Feb 16, 2025
Feb 15, 2025
広場での会話など
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アイスはマンゴー亭から
広場に出てきた。
もう屋台も片付けられて、
春節シーズンが終わってたんだ。
いつも見るマンネリ風景だけど、
微妙にすっきりしてるなあ。
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あらアイス。
相変わらず毎日行ったり来たりしてるのね。
アイスは宇宙ステーションに行ったことや、
そこで艦長のメイズから、
トラブル発生時の仲介役を頼まれたことなどを
ルビーに矢継ぎ早に話した。
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それでメイズに、移動用に一機の円盤を
使っていいって言われたんだけど、
紹介されたその円盤の専属の操縦士が、
元米軍のエースパイロットだった
サニーっていうサイボーグの人だったの。
ルビーは米軍の関係者にも友達が多いでしょ。
彼女の名前知ってる?
サニー?
サニーならもう随分前に墜落事故で死んだはずよ。
確か遺体は回収できなかったって聞いてたけど。
瀕死の状態で宇宙連合に回収されて
サイボーグに改造されたっていう話。
それが本当なら素晴らしいことね。
てっきり事故で亡くなったとばかり思ってた。
生きていると知ったらきっと少佐も喜ぶわ。
私と少佐とサニーとは気が合う仲間で、
三人でヘリに乗って遊覧飛行をしたりした。
もうはるか昔の思い出だけど。
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だったら少佐にも教えてあげようか?
さすがにそれはまずいんじゃない?
彼女は信頼できる人だけど、
レプテュリアンの存在や、
宇宙連合や円盤のことなど、
背景を説明しなくちゃならなくなる。
やっぱりそうね。
せめて前もってメイズにお伺いを立てないと。
でもルビーはサニーに会いたいでしょう。
それは勿論よ。
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えー。アフリカに行っちゃうんですか。
いいなあ。
佳奈、すぐに戻ってくるわよ。
フレイムやスーザンと留守番してて。
何かあれば翠やマヤに連絡してね。
わかりました。
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アイスとルビーは、マンゴー亭に行って、
急遽二人でアフリカに行くことを話した。
というわけでヴィヴィアン。
悪いけど、ノヴァさんのエスコートをお願い。
ついでにホテルまで送ってもらえないかしら?
わかったわ。
私もそろそろホテルに顔出そうと思ってたところ。
なんか色々起きてるみたいだし。
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ということで、肉まんを食べ終えた二人は
アイスたちと別れて広場にやってきた。
なかなか賑やかな楽曲ですね。
そうでしょう。
この広場には音楽が絶えないの。
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あそこにいるのはロボット。
ロボットに抱かれて叫んでいるのは、
異界のドラゴンのようですね。
そうなの。迷いの森にあった卵を
盗んできた人がいて、
その卵から孵化したドラゴンなのよ。
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あそこにいる縞模様の服を着た子供も、
精巧なロボットのようですね。
あんな高度な技術がこの星にあったかな。
あの子はミューって言って、
元はシェリー博士が作ったロボット。
でもエネルギー源にしている
この土地の水のせいで
人工知能が自己進化を遂げて
今では人間の理解を超えてるっていう話よ。
私はあまり興味がないけど。
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あそこの和服姿の女性も
人間じゃない。魔族でもない。
何か精霊が変化しているようですね。
あの人は、駒井魔子って言って、
狐の精霊ね。この土地で何百年か生きてきたらしい。
私はあまり興味ないけど。
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みんな迷いの森やここの土地柄に関連してますね。
ハリーさんがこの町に惹かれるようになった
気持ちがわかるような気がします。
そうなの?
あなたは魔族に関心があるんでしょう。
だったら、フミコのことはご存知?
ええ、地球オタクの間ではかなり有名ですよ。
あなたが蘇生させたとか。
ええ。彼女をご紹介しましょうか。
それは願ってもない。
解説)
続きます。
墜落事故前のサニーは、
2007年8月31日「基地のスナップ」
2007年9月5日「ヘリコプター」
に登場しています。
Feb 14, 2025
またまた町へ
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今朝も日本晴れ。
じゃなくて、
アフリカ晴れっていうのかしら。
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アイスが部屋を出てフロントに行くと、
ノヴァに出会った。
おはよー。
アイスさん。コーヒーでもどうです?
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二人は食堂に行った。
この星の飲み物も飲まれるんですか。
ええ。昨日は特別。
郷にいれば郷に従えですよ。
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アイスさん、今日のご予定は?
特にないですけど、昨日起きたことを、
友人のルビーには伝えておこうと思って、
一旦町に戻ろうかなと思ってますけど。
だったら、もしよろしければ、
一緒に連れて行ってもらえませんか。
昨夜夕食の時にハリー夫妻と話したんですが、
魔族のハリーさんがとどまりたくなったという町に
行ってみたくなったんです。
ノヴァさんは、魔族や魔法に関心があるのね。
あなたなら、見かけも人間そっくりだから、
全然問題なさそう。
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二人がホテルを出ると、
エレナと出会った。
今日はどちらへ。
なんでも露天風呂が出来ったっていうんで、
一風呂浴びに行こうかなと思ってるの。
マリアが案内してくれるって。
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なんだか平和ですね。
私だけ毎日行ったり来たりしてるみたい。
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時は省略するかのように流れ、
二人は鏡の扉を使ってバー・デジャに現れた。
また新しいお客様かしら。
あら、地球外生命体の方のようね。
私はヴィヴィアン。どうぞよろしく。
ヴィヴィアンさんですか。私はノヴァと言います。
ご両親には昨日ホテルでお目にかかりました。
お嬢様のお噂も。
そーなの。
あ、二人とも朝ごはん食べた?
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三人は階下のマンゴー亭で肉まんを食べることにした。
ふーん。この星の魔族や魔法に興味があるなんて、
ずいぶん殊勝な宇宙人なのね。
そうでしょうか。
私ちょっとルビーに話があるので、
ヴィヴィアン、あとよろしくね。
と言ってアイスが席を立った。
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ヴィヴィアンさんは、正確には
もう魔族ではなく悪魔だと聞きましたが、
この星には悪魔という種族もいるんですか?
