Jul 15, 2024

フミコの帰郷

a1

鏡の扉が現れたのは、
集落の遺跡の建物の中だった。


a2

鏡をすり抜けてフミコが姿を現した。


a3

続いてアイスもやってきた。
ああ、こんなふうに変わり果てて。
とフミコが言っている。


a4

ジャングルの眺めは変わらない。


a5

あそこの石畳が動いて、
地下へ降りる階段が開いたんだけど。
ええ、その仕掛け覚えてるわ。
戦さの前には仕掛けはなくて、
誰でも自由に降りていけたの。


a6

二人は集落の遺跡の外に出て、
遺跡前の広場を歩いている。

ここには賑やかな市が立ったの。
魔族以外の人たちとの交易も盛んだった。

この城塞都市みたいな造りはどうして。
最初は他の部族からの攻撃を防ぐためだった。
でもこんな風にしたのは、むしろ権威付のためよ。
この牢固で神聖そうな壁のおかげで、
地上での争いはほとんどなくなった。


a7

ちょっとだけ一人にしてね。
と言ってフミコは広場に佇んでいた。
はるか昔を思い出しているようだ。


a8

やがてジャングルの茂みから
グリーンマンが姿を現した。
嬉しそうな顔をしているようにも
見ようと思えば見える。


a9

フミコも気がついて
グリーンマンに近づいていった。
グリーンマンはバッグから
肩飾りを取り出して、
フミコに差し出している。

二人は声に出さない会話をしていた。
グリーンマンの顔には
やはり嬉しさが滲み出ている気がする。


a91

私の頭蓋骨を受け取ってくれて、
魔術師を見つけて私を蘇らせてくれたあなたに、
お礼を言いたいって言ってる。

お礼なんて。
まあよかったよかった。
と照れながらアイスは言った。


a92

やがて周りに動物たちが集まってきた。
フミコはかなり長い間、
アイスには聞き取れない会話をしていた。


a93

二人は鏡の扉のある建物に戻った。

アイスは他の遺跡は見たの?
調査隊は三つのグループに分かれて別行動したからね。
私が見たのはこの集落跡と地下の都だけ。
だったらこれから見てまわりましょう。
どんな様子か知りたいの。
と肩飾りを外したフミコが言った。

うん。ところでさっき
何話してたの?
色々とね。あとで話すわ。



解説)
続きます。
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Jul 14, 2024

フミコとの対話

a1

魔術劇場では
4人が応接室でくつろいでいた。


a2

どうです。その魔術書を読まれた感想は。
出版されたのは随分昔で、
古いものと聞くが。


a3

私からすれば新情報が盛り沢山です。
特に黒表紙の本は薬草のことで為になるわ。
赤い表紙の本はほとんど既知の呪文ばかり。
でもこんなマニュアルがあると便利ですね。
私たちは文字を持たなかったから。

でもすらすらお読みになって。

読むというより感じとるんです。


a4

カメ新聞か。
これ見るの久しぶり。
去年の一月以来かしら。
レプテュリアンが地底世界や
月の裏側で発行している新聞だって、
そのとき管理局のミラが言ってたけど、
私は彼らには直接会ったことがない。
フミコは昔仲良くしてたんでしょう。

いい人たちですよ。
特に私たちと交流していた人たちは。

新聞に書き写してある蘇生の呪文は、
水没した都でリザードが教えてくれたのよ。
彼らは魔族の呪文を聞き取って記録保存していたの。
とアイスが言った。

あなたは地下の都まで行ったのね。
水没した都の一部の再建を、彼らと協力してやっていたの。
私はその途中で死んじゃったんですけど、
あれがどうなったのか。


a5

フミコは立ち上がると、
さっと手を振って、短く呪文を唱えた。

するとそこに扉が現れた。

a6

この館は魔法陣の上に建てられているんですね。
魔法の効力が素晴らしいわ。
この扉は今、私の故郷の集落の跡と繋がっています。
そこに行っても、もう人は誰もいないことはわかっていますが、
そこに私の帰りをずっと待っているものがいるんです。
彼に私が蘇ったことを知らせに行ってきます。


a7

なるほど、お見事な呪文ですな。
鏡の扉は、この魔術劇場の中では、
各部屋の出入り口にも使っています。
あなた専用の部屋もすぐ用意しますから、
お戻りになったら是非自由にお使いください。

重ね重ね、ありがとうございます。
今の私に人間の知り合いはあなた方だけ。
必要なことを済ませたら、
また戻ってきて、お世話になりますわ。
その節はどうぞよろしく。


a8

私も一緒に行っていい?
もちろんよアイス。
こんなふうに呪文を呟いて。

二人は鏡の扉の中に消えていった。


a9

お前、とんでもない人を蘇らせたな。
そうなの?
あの人の特別な能力は、
多分生き物全般に呪力を授けることができることだ。
それって変わった能力なの?
魔族というのは魔法が使えるだけで
体は普通の人間とかわらないだろう。
彼女は普通の人間にも呪力を与えて、
魔族と同等の力を持つようにしてしまえるのさ。
ふーん、そのどこが凄いのか、
いまいちよくわからないけど。
まあいいさ。
くれぐれも仲良くやってくれよ。
喧嘩する理由なんてないよ。
いい人みたいだし。



解説)
続きます。
Posted at 20:29 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 13, 2024

