Jun 12, 2024

フラハとの長い会話

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魔術師フラハの家を訪れた
アイスとマークは、
家の中に招かれていた。

お邪魔します。
おや、屋内は見かけより広いですね。
やはりこの家も魔術劇場みたいに
魔法陣の上に建っているんですか?
とアイスが言った。


a2

魔術劇場!!
君はハリーを知っているのか。
ええ、私たちのベーカリーのある広場に、
魔術劇場が出現して、今は隣に住んでるんです。
フラハさんもハリーをご存知で?

ハリーとは古い付き合いだよ。
もっとも彼があの移動式の魔術劇場で
世界中を巡回し始める前のことで、
彼がカーミラと結婚する前のことだから、
もう何百年も会ってないが。

ハリーをご存知なら話は早い。
ハリーは鏡の扉という異世界への出入り口を作れるんです。
実は私もそんな扉を通って、
兵士たちが暮らす村に行ったことがあるんです。
その村は戦時中ながらドイツ軍と米軍兵士が
協力しあって運営している孤立した世界でした。
そして驚いたことに、彼ら住民ののほとんどは
フィギアに宿った精霊が人間に姿を変えていたのです。

ふむふむ。まあ座って話そう。


a3

そこで、お尋ねしたいのは、
マークは砂漠で嵐に遭遇して、戦時中だった世界から、
この世界に来たと言っている。
だとすると鏡の扉と砂漠の嵐は、同じように
異世界との出入り口だと考えてみたんですが、
そんな理解でいいんでしょうか。

難しいことを聞くなー。
砂漠の嵐も鏡の扉も、同じような異世界との通路だが、
砂漠の嵐のような通路は魔術では生み出すことはできない。
あれはこの世界の仕組みに関わるような
別の力が生み出した幽冥界との通路なのだよ。
これまでマークには言ってなかったが、
マークは確かに元はフィギアの精霊だ。
おそらく君が体験した村と同じように、
誰かが想像して生み出した戦争中の世界の中で、
兵士として生きていたのだろう。
そこで時空を越える嵐に巻き込まれたのだが、
直接こちらの世界に運ばれたわけではない。

確かに僕は風ばかり吹いている
砂漠のピラミッドのある世界に辿り着きました。
とマークは言った。


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そこは幽冥界と呼ばれている世界だよ。
そこでまた偶然嵐に遭遇して、マークはこの世界に来たわけだ。
もっとも偶然とは別の力が作用したのかもしれないが。

何かの力が私をここに呼んだということですか。

そうかもしれないし、そうでないかもしれない。
話はまだ終わっていないぞ。

そのような嵐のような出入り口は、
魔法で生むことも無くすこともできないが、
鏡の扉というのは、強力な呪力を持つ魔術師なら、
魔術で生み出すことができるのだ。
もっとも呪力の他に特殊な呪文が必要なのだが。

そういえば、ハリーや、娘のヴィヴィアンが
分厚い本を抱えてるのをみたことがあるわ。
とアイスが言った。


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そうそう、それが呪文の作り方が書かれた
解説本なのだ。赤い表紙の本だ。
黒い表紙の方は薬草や毒草の調合法が書いてある。
それにあいつ娘がいるのか。

ヴィヴィアンは養女だそうだけど、
魔族とヴァンパイアのハイブリッドで、
悪魔に変化した女性よ。
これがお転婆で、やたらにものを大きくしたり、
動物や人形を人間に変えたりするの。

なんと悪魔なのか。
動物や人形に宿っている精霊や
いわゆる「つくも神」を目覚めさせるんだろう。
そういう呪文なら私も知っているぞ。
もちろんその精霊自身の力や意志が肝心で、
なんでも叶うというわけではないが。

そうそう、君たちは谷にある
遺跡を調査しているらしいな。
あの遺跡を作ったのは古代の魔族だよ。
彼らは、鏡の扉を使って自在に
別の地域と行き来していたという伝承がある。
また彼らはこの地域全体に魔法をかけた。
その力は長い年月を経てさすがに薄らいではいるが、
それでも結構変わったことが起こるんだ。
動植物の成長が早かったり、グリーンマンが現れたりね。
そんなわけだから、
遺跡のどこかに呪文を書きつけた
痕跡があるかもしれないな。

その呪文を唱えれば、鏡の扉が現れるっていうこと?
魔力を持たない者が唱えても何も起きないさ。
それにそんなものを作ると、
夢食いたちを呼ぶ恐れもある。


a6

すごく長い話になっちゃったね。
マークはやっぱりフィギアの精霊だったんだ。
昔の世界は僕の前世みたいなものだから、
もう関係ないけどね。

それから昨日の夕食のことだけど、
なぜあれほど肉や野菜や果物が豊富なのか、
疑問だったんだけど、その謎も解けてよかった。
とアイスが言った。


a7

あれあそこの家は、何かのお店?
わりと最近オープンした酒場だよ。
豹変亭っていうんだ。
新しくこの集落に住み着いた二人の女性が
経営してる。今度のみに行こう。


a8

集落はかなり広い地域に跨ってるから、
迷子になりそう。
すぐに慣れるよ。この目印の門を潜れば、
もうすぐクラウドの家だ。


a9

豹変亭では、ローズがアンドレアと話していた。

今、道を横切っていったの、
アイスに似てたわ。
他人の空似じゃないの。
まさか、こんなジャングルの奥地の
辺境の集落にまで、
CGの追手が来るなんて考えられない。


a91

メイヴ復活作戦の時の屈辱は忘れられない。
彼女の顔を見間違えるはずはないわ。
とアンドレアは言っている。

それはともかく、
お客さんが呼んでるわよ。


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テーブルでは、ロドリゲスが、
ビール、あとふた缶ください。
と言っている。


解説)
続きます。

豹変亭のローズと団員(初めてアンドレアと命名)は、
CGに恨みを持つ陰謀組織ジゾックスの残党で、
かって魔王メイヴを復活させようとして、
CGやヴィヴィアンに阻止された過去があります。
このエピソードは、
2023年5月21日に、ローズたちが町に来るところから始まり、
飛び飛びに描かれて、
2023年7月22日のヴィヴィアンと
メイヴとの対決で完結しています。
途中に海賊船長の話や、
仮想現実体験装置の話などが入り込んでいるので、
ストーリーを辿りにくいですが。

逃げ延びたローズたちは、
国際警察機構やCGの追跡から逃れて、
この集落に潜伏していた、
という設定なのでした。
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