管理局の局長から悪魔になったと言われただけで、
本当は私も詳しいことは何も知らないのよ。
変わったことは背中に羽根が生えたことや、
魔力や呪力が強大になったことくらいかしら。
この姿は仮のものなの。
あなたもそうみたいね。
う。やはりわかりますか。
解説)
続きます。
Feb 13, 2025
ホテルに戻る
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渓流で水浴びをして体が冷えたら、
ここに浸かるといいかもしれませんよ。
ラジウムでも使いますか?
私は足湯でいいわ。
近くに宿泊施設を建てて、
ホテルの別館にしましょうか。
などと言っている。
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そこに好奇心旺盛の猿たちがやってきた。
ダックはさっそくピピを抱えて
防御姿勢になっている。
アイスが何か話しかけている。
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猿たちはそそくさと去っていった。
何話してたの?
ここにはグリーンマンが来るわよ。
って言っただけ。
グリーンマンってなんですか?
とダックが言った。
このあたりのジャングルの
守護神みたいなものかしら。
本当に来ちゃうと、
彼に覗き見されるわね。
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やがて一行はジャングルを抜けて、
ホテル裏の広場に戻ってきた。
もう夕暮れね。
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ホテルの前では、
ちょうど集落での美術品鑑賞を済ませて
ホテルに戻ってきたフラハとエレナに出会った。
どうだった?
すごく楽しかったわ。
なんだかお腹すいちゃった。
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ホテルの食堂で
夕食を摂ることになった。
エレナを案内してくれたフラハも
招待されている。
集落の人はホテル利用しないのね。
できたばかりだし、
ホテルがあることも知らないんじゃないかな。
集落の外れのジャングルの中だし。
それに知っても利用しないと思うよ。
まだまだ魔法生物たちの見かけに偏見もあるし。
僕らにとっては好都合ですね。
そういうことも見越して
リザードたちがホテルの利用を考えたのよ。
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別のテーブルでは、
ハリー夫妻とマリアが、
ノヴァと夕食を摂っていた。
こちらの話題はもっぱら魔族のことのようだ。
ハリーさん。あなたは魔術劇場という建物を、
世界各国の都市に出没させて、
世界中を巡回していたそうですね。
何百年続けたかかな。数年前までのことだけどね。
今や私たち魔族は絶滅危惧種で、
魔術や魔法そのものの存在も迷信にされている。
世界に散り散りになっている仲間を探すためや、
ちょっとした啓蒙を兼ねて始めたことだよ。
一応表向きの私の職業は
超常現象の研究家ということでね。
でも数年前から、今の場所に落ちついているんだ。
心境の変化ですか?
町の近くに「迷いの森」と呼ばれている場所がある。
今では立ち入り禁止になっているのだが、
そこが我々魔族の発祥の地だという言い伝えがある。
近くに住んでみて、とても懐かしさを感じたのだよ。
もっとも君たちの話によるとその場所は。
管理局の本部がある場所で、異空間なんですよ。
面白いな。魔族もそこから来たという伝承があるんですね。
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夕食を済ませ、アイスは部屋に戻ってきた。
今日はいろんなことがあった。
町に来ていたピピとダックがホテルに戻るのを手伝い、
ホテルに来ていたエレナを町に案内してたまきに再会させ、
またアフリカに戻ったと思ったら、ノヴァたちについて、
宇宙ステーションに行って、艦長に仲介役を頼まれて、
帰ってきたらピピたちが温泉を作っていた。
今日だけで、何人の宇宙人と知り合ったのかしら。
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明日は何があるのやら。
それは誰にもわからない、
と誰かが言ったような気がした。
解説)
続きます。
Feb 12, 2025
地球に戻る
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アイスとノヴァとカーミラは
転送装置を使って地球に戻ってきた。
メイズ艦長って、
いつもあの福助みたいな格好してるの?
ええ。彼女は天使族出身なので、
あれで背中の羽根を保護してるっていう噂です。
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やっぱりこの空気がいい感じ。
不純な成分が混じっていますからね。
私は濾過装置を使っています。
などと話している。
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一行がホテルに向かっていると、
木陰にダックの姿が見えた。
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ダックさん、ジャングル観光楽しんでる?
ええ、ちょっとみんなで工作してたんです。
工作?面白そうね。
私も見にってもいいかしら?
どうぞどうぞ。
あ、私たちはホテルに戻るわ。
ハリーに顔見せてあげないと。
とカーミラが言った。
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一行はその場で別れて、
ダックとアイスはジャングルに分け入った。
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ダックはどんどん進んでいく。
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この星のジャングルは
見るものみんな珍しくてシュールですねえ。
そうなの?
まあ私にとっても似たようなものだけど。
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こんなところにも小川が流れてるのね。
すぐこの先ですよ。
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川沿いに円形の浴槽のような
仕切りが作られていた。
シーザーとピピと黒猫のマリアの姿が見える。
これを作っていたんですよ。
いかにも自然な雰囲気でしょう。
これは何?
露天温泉ですよ。
やあアイス。
この長方形の黒っぽい石の形をしているのが、
変換装置で、渓流を濾過して温水にしているんだ。
とピピが言った。
浄水器を兼ねたボイラーみたいなものらしいです。
とシーザーが言った。
解説)
続きます。
Feb 11, 2025
メイズとの会話など
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二人は回廊を歩いていた。
急な提案を受けてくれてありがとう。
あなたにはこの船にも
専用の個室を用意させてもらうから、
自由に使ってね。
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ここは会議室の一つ。
みんな酒場エデンに行っちゃうので、
ここを使うことは滅多にないけど。
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これは。
この船には地球オタクが多いから、
美術館や博物館のようなエリアもあるの。
もちろん地球から盗んできたものではなく、
全て精巧なレプリカよ。
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酒場エデンで映画を上映してたのは見た?