新たな出会いなど

a1

喫茶ペンギンの前で、
バグとミラが話している。
はるなが今日のサービスはバナナです。
と言っている。


a2

今度の波動はすごかったね。
発信源はこのすぐ近くだよ。あんな強力なの、
これまで体感したことがなかった。

この近くっていうことは、
魔族のハリー一家が怪しいわね。

使われたのは前のと同じタイプの蘇生の呪文だ。

情報管理部に戻って、
詳細を確かめてこようか。


a3

でも報告あげても、
局長動くかなあ。
あ、このバナナ甘くておいしいね。
なんだか癖になりそう。


a4

友達の佳奈から、
さっき旅行のお土産にもらったんです。
佳奈はアフリカに行ってたんですよ。
とはるなは嬉しそうに言った。


a5

その頃、魔術劇場に招かれたフミコは、
ハリーに面会していた。

おや、これは新しいお客人かな。
フミコって言います。


a6

アイスは知ってるわよね。
うん。顔馴染みだよ。
フミコはね。大昔にアフリカで生きていた魔族の人、
私が魔法を使って頭蓋骨から蘇生したのよ。

なんとお前、あの蘇生の呪文を唱えたのか。

正確には古代の魔族が使っていた呪文だけどね。
アフリカで栄えていた古代の魔族っていうと、
お父さんのご先祖かもしれないわよね。

ふむ。魔族と言っても色々だからね。
アフリカに魔族たちの都があったという話は聞いているが、
それ以前に、すでに魔族は世界に分散していた。

よくご存知ですね。
おっしゃる通りですわ。
私たちの都の歴史は、
魔族全体の歴史のごく一部なのです。
とフミコは言った。


a7

その頃、マンゴー亭では、
ルビーたちが話していた。

それでラッセル、
これからどうするの。


a8

あそこの遺跡調査はほぼ終わり、
副葬品が入手できれば希少で学術的な価値もあるが、
なにせ所有者が蘇っちゃったからね。
遺跡の存在もとても公表するわけにいかない。
最終的にはクラウドたちと相談して決めることだけど。
僕はまたどこか別の秘境を探すよ。


a9

いくつになっても探検をやめないで、
新たなロマンを求め続けるあなたらしいわね。
それでさっき話していた大きな鳥の羽根の話は?

うん、巨大な鳥の発見にはロマンがあるんだが、
もし魔法や魔族が絡んでいるとすると、
僕の求めるロマンとはちょっと違うんだなあ。


a91

私は一人でも出かけて行って、
マークと一緒にその鳥を探したい。
せっかく友達になれたんだし。
でもマークの集落まではあまりにも遠いのよね。
と佳奈は言った。



解説)
続きます。
Posted at 21:09 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 12, 2024

蘇生の呪術

a1

佳奈がお土産のバナナを
知り合いに配りにいったあと、
二階のデジャから肉まんを食べに
ヴィヴィアンが降りてきた。

おや、アイス。
しばらくぶりね。
休暇で旅行にいってたんだって?
と言っている。


a2

アイスは、
実はあなたに頼みたいことがあるんだけど。
と言って、かいつまんで、
ヴィヴィアンに旅先でのいきさつを説明した。

ふーん。アイスの直々のご指名とあれば、
断るわけにいかないわね。


a3

アイスはヴィヴィアンにカメ新聞を
手渡した。
この呪文、魔法の書に載っているのと
微妙に違うわね。
古代の魔族はこんなふうに唱えていたんだ。

できそう?
微妙な違いだからすぐ暗記できるよ。
でも死者の頭蓋骨の蘇生はやったことがない。
自然の摂理に反する呪法で、
蘇る途中で失敗すると恐ろしいことが起きるから、
滅多なことで使うなって、
ハリーに釘を刺されてるのよ。


a4

でもやっちゃうけど。
というと、
ヴィヴィアンは両手をかざして
呪文を唱え始めた。


a5

あたりに薄い煙がたちのぼり。

しかし頭蓋骨は小刻みに震えただけで、
何も起きなかった。


a6

こうなったら、本気を出すわ。
そういうとヴィヴィアンは
本来の悪魔の姿に変身した。
呪文を唱え指先に思念を集中している。


a7

ヴィヴィアンの目がひときわ輝いている。


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すると、頭蓋骨の輪郭が薄らぎ、
薄い煙の中から女性が現れた。


a9

あなたが蘇らせてくれたのね。
どうもありがとう。
わたしはフミコ。
とその女性は言った。


a91

どういたしまして。
お礼ならそこにいるアイスに言って。
私は頼まれてお手伝いしただけなの。
だけどエネルギー使いすぎて、
流石にもうフラフラよ。
とヴィヴィアンは言った。


a92

アイス。あなたのことは知ってるわ。
あなたも蘇生の呪文を唱えてくれたでしょう。
その時は、あなたたちのいうグリーンマンを
呼び出すためだったけど、
あの時私の意識は目覚めかけていたの。

私呪力や魔力なんて全然ないのよ。

無心の境地は似たようなものなのよ。
だから私はあなたにも呪力を授けられるわ。
グリーンマンにそうしたようにね。


a93

あら、あなたって変幻自在なのね。
そうか。あなたも当然魔族なのね。
でもそんな変身ができるっていうことは。

私は魔族というか、
魔族とヴァンパイアのハイブリッドで生まれて、
それからなぜか悪魔になったのよ。
ヴィヴィアンっていうの。
パワーを使い切ったみたいだし、
普段はこの姿の方が楽だから。

そうだ。父にも紹介したいから、
すぐそこの魔術劇場に来ない?
父は純正魔族だし、あなた方の子孫かもしれない。

喜んで伺うわ。



解説)
続きます。
Posted at 20:27 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 11, 2024

旅行の報告

a1

4人を乗せたジープは、
町の広場に到着した。


a2

随分早かったのね。
とルビーが言っている。


a3

うん色々と事情があってね。
とラッセル。


a4

アイスと佳奈は
竹の飾り付けを見ている。

そういえば七夕だったんだね。
私も短冊に願いごと書きたかったなあ。
と佳奈が言っている。
何書くの?
いつか先輩みたいになりたいって。


a5

3人はルビーに遺跡調査旅行の
報告をしている。

なるほど、色々大変だったのね。
それってお土産?


