May 13, 2025
新しいバーボンハウス

レイチェルたちを迎えて、
バーボンハウスの住人たちが集まっていた。
レイチェルは、アイスとヤビーを紹介して、
わかる人だけわかればいいから。
と言ってハリネが言っていたことを、
おさらいしてみんなに語り聞かせた。
それにしても随分立派な家を建てたのね。
いつか帰ってくると思って、
4人分の部屋も作ったんですよ。
と砲塔型ロボットのコーダが言っている。
犬型ロボットのソーダが、
ソーダソーダと言っている。
4人分の部屋ね。
みんなも会いたいでしょうから、
ツナとナディアを呼んでくるわ。
とアイスが言った。
そんなことできるんですか?
家事用ロボットのバンクは、
ヤビーと話している。
君は元機械軍の作業用ロボットでしょう。
私とよく似ていますね。
僕は手足が伸びるんですよ。
それはすごいなあ。さすが機械軍。
いえ、ミミコが魔法をかけてくれたんです。
それもすごいなあ。

アイスは別室の空いている壁に
呪文を唱えて鏡の扉を作り出した。
私は魔法は信じないように
作られています。
とソーダが言っている。
それは残念ね。

アイスはみすずの家に戻ると、
ツナたちに南の世界で起きたことの
あらましを話した。
ドロレスも来てたのね。
タイミングよくみんな揃ったわ。

なんか都合良すぎる展開だけど。
それはきっと普段の心掛けがいいからよ。
などと言いながら、
一行は鏡の扉に向かった。

一行はバーボンハウスに到着した。
これでメンバー揃い踏みね。
大相撲じゃないんだから。
などとツナが言っている。
天井からぶら下がっているヒゾッコも
お帰りなさいと言っている。

こちらからの家の外観もなかなかでしょう。
山小屋ロッジ風ね。
誰がデザインしたの?
ロボットたちが、
みんなで考えたんですよ。

ジャングルを開墾して、
菜園も再開したんです。

向こうにイリスとコーダがいるわ。
働き者ね。
カブトムシ型ロボットの
ジョンとポールも寄ってきて
お帰りなさいと挨拶している。

レイチェルとナディアは、
舞子に屋根付き通路を案内されていた。
倉庫も再築したんです。

ここも随分立派なのを造ったのね。
中はまだ作りかけで空っぽですが、
メリーやビッグヘッドや
ドーラの寝ぐらにしています。
作業場や資材置き場、
食料の貯蔵庫にもするので、
大きい方がいいんですよ。
することが沢山ありそうね。

私たちがいなくても、
みんな元気で暮らしているようで安心したわ。
元気は元気なんだけど、
地殻変動以来、どうも感じが違うのよ。
さっきの話。
前にいた世界が別世界に移転したって本当なの?
それに近いけど、正確には、
移転してきたのは、精霊のミズハとハリネと、
バーボンハウスの住人だったあなたたちだけ。
地殻変動はミズハの始めた
緑化運動のせいでしょうけど、
でもミズハのおかげで、
みんな消えずに済んだのよ。
あののっぺりした紙のような青空は、
もうみられないのね。
とドロレスが呟いている。
解説)
続きます。
May 12, 2025
ミトラたちとの会話

ヤビーたちの廃屋の庭で、
ミトラと舞子に遭遇したレイチェルたちは、
話し合っていた。
レイチェル。
この方たちは?
と舞子が尋ねている。
アイスとヤビーよ。アイスは古い友達。
ヤビーは元はこの家の住人だったの。
それより、あなたたちはどうしてここに?
しばらく前に大きな地殻変動があったんです。
いつものミズハの仕業だと思うんですが、
そのせいでバーボンハウスも倉庫も、
大地に飲み込まれてしまいました。
行方不明になったシェルの他は、
幸いみんな無事だったんですが、
周辺の森の様子も随分変わってしまいました。
それ以来、復旧作業に取り組み、
今日は家の建て替えや整備が一段落したので、
シェルの捜索を兼ねて森の様子を見にきたんです。
見たことのない廃屋を見つけたので、
屋内を調べていたところです。
とミトラが言った。
ここがあなたたちの暮らす
仮想現実世界だっていうの?
この世界はヤビーたちやミミコのいた
現実の未来世界のはずよ。
どうしてそんなことが。
おっしゃる意味がよくわかりません。
地殻変動で周辺の環境は変わってしまいましたが、
復旧作業も順調に進んでいます。
バーボンハウスもみんなで木造建築に立て直しました。
ご存知のように、木材は豊富ですからね。
いくら樹木を伐採しても、すぐに生えてきますから。
それよりショックだったのは、
転送装置も記憶装置も倉庫ごと失われてしまったこと。
出かけたままのツナとナディアのことが気がかりでした。
レイチェルさんは、
ツナたちの消息をご存知なんでしょうか。
それはもう。
二人とも元気よ。今は夢の世界にいる。
と言ってもにわかに説明するのは無理ね。

