Dec 31, 2007

1231

いまこの日記を開いたら1231とあった。そう、今日はもう12月31日だから面白い符合で、なんだか嬉しかった。ミクシィは「あしあと」が気にならない、といえば嘘になる。他のブログもアクセス数が突然増えると、自分が何を書いたのか不思議に思う。
でもここではほとんど見ていなかった。忘れていた、と言っていいかもしれない。マイミクさんに来ていただいて「キリ番」という言葉で「ああ、そうだった」と思い出した。すみれこ日記を読んでくださる方がいるのは有難い。誰も来なかったらそれはそれで寂しいし・・・。
自分が開いてもカウントされるからそれほどたくさんの方々にオープンになっているとは思わないしだからこそ、どこかで安心しながらブログを書いているのかもしれない。
ずいぶんそのまま、「ひとり言」に近く、でも「詩にちかい場所」にいるという嬉しさでこの町を気に入っている。引っ越してきて良かった。 今年も終わるけれど、「良かった」というこのひとことがさいごに書けてラッキーだなと、いま思った。
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Dec 29, 2007

終わった・・・。

どうにか今年も仕事が終わった。。。 「辞めたい」と思っていた事務兼受付の仕事も辞めなかった。 「辞めることないよ」と仕事で知り合った多くのひとに言われたし、 一年かけてやっと仕事も覚えた(たぶんひとの三倍くらいかかるのだ)。 「来年また会おうね~」と知り合ったひとたちと挨拶し、「いろいろ大変だったね、でも大丈夫だよ」と言ってくれる年上の女性もいた。
長年続けている古本屋の手伝いも、今年は今日で終わり。本屋のあるマンションの管理人さん、近くの駐車場の守衛さん、たまにしか顔を見せなくなっても会えばにこやかに世間話をする。

古本屋はお客さんが少なくなって経営は大変そうだけど、わたしには居心地の良い場所。いろんなお客さんがくる。多少コワい人も、アブナイかな?と思う人も来るが。。。成人雑誌のコーナーで長い時間かけて選択してる人もいる(表紙だけで、)。そうしてやっと選んでレジに持ってきた本のタイトルがすごくヘンで「○×◇☆!!」みたいな(とてもここには書けないような)ものでニヤリとしそうになる。けど、笑ったりしたら殺されそうでゼッタイに表情を変えないようにして、なるべく手早く会計処理をしようといつも思う。紙袋に猥褻本が隠されるとレジのおばさん(わたし)はホッとするが買うほうも気持ちは同じかもしれない。
来年はまた3日から仕事に行く。ゆっくり休みたいけど、掃除してない家の中がどうにも落ち着かない。

写真は前の日記に書いた若い詩人、りみさんからのプレゼント。
ピンクのかわいいひつじさん。ふんわりやさしい手触り。。。 071229_2134~0001
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Dec 26, 2007

郵便です

自分宛の郵便物を受け取るのはやはり嬉しい。 
クリスマスシーズンの今日この頃、友達からのカードや手紙が届く。
そこに一緒になって茶色い事務封筒の「腎炎・ ネフローゼ児を守る会」や「チーム龍平通信」がある。
バイトに疲れて帰宅し手紙類を目にしてから、夕食の支度にとりかかる。開封するのはこういう時間になる。
この夏の事故のことはほとんど友達に知らせなかったから、何も知らずに「メリー・クリスマス!」と朗らかに声をかけてくれるのが嬉しかった。その一言は明るい気持ちにしてくれる。

なかでも嬉しかったのは同人誌を送ってくれた若い友人。
彼女、うちのりみさんとはミッドナイトプレスにわたしが投稿していた頃からの知り合い。今回、三角みづ紀さんたちと一緒に「パンチライン」という同人誌を創刊したらしい。開いてみると、写真あり、漫画あり、イラスト満載!で若さが弾けている。楽しみに読もうと思う。 才能ある若いひとたちの作品に接すると元気を分けて貰えるようだ。
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Dec 25, 2007

丁寧に

パソコンが帰ってきた。 
画面が暗くなる事があり、バックライトの故障らしいという事で修理に出していたが、いざ修理にとりかかろうと電源を入れると澄まして明るくしていたらしく「症状が出ないので直せない」と電話で言われていた。まるで仮病を使ってズル休みした子が病院で困っているみたいだった。
暗くなるどころか点滅さえしてわたしを脅かしていたのに、どうしたことか・・・、と思っていたが、暗くなる原因を他から探してそこを改善して貰い、「これで様子を見てください」と返されてきた。

パソコンに疎いまま使っているので「気をつけることはありますか?」と聞いてみた。いくつかやさしく教えて貰って心がけていること。
『丁寧に。。。』つまりそういう当たり前のことをおろそかにしてはダメなのね、ということを習得した。
乱暴に扱った覚えはサラサラないのだけれど、多少思い当たるいくつかがナイでもない。
丁寧に、、、。!
「几帳面でしょ?」と誤解されると慌てて否定する。 雑な性格がこんなところで発覚して、反省した。
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Dec 24, 2007

冬の日の出来事

いつの間にか灰皿町に雪が降ったらしい。公園には雪だるまもある。 
わたしのパソコンはまだ帰ってこないので、今日は仕事先の休憩時間にパソコンを拝借している。
先日、お隣の家の前に救急車がやってきて、次に消防車が到着した。
お隣にはわたしの母親より少し年長のおばあさんがひとりで暮らしている。母は俄かに落ち着かなくなり窓から様子を伺っていたので、「外に出て見てきたら?」と言ったら「イヤなのよ、顔がテカテカしてるから今・・・」という。「わたしだってまだ眉毛かいてないわ」と言いつつ結局、親娘そろって(おばさんとおばあさんで)玄関先に出てみた。そのわたしたち二人の前を消防車も救急車も出発して行ったので、真相はわからないままだった。(ヘルパーさんも無言で自転車で帰って行った)

翌々日、お知らせが届いた。一人暮らしだったおばあさんは亡くなってしまった。母はショックを受けている。わたしは一人でお通夜に出かけた。遠く離れて暮らす家族。小さい頃によく遊んでいた幼馴染みと再会した。わたしはもちろんすぐにわかったけれど、相手はわたしが誰だかわからず名前を言って驚かれた。
それくらい長い歳月が流れたのだ。

雪になるのではないかと思うくらい、冷たい雨の降る夜だった。
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Dec 19, 2007