a6

このキノコはバター炒めが美味しいらしいよ。
現地でも滅多に手に入らないんだってさ。

このバナナは、帰りに寄った村で、
叩き売りしてたの。
現地ではいつでも手に入るんだって。
と佳奈が言った。


a7

それでそれが問題の頭蓋骨ね。
ヴィヴィアンはどこに?
デジャにいると思うよ。
あれ、調査隊って、
もう一人いたんじゃなかった?
ブラッドならドルフィンのベランダに。


a8

ブラッドはベランダで、
マヤたちと話していた。

アフリカの夜空って
澄んでいてとても綺麗なんだ。
天の川がこうさーっと流れててさ。
七夕のこと思い出しちゃった。


a9

私ちょっと用事思い出したから、
席外すわ。
とナディアが言っている。



解説)
続きます。
Posted at 20:23 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 10, 2024

帰り道

a1

翌朝、リンとクラウドと
マークに見送られて、
ラッセルたち4人は帰路についた。


a2

時は省略するかのように流れ、
一行はジャングルを踏み分け、
目印の湖に行き着くと、
さらにジャングルを歩いて
川の上流から小舟ではるばると渓流を下り。


a3

ジャングルと砂漠との境界にある
村に到着したのは夕暮れまじかに
なっていた。


a4

CGのアフリカ支部にいる
久美子に連絡したら、
空港から明日の午後にたつ
輸送機があるって教えてくれたわ。
とアイスが言っている。

今日はこの村で一泊して
明日早朝に出て空港に向かおう。


a5

やがて夕暮れになった。
越えてきたジャングルの彼方に
夕日が沈んでいく。


a6

夜になってアイスと佳奈が
宿の周辺を散歩している。

こういう裸電球って
南国の旅情を感じるのよね。
などと話している。


a7

4人は村の屋台のような簡易食堂で、
夕食を摂ることにした。

マークの見せてくれた鳥の羽根。
大きかったね。
翼の風切羽根のようだったけど、
全体を想像すると巨大すぎる。
普通ありえないよ。
誰かが魔法をかけたんじゃない?
ジャングルの別の場所にも、
フラハみたいな魔法使いが
住んでいるっていうこと?
古代の都が衰退して、離散した魔族たちの
一部は周辺の部族に溶け込んだんだろう。
古代の魔族の末裔がいてもおかしくはない。

確かに翼竜なみの巨大な鳥を
見つけたら大発見だけど。
マークはきっとまたみんなと会いたくて
あの話をしたんだよ。
もっと近いといいのにね。


a8

翌朝、駐車場に停めてあったジープに
4人は乗って村を後にした。


a9

ジープは空港に向けてまっしぐら。
時は矢のように流れていく。


a91

到着した空港には、
CGの支部から出向いてくれた久美子が待っていた。

麻薬とか危ないもの持ってないでしょうね。
CGの専用輸送機に
コネで乗るんだからチェックはないけど、
見つかるとただじゃ済まないわよ。
普通のお土産の他に頭蓋骨が一つ。
それアイスの趣味なの?
と言われている。


a92

かくて一行を乗せた輸送機は
無事空港を発進し、
時はまたしても省略するかのように流れ、
10数時間のフライトののち
一行は帰国したのだった。



解説)
続きます。
Posted at 20:25 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 09, 2024

マークの家に寄る

a1

フラハの家では
佳奈とラッセルが加わって、
話に花が咲いていた。

ハンスさん。
ゴリラのシーザーのことはご存知なんですか。
私がいた時はまだ生まれてなかったな。
私の頭蓋骨を家宝にしてくれていたと、
さっきリンから聞いたが。

ハンスさんはこれからどうされるんです?
生き返ったばかりでまだ何も。

しばらくはクラウドの家で静養よ。

そのうちリンリンにも会いたいが、
自分だけ生き返って、
フミコの蘇生が叶わない以上、
なんだか申し訳ないなあ。

それを聞いていたアイスが、
ラッセルさん、帰りの出発を早めませんか。
と言った。
そうだね。明日にでも出ようか。


a2

なんか大勢で押しかけちゃったみたいで。
いやいやなかなか楽しかったぞ。
何かあればまた来るといい。
アイス君とやら、君は魔術はさっぱりなようだが、
なかなか見所がある。
それ褒めてるんですよね。


a3

ということで一行は
フラハの家を後にすることになった。

マークが、明日帰るんなら、
準備もあるだろうけど、
名残惜しいから、
これから僕の家に遊びに来ないか。
と言っている。
アイスと佳奈は是非行ってみたいわ、
と言っている。


a4

ということで、フラハの家からの帰り道。
マークの家へは、ラッセルも付き合うことになった。
リンはまた変わったトカゲに見とれている。


a5

この辺おかしなトカゲが多いのよね。


a6

蔓草の門の前でリンとハンス親子と別れて
4人はマークの家に向かっている。

佳奈は草陰で何かしているシーザーを見かけた。
シーザーは大きな袋のようなものを
背負っている。


a7

シーザーはマークとも知り合いのようだ。

キノコを採っていたんです。
みなさんにもお分けますよ。
それは嬉しいね。
これはバター炒めにすると美味いんだ。
とマークが言っている。

あなたにお礼にもらった頭蓋骨の人、
蘇生したのよ。ハンスさんっていう人。
と佳奈が言った。
それは良かったですね。
リンリンに会ったら伝えておきます。


a8

ちょっとひらけた場所に
マークの住居はあった。
あれが僕の家だよ。
とマークが言っている。


a9

見通しのいいリビングね。

裏手にジャングルが迫っているんだ。
何もないけどくつろいで。
と言っている。


a91

しばらくして、
マークはそうそうと言って
隣室から大きな羽根を持ってきた。

ラッセルにこれを見せたかったんだ。
僕も君のいろんな秘境探索の話に刺激されてね。
ジャングルの奥地に探検に行ったんだけど、
ある山の山腹で見つけたんだよ。
あの遺跡とは全然別の方角だよ。
だけどこんなに巨大な鳥の羽根って見たことある?