アンというAIが仮想現実体験装置を作って、
最初はレイチェルとドロレスがその世界に行き、
その世界の住人であるという設定の
ツナやナディアやあなたたちNPCと知り合った。
そんなふうに私は聞いているの。
とアイスが言った。
その後、アンというAiは、
宇宙人の作った転送装置を入手して改良を加え、
仮想現実世界とだけ行き来できる転送装置に作り替えた。
それでツナやナディアは私たちの世界にやって来た。
ところが、そのAIは、そこにいるヤビーの記憶を
回復する作業をしている途中で変調をきたしてしまった。
今も復旧作業の最中だと思うけど、
転送装置は機能を停止したままで、
仮想現実空間は存在しないはず。
だからNPCのあなたたちも存在しないはずなの。
こうしてここにいますけど。
と、舞子が言った。
だから不思議なのよ。
私たち、調査を終えたので家に戻りますが、
よかったら一緒に来ませんか?
レイチェルに会えたらみんな喜びます。
とミトラが言った。
そうね。私もこの目で確かめてみたい。
とレイチェルが言った。

一行はミトラを先頭に
ジャングルを分けて進んでいく。

しばらくいくと、
ミトラが立ち止まった。
ハリネがいますよ。
ハリネって、あのミズハの使いの
ハリネズミね。
とレイチェルが言った。

やあ、レイチェルじゃないか。
あなたまで、どうしてここに?
とレイチェルが言った。
ふむ。何が起きたか知らないようだね。
私が教えてあげよう。
あのAIが作った仮想現実世界は、
消えてしまったのだよ。
その原因は仮想現実世界の枠組みの中に、
未来の現実世界や異世界の体験データが、
流入して処理できなくなったからだと、
AI自身が言っていた。
世界が消えてしまうと、
そこに住み着いていた夢食いや精霊も消えてしまう。
AIはミズハに、事前に世界の消滅を知らせてくれたんだ。
それでミズハは、別世界に脱出した。
その引越し先に、AIの異常の原因にもなった、
あの仮想現実世界とほとんど環境が変わらない
この世界を選んだのだよ。
この世界でも最終戦争が起きて、
住人は滅び、荒廃したままになっている。
それにこの地域には、森林が増殖するのに最適な
夢見の水が地下に流れているからね。
ミズハはAIに頼まれて、引越しの時に、
一緒にNPCたちを連れてきた。
ミズハは優しいからね。
ミトラも舞子も驚いただろう。
君たちはこの前の地殻変動以来、
別世界にいるのだよ。
それにレイチェルはともかく、
そこの羽根を持った女性と赤いロボット。
君たちは先住民じゃないだろうな。
私はレイチェルの友達のアイス。
今のお話だとAIアンのいる世界の住人よ。
とアイスが言った。
僕は機械軍の作業用ロボットで、仲間たち3人で、
この近くの廃屋でミミコという
魔族の赤ん坊を見つけて世話していました。
とヤビーが言った。
またしても生き残った先住民がいたというわけか。
ミズハに報告しておくよ。
ふむ。ここでレイチェルに出会えたのは驚きだけど、
どうせ魔族の魔法か別の転送装置でも使ったのだろう。
ここはあの仮想現実世界とよく似た未来世界だ。
AIはミズハが引っ越し先にこの世界を選ぶことを、
そしていずれ君たちが再会することも、
予測していたのかもしれないな。
まあ、みんな仲良くすることだ。
また遊びに行くよ。
そういうとハリネは
去っていった。

あのハリネズミはなんなの?
とアイスが言っている。
ミズハっていう樹木の精霊の使いよ。
自分ではミズハの友達だって言ってるけど。
とレイチェルが言った。
もうすぐそこですよ。
そろそろ出発しましょう。
と舞子が言っている。

つきましたよ。
あれが私たちのバーボンハウスです。
見かけが随分変わったわね。
舞子はみんなを呼んでくる。
と言って走り出している。

家から人が出てきた。
ソーダがかけてくる。
バンクとイリスの姿も見える。

レイチェル。戻ってきたのね。
転送装置は倉庫ごとなくなったけど、
いつかまた会えると信じていたわ。
とイリスが言っている。
解説)
続きます。
May 11, 2025
思い出の滝と訪問者

レイチェルとアイスとヤビーは
鏡の扉を使って南の家に出かけたみたい。
天気がいいし、私たちも外出しない?
とフミコが言った。
それならお礼に
お連れしたいところがあるの。
とディアナが言った。
どこどこ?
私とみすずが初めて出会った、
小さな滝の見える場所よ。

四人は散歩に出かけることにした。

あれは何かしら?
気にしなくて大丈夫。

ディアナが振り返って
もうすぐこの先よ。
と言っている。

一行は目的地に到着した。
絶え間ない滝音が聞こえる。

ここで私が水を飲んでいたら、
霧のような水しぶきの中から
みすずが現れたの。
私たちの思い出の場所。
この忘れられた夢の世界の噂を聞いて、
いってみたいと希んでいたら、
ここに来られたのよ。
ずぶ濡れになったけど。
とみすずが言った。
この滝のほとりはこの世界にとって、
神聖な場所なのかもしれないわね。
私もご挨拶をしておくわ。
とフミコが言った。

フミコが両手を広げて
心に浮かぶ呪文を唱えると、
それに応えるように
きれいな虹が立った。

その頃、みすずの家では、
ナディアとツナが話していた。
みんなお出かけか。
留守番もたまにはいいんじゃない?
あ、鏡の扉から、
どなたかいらっしゃいましたよ。
とヤミーが言った。