不在

パソコンを修理に出して4日め。修理屋さんにおいてくる時はちょっと寂しかったが実際はそれほど不便ではない(気がする)。。
夜ご飯のあと、ふと出現するフリータイムにパソコンを開くことが多い。
テレビはあまりみないので、読書の時間が増えた。
「荒地の恋」を読み終わって、小川洋子さんの「ブラフマンの埋葬」を読んだ。やはり小川さんの筆力はすごいと思った。タイトルに「埋葬」とついているくらいだし墓地も棺も度々でてくるから、読者は死の予感に導かれて読みすすむのだけれど最後は予測を裏切らない悲しさに充たされていた。静謐な、美しい物語だった。

今日から読むのは松下竜一さんの「ルイズ・・・父に貰いし名は」。 修理に出したあのパソコンからネット注文して長野から届いた。封筒を見ると「古書の森・マザーアース」の住所は伊那谷に春近しと読める。どういう所から来たのかと古書店の場所と主を想像してみる。

ミクシィもヤフーも見たいと思えば携帯を開く。でも、灰皿町だけはパソコンがないとたどり着けない。今夜は猫と一緒におばあちゃんのところへパソコンを借りにきた。クリスマスの頃にはわたしのパソコン、元気を取り戻して帰ってくるだろうか。
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Dec 13, 2007

台所

目覚めたときにあまり体調が良くなかったので、出かけるのは諦めた。 薬を飲んで静かにしていた。「左右の安全」「荒地の恋」「クロニクル」と読みかけの本があるのはうれしい。そういえば昨日、仕事先で敷地の塗装工事していて塗料の匂いがきつくて困った。帰りのバスはいつものように眠くて、、、。途中で降りるから眠らないように必死で夕食のおかずを考えていた。 

雨から曇り空へと変わって今日の「読書日和」も終わりかけた夕方、 ふと立った台所で、目に付いた汚れを落とし始めた。普段あまりに何もしないのでたまに磨くとピカピカになって満足感を味わえる。

昼寝していた猫も、わたしが動き始めるとそわそわと落ち着かない。 台所が多少キレイになって、さてひとやすみ、という時になるとニャーニャーうるさいので、わたしはココア、猫にはカリカリを少しあげて満足感を共有することにする。

この猫は毎朝、おばあちゃんのところへ挨拶にいく。「うにゃー」と 一声ないておばあちゃんの台所の戸が開けられるのをひたすら待っている。出かけるわたしが近くを通ってもちらりと一瞥するだけだ。
おばあちゃんのところの台所には猫のための水のみ場がある。 071209_0909~0001
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Dec 12, 2007

アンソロジー

灰皿町恒例の「うろこアンソロジー」募集が始まっている。 
  新参者のわたしには乗り越えられる敷居なのかどうかさえ判らない。
ふつう、同人誌に参加していると締め切りが提示され、各自が原稿を送り、誰かがまとめてくれる。数ヶ月して出来上がるとき初めて他のメンバーの作品に接することができる。

でもこの「うろこアンソロジー」は「はい、」と挙手した詩人からさっさとサイト上に掲出されていく。最初から他のみなさまの作品を読むことができるわけでレベルの高度が一目瞭然となる。

なんとなく、夏休みの自由課題を連想した。
ボツはない。そして「きちんと取り組んだ人」から持参するので始めにだしたひとは注目されるし、自信がないので出しそびれていると他の人の作品がみんな立派にみえてどんどん提出できなくなってくるのだ。

まあ、たぶんこれは出来の悪かった者のヒガミで、実際にはどうかわからない。わたしは宿題の名のつくものはすべてキライだったしよく忘れていた。もちろん、夏休みは遊ぶためにあったから提出しなければいけない類はギリギリになってすごくいい加減なものを作って出しては結局、恥ずかしい思いをしていた。

「何でもいいから出せばいい」ってものでもないことを多少、宿題からは学んだ。変わらなかったけれど。

さてこれは、宿題でもなく自由参加なのだから、気を楽にして目立たないようにこっそり提出できたらいいな、と考えてはいるけれど、どうなることかわからない。でも同人誌も投稿誌もない今のわたしに「詩のしめ切り」が出現したのは何となくうれしい。
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Dec 11, 2007

アンソロジー

灰皿町恒例の「うろこアンソロジー」募集が始まっている。 
新参者のわたしには乗り越えられる敷居なのかどうかさえ判らない。
ふつう、同人誌に参加していると締め切りが提示され、各自が原稿を送り、誰かがまとめてくれる。数ヶ月して出来上がるとき初めて他のメンバーの作品に接することができる。

でもこの「うろこアンソロジー」は「はい、」と挙手した詩人からさっさとサイト上に掲出されていく。最初から他のみなさまの作品を読むことができるわけでレベルの高度が一目瞭然となる。

なんとなく、夏休みの自由課題を連想した。
ボツはない。そして「きちんと取り組んだ人」から持参するので始めにだしたひとは注目されるし、自信がないので出しそびれていると他の人の作品がみんな立派にみえてどんどん提出できなくなってくるのだ。

まあ、たぶんこれは出来の悪かった者のヒガミで、実際にはどうかわからない。わたしは宿題の名のつくものはすべてキライだったしよく忘れていた。もちろん、夏休みは遊ぶためにあったから提出しなければいけない類はギリギリになってすごくいい加減なものを作って出しては結局、恥ずかしい思いをしていた。

「何でもいいから出せばいい」ってものでもないことを多少、宿題からは学んだ。変わらなかったけれど。

さてこれは、宿題でもなく自由参加なのだから、気を楽にして 目立たないようにこっそり提出できたらいいな、と考えてはいるけれど、どうなることかわからない。でも同人誌も投稿誌もない今のわたしに「詩のしめ切り」が出現したのは何となくうれしい。
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Dec 09, 2007

銀杏並木

風が吹くとぱらぱらと枯葉が舞い落ちる。
果てしなく降りそそぐような錯覚があり、足をとめる。
いつまでも見飽きることのない冬の空は秋の終わりを告げている。
大好きな秋がいってしまう。


いつもは仕事場で、せっせと落ち葉を掃除している。
掃き集めた落ち葉をみると焚き火がしたくなる。この季節、父はよく焚き火をしていた。落ち葉と一緒に燃やしていたのは何の紙類だったのだろう。くわえ煙草で葉っぱや何かを燃やしている父のそばで遊ぶのが好きだった。その火の中に自分も何かを投げ込んでみるのが楽しかったのだ。

落ち葉を集めてゴミ袋に詰めているオトナになったわたしは、昨日、 ともだちと新宿御苑の銀杏並木を歩いた。
遠い空からやってくるしあわせみたいに降り注ぐ黄色い葉っぱたちを、 いつまでも眺めていたいと思った。振り返って見ていたらひとりだけ置いていかれそうになった。

