうかな。
今日は気分がいいです。
と言っている。
治療も結構危険を伴うんでね。
彼らは私の部下なんだ。
実は私はある組織のリーダーでね。
祖国を追われ、アフリカに転戦して
某国の内戦に手を貸したせいで、
国際的に指名手配されてしまった。
ジャングルに潜伏して逃避行している際に、
マークに出会ったんだ。
この集落は身を隠すには最適の場所だから、
私のような人も多いようだよ。
ふむ。仕事の後の葉巻はうまいなあ。
とアーネストは言った。
佳奈たちがアーネストの診療所を出ると、
シーザーがお礼を差し上げたいと言って、
自分の家まで案内してくれた。
これ、家宝にしてたんですけど差し上げます。
魔術師に呪文を唱えて貰えば、
蘇らせることができるそうです。
それを見た二人は、
あ、お礼なんていらないから。
そうよ、お気持ちだけで十分。
家宝なんでしょ。大事にしなくちゃ。
と言っている。
二人はシーザーと別れてクラウドの家に戻ってきた。
色々あって随分時間かかっちゃったわね。
とうとう断りきれずにもらっちゃったけど、
よかったのかしら。
解説)
続きます。
Jun 10, 2024
フラハとシーザー
早朝に起き出したアイスは、
テラスに出てみた。
標高が高く、大気が澄んでいる。
集落にも馴染んでおきたいので、
散歩にでも行こう。
クラウドの家を出るとマークに出会った。
おはよ。
やあ、散歩ですか?
調査の打ち合わせまでには時間があるので、
ちょっとぶらぶらと。
だったら、昨晩話に出た
魔術師に会いに行きませんか。
いいわね。
彼は集落のはずれに住んでいるです。
なんていうお名前の人なの?
フラハと呼ばれてます。
彼は僕が砂漠からこの土地に来た時、
ここに住むことを受け入れてくれたんです。
どこも同じジャングルのようですが、
目には見えない境界があるのだとか。
やがて二人は一軒の小屋の前にたどり着いた。
男は射抜くような目をしてアイスを見詰めて、
押し黙っている。
マークが両手をあげたので、
アイスも両手をあげてみた。
すると男もすかさず両手をあげた。
ちょっと緊張して怖かった?
と言っている。
フラハは冗談好きなんだ。
その頃、やはり早起きした佳奈は
リンと連れ立ってやや遠出の散歩していた。
昨日見た花の群生を
朝の光の中で確かめかったのだ。
それって薬草なのよ。
とリンに言われている。
そうそうここだったわ。
ああ、なんて気持いい。
その時ざわざわと音がして。
みるとゴリラが両手をあげている。
佳奈に挨拶されたと思ったようだ。
おはようございます。
とゴリラは言った。
あなた話せるの?
このゴリラはね、
集落の外れに小屋を立てて住んでるの。
知能が高くて人間の真似をしたいみたいで。
みんなシーザーって呼んでる。
あら、シーザー、左腕、重症じゃない!
グリーンマンにやられたんです。
それで、ここで薬草を採っていたんです。
アーネスト先生に診てもらわないと。
アーネスト先生って?
この集落にもお医者さんがいるのよ。
解説)
続きます。
Jun 09, 2024
マークに会う
リンに呼ばれて
アイスと佳奈が部屋から来てみると、
男性がいた。
こちらがマーク。
私たちのリーダーなの。
と言っている。
ようこそ我がアルカディアに。
とマークは言った。
再会したマークとラッセルとブラッドが
近況を話しあっているうちに、
日は暮れて、夜空に星が輝き始めた。
夕食は肉と野菜とフルーツが
メインのようだ。
量だけはあるから
たっぷり食べてね。
と言っている。
これアフリカ料理ですか?
もっと抽象的で無国籍な感じね。
などと言っている。
食後、思い思いにくつろいで
懇談している。
アイスはマークに
ちょっと聞いてみたいことがあったのだった。
マークさんは別世界から来たって聞いたんですが、
そこは第二次世界大戦の最中だったとか。
うん、信じてもらえないかもしれないが、
僕はアフリカ戦線に従軍していたんだ。
異世界があるというのは信じますよ。
実は私、第二次世界大戦中の兵士たちが暮らす
異世界の村に行ったことがあるんです。
そこではその村だけが世界と隔絶されていて、
自衛のため米兵とドイツ兵が共存していたんですが、
彼らにとって戦争自体は終わっていない。
興味深いね。
ただ、その村の住人たちは人間じゃなくて、
フィギアの精霊だったんですが、
本人たちは自分は人間だと信じていたんですよ。
僕の記憶も作られたもので、
僕も元はフィギアの精霊だったかもしれない。
ということか。
昔の世界のことはだんだん忘れてしまって、
どうでも良くなっちゃったなあ。
でも僕の場合、
砂漠で嵐に襲われたのが世界が変わるきっかけだけど、
君はどうやってその異世界に行けたの?