通りすがりにちらっと見ましたが。
地球人の映画の登場人物のコスプレをする連中もいる。
ふーん。
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文明の進化で平和と長寿を手に入れて、
平穏な日々をどう過ごすかという
テーマを抱えている惑星もある。
趣味や芸術の創作に没頭したり
仮想世界を構築して冒険したり
転生を楽しんだり。
もちろん彼らにしてもこの宇宙の謎を
全て解き明かしたわけじゃないから、
フロンティアとして宇宙を旅するものもいる。
そんな彼らにとって
異質な惑星文明との出会いは
色んな意味で刺激になるの。
あなたたちの星の観光に
人気があるのにもそれなりの理由がある。
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なるほどねー。
子供が積み木遊びでもしてるみたいに
見えるんでしょうか。
それはそれぞれでしょうね。
科学文明の進展の様子を見てるのも楽しいけど、
エレナみたいに芸術文化に興味を持つものもいる。
ルースのように自分たちの起源を
探索する目的で来るものもいれば、
シベールやノヴァのように
魔族の持つ精神的な力に興味を持つものもいる。
そういえば同じ地球人とは言っても、
人間と魔族は別種と言えるかもしれないわね。
数千年前に死んで魔法で蘇生した
フミコという魔族の女性が、
あなたに呪力を授けたって聞いたけど。
ええ。確かに。
ヴィヴィアンに蘇生の呪文を伝えた
お礼だって言ってましたけど、
なぜそこまでしてくれたのか謎なんです。
それは普通の人間だったあなたに、やはり
人間と魔族の調停者になって欲しかったんじゃ
ないかしら。
そうなんでしょうか?
なんとなくそんな気がするだけだけど。
あ、随分引き留めちゃったわね。
カーミラさんも一緒なんでしょう。
そろそろ地球に戻ったほうがいいかも。
きっと彼女の旦那様が心配してるわよ。
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アイスがバー・エデンに戻ると
入り口のカウンター席で飲んでいた
鶏そっくりの頭をした男が振り向いた。
お戻りですか。
先ほどはどうも。私はルース。
今あなたの話題で盛り上がってました。
そうなの?
私はアイス、どうぞよろしく。
情報が回るのが早いのね。
この船は地球オタクの巣窟みたいな
所ですからね。
あ、みなさんはまだ奥の席にいらっしゃいますよ。
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アイスは奥の席に向かう途中、
映画を上映している一画にさしかかり、
二人組のロボットに挨拶された。
アイスさんですね。
シーサンとアルニです。どうぞよろしく。
こちらこそ。
あなたたち、映画に出てくるロボットにそっくりね。
この宇宙に実在してたの?
地球オタクの映画ファンに作られたんですよ。
似てるのは外見だけです。
と二体のロボットは言った。
結構気に入ってます。
僕らは以前、地球にも行ったことあります。
事故で円盤が墜落して地球人に助けられたんです。
もう17年も前のことなんですけど。
ふーん。
その話、聞いたことがあるような気がする。
とアイスは言った。
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アイスはみんなのいる奥の席に戻ってきた。
艦長と話していて遅くなっちゃったわ。
そのようね。
こっちではもっぱら魔法の話で盛り上がってた。
カニの卵のような料理がとても美味しいの。
食べすぎると悪夢を見るわよ。
そろそろホテルに戻りますか。
ハリーが心配してるかも。
たぶんアイスが一緒だっていうことは、
ピピが知ってるし、そうでもないと思うけど、
やっぱりあんまり遅くなってもあれだしね。
解説l)
続きます。
Feb 10, 2025
思わぬ要請
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しばらくしてルースがやってきた。
リザードさん、それとそこの金髪の方、
アイスさんですよね。
メイズがちょっと来ていただけないかと。
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メイズって?
宇宙連合の確か天使族出身の女性で
この船の艦長だよ。
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アイスさん。
宇宙ステーションにようこそ。
私は艦長のメイズと言います。
こちらは副艦長のオニール。
および立てしてごめんなさい。
こっちから出向くべきだったけど、
ちょっとあなたにお願いしたいこともあって。
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艦長といっても、
基本はリザードたちのいう地球オタクなの。
私もオニールも地球に行ったことがある。
それもあなたの住む町に。
え、そうなの?
ええ。それはともかく、さっきの幻影には驚いたわ。
あんな鮮やかなイメージは久しぶりに見た。
あ、船内はどこもモニタリングされてるのよ。
さっそく、あなたのことも調べさせてもらったわ。

さて本題に入ると、
レプテュリアンたちが宇宙連合からの観光客用に
地上のホテル利用を許可したのはご存知の通り。
それは私たち宇宙連合にとっても
歓迎すべきことなんだけど、
当然不測のトラブルが発生する可能性もある。
そんな時、あなたの力を借りたいのよ。
力って、何をすればいいんです?
ホテル使用を申請したのはリザードとシベール。
彼らはレプテュリアンの中でも長老で、
特別な存在とみなされている。
何かトラブルがあった時、リザードたちと
協力して解決に当たって欲しいの。
私はただの人間ですよ。
それが重要なのよ。
レプテュリアンは宇宙連合に加入したとはいえ、
これまでの経緯から、あなたたちの地球は
一応レプテュリアンたちの独占的な保護下にある。
そんな環境下で起きるトラブルが
連合内部での対立にまで発展することは避けたいの。
そのためには中立的な立場にいるものの介入が最適なのよ。
リザードはどう思う?