ドロレスじゃないの。
どうしたの?
研究所でずっとAIのアンの計算処理作業を
手伝っていたんだけど、
ようやく区切りがついたので
あなたたちの行先を聞いて
追いかけてきたのよ。
それで結果は?
残念だけど転送装置は復旧できずに、
データを初期化するしかなかったみたい。
仮想現実の未来世界は消滅してしまったわ。
えー、もう戻れないのか。
でもね。その前にAIのアンが
精霊のミズハにコンタクトをとったのよ。
まもなく仮想の未来世界が消滅することを、
ミズハに教えてあげたの。
その時に、もし別の世界に行くなら、
世界に残されているNPCたちも一緒に、
連れて行って欲しいって頼んだんですって。
ミズハが別世界に連れていってくれれば、
NPCたちもそこで実体化して
私たちみたいに生きられるかもしれないのね。
でもミズハはそんなAIのアンの頼みを
受け入れてくれたのかしら。
もうコンタクトは取れなくなったから、
それはわからない。

ツナはドロレスをロボットたちに
紹介している。
ドロレスは見かけは人間そっくりだけど、
シェリー博士が作った人型ロボットなのよ。
あなたたちと同じ。
へー、ドロレスさんは、
とてもロボットには見えませんねー。
フィギアみたいに見えますけど。
それはおかしな言い方でしょ。
解説)
続きます。
May 10, 2025
南の廃屋へ

翌日の朝。
木陰に机と椅子を出してきて、
レイチェルは「となりの恐竜」を
読んでいる。
恐竜が活躍したのは中生代1億6450万年の間。
三畳紀、ジュラ期、白亜紀の長きに渡っているけど、
この世界で目にする恐竜たちは、
その種が生きていた時代を無視してみんなばらばら。
さすがに夢の中だけあって、
ティラノサウルスとステゴサウルスが
同時代にいるなんて、
実際にはありえない世界なのね。

そこにヤビーがやってきた。
レイチェルさん。ちょっとお話が。

調子が悪いの?
ざっと調べてみたけど、どこも正常よ。
悪いっていうほどじゃないんですが、
こっちの世界に来てから、
いま一つパワーが出ない気がするんです。
原因といえば、
燃料に使う水が変わった位しか、
思いつかないんですが。
だったら向こうに帰って
川の水を補給してみればいいのよ。
水筒も持っているんでしょう。
アイスに掛け合いに行きましょう。
暇だから付き合ってあげるわ。

なにそのポーズ?
了解しました。というポーズです。
今考えたんです。

アイスは九官鳥の羽根の手入れをしていた。
アイスさん、南の世界の家に
戻りたいんですけど。
外にある鏡の扉に呪文をかけてくれませんか?
いいわよ。
ちょうど暇だから私も一緒に行くわ。

鏡の扉って、使用後にその都度
消してしまうこともできるみたいだけど、
ここは便利だから残してあるのね。
アイスは引っ越しの時に使った
鏡の扉に向かって呪文を唱えている。

3人は扉を抜けて、南の世界の、
元ヤビーたちの家にやってきた。
あら、すごい変わりようね。

庭に植物が生い茂っている。
生長するのが早すぎない?
これじゃ、まるで
ミズハが魔法をかけた仮想現実世界みたい。
とレイチェルが言った。
そうなんですか?

近くにあんな山あったかしら。
ずいぶん地形が変わってるみたいですね。
森もひとまわり大きくなってる。

その時、家の中から、
ロボットの姿らしきものが現れた。
あ、あなたたち。
舞子にミトラじゃないの。
どうしてこんなところに。
とレイチェルが驚いて声をあげている。
解説)
続きます。
May 09, 2025
ツナの災難

バナナを運ぶ途中の
ヤミーとすれ違った。
ツナさん。
お散歩ですか。
ちょっとそこまで。

しかし子供のパラサウロロフスが
一頭でジャングルを歩くのは危険だった。
さっそく肉食恐竜のアロサウルスに
目をつけられた。

アロサウルスは
追ってくる。
これはまずい。

追われるまま平坦な草地に出ると、
今度はラプトルの群れに遭遇してしまった。

すると、なんと獲物を横取りされまいと、
アロサウルスが、凶暴なラプトルの群れの前に
立ちはだかった。

しかし果敢に1頭のラプトルが跳躍して、
アロサウルスに飛び乗り、
頭部に噛みついて、背中に鋭い足の爪の
シックル・クロウを食い込ませた。
パラサウロロフスの子供は、
甲高く助けを呼ぶ声をあげている。

アロサウルスは1頭を
振り落として地面に叩きつけたが、
多勢に無勢と悟ると
獲物を諦めて渋々去っていった。
勝ち誇ったラプトルたちは
ツナたちににじり寄ってきた。
ツナはナイフを構えて、
近寄るとその喉を切り裂いちゃうからね。
と言っている。
その時、
低い唸りのような咆哮と共に
草の葉を揺らす地響きが伝わってきた。

パラサウロロフスの母親が
子供の叫び声を聞きつけて来たのだった。
ラプトルたちは俊足で
遁走していった。

湖畔でパラサウロロフスの群れと合流した。
子供と母親が鳴き交わしている。
どうやらツナは信頼されたようだ。

ツナがみすずの家に戻ると、
しばらく前に家に到着していた
アイスたちが待ち受けていた。
なんかすごい叫び声が聞こえたけど、
大丈夫だったの?
と聞かれている。
解説)
続きます。
May 08, 2025
ディアナの変身