そして今日は再び、箒をもつ事務員。秋はとっくに終わっているらしく デスクにはクリスマス商品と来年のカレンダーが山積みになっていた。 銀杏並木を歩いてきてよかった。すこしだけ一区切りの気がしてあの散策路を思い出している。
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Dec 06, 2007

失いたくない

自分のブログを読み返した。
やっぱり好きなトモダチも家族も猫も詩も失いたくないな、と思った。 なにも手放したくはない。
わたしのちかくにあるのならそのままで、。 「コワくない」というのは強がりではないにしろ諦めることに少し似て、だとしたら「諦めるのはまだ早いんじゃないか」と思った。


「現代詩年鑑」を読んでいる。毎晩、数ページしか進まないのでいつになったら読み終わるのかわからない。ずっしりと重いので持ち歩けないし夜はすぐに 目を閉じて横になりたくなる、眠りは浅いのに。


いつまでも読み終えない本を抱えて、ぐずぐずと詩のせかいにとどまっていたい。とどまっていることに飽きるまで。

それにしてもわたし、すごいところに引っ越してきたな~と思う。
「現代詩年鑑」には灰皿町のみなさまのお名前がたくさんあってドキドキする。
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Dec 04, 2007

「未知」

このまま「詩を書かないひと」になるかもしれない、とふと思うときがないでもない。それはべつにコワくはないけれどさびしい。好きだったひとに別れを告げるみたい。好きだったトモダチや恋人や家族や猫を失うことに似ているかもしれない。 

でも、書かなくても詩はわたしのそばにあり続ける。

そのことを再確認する今日この頃。
アーサーさんの講演の次に、谷川俊太郎さんのお話を聞きに行った。 10代の頃からずっと読み続けてきた谷川さんにこのタイミングで会えたのは嬉しかった。
持っていないと思う詩集を買って帰った。「未知」という詩に再会した。本当にすごく懐かしい再会だった。初出を見ると長女が生まれた頃なので、わたしは若い主婦で、年子のこどもたちの世話をしながらたまには図書館に行ったり、そしてなかなか返しに行けなかったりして、 毎日が慌しく過ぎていた頃だった。


 未知・・・・・・・・・谷川俊太郎

「昨日までつづけてきたことを
 今日もつづけ今日つづけていることを
 明日もつづけるそのあたり前なことに
 苦しみがないと言っては嘘になるが
 歓びがないと言っても嘘になるだろう
 冬のさなかに春の微風を感ずるのは
 思い出であるとともにひとつの予感で
 昇る朝日と沈む夕陽のはざまに
 ひとひらの雲が生まれまた消えうせるのを
 何度見ても見飽きないのと同じように
 私たちは退屈しながらも驚きつづける
 もしも嫉妬という感情があるのなら
 愛もまた存在することを認めればいい
 足に慣れた階段を上り下りして
 いくたびも扉をあけたてしごみを捨て
 ときには朽ちかけた吊橋を渡って
 私たちは未知の時間へと足を踏みこむ
 どんな夢も予言できぬ新しい痛みを負いつつ」


この詩を読んだ頃も、わたしは殆ど詩を書かなくなっていた。
でも読んでいたのだ。なんだ、いまと同じか・・・。
詩を読む。「すごいな」と思う。またしばらくはこれでいくのかな。

ふと去年の手帳を見ていたら、去年の今ごろは松下育男さんとお会いしていた。わたしの詩集のためにわざわざ時間を作って下さったのだ。嬉しくてドキドキして出かけて行った。渋谷で迷子になって早い時間に家を出たのにぐるぐる歩いてようやく指定されたお店に たどり着いたら松下さんはやっぱりもう先に到着していた。12月の都会の夜が二階の窓でキラキラしていたのを覚えている。


去年の手帳と今年の手帳を並べる。
「昨日まで続けてきたことを今日も続けて」いる。誕生と喪失の年だったかもしれない。拙い自分の詩集が生まれ、娘の抱えた欠損に衝撃を受けた。その季節も過ぎようとしている。
朽ちかけた吊橋だってどうにか渡ってきたのかもしれない。
だいじょうぶ、あるいていける。
何度でも「未知」に再会するために、週末には新しい手帳を買いに行こうと思った。
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Dec 02, 2007

「焼かれた魚」

「出かけよう!」と思ったときに、歩いてからバスに乗るか、 家から自転車に乗って行くかをまず決めなければならない。 
(どこかの駅に行くとしても、手段はそのふたつ。)
そして昨日、自転車に乗って講演会に行ってきた。
社会教育会館は、幼い次女を保育室に預けて勉強をしに通ったところなので、ひどく懐かしかった。二歳だった彼女は預けられる時から泣き続け、迎えに行く頃はかすれ声になっていたものだ。

お話はアーサー・ビナードさんだった。
朝日新聞の夕刊コラムでエッセイを読んでいたのは何年前だろう。
その短い文がとても面白くて中原中也賞の詩集も手にしていた。
「わざわいもさいわいも」というテーマの副題は「言葉と暮らしを考えて」。日本語の特質や、言葉の力、詩については視覚的な特徴も事例をあげてわかりやすく親しみやすいお話で二時間はあっという間だった。

帰りに図書室(会館内にある)に寄って、「空からやってきた魚」という エッセイと「焼かれた魚」という絵本を借りてきた。サカナ2冊。
絵本は小熊秀雄作。わたしはあの詩人が童話まで書いていることを知らなかった。英文と和文が両方、書かれている。市川曜子さんというかたの挿絵が独特の雰囲気ですっかり気に入った。
借りて帰ってすぐに読み、今日もう一度読んだ。エッセイも期待通りに面白い。時々、アーサーさんの短歌や俳句が入っていてその才能に驚く。
新しい詩集を買おうと思っていたら今日の新聞に書評が出ていた。「左右の安全」。。。
あ、自転車に乗って聞きに行ったのは正解だったんだな、と何となく嬉しくなった。
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Nov 30, 2007

冬のバス

ブログ、、、何故書いてるのだろうと時々思う。 
外へ向けて発信することの意味を見失い、また拾う。拾うときは「あ、夕焼け・・」と呟いたときに返ってくるやさしい言葉みたいに嬉しい。