a92

君とブラッドもアイスも佳奈も
あの遺跡の調査を終えて、
ここに来る機会はもうないかもしれないね。
でも、改めていつか
この鳥の調査をするっていうんなら、
その時には僕が案内役で付き合うよ。
とマークは言った。


わかった。ブラッドと相談してみる。
とラッセルが言った。

私はもしフミコの蘇生がうまく行ったら、
フミコを案内してここに戻ってくることになるわ。
その時また会えるわよ。
とアイスは言った。



解説)
続きます。
Posted at 20:23 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 08, 2024

追加の訪問

b1

クラウドの家では、
寝坊した佳奈がアマンダと話している。

先輩たち頭蓋骨持ってもう出かけたのね。
私も気になるから行ってみたいんだけど。
集落の外れのフラハさんの家って、
遠いんですか?
そんなことないですよ。
道順教えましょうか。
だったら僕も気になるから、
散歩がてら付き合うよ。
とコーヒーを飲んでいたラッセルが言った。


b2

二人はフラハの家に向かって行く。
ほぼ一本道なんだね。


b3

その頃、フラハの家では、
ハンスがリンからナイフを借りていた。
お父さん。それどうするの。


b4

さっき鏡を見たら、
髭剃りたくなっちゃって、
と言っている。


b5

隣室では3人が話し込んでいた。

フラハ、これまであまりあの遺跡については、
君と話題にしたことはなかったけど、
君の知っている伝承には、魔術師フミコについての
言い伝えはなかったの?
とマークが言った。

その名前は聞いたことがなかったな。
私が聞いたのはその昔あそこに
魔族たちが暮らしていたということや、
住民たちは鏡の扉を使って自由に
往来していたというようなことだ。
トカゲ人間同士の戦争があって、
それに巻き込まれて人々が去り、
都が衰退して滅んだという話は知らなかったよ。

フラハさんも魔族なんでしょう。
ハリーやマーリンを知っているというし、
それも相当な呪力の持ち主なのは、
ハンスさんをあっさり蘇生させたのを見てもわかる。
そんなあなたが、
フミコのことを知らなかったなんて不思議。

そう思うのも無理はないが、
我々魔族にとっても、あまりにも昔のことだからな。
君たちが聞いたというその名前も、
同時代に生きていたというトカゲ人間だからこそ、
覚えていて、リンリンというチンパンジーにも伝えたのだろう。
それに魔族はもう今では都も国も持たず、
世界中に離散してひっそりと暮らしている。

君たちの話で興味深かったのは、
都の住民だった大部分の魔族は、
争いを逃れて異世界に去ったということだが、
我々魔族に伝わる古い伝承では、
我々はむしろ異世界からやってきたという、
話が残っていることだ。

ああ、その話、ハリーから聞いたことがある。
とアイスが言った。
私たちの暮らす町のすぐ近くに、
迷いの森と呼ばれる地域があって、先祖は、
そこから来たという言い伝えがあるって言ってたわ。
町には迷いの森の泉に湧いた不思議な水も、
地下水として流れ込んでいる。
ハリーはそんな土地柄が気に入って、
魔術劇場ごと移り住んでいるの。

ふうん。それは良いところのようだな。
いつか遊びに行ってみたいものだ。

話が広がりすぎない程度にね。
と誰かが言った。


b6

ラッセルと佳奈は
フラハの家にたどり着いた。
ここね。

ちょうど家の前に出てきたリンが、
二人に気づいた。

つい気になって様子を見に来たんだけど、
蘇生は成功したの?
ええ。父だけは。
フミコの頭蓋骨はだめだった。
あ、今父を呼んでくるわ。


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リンはハンスを呼びに行った。
お父さん、佳奈とラッセルが
来てくれたの。
紹介するから。
あ、その顔。


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さっぱりしたけど、口髭だけ残したのね。
うん。なんとなく今の気分で。
と言っている。


b9

ハンスはラッセルと佳奈に
紹介されている。
リンさんの父君で、
探検家のヨハネスさんですね。
無事のご生還おめでとうございます。
ああ、ありがとう。
そうか、生還か。
まさに文字どうりのようですな。



解説)
続きます。
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Jul 07, 2024

七夕の日

a1

ところ変わって、
ここは町の広場。


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今日は七夕なので
竹が飾り付けられている。


a3

6月のコスプレコンテストは、
優勝者がいなかったんですね。
と今井舞がルビーに訊いている。

常連の応募者は多かったけど、
新規の参加登録者がいなくて、
協議の結果、優勝者なしで来月に持ち越し。
でも優勝者がいなくても参加賞はもらえるから。
みんなそっちがお目当てですからね。


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ナオミがコンテストの参加賞を
もらいにきていた。

今月はチョコパフか。
これ両手で掬っていいんですよね?
うん。


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参加賞をもらってナオミが帰宅すると、
たまきが短冊に願いごとを書いていた。


a6

これ、前にも書いたっけ?
もし人形なれたらどうするの。
人間の真似をして暮らすのよ。
複雑なのね。


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喫茶ペンギンの前でも、
はるながチョコパフをサービスに出していた。
バグとミラが何やら話している。


この前の波動。
どこかで魔族の蘇生の呪文が使われたようだね。
情報管理部は動かないの?