ふむ。それは、いいかもしれないな。
トラブルの処置は当然我々に押し付けられると思っていたが、
地球の住民の側の調停役がいれば何かと役に立ちそうだ。
ただアイスは一般人というわけではなく、
CGという国際的な機密組織にも所属している。
個人的にはアイスが
計り知れぬ呪力を持っているのは認めるが、
そのあたりはどうなのかな。
それも考えたけれど、
その組織は惑星内での平和維持活動が目的で、
私たち宇宙連合と敵対しているわけじゃないし、
存在さえ把握していない。特に問題はないわよ。
どうするかは、もちろんアイス次第だけど。
冒険は好きだから手伝ってもいいわよ。
とあっさりとアイスはいった。
これで決まりね。
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リザードがシベールに話を伝えに行くといって、
席を立つと、三人はメイズに促されて
別室に向かった。
宇宙連合で正式にあなたをスカウトしたいところだけど、
連合加盟の惑星出身者じゃないから残念。
あなたはこれまでCGでミッションをこなしたり、
異世界から侵入した怪物を退治したり、
機転を効かせて探検チームを野生動物から守ったり、
いろんな活躍をしてきたのね。
私のこと、なんでも知ってるのね。
レプテュリアンたちは地球を保護監視してるって、
建前では言っているけど、実態は放置状態。
自分たちで人類との接触を禁じてからは特にね。
いろんな惑星から訪問者が地球に入ってるのよ。
当然、宇宙連合の加盟惑星からも。
だから情報を集めようとすればそれは容易いこと。
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広いドームのような部屋に入ると、
中空に円盤が静止していた。
あなたは一度行ったことのある場所や
誰かの場所の記憶のイメージがあれば
その場所の幻影を生み出したり
鏡の扉を作ってそこに移動できるんでしょう。
でも目的地がいつもそんな場所ばかりとは限らない。
移動手段として、この乗り物を一台提供するわ。
え、これはレプテュリアンたちの。
私、円盤の操縦なんてできないわよ。
パイロットには最適な人がいるの。
元は人間だけど彼女は特別。
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円盤から女性が降下してきた。

彼女はサニー。
元地球の米国空軍のエースパイロットだった。
かって航空機事故で不時着して
瀕死の状態だったところを私たちが救出したのよ。
宇宙連合のおかげで助かったの。
救命措置を受けてサイボーグの体になったけどね。
とサニーが言った。
円盤の操縦は彼女に。
用事があればいつでも呼んでね。キャプテン・アイス。
とアイスに小さな送信機を手渡しながらサニーは言った。
解説)
続きます。
Feb 09, 2025
宇宙ステーションで
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転送装置で宇宙ステーションに来たアイスは、
こっちこっちと言われている。
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このステーションは、
宇宙連合が中継基地のように使っているんです。
元はレプテュリアンたちの母船だったこともあり、
ステーションの運営には彼らが協力しています。
主に地球観光に向かう地球オタク用の船なのですが、
船内にある酒場エデンに行けば、
様々な惑星出身者と交流や情報交換ができるので、
地球観光以外の利用者も多いんですよ。

店に入るとルースとすれ違ったが、
アイスは初対面だったので、
気が付かなかった。
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ノヴァさん、いらっしゃい。
奥の席空いてるかな。
空いてますよ。
どうぞごゆっくり。
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ここのドリンクはきっと
あなた方の口にも合いますよ。
いい感じのお店ね。
外に見えるのは地上の風景みたいだけど。
故郷の星を偲ぶ作り物なんですよ。
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あれ、あそこにいるのは。
リザードじゃない?
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思わずアイスは声をかけに行った。
リザード。
ここに来ていたの?
なんとアイスか。
ノヴァが転送装置を使ったのだな。
私に断りなく地球人を連れて来るなど、
全くリスク管理が。
リザード、そんな規則はないはずでしょ。
と横にいた女性が言った。
ルナシティならともかく、
ここは宇宙連合の管轄している船。
古い転送装置を私たちに提供してくれたことは、
感謝しているけれど、誰を招くかは私たちの自由。
問題が起きれば宇宙連合で処置することになっているはず。
私もサラをお招きしたでしょ。
う。確かにおっしゃる通りですな。
紹介し忘れたが、こちらはカコ。
最初にルースと二人でホテルを利用してもらった人だ。
あ、私はアイスです。
サラもここに来たんですか。
ええ、サラって親切な方ね。
ルースとホテルのロビーにいたら、
何か手伝えないかって言ってくれて、
あちこち案内してもらったの。
お礼にここにお招きしたのよ。
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五人は隣のテーブル席に席を移した。
ノヴァは魔族の使う魔法に興味があるようで、
カーミラに色々と質問している。
魔族は自ら変身したり、
物を生き物に変身させたりできるんでしょう。
私の夫はカエルに変身できるし、
マリアは黒猫に変身できるわ。
でも魔族みんながそんな力を持っているわけじゃない。
物を変身させるのは、もともと物に宿っている力や
意思を利用するので、無から何かを生み出すわけじゃないの。
その意思や力は、
精霊とか妖精とかもののけとか妖怪とか
ところによっては付喪神とか呼ばれてますよね。
ノヴァさんお詳しいのね。
異世界を生み出したり、夢に入り込んだり、
鏡の扉を使って遠距離を移動したりもできるとか。
ノヴァさん、どこまでご存じなのかしら。
私は魔族じゃないけど、
魔族のフミコから呪力を授けてもらったの。
リザード、故郷の星を思い浮かべてみて。
とアイスが言った。
ふむ。
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ああ、これは。
とリザードが叫んだ。
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これは確かレプテュリアンたちの母星の首都ね。
私赴任していたことがあるから覚えてるわ。
とカコが言った。
これはやばい。
やはりリスク管理が。
とリザードは思っている。
この人は普通の人間?
魔族や呪力のことを
考え直さねばとノヴァは思っている。
アイスは特別。
なんでもありみたいなのよね。
とカーミラは思っている。
解説)
続きます。
Feb 08, 2025
またホテルに戻る

アイスとエレナは、
鏡の扉を使ってフラハの家に戻ってきた。
やあフラハ。
おやまた初めてみるお連れさんだね。
宇宙から来たエレナさんっていうんだ。
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エレナさん、今日はこれからどうします?