「閉ざされた日記」も当然ある。
自分の言葉で自分へ問いかけながら息継ぎをするような休息。

「わからないから、書きながら考える」ことも大きかった。
それは内部に向かうときもあれば、助けを求めるごとく外へ向けられた ときもあった。

書いてしまってから、それがいつまでも露出しているようで恥ずかしくて、消し始めるとキリがないようだし、仕方ないから上塗りしていることも多い。
そういえば「恥の上塗り」っていう言葉があるけれど、辛辣だと思う。それって身につまされる。

上塗りでもいいから、外に向かって発信しようとしているうちは、 まだそれだけの元気がある。くしゃくしゃの頭でも少しは手で整えてから「外面をつくる」みたいに。そんなエネルギーがどこにもないように 思えるときは「閉ざされた日記」を開く。そこにもちゃんとタイトルがあって、くしゃくしゃのあたまとからだを慰めてくれる。

元気がないときは静かにしているのがいいと思う。
でも、歩けるなら外へ行きたい。
たとえば遠くへ連れて行ってくれる冬のバスに乗り込むみたいに。
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Nov 26, 2007

再会

退院した長女と会ったのは三回目。 
一週間に一度は外来受診に来る。
最初は、彼氏と一緒に病院に来て、その帰りにわたしの仕事場に 寄ってくれた。
二度目の受診はわたしが付き添った。
足の怪我も顔の傷も日毎に回復しているようだ。

そしてようやくみんなの都合があって退院祝いをした。
長男も、もちろん長女も、大学一年生の次女も、それぞれが恋人を 連れてきて和やかな集まりになった。
「よくがんばったね」と乾杯して小さな花束を渡した。

『視力さえ戻っていれば・・・』と誰もが思ったに違いない。
でもとにかくこうしてみんなで食事ができることの嬉しさと安堵を、 共通の思いとして感じていた。

本当は正社員試験を受けた長男の合格祝いも兼ねるはずだった。
バイト、契約社員、と進んできて夜遅くまで働いていたから、 まさか落とされるなんて、わたしは夢にも思っていなかったのだ。
その息子は、「初対面ばかり」で緊張気味の次女の彼氏に何かと話しかけリラックスさせていた。息子の彼女はわたしと長女へプレゼントを 買ってきてくれた。

幼かったこどもたちの成長を見られて、 やはりほのぼのと嬉しい日だった。
思いがけない事故も、思いもよらない不合格もあるけれど、
若いひとたちには必ず美しい未来がある、そう信じても良いのだと思った。

帰宅したら、猫が、こんな顔で待っていた。 071119_0013~0001
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Nov 25, 2007

静かな石(意志)

「読んだつもり」でいたけれど、読んでいなかった小説に時々出会う。
確かに読んだのに、まったく覚えていなかったりするのもあるし、 記憶自体が曖昧になっている本もある。
宮沢賢治の短編、『気のいい火山弾』を最近、読んだ。
以前にも読んだと思う(手元にあったから)、でも軽く読み飛ばしていたのかもしれない。賢治さんを「軽く」読み飛ばしてしまうなんて、、!
その大きな黒い石はまるくてかどがない。
いつも静かにじっと座っていて、みんなにからかわれながらも、ゆったりと受け答えして過ごしている。
深い霧がたちこめる日は空も野原も眺めが悪いので、他の石たちはその まるい大きな石をからかって過ごすのだ。
「べゴ石」と鈍重な牛に例えて名を呼ばれながら、長いこと座り続けている。
石が好きだった賢治らしい作品だと思う。
「愚かに見える賢者の話」と解説されている。

大きな石は最後に大学の研究者に発見されて、「素晴らしい!」と絶賛され「火山弾の典型的な標本」として運ばれて行く。
からかっていたかどのある石たちは、ため息・・・。
黙ってにこにこしていた石はやがて「皆さん、ながながお世話さまでした」と挨拶をして荷馬車に積まれる。

みんなの揶揄に耐えてきたその石に救済があったようにみえるのだが、 「わたしの行くところはここのように明るく楽しいところではありません」と言い残して去っていく。「私共はみんな、自分でできることをしなければなりません」という言葉にすべてが表れている。それがメッセージなのだと思った。
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Nov 23, 2007

年老いて、、、。

親戚の家の愛犬に会いに行った。
年老いて、もう自力では立てない。
あんなにふかふかの毛並みで元気だったのに、
痩せて、目もよく見えないらしい。
「会いたい」と母が、すごく心配して言うので、
いま会わせなければ間に合わないかもしれない・・と思って、 母を連れて行った。

この犬が若くて元気だった頃のことを思い出す。
父が生きていた頃のこと・・・。
きっと母も同じ思いで犬と再会したのではないだろうか。

あんなに動物が苦手で、大嫌いだった母。
小さかったわたしは叱られると知っていながらよく捨て猫を拾ってきたものだ。
時を経て、わたしが自室で飼い始めた猫を父はそっと触りにきたりした。いつの間にか、猫は我が物顔で家中を歩くようになり、知らぬ間に 母はすっかり猫や犬に慣れていた。
犬や猫、、、近しいペットたちに慣れて可愛がるようになった母を、 父は穏やかに見守っていたと思う。

触れる手のあたたかい感触を、犬や猫は、優しく記憶するのだろうか。 071116_2129~0001
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Nov 19, 2007

この空の下

車窓から写した雪景色が、友人からの携帯メールで届いた。 
用事で週末に上京していた。
今回は会わずに今日、金沢へと帰って行った。
「いま越後湯沢だよー」という文が添えられていた。

雪・・・・!

東京も木枯らしが吹いて、寒かった。


夕方、今度はべつの友人からメールが届く。
そう、わたしは彼女からの話に真剣に耳を傾けていたし、
今日の報告も待っていた。
そして、予想外の知らせを受け取った。
わたしのことを「姉ちゃん」と呼んでくれる少し若い友人。
「自己嫌悪」という文字に胸が痛み、「自分を責めないで」と、
いそいで返信した。涙で携帯を見つめているらしい・・池袋の街で。
「雑踏の中でひとりくらい泣いていても大丈夫だ、気にするな。」

駆けつけて、抱きしめてあげられたらいいのに、、、。
それもできないで、暗くなった窓の外を見た。

わたしたちは、それなりに歳を重ねてまだこれからも重ねていくだろう、 女たち。。。
金沢に帰った友も、昔から妹みたいな存在だった彼女も。

そして季節はまた秋から冬へと移って行く・・・この広い空の下。


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Nov 14, 2007

小春日和

「薬物乱用頭痛」という嫌なパターンがちらつく日々。 
ストレスは雑木林みたいにざわざわしている。

ホッとする休みに雑用を片付け、(自習もする)つもりでいたのに、 体調が悪くて何も出来なかった。
わたしが家にいると猫は満足そうに近くで寝ている。
彼の好きな枕でまるくなったり、わたしの掛け布団の上で(しかも真ん中で)ぐっすりと眠っていた。