二人とも恐竜を見にいっちゃった。
私たちも行ってみる?
とみすずが言った。
それもいいけど、
ディアナの望みを叶えてあげなくちゃ。
あの呪具が必要ね。
とフミコが言った。
ディアナは下の部屋にいるんでしょ。
私がとってくるわ。
とサラが言った。

さて、ディアナさん。
お待たせしちゃったわね。
サラ、その呪具をこちらへ。
うまくいきますように。

呪具を手にしたフミコは
ディアナを見つめて
心に浮かぶ呪文を唱えている。

薄い煙が立ち上ると、
何とディアナが
人間の姿になっていた。
ありがとうございます。
ディアナさん。あなたは精霊。
これからは好きな時に
鹿の姿に戻ることができるわよ。
とフミコが言っている。

嬉しいな、まるで夢見たい。
とみすずが言った。
もちろん夢なのよ。
と言われている。

その頃、ツナとレイチェルは湖の岸辺で、
パラサウロロフスの群れを眺めていた。
思っていたよりずっと大きいわ。
あの頭の鶏冠のようなものの、
内部が複雑な空洞になっていて、
大きな声を反響させているという説があるらしい。
本の受け売りだけど。

気性の穏やかなパラサウロロフスは、
近づいても平然としている。
パラサウロロフスの子供が寄って来た。
ツナはなぜか気に入られたようだ。

大丈夫なの?
喜んでるみたいよ。

遠出しないようにね。
と言われている。
解説)
続きます。
May 07, 2025
思い出の夢食いたち

貝のおやつを食べ終えた5人は、
居間でくつろいでいた。
みずずさん。最初にここに来た時、
「夢食い」っていう言葉、普通の人間の私が、
なぜ知ってるのかって、尋ねたでしょう。
とサラが言った。
ええ。

私の友達でずっと自分の夢の中に住んでいる
メルティっていう子がいるの。
夢を見ている本人はずっと病気で眠り続けているけど、
夢の中で、その子が分身のように暮らしている。
そのメルティの夢の中に、魔族のハリーさんが作った
鏡の扉を使って、何度も遊びに行ったことがあって、
そこに夢食いたちがやってきたのよ。
面白そうなお話ね。
どんな格好してた?
サラがその記憶の夢食いの姿を思い浮かべたら、
私が幻影を映し出しましょう。
とフミコが言った。

最初に来たのは、シュレディンガーという夢食いで、
沢山の猫を率いたライオンの姿をしていた。
彼はメルティが幼い頃飼っていた猫に導かれて、
メルティの夢に入り込んできたの。
シュレディンガーはメルティと仲良くなって、
今も夢の中で一緒に暮らしているわ。

その次に来たのは、サルバドールっていう夢食い。
彼はメルティが現実の世界から夢の中に持ち込んだ
クノップフの絵画に惹かれてやってきた。
サルバドールは芸術家の夢に棲みつく夢食いだったの。
その絵をメルティが描いたと勘違いしたのよ。
シュレディンガーと争いになりかけたけど、
怒ったメルティの一喝で事なきを得て、
改心したサルバドールさんは夢から去っていったわ。

次に来た夢食いは大きなカエルの姿をしていた。
夢の中にできた池に惹かれて来て住み着いたの。
メルティの夢の世界をカエルの楽園にするんだと言って、
大洪水を起こして、一時はパニックになったけど、
助けに来てくれた水の精霊パルの活躍で収った。
大ガエルは、池の底にできた穴から追放されたわ。
なるほど。有名な夢食いばかりね。
百猫の王シュレディンガーに、
夢見る人に才能を授けるシュレディンガー。
それとその大ガエルはカエル大王と呼ばれる、
カエル王女のお父さん。
その子の見てる夢って、
とても住みやすいんじゃないかしら。
と、みすずは言った。

レイチェル。
夢食いは、私たちのいた世界にも来たわね。
とツナが言った。

最初に来たのは、名前も知らないモンスターだった。
でも3頭の手下のモンスターを従えて、
森の昆虫やトカゲたちに暗示をかけて操り、
私たちの世界を征服する気満々だったわ。
別世界からやってきた
ドロレスとレイチェルが協力してくれたので、
なんとか撃退できたけど。

ミズハっていう樹木の精霊もきたわね。
荒廃した世界を緑化する目的で来たって言ってた。
そこが人類が死滅した世界だと思っていたらしいけど、
ツナたち、先住の生存者がいたということを知って、
際限のない森林の増殖を止めてくれた。
ミズハは今でも共存してるはず。
とレイチェルが言った。

みなさん、それぞれすごい遭遇体験をしてるのね。
意外でしょうけど、魔族の私は、夢食いのことは
よく知らないのよ。
私たち魔族のみる夢には、
滅多に夢食いは入り込んでこないから。
とフミコが言った。
魔族の夢に夢食いが侵入したら、
逆にしもべや奴隷にされちゃうって本当?
とみすずが言った。
それは夢見る魔族の人の性格によるわ。
でもそういう話には尾鰭がつく方が、
楽しくていいわね。
とフミコは言った。