ここには小さな集落があるのよね。
先住民の民芸品があるかしら。
美術品にはなんでも興味があるの。
集落の長のマークに聞いてみるといいかもしれないな。
あとはクラウド博士たちの家に行けば、
蒐集品がいくつかあるだろう。
クラウド博士もリンも、彼女の父親のハンスも
アフリカの遺跡の研究者で探検家だからね。
フラハ、じゃあエレナさんの案内を頼める?
私はもう一人の訪問者のノヴァっていう人のことが
ちょっと気になってるの。
いいよ、どうせ暇だし。
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美術品の鑑賞が済んだら、
エレナさんをホテルまで送ってきてね。
外泊は禁止になってるみたいなのよ。
ややこしいんだな。
変な取り決めでしょう。
でもそれがレプテュリアンたちの建前なの。
宇宙連合からの訪問客それぞれの
本当の来訪の意図までわからない。
だからなるべく行動を把握しておきたいのよ。
言い分はわかるけどね。
実際には宇宙からお構いなくやってくる者もいる。
私みたいに。と言ってエレナは笑った。
移動手段は、どうやって来るの?
レプテュリアンたちは、
ふつうは円盤で空中から地球観光をさせてくれるけど、
同乗した時に途中で乗り降りさせてもらう。
上に見つかれば規約違反で問題になるけど、
そこは、じゃの道に蛇よ。
自分たちの宇宙船を使ってる惑星人もいるけど、
それは流石にレアケースね。
結構ずさんなんだなー。
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アイスは、フラハたちと別れて、
ホテルに戻ってきた。
良いお天気で。
と言われている。
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ホテルの前では、
ピピがひっくり返っていた。
ど、どうしたの?
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やあ、アイス。
マリアさんに、
黒猫に変身してもらってたんだ。
変身するのみるの面白いねー。
ひっくり返って笑うほど
面白いかしら。
とマリアが言った。
ところでノヴァさん知らない?
今朝二人連れでホテルに来た人の一人。
さっき裏の広場の方にいたよ。
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アイスが広場に行くと、
ノヴァとカーミラが連れ立って歩いていた。
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散歩してたら、
こちらの方と知り合って。
とカーミラが言った。
宇宙から観光にいらっしゃっていて、
色々な惑星の精神文明に興味がおありとか。
朝方お目にかかりましたね。
僕はノヴァ。
カーミラさんは魔族の方なんですってね。
僕は、この星の魔族に以前から興味があって、
これまでも何度かこの星に来ているんですよ。
そーなの。
私はアイス。普通の人間です。
これからお茶でも飲みに行こうと思ってたところです。
よかったらご一緒しませんか。
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あれ、行き先はホテルの食堂じゃないのね。
宇宙ステーションへの転送装置が使えるって
リザードから聞いたので。
そこのエデンのドリンクが美味しいんですよ。
あの転送装置、ノヴァにも使わせているんだ。
結構管理がゆるゆるなのね。
というか、ノヴァは何度か地球に来たことがあるって
言っていた。
彼らの力関係が今ひとつよくわからないけど、
カーミラのガードのためにも一緒に行かなくちゃ。
とアイスは思っている。
解説)
続きます。
Feb 07, 2025
コレクションを見る
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ナオミ、たまき、エレナ、アイスの四人は、
マンゴー亭で肉まんを食べることにした。
またあなたに会えて嬉しいけど、
エレナは普段何してどこに住んでるの?
とたまきが尋ねた。
この星の、というか
文化芸術一般、特に美術に関心があって、
世界中の名所旧跡や美術館などを回ってるのよ。
あなたに会ったのも人形の展示即売会の会場前で、
それから二人でキリコ展に行ったでしょう。
そういえば、そうだったわね。
キリコの絵ってわけわかんないけど面白かった。
私も人形やフィギアは大好き。
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文化や美術や人形に興味があるなら、
すごく詳しい人がいるわ。
マンスフィールドさん。
絵画の蒐集家で人形のコレクターでも有名な人よ。
コンテストの審査員やってて、
たいていベーカリーにいるから私呼んでくる。
とナオミが言った。
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ナオミが呼びに行って、
マンスフィールドさんを連れてきた。
さっそく席についてエレナと話をしている。
その惑星の科学文明の進展の程度と、
芸術文化の高度化には関連はありますが、
それは抽象思考をどう捉えるかによっていて、
本質的な芸術の価値という問題とは言い難く。。。
その惑星と仰るのがよくわかりませんが。
などと言っている。
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マンスフィールドさんの
人形コレクションの一部はドルフィンの2階に
置いてあるんでしょう。
エレナにお見せしたら?