最近、小池昌代さんのエッセイを読んだ。
小池さんの詩は大好きだ。エッセイもすてきな文章で巧みだった。
タイトルは「黒雲の下で卵をあたためる」。
ギュンター・グラスという詩人の作品からとっている。

不穏な黒い雲が頭上にあっても、おっとりと卵を抱いている雌鳥。
黒い雲は流れていくだろう、わたしにも温めるための卵はあるだろうか。
小春日和の一日、青い空をちらりと眺めながら黒い雲のことを考えていた。
071113_1309~0001
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Nov 05, 2007

勉強不足

「往復書簡」の意味するところは何だろう・・・?
その哲学者に対する敬愛は、あったと思う。
でも、わからない。
だって300通あまりというその手紙を読んでいない。
まとめられた本があるらしいがそれも読んでいない。
なんだか話にならない気がする。
自分で調べたわけではなくて、誰かが調べたものを参考にしているから 『不正確』は当たり前だ。
参考文献をきっちり読んで「これを参考にしました」と胸をはって いえればいいのかもしれない・・・しかし、時間が足りなかったな~。。。と、言い訳も頭をよぎる。

勉強不足を認識する、ということは、 勉強する機会を与えられたことに気がつきそのチャンスを獲得することだ。さあ、いまの自分にそれができるかどうか・・。

それにしても、偉大な作家だったと思う。
わたしがあなたの年譜作成する大役を受けてしまいました、ごめんなさい、と こころのなかで謝りながら途方にくれて今日も日が暮れた。

60代、70代、の二人が交わした手紙。たしかに読んでみたい。
でも本人たちは読まれることをどう思うのだろう。
後々、公開されるとは思っていなかったのではないだろうか。
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Nov 03, 2007

仕事。。。

「行きたくないなー」という気持ちがどこかにあるからか、
支度のスピードが鈍く、ギリギリで職場に到着。

祝日なので朝から忙しくパタパタして、ようやく行ったトイレの鏡で 自分の顔を映して「ありゃ」っと思った。
来る前に慌しくシャンプーしてきたので髪がピンピンとハネている。
こんな顔で挨拶したりバイトの学生さんと話したり、ニコニコしていたのか。。。
人は自分が気にするほど相手の髪型などには注意を払わないものだとは 思うけれど、やっぱり。。。。
前はヘアワックスをポーチに入れていたけれど、なるべく持ち物を 減らすようになったので最近は持っていないことを少し後悔して、
水で濡らしてどうにか少し直してから諦めて席に戻った。
控え室で休憩中のガードマンさんから呼ばれる。
何かと思ったら「今日は○○さんじゃないと思ってこれ持って来ちゃったからあげる」とココアのスティックを貰う。
わたしは控え室に自前のインスタントコーヒーを置いて自由に使って 貰っているので、「コーヒーが嬉しいから」と言ってくれた。

そのガードマンさんに「でも、わたし突然いなくなるかもしれないです」という話をした。
「辞めたいの?」「ハイ、ちょっと・・・」
という会話のあと、「無理しないほうがいいよ、肉体的な疲労よりも 精神的な疲れのほうがきついんだから」と言われた。

つい最近もわたしの前にいた女性(辞めて他へ行った)とメールの やりとりで「無理しないほうがいい、必要な我慢とムダな我慢があるんだから」と言われて妙に納得したところだった。

あまりに大変だったらここの仕事は辞めて、また探そうと思う。
事実、少し探し始めてもいる。
でも、ようやく覚えた仕事だから、対人関係だけで中断するのも、 もったいない気がするし・・。
それにこうしてわたしの立場に同調してくれる人に出会うとホッとして「もう少しがんばろうかな」という気持ちにもなったりする。
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仕事

「行きたくないなー」という気持ちがどこかにあるからか、
支度のスピードが鈍く、ギリギリで職場に到着。

祝日なので朝から忙しくパタパタして、ようやく行ったトイレの鏡で 自分の顔を映して「ありゃ」っと思った。
来る前に慌しくシャンプーしてきたので髪がピンピンとハネている。
こんな顔で挨拶したりバイトの学生さんと話したり、ニコニコしていたのか。。。
人は自分が気にするほど相手の髪型などには注意を払わないものだとは 思うけれど、やっぱり。。。。
前はヘアワックスをポーチに入れていたけれど、なるべく持ち物を 減らすようになったので最近は持っていないことを少し後悔して、
水で濡らしてどうにか少し直してから諦めて席に戻った。
控え室で休憩中のガードマンさんから呼ばれる。
何かと思ったら「今日は○○さんじゃないと思ってこれ持って来ちゃったからあげる」とココアのスティックを貰う。
わたしは控え室に自前のインスタントコーヒーを置いて自由に使って 貰っているので、「コーヒーが嬉しいから」と言ってくれた。

そのガードマンさんに「でも、わたし突然いなくなるかもしれないです」という話をした。
「辞めたいの?」「ハイ、ちょっと・・・」
という会話のあと、「無理しないほうがいいよ、肉体的な疲労よりも 精神的な疲れのほうがきついんだから」と言われた。

つい最近もわたしの前にいた女性(辞めて他へ行った)とメールの やりとりで「無理しないほうがいい、必要な我慢とムダな我慢があるんだから」と言われて妙に納得したところだった。

あまりに大変だったらここの仕事は辞めて、また探そうと思う。
事実、少し探し始めてもいる。
でも、ようやく覚えた仕事だから、対人関係だけで中断するのも、 もったいない気がするし・・。
それにこうしてわたしの立場に同調してくれる人に出会うとホッとして「もう少しがんばろうかな」という気持ちにもなったりする。
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Nov 02, 2007

退院

事故から二ヶ月以上、ようやく娘の退院が決まりました。 
ご心配いただいたみなさま、ありがとうございます。
車椅子がなくても松葉杖で少しは歩けるようになりました。

バランスのとり方、見えている範囲、、、。
心配はつきないけれど、「帰れる♪」と笑顔の娘と一緒に タクシーに乗って帰宅しました。

久しぶりの実家、自室。
事故の日に処置室のスタッフからわたしが受け取った所持品。
それを持ち帰って呆然と座り込んでいた日が昨日の事のようです。
しばらくは中を見られなかったけれど、
ようやく血のついた衣類を処分し、鏡の割れているバッグに そっと手を入れて貴重品を取り出して、あとはそのままになっていました。
自室から出てきた彼女は「良かった、これがあったよ」と言って
小さな林檎のペンダントをさっそく身に着けていました。
恋人からのプレゼントだったらしい。
「でも、五つつけていたピアスが四つしかない」
「あ、この香水は無事だったんだ」と、賑やかです。
そういえば、化粧ポーチらしきものがあったけれど、
入院生活には必要ないのでそのままバッグに入れておきました。
何種類ものマスカラ、ライナー、それらをまた別のバッグに移し替え、 バムセも入れて肩からかけ、
娘は恋人のところへ、夜になってから帰って行きました。