一応局長には伝えたわ。
でも反応はいつも通り。
世界はそこだけじゃないんだから、
って取り合ってもらえなかった。
局長は注意勧告に行くのが面倒なのよ。


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あの呪文が頻繁に使われるようになると、
ここの世界にとっては結構おおごとなんだけどなあ。
成功するには相当な呪力が必要なはずだけど、
そんなことのできる魔術師っていたっけ。
呪文を使った魔術師は特定できているの?


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一応情報管理部でチェックしてみたら、
波動の発生源はアフリカのジャングル。
大昔に魔族の都があった場所の近くね。
使ったのはそこに住む
フラハっていう男性の魔術師らしい。
これまで問題を起こした記録はないんだけど、
数百年は生きてる。


ふーん、そんな人がまだいたんだ。


a91

夜になって、
広場のベランダで、マヤとナディアの親子が
星空の天の川を眺めていた。
年に一度会える遠距離恋愛か。
ロマンチックね。
誰かのこと考えてる?



解説)続きます。
6月2日以降、生成AIで作った画像を使って、
撮影した人物画像と切り貼り合成してましたが、
今回は七夕なので気分を変えて、
久しぶりに情景セットで撮影しました。
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Jul 06, 2024

フラハの家で

a1

夜が明けた。

おはよ。今朝も快晴ね。
おはようございます。
あ、アイスさん。
リンとマークが待ってますよ。


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3人はさっそくフラハの家に向かった。

みんな早起きなのね。
ここでは夜明けとともに。

リンは変わったトカゲに見とれているようだ。


a3

フラハは家の戸口で
3人を出迎えてくれていた。


a4

こちらはリン。
ご存知と思いますが、
この集落でクラウド博士と一緒に遺跡の研究をしている。
今回の遺跡調査にも参加した人です。
とマークはリンをフラハに紹介した。

何度か見かけて顔は知っているが、
直接に対面してお会いするのは初めてだな。
何やら大変なものをバッグにお持ちのようだ。
ようこそ。どうぞよろしく。
とフラハは言った。

今日はそのことで伺ったんです。
実はバッグの中に二つの人の頭蓋骨が入っています。
それらを蘇生させていただけないかと。

なんとそんな難しいことを頼みにきたのか。
まあ、あっちで話を聞こう。
とフラハは言った。


a5

3人は遺跡調査で分かったことのあらましを
口々にフラハに話した。

それでこの頭蓋骨から、ハンスという人物と、
フミコという魔術師を蘇生させろというのか。
動物や物品に宿っている精霊に働きかけて
人間の姿で目覚めさせることはできるが、
頭蓋骨から死者を蘇生させるのは難しいんだぞ。

集落にたまに来る原住民たちの間では、
あなたならできるだろうっていう噂ですよ。
とマークがいい、
強力な魔術師だったらできるかもしれないって
リンリンも言っていました。
とリンも言った。

頼まれて古いトーテムの精霊を
呼び出したりしてやったりしたからな。
噂は尾鰭がつくものだよ。
その場に突然人の姿が現れるので。
同じことのように思えるかもしれないが、
生きている精霊に働きかけるのはわけが違う。
幽冥界に働きかけるわけだから、
強力な呪力と特別な呪文が必要なのだ。


そうその特別な呪文を、
教えてもらってきたって、さっき話したでしょう。
とアイスはかめ新聞をフラハに示した。

そ、そうだったな。
ではやってみるか。


a6

かめ新聞に書き付けられた呪文を暗記してから、
フラハはハンスの頭蓋骨を前にして、
呪文を唱えはじめた。

その槍も必要なんですか。
これは気持ちの問題だよ。


a7

薄い煙が立ち上ると、
頭蓋骨の輪郭が薄れていき
なんとハンスが蘇った。

ここはどこ?
と呟いている。


a8

お父さん、わかる?
リンよ。

駆け寄ったリンから話を聞いたハンスは
記憶を取り戻し、事態が飲み込めたようだった。


a9

フラハは続けて
フミコの頭蓋骨に向かって呪文を唱えたが、
頭蓋骨は微妙に振動しただけで、
何も起こらなかった。

うーむ。反応はするものの。
これは私の呪力不足のせいだろう。


a91

フミコと同時代に生きていた魔族の魔術師でも
蘇らせることができなかったというじゃないか。
それから途方も無い時が経っているし、
相当な呪力の持ち主でないとこれは
不可能だろうな。

分かったわ。
私魔族にも魔法にも詳しくないけど、
一人だけ心当たりがあるの。
とアイスが言った。


ハリーかい。それともマーリンかな。
確かに彼らは優れた魔術師だ。
だがあいつらとは何百年もの付き合いだが、
別の場所に移動できる鏡の扉や、
共同で夢見る異世界を生み出すことができても、
死者を蘇らせたという話は聞いたことがないぞ。

ハリーの養女で、マーリンの実の娘。
この前話したヴィヴィアンっていう悪魔よ。
確信はないけど、彼女ならできそうな気がする。
この頭蓋骨私に預からせて。

そうしてくれると私も嬉しい。
と二人のやりとりを聞いていたハンスが言った。
強力な魔術師を見つけてフミコを蘇らせるというのは
グリューンとの約束だったから。
その約束を果たせなかったまま死んだことが無念で、
私の魂は幽冥界に残されていたのかもしれないな。