とたまきが言った。
それはいいアイデアね。
家の倉庫に入りきれなくて置かせてもらってるの。
人形や小物集めは趣味なんですけど、
興味がおありなら、ぜひ。
とマンスフィールドさんが言った。
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エレナはドルフィンの2階に案内された。
突然の来客に今子は立ち上がっている。
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本棚の上には
珍しいテディベアや
ドラゴンの置物が並んでいる。
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よくわからない人形や、
骨董品のような象や牛の置物もある。
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この絵はアメディオ・モディリアーニが
1917年に描いた肖像画。
マリー・ローランサンの肖像画と言われているけど、
当時マリーはスペインに亡命中だったので、
記憶や写真をもとに描いたとも言われている作品。
もちろんレプリカですけどね。

これはアルフォンス・ミュシャの
リトグラフ「四季」の「春」をフィギアにしたもの。
「四季」は3種類描かれているけれど、
これは1900年のものね。
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またうちに泊まっていけばいいのに。
とたまきが言っている。
今回はもうホテルとってあるから。
色々見せてもらって楽しかったわ。
マンスフィールドさんに
よろしく伝えておいてね。
今度また遊びに来るわ。
とエレナは言った。
解説)
続きます。
マンスフィールドさんは、
2021年9月27日からの「モディリアーニ展」に、
コレクション作品を貸与出展したので、
展覧会の後半で時々作品解説をしています。
Feb 06, 2025
町に帰る
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アイスとエレナは
フラハの家に向かっていた。
鏡の扉っていうのは、
レプテュリアンたちの転送装置みたいなものなのよ。
そう言われるとわかる気がするわ。
原理はワープ航法みたいなものね。
それはどうなんだか。

フラハは留守のようだ。
不用心のようだけど、ここではいつものこと。
家には何もないから、猿が悪戯しに来るくらいね。
それにあの扉は呪文を唱えないと使えないの。

二人は扉を抜けて、
魔術劇場にあらわれた。
アイスさん、今日は忙しそうですね。
と言われている。

さらに扉を抜けて、二人はデジャの店内に。
アイスはヴィヴィアンに
リザードたちがホテルにやってきたことを
報告している。
私も泊まりに行ってみようかな。
シベールが相変わらず
あなたに会いたがっていたみたいだけど、
もし出会ったら気をつけてね。

二人は店の階段を降りて、
一階のドアから広場に出てきた。
この景色と音楽、懐かしいわ。
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それになんだかいい匂い。
春節の期間中なので、
ラーメン屋台が出ているのよ。
食べていこうか。
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うーん。美味しい。
あなたは嗅覚や味覚も人間と同じなのね。
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今井舞がエレナの姿を見つけて
声をかけてきた。
エレナさんですよね。
また観光にいらっしゃったんですか。
舞さんね。そうなの。
前にお世話になったたまきに
また会いたくなって。
たまきなら、
ちょうどコンテストの参加賞の
チョコの掴み取りに来てますよ。

ベーカリーの外の席で
チョコの掴み取りをしている
たまきとナオミの後ろ姿が見えた。
ぐわっし。というたまきの声が聞こえる。

エレナはたまきたちと再会した。
あなたが去年のコンテストで優勝したのは
6月の初めだったから、8ヶ月ぶりくらいね。
チョコ食べる?
などと話している。

アイス、今朝ホテルに出かけたばかりでしょう、
もう戻ってきたの?
ホテルの宿泊客を案内してるのよ。
宿泊客って、一緒にきたのはエレナじゃない?
去年コンテストで優勝した観光客。
そうみたいだけど、彼女は実は人間じゃなくて、
宇宙からの訪問者だったというわけ。
なんだかよくあるSF小説みたいな話ね。
解説)
続きます。
Feb 05, 2025
エレナのことなど

アイスたちは挨拶を兼ねて、
ハリー夫妻の泊まっている部屋を訪れた。
あいにくカーミラは席を外しているが、
ゆっくり寛いでくれたまえ。
噂では色々聞いていたが、
実際にレプテュリアンと会うのは初めてだな。
私は魔族のハリー。
太古の昔には、私たち魔族は君たちと
随分交流があったと聞いているが。
みんな忘れてしまっていますがね。
私はリザード。そんな大昔から生き永らえている
レプテュリアンの一人ですよ。
私はシベール。私もその一人です。
あなたの娘さんがフミコを蘇生させたと聞いて、
ぜひお会いしてみたいと思っています。
ふむ。娘の呪力に興味がおありのようですね。
このホテルに来る宇宙からの訪問者というのも、
そういう方が多いのかな。
それはもうさまざまです。
宇宙連合に加入している多様な惑星から来るので、
文明の程度も特色も異なるものばかり。
わざわざこんな銀河の辺境の惑星に興味を持つのは、
なんらかの価値を見出しているんでしょうが、
それぞれの意図まではわかりかねますな。
私たちは地球オタクと呼んでいますが。
私たちがこの星を保護観察下に置いて、
宇宙連合からの訪問者を手厚くもてなしているのは、
彼らの行動を監視するという意味もあるのです。

この星を保護観察下に置いているというのは、
あなたたちの勝手な言い分でしょう。
私たちが頼んだわけでも
契約を交わしたわけでもない。
とアイスが言った。
そう言われれば、そうですな。
わははとリザードは笑った。
はるか昔に宇宙のフロンティアだった私たちが、
この星を見つけて住み着いたのです。
人類とは文明の程度がはるかに異なっていましたが、
私たちは侵略も収奪もしなかった。
魔族たちと仲良く暮らしていた時期もあった。
さる事情で人類との接触を自ら禁じるようになりましたが、
今では異文明惑星の侵略から守り、
いつの日か、宇宙連合の一員になれればいいなと、
この星の科学文明の発展を生暖かく見守っているわけです。
それが保護観察下にあるという意味です。
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いいことをしてるつもりなのね。
でも人類が出ていって欲しいっていえば、
この星から立ち退いてくれるのかしら。
ふむ。宇宙連合にその要望が届いて、
連合が妥当だと判断すれば、
私たちも従わざるを得ないかもしれません。
彼らに敵対すると母星ごと滅ぼされてしまう。
だから私たちもトラブルを望まず、
空気のように身を隠しながら、
連合との友好関係にも、
こうして気を配っているのですよ。
いいことを聞いたわ。
シベールさんは、本当はヴィヴィアンに会って、
蘇生の呪法の秘密を知りたいんでしょう。
もしヴィヴィアンに何かあったら、
宇宙連合っていう組織に訴えますからね。
とマリアが言った。
う。それは誤解です。
噂に聞く高名な悪魔と、
お話ししてみたいだけなんですよ。
とシベールが言った。
ふむ、ついでにお聞きしますが、
あの管理局というのはどういうものなんですか。
とハリーが言った。
あれは宇宙連合とは別組織です。
銀河系には宇宙連合の他にも
そういう諸惑星の共同体がいくつかあって、
惑星間戦争を繰り広げている連中もいる。
まるでスターウォーズですな。
あれは面白い映画だ。
あ、失礼。
管理局は、全く異質な組織で、
スタッフは銀河系でスカウトされる
さまざまな惑星の出身者ですが、
その上部の連中は別宇宙から来ていると
言われている。正体不明ですな。
とリザードが言った。
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随分お話しをしたようだ。
そろそろおやつの時間なので
我々は退散します。
とリザードが言った。
あ、アイス。
すまないけど、
ノヴァとエレナのことを頼むよ。
それとなく気に留めてくれればいいんだ。
機嫌よく観光してもらえればいいだけだから。
わかったわ。
ねえ。リザードさん。
おやつっていつも何食べてるの?