夢に現れる夢食いたちは
どこからやって来るんですか?
みすずさんやシノはどこから来たの?
とサラが尋ねた。
夢を渡り歩いている夢食いは、
別の夢から移り住むこともあるけれど、
夢食いたちが集まっている、
異世界の交差点のような特別な場所があるのよ。
そこからは無限の可能性が開けている。
望んだせいか導かれるのか呼ばれるのか、
理由は様々だけど、何かの条件が満たされると、
いつの間にか一つの泡の世界に来ることができる。
そんなふうに私はここに来たの。
あんまり要領を得ないのね。
その前はどこからきたの?
と言われている。
世界が無数にあるとしたら、
どうしてその中のたった一つの世界に
自分が生まれて来たのか、
うまく説明できないのと同じなのよ。
夢食いは死んだ人の
さまよえる魂だっていう人もいる。
別の宇宙で生じた生命体だっていう人もいる。
姿かたちも性質もさまざま。
いずれにしても「夢食い」っていう言葉は、
食欲旺盛なカエルみたいで、
すごく誤解を招きやすい言葉だと思うわ。
とみすずは言った。

あら、何の声かしら。
すごい音量。
遠吠えのように聞こえてくるわ。
あれは、パラサウロロフスの鳴き声よ。
水辺に水を飲みに来ているの。
草を食べる大人しい恐竜よ。
とみすずが言った。
見に行ってみようか。
パラサウロロフスのことなら
「となりの恐竜」に載ってたわ。
実物を見てみたい。
などとツナとレイチェルが話している。
解説)
続きます。
思い出の夢食いたちの姿の画像は、
23年2月26日「メルティの世界で そのよん」から
4月27日「メルティの夢の部屋 そのきゅう」から
24年3月「メルティの世界で その六」から
23年8月22日「迎撃作戦 そのさん」から
9月25日「仮想世界で そのさん」から
それぞれ画像の一部をトリミングして再掲しています。
May 06, 2025
サバンナ地域で

恐竜の遊び相手をさせられてたら、
トリコを見失っちゃった。
アイス、槍はどうしたの?
簡単にへし折られちゃった。
それとちょっと足を痛めちゃって。
あ、あっちの方に。

トリケラトプスの群れのいる方角に
トリコが向かっている。

二人が近づいていくと、
トリコは振り向いて、
何か言いたそうに
ナディアを見て一声吠えた。

トリケラトプスの一群は移動していった。
きっと親が見つかったのね。

やっと哺乳動物を見つけたわ。
もうすぐ森林よ。
それに足を傷めてるんでしょう。
遠出の目的は果たしたし、
シノの小屋の方が近いから、
ひとまずそこを目指しましょう。

ジャングルをしばらく進んで、
二人はシノの小屋の前に到着した。
誰かいるのかしら。
どうでしょう。
シノが帰っていれば。

屋内には、トロフィを飾るために
小屋に戻っていたシノたちがいた。
ようこそ。
アイスさんはここ初めてね。
とシノが言っている。

みんなで今朝からのジャングル散歩の経験を
話し合っている。
湖の周りをまわっていたら、
ティラノサウルスより巨大な恐竜がいたわ。
全長が15メートルくらいあったかしら。
背中にヒレみたいなのがついていた。
それはスピノサウルスよ。
川や湖畔にいて、魚を食べているの。
そこのイラストで見ると、私の槍を折ったのは、
ステゴサウルスね。
アイス、こんなのに立ち向かっていったの?
まさか。
近くを素通りしようとしたんだけど、
向こうの機嫌が悪かったみたいで。

一行は、みすずの家に戻ることにした。
アイスは、シェルニに話しかけられている。
足を怪我してるみたいですね。
乗せていきましょうか。
大丈夫よ、かすり傷だから。
それに私狭いの苦手なの。
シノはトロフィを自慢したくて
棚から取り出してきたようだ。
すごいでしょ。
コンテストで優勝したのなんて初めて。
それはよかったわね。
ルビーたちの審査は予想がつかなくて、
くじに当たるみたいなものなのよ。
それってラッキーということね。
さあ出発しましょう。
とラルゴが言った。
解説)
続きます。
May 05, 2025
おやつとサバンナ

レイチェルは、
みすずの家に帰り着いた。
ああ、レイチェルさん。
岸辺の散歩はいかがでした?
ツナさんが、湖で獲れた貝を
食堂に運んでますよ。

レイチェルが食堂にいくと、
ツナとサラが話していた。
これって食べられるの?
その鉄鍋で茹でてみようよ。
きっと食べられるよ。夢の中だし。
問題は美味しいかどうかね。

やがて貝が茹で上がった。
うん、やっぱり美味しいわ。
お醤油かければ何とかなるものね。
サラは食べないの?
え、二人の感想聞いてからと思って。
あ、フミコやみすずさんも
呼んでくる。

フミコとみすずが話していた。
この鹿はディアナっていうの。
あなたに会わせて欲しいって言われて。
私たちは片言で通じ合える仲だけど、
フミコさんもディアナの言葉がわかるのね?
ええ。
なるほどね。この鹿、ディアナには、
精霊が宿っているみたい。
やっぱり。
私もディアナは特別な存在だって思ってた。
それで、人の姿にして欲しいって言ってる。
え、そんなことできるの?
お話し中ですが、
茹でたての貝、食べてみません?
とサラが言った。

これはオウム貝の祖先のアンモナイトみたい。
アンモナイトって海生生物じゃなかった?
形が似ているだけなのよ。
歯応えがしっかりしてて美味しいわよ。
イカゲソの食感ね。
本当にそうかなあ?