娘との再会が叶わなかったのも、
無念だったんでしょう。
も、もちろんそうだよ。



解説)
続きます
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Jul 05, 2024

集落へ帰る

a1

時は省略するかのように流れ、
一行は無事にマークの集落まで帰りついた。


a2

アーネストは、集落の外れにある
自宅兼診療所に帰って行った。
帰りを待っていた部下たちに出迎えられている。


a3

住民たちは集落のリーダーのマークと
遺跡調査隊の無事帰還を喜んでいるようだ。


a4

アンドレアも豹変亭に帰って行った。
ずいぶん早かったのね。
財宝見つかった?
と言われている。


a5

クラウドの家への目印になる
蔓草の門のところまでやってきた。

マークは、リュックを家に置いてから、
また後で伺うよ。
と言って、自宅に帰って行った。


a6

クラウドの家の前では
留守番を頼んでいた女性アマンダが
出迎えてくれた。

早かったんですね。
と言われている。


a7

出かける時ばたばたしてたから、
紹介する暇がなかったけど、
アイスや佳奈は初めてよね。
この人はアマンダって言って、
この集落のいろんな家の手伝いをしてくれてるの。
シーザーからもらった頭蓋骨のこともあったから、
彼女に留守中いてもらったのよ。
どうぞよろしく。
とアマンダは言った。

それ何持ってるんですか。
と佳奈が言った。
これは水牛の角よ。


a8

あてがわれていた自室に戻った佳奈は
リュックを置いて大きく伸びをしている。

あー肩凝った。


a9

みんな自室で一息ついたあと、
やがてマークもやってきて
軽い懇談が始まった。

今晩はアーネストや
アンドレアにもきてもらって
夕食を兼ねた調査隊の打ち上げだ。

調査隊解散しても、アイスたち、
まだしばらくはここに居られるんでしょう?
とリンが言った。

ええ、遺跡調査が早く終わったから時間に余裕はあるの。
帰りもラッセルたちの予定に合わせるわ。
ジャングルを抜けた砂漠との境にある村に、
借りてきたジープが停めてあるから、
それで砂漠を越えて4人で空港まで。
そこで私と佳奈は、久美子に連絡して、
帰りもなんとかCGの輸送機にジープごと載せてもらう。
ラッセルとブラッドもよかったらどうぞ。
とアイスが言った。

それは助かるな。とラッセルが言った。
CGの輸送機だと運賃無料だし、フリーパスだからね。
事故で墜落しても記録に残らない貨物扱いだけどね。


僕も君たちの町まで付き合うよ。
あの町に知り合いがいて、また会いたいんだ。
とブラッドが言った。
マヤのことでしょ。
とアイスが言った。

さっそく遺跡調査の結果の資料の作成や
写真データの整理を始めます。
みなさんの撮影した写真も
参考にしたいのでぜひ協力してください。
とクラウドが言った。

それよりも何よりも父とフミコを蘇らせなくちゃ。
集落の外れに住んでいる魔術師フラハに頼んで。
とリンが言った。

彼とは親しいから、早速明日訪問しましょう。
みんなで押しかけてもなんだし、
リンさんと呪文の書かれた新聞を持っている
アイスさんと3人で行きましょう。
とマークが言った。

私もフラハさんのところに
よくお手伝いに行きます。
あの人私の遠い親戚なんですよ。
と側で聞いていたアマンダが言っている。


a91

やがてアンドレアとアーネストもやってきて
打ち上げの食事会が始まった。
食事は進み、雑談タイムになっている。

リンやクラウドはアフリカ専門みたいだけど、
ラッセルとブラッドは世界中で探検してるんでしょう。
驚きの体験ってあった?
それはいつもあるよ。
でも一番印象的だったのは、君たちの住む町で、
秘宝を守るドラゴンの子供の誕生に遭遇したことかな。
迎えに来た親ドラゴンもはじめて
見た。
ああ、ドラコのことね。
あなたは名うてのトレジャーハンターだったけど、
収集した財宝をみんなドラコに寄贈したんだったわね。
あれは1昨年の7月のことだった。
あのドラゴンの子供も古代の土偶みたいなものを、
守っていたけど、ここの古代遺跡と関係あるのかな?
話を広げすぎないで。
と言われている。


a92

すねの傷はどう?
もう全然大丈夫。
あの傷口から芽吹いた植物って、
花が咲くの?
どうなんだろう。
などと話している。


a93

これ美味しい。なんの肉かしら。
名前は知らない方がいいよ。
と言われている。


a94

みんな流石に疲れているということで、
食事会は早めにお開きになり、
アイスも自室に戻った。

やっぱり使う機会があったわね。
CG特製の弾丸が役にったわ。
と言いながら愛用のコルトの整備をしている。



解説)
続きます。
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Jul 04, 2024

夜明けまで

a1

コウモリたちは寝ぐらに帰っていく。


a2

集落の遺跡前広場の周辺に
集まっていた獣たちも
潮が引くように去って行った。


a3

ジャングルは平穏な静けさを取り戻したようだ。


a4

とつぜん君が奇妙な言葉を唱え始めたので驚いたよ。

あれはリザードが教えてくれた魔族の呪文。
リザードが前に魔族の人たちが
フミコを復活させようとしたことがあったって、
話してたから、グリーンマンもその時立ち会って、
あの呪文を聞いていたはずだと思ったのよ。
それであの呪文を唱えれば、
気になって現れるだろうって思ったの。
それから、
アンドレアの盗んだ副葬品と一緒に
フミコの頭蓋骨も返して、
私には蘇らせる力はないけど呪文は知っている。
もし私たちを殺したらフミコの復活の可能性も
遠のくけど、それでもいいの?
って問いかけたというわけ。