ありきたりの言葉しか思い浮かばないけれど、やはり、
「幸せになってほしい」と心から思わずにはいられません。
どれくらいメイクできるのかわからないけれど、娘なら大丈夫、きっと 「自分らしさ」を獲得すると信じています。
今度会うときを楽しみに待つことにします。


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Nov 01, 2007

猫と眠る

わたしの猫は大きい。 
顔が小さくてカワイイが図体はデカい。
その猫は寒くなるとわたしの頭部至近距離で眠る。
以前は、顔の真横にいた。
眠る前は何気ないふりで足もとにまるくなっているくせに、
気がつくとものすごく近くにいて最初はびっくりした。
昨年、肩こりに効くというのでわたしは大きな枕を購入した。
肩こりに効果があるのかどうかは不明。。。
しかも枕カバーに困るくらいに大きい。
そしてこれを気に入ったのは、そう、猫だった。

ある日、ふと違和感を覚えて目覚めると彼(ネコだ、つまんないけど)が わたしの枕の空白スペースで熟睡していた。
寝返りをうつたびに猫がじゃまで困った。
「どいてよ」と頼んでも体を揺らしても、薄目をあけて動じない。
でも、冬が過ぎた頃、ようやくわたしの枕に飽きたのか、
新しい寝場所(作ってあげた)で、夜は寝るようになった。
昼間はあちこち寝場所を変えるが夜はそこに決めたようなので安心して、 わたしは猫のイビキを聞きながら本を読んだりしていた。

でも、やはり・・・!
寒くなってきたら、結局はわたしの顔の近くがいいらしい。
掛け布団の上や、押入れの毛布にいるときもあるが、
最終的にはわたしの枕。
わたしもだいぶ慣れてきて、大きな猫のお腹に顔をくっつけて 眠っている。
わたしは睡眠不足だと絶対に頭痛になるし、眠るために薬も飲む。
当たり前だけど眠りは大切だ。
先日、猫の苦しそうな息で目が覚めた。(大丈夫だったが、年寄りに なってきたし、心配した。)
わたしが寝苦しくなって夜半に目覚めると猫も一緒に目を覚ます。

笑えるのは、とりあえず先に眠る猫は枕のちょうど半分の スペースだけを使って大きいからだを小さくしていることだ。
こうして、居間でパソコンをしているあいだはそばの座布団にいる。
わたしが寝るしたくを始めるとアクビしながら、
「やれやれ、いっしょに寝てやるか」という感じで立ち上がるから やっぱり彼(ネコ!←雄)は面白いし憎めない。
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Oct 26, 2007

こころもほしい

自分の薬を貰いに都心の病院へ行った。 
二時間は待つと言われたので、患者の数が少ないフロアへ行き、
そこで時間を過ごすことにした。
片隅の椅子で読書したり、ウトウトしたりしていると、
小さな子供の声とパタパタ走る音、注意する母親の声が飛び込んできた。
目を向けると、赤い上着の三歳くらいの女の子が母親の手を振りほどこうとしているところだった。
「走っちゃダメ、おとなしくして、座ってて」と繰り返す母親のそばから「いやぁ」と言って女の子が逃げる。
それが繰り返されているようだった。
女の子はあっという間に母親を置いてするすると真っ直ぐに走って行く。解き放たれた子犬みたいに素早く軽やかだ。
病院の長い廊下を母は一生懸命に追いかけていく。
たいていの子供は場所をわきまえていて、(子供なりに感じとって)
こういう場所ではどうにか静かにしているものだが、
その子にはそれが微塵もなくて、天晴れでさえある。

やがて、母親は娘をどうにか連れ戻し、順番を待つべく椅子に座った。
もちろん、元気(そうな)女の子はじっとしていないので、
いつの間にか少し離れた椅子のわたしの近くまできた。
「飽きちゃった?」と彼女に話しかけてみた。
するとヨソのおばさんに話しかけられた子はどうしていいか分からず、
「やあだぁ」と言いながら打つマネをして、足蹴りのポーズまでしてみせる。
そこは、シッター経験の長いわたし、「そんなことしちゃだめだよ」と 余裕の笑顔。「ママのところへ行ってお座りしてなさい」と言ってみると「いやぁ、ママきらい」と言う。
『いやいや園』みたいな憎めない子だ。
だんだんとなついてきて、そばで遊び始めた。
そのうち、椅子に置いてあるわたしの文庫を見つけ「これ、なあに?」
と聞くので「これはおばさんの大切なご本よ」と、
彼女の攻撃力を多少恐れながら、「大切な」というところで目を見て 言ってみた。
すると、その赤い服が似合う女の子はきっぱりと一言。
「こころもごほんがほしい」・・・・!

「心!?」そういう名前なのか、、、と思わずその子の顔を見つめ直すとタイミングよく「こころちゃん、おいで、呼ばれたよ」と少し遠くから母親の呼ぶ声がして彼女はタタタッと走り去った。

予想通り、しばらくして診察室からは「いやー」という彼女の悲鳴が 聞こえてきて、ハラハラした。
母親はわたしが相手をしていたのを知っていたようで、
診察が終わってから、「どうも」と会釈して帰って行った。
若いママ、というよりももっと落ち着いた雰囲気の女性だった。
当のこころちゃんは、意地でも泣き顔を見せまいとするかのようにそっぽを向いたまま立ち去っていった。
あの軽快に走っていた足取りはどこへやら・・。

「形成外科」・・・・わたしの娘も、その女の子も受診科は同じだった。
わたしが娘につけた名を「変わった名前ですね」と言われた覚えもある。でも、本人はその名を気に入ってくれている。
あの母娘はどうだろう、あの子にあるたくさんの「大切な」時間や、 出会いについて、ふと考えた。
彼女が成長して自分に出会うように、自分の名前と向き合うときは、 きっとあるに違いない。そこにこめられた想いも知るようになるのだろう。
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Oct 23, 2007