とマリアが言った。
それは内緒です。
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リザードたちが去ったあと、
アイスがホテルのフロントに行くと、
ちょうどリンリンと出くわした。
ノヴァさんとエレナさんは?
ノヴァさんは散歩に出ていかれました。
エレナさんは食堂におられるかと。
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アイスが食堂に行くと、
エレナが一人でコーヒーを飲んでいた。
あ、エレナさん、先程はどうも。
あら、アイスさんでしたね。
よかったらそこの席にどうぞ。
ちょうど話し相手が欲しかったところよ。
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やっぱり来てよかった。
この星のコーヒーの味って、
格別ね。
私もコーヒーは中毒気味。
もしかしてエレナさんは
このホテルにコーヒー飲みに来たの?
そんなわけないでしょ。
とエレナは笑った。
私はこの星の文化や芸術に興味があって、
もう何度も来てるの。
見かけがこの星の人間そっくりでしょう。
そういうお忍びの宇宙からの訪問者を
レプテュリアンは嫌がるみたいだけどね。
私はあなたの暮らす町にも行ったことがあるのよ。
たまきっていう人からあなたの噂も聞いていた。
できれば彼女にまた会いたいなあと思ってるの。
町に来たって、いつ頃の事なの?
あなたたちの暦で去年の5月の末のこと。
東京の人形の展示即売会を見に行ったら、
たまきと知り合って、
私の旅行目的だったシュールレアリストの
キリコの展覧会に付き合ってもらったの。
それで仲良くなっちゃって、
あとで彼女の住む町に訪ねていって、
たまきに勧められて、
コンテストに参加したら優勝しちゃった。
なななんと。
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エレナはサングラスを外した。
その頃私はアフリカに遺跡調査に出かけていて、
6月初めのコンテスト発表時に町にはいなかった。
それであなたが優勝したこと全然知らなかったのね。
とアイスが言った。
そのようね。
ここはアフリカでしょ。
たまきやあなたの住む町までかなりかかるかしら。
鏡の扉を使えば瞬時に行けるわよ。
あ、もう一人のノヴァっていう人が
この星に来た目的はわかる?
さあ。よく知らないけど。
彼も相当な地球オタクだって聞いたわ。
この星に何度も来てるらしい。
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アイスは結局、
たまきに会いたいというエレナの願いに
付き合ってあげることにした。
アイスの呪力を使えば、
この場に鏡の扉を出現させることもできるが、
散歩がてらフラハの家の裏庭にある
常設の鏡の扉から町に戻ることにして、
ノヴァのことは、シーザーに頼むことにした。
ジャングルを散歩してるそうだから、
見かけたらそれとなく気にかけるように、
みんなに言っておいてね。
危険がないように。
わかりました。
ホテルの大切なお客さんですからね。
解説)
続きます。
Feb 04, 2025
ノヴァとエレナ
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リザードとアイスが
ホテルのロビーで話している。
フミコからすごい呪力を授かったようじゃないか。
私が枯らした巨木を魔法で再生させたのには驚いたよ。
木を枯らしたのはやりすぎでしょう。
ピピをさらった大きな九官鳥の巣があったからね。
九官鳥を殺したわけじゃないし、
あれでも手心を加えたんだ。
それはともかく、
つい先日、私たちの仲間の合同会議があってね。
宇宙からの訪問客用に、
このホテルを使えることになったんだ。
もう何人も泊まっているんでしょう。
それは既成事実を作るためだよ。
カコやルースが、会議でホテルの安全性を
証言してくれた。
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そこにマリアがやってきた。
こんにちわ。
私はこのホテル・ナジャの
雇われ支配人のマリアと言います。
ああ、黒猫に変身する魔族の娘さんですな。
私はリザード。
これからはこのホテルを、宇宙からの訪問客用に
ちょくちょく利用させてもらうつもりです。
どうぞよろしく。
こちらこそ。
でもこのホテルは去年の暮れにオープンしたばかり。
それにアフリカの広大なジャングルの奥地の、
小さな集落の外れにあります。どうしてここに。
その立地が重要なんですよ。
すごく長くなりますが、ざっと解説しますと、
私たちレプテュリアンは、大昔にこの星に来て、
あなた方魔族と共存共栄していました。
しかしさる事情である時から、この星の人間や魔族と、
直接接触しないことを決めたのです。
また私たちは同時期に宇宙連合という
あなた方のいう国連組織のような共同体に参加しました。
宇宙連合と仲良くやっていくために、
宇宙連合参加惑星からの訪問客を受け入れているわけです。
しかし、今言ったように様々な制約がある。
この星を保護観察しているのは私たちレプテュリアンなので、
私たちが訪問客の案内役を務めるのですが、
それは円盤を使った上空からの観察旅行になります。
しかし当然ながら地上に降りてみたい、
この星の生物と直に交流してみたいという要望も多くてね。
そういう彼らの欲求を満たすモデルケースとして、
私と友人のシベールがこのホテルを選んだのですよ。
すごく辺鄙な場所にあるので、万が一トラブルが起きても、
世界的なニュースになりそうもない。
文明化されていない自然環境がまだふんだんに残されている。
それにここがポイントですが、人間社会では生きづらい
異形の魔法生物たちが運営しているので、
多様な容姿の惑星からの訪問客にとっても馴染みやすい。
それがこのホテルを選んだ理由なのです。
すごく長い解説でしたが、
なんとなく納得できましたわ。
とマリアが言った。
とはいえ、合同会議でホテル利用の暫定的な許可は得ましたが、
とりあえず今は、お試し期間ということで、
問題があれば利用禁止になるという状態です。
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おお、早速訪問客が到着したようですな。
広場にあるっていう岩の転送装置は使わないんですか。
ふむ。装置のことをご存知でしたか。
あれは大昔にリクガメの採取や観察に
使っていたものです。
これからは大いに利用できそうですが、
あの円盤は多分ルナシティからのものです。
私たちの一般的な移動手段なのですよ。
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アイスとリザードとマリアが
出迎えに行くと、
円盤からシベールが降下してきた。
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やあアイス。
去年の10月14日にサラたちの部屋で会って以来だね。
よく日付まで覚えてるのね。
まさか君は覚えていないのか。
日付までは。
人がバラバラ降りてくるわ。
とマリアが言った。
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こちらはエレナと、えーっと。
ああ、僕の名前は発音できないだ。
ノヴァって呼んでよ。
この星の言葉で新星っていう意味だろう。
かっこいいから。
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リザードは、ノヴァたち一行の
チェックインの手続きをしている。
ヴィヴィアンは来てないのかい?