先輩ってすごい。
うまく行ったのはたまたま。
グリーンマンにこっちの意図が通じたからよ。

先輩の呪文でフミコが蘇ったりしたら凄かったのに。
私魔力なんて全然ないから。
でも呪文を唱えていてなんだか変な感じがした。
撫でていた頭蓋骨にちょっと温かみが。
彼女はグリーンマンに影響を与えていたのかもしれないわね。


a5

一同も安堵して焚き火の周りでくつろいでいた。

アンドレアが副葬品を盗んで
隠し場所を秘密にしていたのは問題だったけど、
そういう心理もわからなくもないな。
とブラッドが言った。

僕もラッセルと同じく、
トレジャーハンターとも呼ばれる探検家だからね。
財宝目当ての探索に参加することもある。
彼女は日誌を書いたのがリンの父親の
ハンスさんだということも知らなかったんだろう。
前の探検隊が残した宝のありかを書いた
地図を見つけて、宝を独占したくなるなんて、
よくあることだよ。
それにアンドレアはこの調査隊に
ボランティアで参加してくれた一般人で、
学者ってわけじゃないんだし。

随分彼女の肩を持つのね。

襲われる原因を作ったのは確かだけど、
何も知らなかった彼女は被害者だとも言える。
アンドレアが正直に打ち明けてくれたから、
アイスの機転で助かったんだ。
そうでなければ理由もわからないまま
僕たちは今頃獣たちの夕食になっていたよ。
それはその通りかもしれないわね。


a6

やがて一行は寝支度を始めた。

シュラフ持ってきてたの?
けっこう虫除けになるんだ。
いいなあ。
と言っている。


a7

広場の隅で夜空を見ていた
アンドレアはアイスに声をかけられている。


澄んだ星空は素晴らしいわね。
ええ。
ところであなた、副葬品を全部持ち出して、
ジゾックスの再興資金を調達するつもりだったの?


a8

え、なぜそれを。
私のことを知ってたのね。
アンドレアは身構えている。

はっきり確信したのは、
さっきのあなたの告白を聞いていた時よ。
焚き火にくっきり照らされたあなたの顔を見ていて、
去年の7月、魔王メイヴの復活騒ぎで、
町の広場から逃走したローズの手下だったって、
思い出したの。


a9

ということは、マークの集落で
一緒に豹変亭を経営してるのがボスのローズね。
こんな辺境に落ち延びていたなんて、
国際警察機構やCGにも行方がわからないわけだわ。

ああ、でも本部には報告しない。
CGが介入して来ると、マークの集落や
この遺跡の存在が知られておおごとになるし、
あなたが正直に話してくれたおかげで、
グリーンマンの怒りを宥めることができたんだしね。
ジゾックスを再興して世界征服しようなんて
マーベルコミックの悪役みたいなことは考えずに、
地道に酒場を経営して更生しなさいって、
帰ったらローズに伝えといて。
あなたたちもう二人だけなんでしょ。
とアイスは言った。

足元見られてる気がして悔しいけど、
言ってることはごもっともね。
あなたは命の恩人だし、冷徹な人。
サラたちの部屋で手錠をかけられて以来、
ずっと恨んでたけど、
なんかもうどうでも良くなっちゃった。
とアンドレアは言った。


a91

長かった夜が明け、
象たちが水場に移動している。


a92

佳奈は鳥の声に目を覚ました。

ハヨーオッキーテ、ハヨー、ハヨー。
という鳴き声の後半が、オッハヨー。
というふうにも聞こえる。
あの鳥何の鳥だろう。


a93

ラッセルたちは、出発前に
水没したという都を一目見ておこうと、
遺跡の地下室に降りようとしたが、
入り口は閉じてしまっていた。

何かのはずみで開いたんでが、
何かのはずみで閉じたんでしょうか。
仕掛けを探すのが結構大変です。
と佳奈が言っている。

リザードは、
水没した都には滅多に来ないって言ってたけど、
大切なものがあるとも言ってたからね。
たぶんリザードか彼の仲間が閉じたのよ。
とアイスが言った。

仕方がないか。
ロマンなのに残念だなあ。
とラッセルが言っている。


a94

かくて一行は
マークの集落への帰還の途についたのだった。



解説)
続きます。
Posted at 20:22 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 03, 2024

アイスの決断

b1

本当のことを話してくれてありがとう。
それ渡してくれない?
とアイスは言って、
アンドレアから宝石のついた肩飾りを
受け受け取った。

それどうするんだい。
とラッセルが訊いている。


b2

私に考えがあるの。
一か八かだけど、
やってみるしかないわ。
アーネスト先生。
フミコの頭蓋骨の入ったバッグ持ってる?


b3

ここにあるよ。と言って
アーネストはリュックからバッグを取り出した。
これをどうするんだい?


b4

グリーンマンに返すのよ。
副葬品と一緒にね。

でもどこにも姿がみえないよ。
どこかに潜んでる。
私が呼んでみせるわ。


b5

アイスはジャングルの暗がりに向かって
歩いて行った。
茂みの中から低い豹の唸り声が聞こえる。

アイスはバッグからフミコの頭蓋骨を
取り出すと、その頭を撫でながら、
リザードにもらったかめ新聞を取り出し、
書き写してきた蘇生の呪文を唱え始めた。


b6

しばらくすると、
闇の中からグリーンマンが姿を現した。
アイスの唱える呪文に聴き入っているようだ。
だがアイスは魔術師ではないので、
何も起きない。


b7

やがてグリーンマンが近づいてきたので、
アイスは頭蓋骨をバッグに納め、
グリーンマンに差し出した。
バッグの中には副葬品の肩飾りも入っている。

グリーンマンは中身を確認すると、
じっと考え込んでいるようだった。


b8

やがてグリーンマンは、
バッグの中からフミコの頭蓋骨だけを取り出すと、
アイスに差し出した。
持っていけということのようだ。


b9

グリーンマンは去っていき、
アイスもジャングルの暗がりを後にした。

ふー。
寿命が100年縮まったわ。
と言っている。



解説)
続きます。
Posted at 21:37 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 02, 2024