仕組みは分かりませんが、魔術師が作る魔法の扉ですよ。
異世界の間を行き来できる扉があるんです。
ふむ。自分の身に起きたことを思えば、
そんな童話みたいなことでもあり得そうに思えてくるね。
この集落にも魔術師はいることはいるが。
隣のスペースでは、
佳奈たちが話していた。
リンはどうしてこんな密林の奥地に来たの?
私とクラウドは探検家だったから、
アフリカの現地の部族に伝わる古い伝承をたよりに
遺跡を探索していたの。
遭難しかけていた時にマークに助けられてね。
それ以来この集落を拠点に、調査をしてるのよ。
ラッセルたちにも協力してもらって
遺跡らしき建造物を見つけたのは最近のことなんだ。
かなり古いものらしいが、まだよくわかっていない。
建造物は複数の場所で見つかっている。
それらをつなぐ地下通路があるようなんだが、
その入り口を見つけるのが今回の調査目的なんだよ。
とクラウドが言った。
通路があるとすれば、その規模からして、
広大なエリアにまたがっている。
地下に都市があったのか。
アリの巣みたいになっている可能性もあるね。
ロマンだろう。
とラッセルが言った。
これからちょっとお酒を、
という男性連中と別れて、
部屋に戻ったアイスは
満天の星空を眺めていた。
アイスは就寝前に護身用のコルトの整備をしている。
これ使うことがあるのかしら。
銃の整備は長年の習慣になっているのだった。
今日は舟に乗ったりジャングルを踏破したり
豹と出くわしたり色々なことがあった。
ベーカリー前の広場でのんびり過ごすのとは大違い。
それにあのマークっていう人、
どこかでみた気がするんだけど。
などと思い巡らしながら
アイスは眠りに落ちていった。
解説)
続きます。
Jun 08, 2024
ベースキャンプへ
この小さな集落には、
住居がそれぞれ、
そこそこの距離を隔てて
点在している。
目指すのは、
この地域に詳しいクラウド博士の家。
ラッセルとブラッドは、
前回、博士と協力して遺跡の調査を行った。
今回も、博士の家を拠点にしながら、
調査に出かける予定なのだった。
えっとどこだったかな。
ああこの道この道、
とラッセルが言っている。
ああ、ここだここだ。
こんにちわー。
ラッセルですけど、
クラウドさんご在宅ですか。
あ、ラッセル。
それにブラッドも。
クラウドがお待ちかねよ。
おや他にもお連れがいるのね。
ラッセルがアイスと佳奈を
紹介していると、クラウドがやってきた。
おお、ラッセル、
はるばるよくきたね。
おや、初めての人も。僕にも紹介してよ。
そうかそうか。
僕はクラウド。こちらはリン。
遺跡調査の相棒だよ。
一行はリュックを下ろして懇談している。
ここは世界から隔絶された
別天地みたいなところですね。
コンビニがないから不便だけど、
まあ、住めば都だよ。
ふつう飲めば都ともいうが。
あ、リンさんは?
マークを呼びに行ったよ。
彼も会いたがっていたから。
マークって誰です?
この集落のリーダーなんだ。
アイスたちはそれぞれ、
個室を割り当ててもらった。
シャワーも使えるっていうし、
快適すぎて言うことなしね。
夕食何かなあ。
解説)
続きます。
Jun 07, 2024
高台の集落
一行は緩やかな起伏のある
高台を歩いている。
野性の花々が群生している。
先頭を歩いていた佳奈は、
あれは。
と思わず声を上げた。
どうしたの?