その頃、アイスとナディアはサバンナ地域に到着していた。
アイスは、
視界は開けてるけど、
やっぱり恐竜しか見かけない。
この槍じゃ護身用にならないわ。
とつぶやいている。

ナディアは、草原を進んでいたが、
危険地帯に踏み込んでしまったようだ。
君はまだ小さいから、
見つからないようにしないと。

とうとう見つかってしまった。
絶体絶命。
しかし、この顔見覚えがある。

何だかなあ。
と思っている。
解説)
続きます。
May 04, 2025
アイスとレイチェルの散歩 そのに

アイスたちは
湖を離れて、歩きやすい小川に沿って
さかのぼっていった。

やがて食事中の恐竜の群れに遭遇した。
これは、パキケファロサウルスよ。
草食みたいだから、
無視してくれるといいけど。

何とか群れの間を通り抜けて、
さらに上流に進んでいくと、
何かがぶつかり合うような物音と、
激しい鳴き声が聞こえた。
物音は次第に近づいてくる。
今度は何なの?

アイスたちは思わず近くの樹木の影に
身を寄せた。
なんと斜面からサイカニアが転がってきて
樹木の根本で仰向けになったところに、
追ってきた恐竜が尾の付け根に噛みついている。
サイカニアって硬い鎧と、
強力な尻尾のハンマーを持ってるって、
本に載ってたけど、
ひっくり返されちゃったらお手上げなのね。

ところが意外な展開が待っていた。
新たに二頭のサイカニアが加勢して、
尻尾のハンマーを振り回したので、
恐竜は諦めて退散していったのだった。
こんなこともあるのね。

二人はなおも
深いジャングルに分け入っている。
毎日あれやってるの。
生きていくのは大変ね。
さてこの辺で休憩しましょうか。

あら。何かしら。
突然、一匹のリスが木の上から
レイチェルの肩に飛び降りてきた。

このリス、すごく
人懐っこいわよ。
二人が休憩していると、
ジャングルの奥から、
トリコに乗ったナディアが
やってくるのが見えた。

サバンナ地域まで行く途中なの。
とナディアは言った。
ここから結構あるでしょう。
遠出の散歩よ。
それとね。トリコの卵は洞窟にあったの。
卵を産んだトリコの親も、その近くの
サバンナ地域にいるんじゃないかと思ってね。
じゃあ私も付き合うわ。
まだ行ったことないから、
サバンナの景色を見てみたい。
とアイスが言った。
私はみすずの家に戻る。
このリス、お腹を空かせてるみたいだし。
とレイチェルが言った。
解説)
続きます。
May 03, 2025
アイスとレイチェルの散歩

アイスは丈夫そうな木の枝を見つけ、
ナイフで先端を削り出していた。
これで完成。
そこにレイチェルが、
散歩に誘いにやってきた。
あら長い槍を作ったのね。
護身用よ。大型恐竜には無理でも
ジャングルには普通の野生動物もいるって
言ってたでしょ。

二人が玄関に向かうと、
窓辺でサラが湖を眺めていた。
何見てるの?
湖の対岸にツナたちの姿が見える。
魚をとってるみたいなの。

工作用ロボットたちは湖に入って、
長い手足と吸盤で魚介類を
採取していたのだった。
これって食べられますか?
とヤッピーが言っている。

家を出て二人もその場所に行ってみた。
何してるの?
見ての通り、
ヤミーの頭をまな板代わりにさせてもらって、
魚を捌いてるところよ。
随分とったのね。
色々いるんですけど、
どれも食べられるかどうか不明です。
とヤビーが言っている。

アイスとレイチェルは
湖の岸に沿って散歩してみることにした。
この湖、結構広いね。

しばらく行くと恐竜の群れに遭遇した。
お水を飲みにきてるのね。
これはたしかサイカニア。
今朝読んだ「となりの恐竜」に載ってたわ。
おとなしいみたいだけど、
十分脅威ね。

二人は、なおも岸沿いに進んでいく。

すごいのがいる。
あれはティラノサウルスより巨大よ。
名前は?
わからない。
帰ったら調べるわ。

魚を狙っているみたい。
あの影は普通の魚じゃないわよ。

なんなんでしょ。

一頭がアイスたちに気がついたようだ。

岸辺から離れた方が良さそうね。
そこの小川沿いにジャングルの方へ。
解説)
続きます。
May 02, 2025
シノの散歩

おはよう。
今日もいい天気ね。
恐竜も元気そう。

シェルニさん、おはよ。
乗せてくれるって
言ったの覚えてる?
おはようございます。
もちろん覚えてますよ。

シェルニのボディのフロントカバーが開き、
シノは内部座席に乗り込んで、
外に出てきた。
こういうのやってみたかったの。
このまま私の小屋まで
トロフィを運んでもいいかな。
もちろん。
私もご一緒させてください。
とラルゴが言った。