アンドレアの告白

a1

日が暮れてコウモリが群れをなして飛び交っている。
湖の洞窟から集落跡の遺跡を目指してきているようだ。


a2

アイスとラッセルの報告を聞いた一同は、
夕食を済ませて話し合っていた。
遺跡の歴史の話も興味深かったけれど、
当面の問題はこの遺跡を守っているという
グリーンマンが怒っていて、
我々が極めて危険な状態にあるということだね。
とアーネストが言った。
グリーンマンの怒りがジャングルに生息する
他の獣たちに影響を与えているんじゃないかしら。
父たちの探検隊が全滅したっていうのも、
あちこちで興奮した動物たちに襲われたのかも。
とリンが言った。

とりあえず焚き火を盛大に燃やして、
この側に集まって夜を過ごそう。
銃を持って来てる人は弾丸を装填しておいて。
とマークが言った。

だけど、ラッセルの話だと
グリーンマンには知性があって、
フミコっていう人を復活させるために、
僕たちにわざと彼女の頭蓋骨を発見させて
持ち帰らせようとしたんだろう。
なぜ突然怒って我々を襲う理由があるんだ。
とブラッドが言った。


a3

遺跡前広場の周囲のジャングルには、
猿や蛇類も集まってきていた。


a4

豹の群れも。


a5

牝ライオンたちもいる。


a6

10や20ならならなんとかなるけど、
この数で一挙に来られたら
ちょっと無理ね。
とアイスが言っている。

ずっと黙ってみんなの話を聞いていた
アンドレアが立ち上がって言った。
みなさんにお話ししたいことがあるの。


a7

グリーンマンが怒った原因は
全て私にあるの。
グリーンマンが私のリュックを奪おうとしたのは、
その中にフミコの副葬品が入っていたからなのよ。


a8

アンドレアはリュックを背中から下ろすと、
カバーを開けてリュックの中から
宝石のついた肩飾りを取り出してみせた。

実は私、ドイツ語の読み書きができるの。
山の遺跡で頭蓋骨とバッグを見つけた時、
中にあったスケッチブックの日誌を読んで見たら、
副葬品の隠し場所が書いてあった。
咄嗟の思いつきで、そのページだけを
破いて抜き取ったの。
それから頭蓋骨と遺品を見つけたことを、
ブラッドとアーネストに知らせに行った。


a9

アンドレアは折りたたんだ
紙片をリュックから取り出して見せた。

ここに書いてあった隠し場所は
山の遺跡の広場にある水盤の側だった。
一枚の石畳をずらすと、水を流す設備のある場所に、
沢山の副葬品が押し込んであったわ。
私はアーネストとブラッドが、
遺跡の住居跡を探索している間に
その場所を見つけて、そこから、
この宝石のついた肩飾りを持ち出したのよ。

残りの副葬品は、この遺跡調査が終わった後で、
機会を見て再訪して運び出せばばいいと思ってた。
でもね。その時は本当に何にも知らなかったの。
ラッセルやアイスの話を聞いていたら、
私がこの副葬品を持ち去ろうとしたせいで、
グリーンマンを怒らせたんだって気がついた。

今となっては、
みんな殺されちゃうみたいだから、
どうしようもないんだけど。
この焚き火はまさに風前の灯ね。
死んじゃう前に本当のことを言っておきたかったの。
とアンドレアは言った。



解説)
続きます。
Posted at 20:27 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 01, 2024

ジャングルの異変 そのに

b1

一行はなかば洞穴のような
崖沿いの細道を抜けて、
谷の渓流にたどり着いた。


b2

川沿いに下ると、
目印の古い橋を見つけた。
ここからならルートがわかるね。
と言っている。


b3

川筋に沿って
中流域までやってきた。
もうすぐだよ。


b4

ワニもどきは怒っているようだ。


b5

一行は川を離れて、
集落の遺跡のあるジャングルに向かった。
しかし草むらには蛇が群れている。


b6

寄ってくる動物たちの気配もある。
リンやアンドレアは威嚇のために発砲し、
一行はじりじりと進んでいった。
集落の遺跡まで、もう間近なはずだ。


b7

突然、大蛇が現れて
行手に立ち塞がった。
あれ、猛毒のやつだ。


b8

大蛇は素早い動きで地を這って
アンドレアの体に絡みつき、
倒れたところにさらにもう一匹が。


b9

大蛇は口を大きく開けた。


b91

その時、二発の銃声が轟き、
二匹の蛇の頭は撃ち抜かれていた。


b92

あなたは命の恩人ね。
私たち地下の都の探索を終えたので、
地上の集落の方を再調査する準備をしてた時、
何発も銃声が聞こえたので飛んできたのよ。
とアイスが言っている。

なんか全体にすごい殺気を感じる。
と佳奈が言っている。


b93

一行はなんとか遺跡前の広場まで
たどり着いた。

すぐにでも撤収したいところだが、
もうすぐ日が暮れるし、
ジャングルには尋常でない雰囲気が漂っている。
今日はここでキャンプして出発は明朝にしよう。
とラッセルが言った。

今日僕とリンとクラウドは
人語を解すチンパンジーと出会って、
いろんな話を聞いた。
アイスも水没した都の遺跡を発見して、
トカゲ頭の人間のような生き物から、
遺跡にまつわる話を聞いてきたという。
これからそれらの情報をみんなで共有したいと思う。
なんだかジャングルがざわついていて、
警戒も必要だ。長い夜になるぞ。



解説)続きます。
Posted at 20:23 in n/a | WriteBacks (0) | Edit
July 2024
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