残念でした。
でも、ご両親のハリー夫妻は泊まってるみたいよ。
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ノヴァとエレナは
リンリンに部屋に案内されていった。
彼らは宇宙連合加盟の惑星から
来た人たちだ。
一種の地球マニアや地球ウォッチャーだよ。
エレナは地球人になりすまして、
君たちの住む町に行ったことがあるって
言ってたぞ。
ふーん。どうりでどこかで見た顔だと思ったわ。
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二人がロビーに行くと、
マリアとシベールが話していた。
私とリザードは、
訪問客のガード権ガイドという役職で、
特別に人間や魔族との接触が認められたんだ。
前から接触してたんでしょう。
うんまあ、接触禁止というのは建前だからなあ。
ははは。
なんだか、話がどんどん
ややこしくなっていくみたい。
とアイスは思っている。
解説)
続きます。
Feb 03, 2025
ホテルへ行くアイスたち
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アイスとピピとダックは、
ホテルに帰るために、
鏡の扉を使って魔術劇場に入った。
黒猫がいて、
私も一緒に連れて行って。
と言っている。
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黒猫はダッグのバッグの中に
飛び込んだ。
これはなんですか?
完璧に猫に変身してるけど、
マリアっていう魔族の娘さんよ。
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ピピは驚いている。
変身って、化け猫ですか。
全然不正解。
と猫のマリアは言った。
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一行は鏡の扉を使って
フラハの家の裏庭まで行き、
ジャングルを通って、
ホテル・ナジャに戻ってきた。
マリアはバッグから飛び降りて
走り出している。
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マリアはホテルの入り口で出会った
ドビーと話しているようで、
話し声が聞こえる。
お帰りなさいマリアさん。
ホテルの調子はどう?
順調です。今日もお客さんが来ました。
するとマリアは人間に変身した。
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ホテルまで運んでくれてありがとう。
おかげで楽ちんだったわ。
マリアさんは犬猫猿鳥同盟の
ボスなんですよ。
だからこのホテルのオーナーでもあります。
とドビーが言った。
どちらも名前だけだけどね。
本当のボスはヴィヴィアン。
私は彼女に頼まれてやってるのよ。
とマリアが言った。
宇宙に変身する生物は沢山いますが、
これほど一瞬で見かけが変わるのは珍しいですね。
とピピが言った。
私の生まれつきの特技なの、
魔法はこれしかできないけど。
あ、箒があれば空も飛べるわ。
とマリアが言った。
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アイスは宿泊の手続きをしている。
ダックとピピは食堂に向かうようだ。
そこにリンリンがやってきた。
アイスさん、お久しぶりです。
去年の10月にサラさんとフミコさんとご一緒に、
ホテルの下見に来られて以来ですね。
今日はお泊まりですか。
嬉しいなあ。お部屋にご案内しますよ。
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この前、見せてもらったお部屋ね。
そうですそうです。
サラさんはもう泊まって行かれたんですよ。
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なるほどねえ。
サラもこうしてこの鏡を見たのかしら。
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アイスが部屋を出て、ロビーに行くと、
なんとリザードがソファに座っていた。
おや、アイスじゃないか。
元気にしてたかい。
解説)
続きます。
Feb 02, 2025
エリスの日曜日
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エリスは、春節で賑わう広場に出かけて、
コンテストの参加賞のチョコレートの掴み取りを
行っている。
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ついでに屋台で海鮮ラーメンを食べる。
ふーふー。
寒い中で食べるのがいいのよね。
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エリスは、お土産にマンゴー亭で肉まんを買って
事務所のあるペンギン前に帰って行った。
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ウェイトレスのリズとはるなが立ち話を話していた。
コンテスト優勝おめでとう。
仕事中で行けなかったけどアナウンス聞いたわ。
華やかな花魁姿だったんですってね。
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そうなのよ。あれカツラが大変だったのよ。
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僕もあのコンテストで優勝したことあるんですよ。
バービー人形のケンに似てるっていうのが、
評価のポイントだったそうです。
そう言われれば似てるかも。
あら、エリスじゃない?
お帰りなさい。
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広場で屋台のラーメン食べてきたんだけど、
体が冷えちゃった。
熱々のカフェオレいただける?
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これはお裾分けよ。
と言って、エリスは、チョコ二つと
肉まんを2個、手提げの袋から取り出した。
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今日は掴み取りで、
ガーナのチョコが掴めたの。
それって滅多に混ざってない貴重品ですね。
私掴めたことないわ。
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マンゴー亭の肉まんは美味しいなあ。
私たちはなるべく出歩かないようにしてるから、
久しぶりの味ね。
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いらっしゃればいいのに。
春節で賑やかみたいですよ。
行っても構わないんだけどね。
あまり私用で人間社会と接触しないのが、
一応管理局の決まりなのよ。
それでいつも店内に入らず、
ここが指定席なんですね。
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管理局の人たち。
見かけは私たちと変わらないのに、
色々大変なのね。
解説)
続きます。