手足も指示通り動かせるのね。
はい。でも覚えていてください。
私は中の人を保護するために作られた
シェルター用のロボットなので、
時にはシノさんの指示も無視しますから。
とシェルニが言っている。

その時低い地響きが聞こえ、
なんと茂みの向こうから
ティラノサウルスがやってきた。
発見されてしまったようだ。
シノは身を乗り出して銃を構えている。

恐竜はぐんぐん近づいてくる。
シノは威嚇のために小銃を発砲したが、
恐竜は動じないようだ。

恐竜は大きく口を開いて
シェルニを咥え込んだ。
シェルニは自動的にシノの上半身を
内部に引き込んで、
頭部をカプセルで遮蔽している。

シェルニが噛み砕けず、
飲み込めもしなかったので、
恐竜は首を振って
シェルニを草むらに放り出した。

恐竜はしばらくシェルニを
つつき回していたが、
やがて興味を失って去っていった。

なんとかシェルニのおかげで
無事だったわ。
シノさん。その銃じゃ無謀ですよ。
とラルゴが言った。
あ、ラルゴさん。
ずっと草陰で見てたのね。
どうしてランチャーで応戦してくれなかったの。
もし仕留められなかったら、
危ないじゃないですか。
それはそうだけど。

二人はめげずに
シノの小屋に向かっていった。
あの恐竜はなんていう名前なんですか。
あれが有名なティラノサウルスよ。
子供の見る夢にもたまに出てくることがあるの。
そういう夢は見たことないなあ。
ラルゴさんはロボットなんでしょう。
私はなぜか眠ったり、
夢を見ることもあるんですよ。
変わったロボットなのね。
解説)
続きます。
May 01, 2025
4月のコンテストの発表

翌日の広場。
今日はコンテストの優勝者の発表日なので、
参加賞のチョコの掴み取りをするために、
早くも何人かが発表を待っている。

サラもシノと二人で、
代表で参加賞のチョコの掴み取りをするために、
バッグを手にして広場に到着した。

恒例のルビーのアナウンスが始まった。
みなさん。
4月のコンテストの優勝者を発表します。
厳正中立な審査の結果、
優勝したのは、
サラさんのお友達のシノさんです。

え、私が?
おめでとう。
このコンテストに参加する人って、
たいてい町の住民や観光客なんだけど、
先月の新規の登録者は
あなたしかいなかったみたいだから、
こうなると予想はついたけど。

万雷の拍手と歓声に迎えられて、
シノはトロフィを受け取っている。
ありがとうございます。
私の格好って何のコスプレに見えました?
気にしないでいいのよ。

毎回好評のチョコの掴み取りには、
さっそく長蛇の列ができている。

サラも、みすずの家にいる
ツナたちの分の掴み取りも代理で行って、
バッグを景品のチョコで一杯にしていた。
そのトロフィ持って帰るの?
持ち帰っても場所をとるから、
ふつうみんな、形式的に受け取ってから、
ドルフィンで預かってもらうんだけど。
私の小屋に飾るつもりなの。
などと話している。

二人はみすずの家に戻ってきた。
レイチェルとツナが、さっそく
参加賞のチョコを受け取りに来ている。
焦らないで。あとでみんなに均等に分けるから。
あと、それ恐竜のことが書かれた本よ。
ドルフィンの倉庫から借りてきたの。
フリマの時の売れ残り。
ふーん。
「となりの恐竜」か。面白そうね。
ラルゴはトロフィを見て驚いている。

サラはみすずにもチョコを一箱あげた。
甘くて香ばしくて美味しいわ。
この食感は?
赤い箱のチョコには、
クリスピーライスが入っているのよ。
解説)
つづきます。
Apr 30, 2025
新しい家で

この部屋からは湖が見えて
見晴らしがいいでしょう。
風もよく通るし、
ミミコを寝かしつけるのにいいわね。

シェルニがミミコを預けにきた。
運んでくれてどうもありがとう。
このお部屋をミミコ用に
使わせてもらうことになったの。
それはよかったですね。
あ、ナディアさんが、
トリコと一緒に到着したので、
居間にみんなが集まるみたいです。

やがて会合が開かれた。
これで皆さん全員揃ったのね。
私たちの世界にようこそ。
私はこの家に住んでいて、
名前ははみすずと言います。
この家はゲストハウスのようなもので、
観光客用にお部屋が沢山あるので
お好みの部屋を使ってね。

引っ越してきたメンバーが自己紹介した後、
サラが言った。
みすずさんは、夢食いだって聞きましたが、
ここに泊まりにくる観光客っていうのも
みんなそうなんですか。
そうね。隣にいるシノも夢食いだし、
普通の人が来たのは、あなたたちが初めてかも。
サラさんは普通の人のようだけど、
「夢食い」なんていう言葉、よくご存知なのね。
私は普通の暮らしがしたいんですけど、
周りの環境のせいで、情報過多なんですよ。
魔族とか宇宙人とかロボットとか、
変わった知り合いが沢山できちゃって。
あ、普通の暮らしって言えば、
今日でもう4月も終わりなのね。
今月はずっと局長と過ごしていて、
コンテストに参加登録するの忘れてたわ。
なんなのそれ?
私たちの住む町では、
毎月コスプレコンテストが開催されて、
参加登録すると、翌月の優勝者の発表時に、
もれなく参加賞のチョコがもらえるんです。