今、こっちの方にゴリラがいたんです。
確かこの地域では珍しくないはずだよ。
それが、白っぽい服を着ていたんです。
このあたり、土が踏みならされて
道になっていますね。
もう集落の近くだからね。
とアイスとラッセルが話している。
私の見間違いだったのかなあ。
と佳奈は思っている。
あそこにいるのは普通の猿だし。
佳奈のしょんぼりしている様子を見て、
ラッセルが声をかけた。
そういえば集落には
頭のいいゴリラがいるっていう噂を
聞いたことがあるよ。
君の見たのはそれだったかもしれない。
そうなんですか。
似たような平坦な景色ですけど、
道幅がだんだん広くなってますね。
もうまもなく着くはずだ。
民家が見える。
目的の集落に到着したようだ。
男がじっとこちらを見ている。
ラッセルは両手をあげて、
何か奇妙な言葉を告げた。
背後で家の住人が興味深そうに見ている。
男も両手をあげて何か言っている。
今のはなんだったんです。
挨拶をしたんだよ。
両手を上げるのは敵意がないことを示す
仕草なんだ。
前に来たことを覚えてくれていたようで、
クラウドなら家にいると言っていた。
ああいう人たちばかりなんですか?
彼は特別。
この集落のことを知った現地人が、
稀に移住してくるみたいなんだ。
解説)
続きます。
Jun 06, 2024
高台まで
湖で休憩を済ませた一行は、
さらに奥地に向かった。
蔦や灌木が生い茂って歩きにくいので、
アイスはナタを取り出している。
しばらく行くと、
先頭にいた佳奈が、
今、樹上で何か動いたわ。
と言った。
アイスが見上げてみると。
豹が様子を伺っている。
アイスはナタを握りしめて
身構えた。
待って。
左の木の上にも。
とラッセルが言った。
二匹の豹が様子を見ている。
二匹ともまだ子供のようだ。
結局何事もなく
一行は静かにその場を通り過ぎた。
襲ってきたら、
眉間に一撃喰らわすところだったわ。
君の噂はルビーから聞いてるよ。
心強いボディーガードだね。
などとアイスとラッセルが話している。
あの豹の子可愛かったなあ。
と佳奈は思っている。
さらに進むと、やや傾斜があり、
先頭にいた佳奈が声を上げた。
こんなところに小川があります。
それは高地からあの湖に注いでいる、
いくつもの湧き水の一つだよ。
一行は水筒の水を補給するために
小休止することにした。
ここで水浴びできそう。
とアイスがつぶやいている。
周辺を見て回っていた佳奈は
オウムを見つけた。
このオウム、全然逃げないですよ。
と言っている。
一行が数時間かけて
ジャングルの傾斜を登り切ると、
高台が開けていた。
山があんなに迫っている。
この高台の向こうに集落があるんだ。
ここからは割と平坦で快適だよ。
解説)
続きます。
Jun 05, 2024
湖のほとりで
一行はジャングルに分け入った。
川のせせらぎの音を頼りに進んでいく。
しばらくすると水辺に出た。
前方の空が開けている。
そこはジャングルに囲まれた湖だった。
森閑として時折野鳥の囀りが聞こえる。
いったんここで休憩しよう。
ひと泳ぎしたくなっちゃった。
とアイスが言っている。
それはまたの機会に。
日が暮れる前につきたいからね。
それに、この湖には主がいるって言われているんだ。
何が棲んでるの?
巨大な生き物らしい。
ロマンだろう。
佳奈が近くでバナナの木を見つけたようだ。
ああ、それ昼食がわりになるね。
このバナナうまいよ。
君もどうかな。
うん、アイスにもらったこれ食べてから。
バナナいかがですか。
ああ、これ食べてからにする。
あ、それはカメロンパンではないですか。
カメパン、美味しかったよ。
元気が出た気がする。
とブラッドが言っている。
ベーカリーのフレイムの特製だからね。
命が蘇るって評判なのよ。
さすがCGだね。
私も一つくださいと佳奈が言っている。
さあ、腹ごしらえも済んだし
さらに奥地へ出発だ。
日暮までにはつきたいから急ごう。
解説)
続きます。
Jun 04, 2024
川をさかのぼる
朝の強い日差しが
密林を照らしている。
村の宿に宿泊した4人は
出発することにした。
とりあえず小舟を調達して
行けるところまで川を遡ろう。
ちょうど良さそうなのがありますね。
天気が良くて
今日はジャングルクルーズ日和。
この川にはワニがいるんですか?