外へ

チューブがひとつ、またひとつと抜けていく。 
表情に落ち着きが戻り、「自分」を取り戻していく。

わたしのバスが到着する頃合いに、娘は車椅子で病室を出て、
病院、外来棟付近の花屋あたりまで迎えに来ていた。

近づいて行くと、見知らぬおばさんと話している。
わたしを見つけ「母です」と娘が言うとその女性はニッコリと笑った。
「可愛いお嬢ちゃんですねぇ」と言われる。
思わず「はい」と素直に肯いていた。

実際、娘は「小人さんの三角帽子」が似合っている。
長い茶色い髪はふわふわと帽子からだして肩にかかっていた。
わたしが持って行った襟ぐりの大きなシャツを着ている。
ズボンは恋人がユニクロで買ってくれた子供サイズだ。

わたしを待つ短い時間に三人もの人に声をかけられたと言う。
「大丈夫ですか?」「車椅子、押しましょうか?」
そして年配のその女性。
「どうしたの?」と聞かれたそうだ。
「交通事故で足を怪我しました」と答えると娘の外見を見て
「お顔も?」・・・・「はい」。。。
「あらぁ、、そう、。でも良かったわね、お目々が大丈夫で」

「はい」と答えるしかなかったと言う。
いえ、片目は見えませんと言ったら話が長くなるから、と呟いていた。

病気と闘ってきた娘は同情されることが大嫌いだ。
可愛そうに、と言われたり、泣いたりされることを 十代の頃から嫌悪してきた。

内部障害、という言葉があるけれど内臓の重い持病は外見では判らない。
今回、きっと顔の傷も癒えたらどこにでもいる大きな目の若い女性だ。

また、いろんな事柄にぶつかって行くに違いない。
悔しい思いや、悲しい思いも、たくさんするだろう。
母親のわたしは再び黙って見守るしかない。
でも、彼女の意識はもう外へと向かっている。
障壁がひとを「逞しく」成長させることは疑いようもない事実だ。

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Oct 22, 2007

気分転換

「映画にいこうよ」と誘ってくれた知人がいた。 
わたしの状況を知りながら、わたしを元気づけるために。

本当にすべてを忘れてスクリーンに見入った。
「ミス・ポター」
知り合って間もない人なのになぜか「気が合う」とひらめくものがあり、彼女が選んだ映画はまさしくわたしが観たいもののひとつだった。

わたしも彼女も二つの仕事をしていてなかなか忙しい。
ただしわたしは経済的理由で、。彼女は選ばれて公務もしている。
でも、ふたり一緒に行ける日は案外すんなり決まった。

この映画を観て、自費出版からスタートしたピーターラビットにはこうした背景があったのかと、初めて知った。
ミス・ポターを演じたレニー・ゼルウィガーが可愛らしく知的で意思のつよい女性にぴったり。
そして、ウサギをはじめ、おなじみのキャラクターたちが生命を与えられたように画面でササッと動くのも魅力だった。

動物が好き、絵本が好き、というところから始まってたまに仕事の悩みを話すようになり、ひどい肩こりや頭痛の話で盛り上がったわたしたち。
一見、オトナシイが、実はけっこう活動している、と共通点もチラリ。
そして優柔不断なわたしには「決定」してくれる彼女は有難い。

映画を観て、お茶を飲んで、、、。
短いけれど、たのしい時間だった。
洋服を選ぶ(公務に着るスーツらしい)彼女と別れてわたしは娘の病院へと急いだ。

空いっぱいに秋だった。
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Oct 20, 2007

遺伝子

法事・・・・親戚が集まる。気をつかう。疲れる。。 
だから無事に終わってよかった。

今回の事故の件は直近のひとしか知らないので、まったく触れずにすんだ。
そして、やはりまた同じことを言われた。
わたしが父親の母、つまり祖母にそっくりの顔立ちだということ。
祖母も祖父も三歳のときに亡くなったので記憶は僅かしかない。

若いときから「祖母にそっくりだね」と言われ続けてきた。
まるでピンとこなかった。
今回また言われてみて初めて「あ、そうかもしれない」と思った。
わたしも歳とってきたからに違いない。
写真で見る祖母はなるほど童顔の女性は老いるとこうなるのか、
という印象だ。
まるい目元がやさしいような、でもホントはかなり気の強そうな 顔をしている。
(祖母も祖父も幼いわたしにとってはコワイ存在だった)

わたしは母親と似ていると言われたことは一度もない。
母ではなく父親似でもなく、祖母にそっくりと言われるのは不思議だった。
伝え聞いたところによると、祖母は紙問屋のお嬢さまだったのに、
使用人と恋仲になったとか・・・・。
コワイ存在だった亡き祖母が、急に親しく思えた瞬間だった。

因みにわたしと娘は「双子じゃない?」と娘の彼にからかわれるくらい 顔も似てるし行動パターンも性格も似ている。
長女にも、次女にも、わたしは「自分」を見る時があってハッとするが、顔の類似はやはり長女のほうだ。
「そっくり~」と言われることにわたしたち母娘はすっかり慣れている。
ということは、祖母の遺伝子はわたしから長女へといったのか。


今日は娘はだいぶ元気を取り戻していた。
「髪をさわると乾いた血が粉になって指についてくるよ」という。
その髪と額の傷口を全部、ベージュの布帽子が覆っている。
「小人さんの三角帽子」と笑っていた。
笑顔をみるたびに安心する。
ふと、「見守られている」ということを考え、遥かな眼差しを思った。
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Oct 19, 2007

覚悟

「覚悟」というものはやっぱり曖昧だ。 
昨日はそれを再認識した・・・。
そしていまさら「再認識」なんて情けないような気分もした。

娘の形成外科の手術が終わった。
『無事に終わった』という事実を前に単純に安堵し、
「覚悟」はおろそかにしていた。

顔面を強打したことによる手術施行だから、大掛かり。
そして、あともたいへん、、。と分かっていたつもりだった。
「つもり」から「覚悟」へと進んでいくはずだったのに。

外見、というのはこれほどに衝撃的な事柄だったのだ。
わたしは昨夜、彼女の前から鏡を隠しておいた。
でもやはりひとりになったときに見たようだ。

またベッドから動けなくなってしまった娘は、
「振り出しに戻っちゃった」と今日、呟いていた。
でも、違う。
振り出しに戻ったりしたらたまらない。
いまは嵐がきたから一回休みだよ、とわたしは言った。
着実に進んでいると、信じている。

その証拠に、今日は昨日よりも表情が明るくなっていた。
それを実感したわたしが思ったままを口にすると、
ようやく彼女の笑顔がみえた。
ホッとした瞬間だった。
Posted at 23:23 in nikki | WriteBacks (0) | Edit