それって面白そうね。
とシノが言った。
あなたたちは南のジャングルにある
廃屋から引っ越して来たっていう話だけど、
さらに別の世界の町から来た人もいるのね。
色々訳ありなのよ。
私も普通の人間だけど、
さる事情でフミコと同じように魔法が使えるの。
南の世界からここに来たように、
その町と直接行き来できるような、
鏡の扉を作ることができるわ。
サラ、登録にはまだ間に合うから、
一旦帰って登録してきたら?
町の様子も知りたいし。
とアイスが言った。
私もサラさんについていっていいかしら。
とシノが言った。
いろんな世界に興味があるの。

サラはアイスの作る鏡の扉で、
シノを連れて一旦町に戻ることになり、
みんなは持ち込んだ家財道具の整理や
自分の部屋を選ぶために居間を出て行った。
フミコさんは魔族の方なんですね。
ここは魔族の人が見た夢の世界。
魔法の力で消えずに残っているみたいなの。
もしその力に生命が宿っているなら、
あなたが訪れてくれて喜んでいると思うわ。
そうだと私も嬉しいけど。
あ、私、
サラに持ってきて欲しいものがあるんだった。
とフミコが言った。

アイスは屋内で呪文を唱えて扉を出現させている。
これが魔族の作る鏡の扉ってやつね。
とシノが言っている。
サラ、ついでにあの呪具を部屋から
持ってきてくれない?
必要になるかもしれないから。
いいわよ。

サラはシノを連れて、
アイスの作った鏡の扉を抜けて、
自分たちの部屋に戻ってきた。
サラは早速メアリーから、
フミコの呪具を受け取っている。
バッグに入れて持っていくといいわ。
ノヴァさんは?
ここでしばらく帰りを待ってたけど、
さすがに宇宙人は外泊禁止だからって、
アフリカのホテル・ナジャに戻っていったわよ。
シノはジェットに
コーヒー飲みます?
と言われている。

二人は広場に出かけた。
コンテストの参加登録ね。
今月も新規の参加者がいないのよ。
あ、あの人の登録も頼むわ。
シノって言って、私のお友達なの。

サラたちは広場で、肉まんを買いに来ていた
研究所のシェリー博士とばったり出会った。
博士お久しぶり。
ああ、サラ。あなたたちの部屋の扉から、
仮想現実世界によく似た別世界に行くって、
レイチェルとツナが出かけたままなんだけど。
ナディアも一緒で、みんな元気でいますよ。
すごい計算をしてるって聞きましたけど、
研究所のAIの調子はどうなんです?
ちょっと難しいわね。
転送装置はもう使えないかもしれない。
だとするとツナもナディアも
もう元の世界に戻れないっていうことですか。
ミューが残ったNPCたちだけでも、
なんとかしようとしてるみたいだけど。
世界が消去されてしまう前に、
彼らを異世界に送れないか試しているのよ。
そんなことできるのかしら。
確かに私たち夢食いのように、
別の夢の世界に移動できれば、
元いた夢の世界が消滅してしまっても、
そこで存在することはできるわね。
でもAIの作った仮想現実世界なんでしょう。
どうやって脱出するのかしら。
と横で聞いていたシノが言った。

話は尽きなかったけれど、
サラとシノは博士と別れ、
みすずの家に戻ってきた。
サラはフミコに、
頼まれていた呪具を渡している。
ありがとう。
これで強力な呪文が使えるわ。
ヤミーがそのボトルはなんですか。
と訊いている。

あ、それはお醤油よ。
調理に使おうと思って、
冷蔵庫から持ち出してきたの。
さすがサラさんだなあ。
夕食が楽しみね。
などと話している。
解説)
続きます。
Apr 29, 2025
お引越し

みすずの家への引越しが始まった。
ヤミーとヤッピーは、
家財道具を持って鏡の扉に向かっている。

アイスとフミコが話している。
魔法の力で鏡の扉をこれ以上大きくするのは無理ね。
でもこれでシエルニがぎりぎり
通れる大きさになったわ。

トリコは通れないなあ。
ここに置いていくと
野生に戻っちゃうかしら。
私が連れて行くわ。
とナディアが言った。

結局ナディアとトリコを残して、
一行は鏡の扉を抜けて、
みすずの家の近くの森蔭に移動した。
ツナとレイチェルが出迎えている。

早速サラたちはみすずに挨拶している。
ようこそ。
空いてる部屋を自由に使ってね。
あら赤ちゃんが中で寝ているのね。
とシノが言った。
このこはミミコと言います。
私はシェルニ。シェルター型ロボットです。
人を収納できるんだ。
面白そう。あとで乗せてくれない?
いいですよ。

その頃、ナディアは
トリコに跨って出発していた。
一緒に動いた方が安全だからね。
向こうでティラノサウルスに乗ったのが
いい予行練習になったわ。

岩の門をくぐり。

洞窟を抜けて。

恐竜には目もくれず、
サバンナを走り抜ける。

森林地帯を抜けて。

ようやく湖のほとりに出た。

あそこが新しい家。
この世界のどこかには、
君の両親もいるはずよ。
とナディアはトリコに言った。
解説)
続きます。