どこかにいるはずだよ。
その辺にいるかも。
などと話している。
聴き慣れない野鳥の声を聴きながら
舟はどんどん上流へと進み。
古びた船着場のようなところに
到着した。
ここからいよいよ徒歩だよ。
もう上流なので水深が浅いんだ。
とブラッドが言っている。
ほんとだ。
ここなんか膝までしかありませんよ。
ワニ見たかったなあ。
などと話している。
もうすぐ湖に着くはずだ。
この先、急流で足場も悪いし、
川は蛇行してるから、
ジャングルを抜けて行こう。
解説)続きます。
Jun 03, 2024
ジャングルまで
空港にはドルフィンの
レンタルジープも搬出されていた。
すでに荷物類もまとめて載せてある。
一行はジャングルの近くの村を目指して
出発した。
しばらく砂漠地帯を走り続けると。
やがて行手にジャングルが見えてきた。
ジープはジャングルに間近な
村に到着した。
ここからは徒歩だよ。
と言っている。
起伏もあって大変そうですね。
あそこを越えてから、かなりの道のりなんだ。
なんと言っても地図にも記載されていない
小さな集落だからね。
でも僕とブラッドは一度行ったことがある。
川筋に沿って行って。
小さな湖に辿り着けば、
さらにその先の山の麓に集落があるんだ。
ロマンだなあ。
そうでしょうか。
ここは見晴らしがいいわね。
それっぽい雰囲気が出てるわ。
今日はこの村で休息して、
明朝出発だ。
などと話している。
解説)
続きます。
Jun 02, 2024
空の旅路
調査チームを乗せた
CGの専用輸送機は飛行場を発進した。
4人は貨物と一緒に搭乗している。
これみんな武器なの?
中身は知らない方がいいわよ。
などと話している。
輸送機は雲海の上を飛び
時間経過が省略されて、
あっという間に。
海の色が変わって、陸が見える。
もうアフリカね。
と麻生久美子が言っている。
大きな都市がある。
行くのはもっと奥地よ。
輸送機は広大な砂漠を内陸に向かい。
やがて某国の飛行場が見えてきた。
無事に着陸している。
輸送機からは他の軍用車両も
下ろしている。
佳奈の研修のリーダーだった
如月が久美子を迎えにきていた。
久美子たちは、
任務に戻るようだ。
解説)
生成AIの画像をベースに合成して、
遊ぶエピソードの始まりです。
Jun 01, 2024
5月のコンテストの発表
広場は今朝も賑わっている。
爽やかな朝の光を浴びて
服を着替えた田上うたが、
珍しく歌を歌っている。
キャサリンが聞き惚れている。
広場にたまきと来ていたエレナは
舞に見つめられていた。
駒井今子もおめかししていた。
アベルにそのライオンかわいいね
と言われている。
ベーカリーでは審査会議が行われていた。
今月も新規の応募者が少ないわね。
着替えしてる人はいるんだけど。
あのブラッドっていう人、
探検家スタイルが似合っていたけど、
アフリカに行っちゃったしねー。
審査が難航してるなら、
私のおすすめは。と舞が言っている。
観光の人ですけど、
月末に登録したみたいです。
知ってる女優さんにちょっと似てるの。
じゃあその人に。
みなさん。
5月のコスプレコンテストの
優勝者を発表します。
厳正中立な審査の結果、
優勝したのは観光でいらっしゃった
エレナさんです。
とルビーがアナウンスしている。
まさか私が?
こうなると思った。
新規の登録者って
今月はあなたしかいないのよ。
とたまきが言っている。
エレナは万雷の拍手と歓声を浴びている。
嬉しいけど、私旅行中なので、
トロフィはとても持っていけないわ。
大丈夫です。表彰式は形式的なもので、
トロフィはドルフィンでお預かりしますので。
舞がちょっと似ていると
言っていた女優さんというのは、
エステラ・ウォーレンのことだった。
広場の賑わいをよそに、
ベランダではナディアとマヤが
話していた。
広場で、男の人から、
あなたに間違えられたの。
あとでマンゴー亭のアンナから、
ブラッドっていう探検家だって聞いたわ。
ああ、ブラッドね。
私の研究所時代の友達なんだけど、
CGに転職してからずっと会ってなかったの。
この町に来てたなんて懐かしいなあ。
まだ恋人ってわけじゃないのね。
でも運命が決まってるなんて
なんだか不思議。
解説)
あまり似てないのですが、
エレナのヘッドは、元々
エステラ・ウォーレンをモデルに制作され、
「PLANET OF THE APES/猿の惑星」(2001)
出演時のデイナの扮装で
2001年にハズブロから発売されたものでした。