Oct 15, 2007

ひといきついた

土日、珍しく仕事がなかった。 
どちらかの仕事はたいてあるのだが、
古本屋のシフトは調整可能なので、休みにした。

あの日以来、毎日が慌しく過ぎて行き、
仕事がない日にはかならず病院へと出かけたり、
必要なものを買いに行ったりしていた。

ようやくわたしの休みになった。
娘は外出許可が出て、恋人と出かけた。
わたしの家族はわたしと一緒に外出したかったようだが、
体調不良を理由に自由にさせてもらった。

すごいことになっていた自室を片付け、掃除機をかけた。
すごいことになっていた居間も少し整理して歩けるようにした。
(まだまだすごい)

午後になってから街へ出かけた。
「完璧に自分のための時間」は短いため息みたいに過ぎた。
スーパーで家族の好物を買い物して、家事のために帰る。

秋の夕暮れが川沿いの道を覆いつくしていた。
ふと、バスの中に貼ってあった劇団のポスターを思い出した。
「孤独が中途半端で困る」

妙に身に迫るタイトルだ。
解体の予感を数年後に控えた家へと、
ゆっくりゆっくり帰ってきた。
とりあえずひと息ついた気がする。

今週はまた手術がある・・・。
Posted at 22:38 in nikki | WriteBacks (5) | Edit

Oct 11, 2007

ヒヨコは上る

先週、院外薬局に行ったとき可愛いオモチャが置いてあった。 
ひよこの行進。カタカタとがんばって上り、するすると下りる。
写真を撮って娘に見せた。
わたしたちが何年も前に一緒に携帯を買ったときから、
なんとなくヒヨコの絵文字は娘のマークとなっていた。
(・・・・ということは親鳥のわたしはニワトリか・・・)

娘はいま行動範囲も広がり、今日はわたしと一緒に、 車椅子で病院の外へ。
わたしの皮膚科の薬を貰うためにあの薬局へ付き合わせた。
「あ、このヒヨコだね♪」と言ってさっそく遊び始める娘。
カタカタと上るヒヨコを見て笑顔。

実は今日、病院内で待ち合わせをしたとき、
わたしが近づいていっても彼女の視界に入らない事がわかり、
急に現れてビックリさせないように「○○ちゃん!」と声をかけた。
欠損の視界と視野についてあらためて考えた。
視神経へのダメージ、悲しい事実を思い知った。

でも、ヒヨコは滑って下りても、また上る。
健気だ。

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Posted at 23:01 in nikki | WriteBacks (3) | Edit

Oct 09, 2007

大きな犬

コメントをいただき、返信を書き込みしたつもりが、
何故か反映されてなくて、「あれ??」という感じ。。。
なので、ここで御礼を申し上げます。
とみざわさま、ありがとうございます。
不明や不安が目の前に山積み状態です。
ご専門を存じ上げませんでした。
このさき、何かありましたら、よろしくお願い致します。


ところで、今日のタイトルは「大きな犬」。

新しい仕事について来月で一年。
まだまだ、ミスをするし、要領は悪い。
でも、同じ敷地内に知り合いが何人もできた。
頻繁に顔を合わせるうちに打ち解けて話もするようになった。

わたしが元気のない顔をしているとき、
親身になって励ましてくれるひとたち。

何度も辞めたいと思った仕事だけど、 どうにかここまできた。
ミクシィ繋がりの知人から教えてもらったサイトで、
転職を考えたときはすごくドキドキワクワクしたけど、
結局いまはまだここにいる。
大きな木があるからだろうか。

そうだ、夕方になると必ず散歩にやってくる大きな犬さんもいる。
ご夫婦は二人と一匹でやってきて、
ガラスの扉越しに挨拶してくれる。
犬はかわいいとは思うけれど、子供の頃のトラウマで触れない。
そのわたしに「大丈夫だからさわってあげて」と飼い主が言い、
犬はゆっくりと尻尾をふりながら伏せてわたしを見上げる。

そっとさわってみた。
やさしいおだやかな瞳だった。

Posted at 22:46 in nikki | WriteBacks (0) | Edit

Oct 04, 2007

取材する人々

あたりまえだけど今回の衝撃は、わたしのこころとからだにも、
おおきな影響をあたえた。
ひどい頭痛、吐き気、目眩、・・・。
体調が悪くてバイトも一日だけ休んだ。
薬に頼ってそんな日々もどうにかやり過ごしてきた。

ついでなので、娘のいる病院で湿疹の薬も貰うことにした。
今まで「薬疹」といわれていた症状も違う診断が提示された。

「付き添い」に変身した車椅子の長女と一緒に、外来棟へ行く。
何故か正門前に数多くの報道陣が待機している。
あとでわかった事だが、ミャンマーから無言の帰国をした長井さんの
遺体が司法解剖のために運ばれてきたらしい。

何事かと思うような取材陣の多さ。
そのひとたちの横を通り抜け、わたしたちは外来を出て、
「秋晴れだね」と言いながら庭があったあたりのベンチへ。

いつもの猫が悠然と眠っているのを眺めた。
明日は眼科病棟から形成外科へと引越しをする。
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Sep 28, 2007

庭がなくなっていた・・。 

娘が転院したのは、7年前に父が入院していた大学病院で、
なんだか懐かしかった。
「おじいちゃんの車椅子を押して行ったあの庭」

芝生があり、木陰があり、猫たちがいる広場があったから、
記憶を辿ってふたりで行ってみた、、が、消えていた・・。

病棟も新しくなっていたし、古い売店もコンビニに変わっていた。

でも、猫たちはまだちゃんといた。
コンビニの袋を開けるカシャカシャ、という音に反応して、
三匹の猫がわたしたちのベンチの周りに集まってきた。

わたしが遅い昼食のパンを食べたあと素早く頭痛薬を飲むのを
娘は見逃さなかった。
「お母さん、頭、大丈夫?」
「アタマ??うん、ダイジョーブだよぉ、っていうか、 
 更年期じゃない?」
ふたりで笑って午後を過ごした。

ここは、7年前ではなくもっと以前、
小学生だった彼女が初めて入院を経験した場所である。
そのときも庭はあったかもしれないが、
散歩をするようなゆとりはまったくなかった。

そうだ、娘は大きくなって、成長して、
母親を気遣い、自分を見つめて、進む道を探そうとする女性になった。
わたしが押すまでもなく、
娘は身軽に車椅子を操って、サッサと先を行こうとする。
見えている範囲をからだで知っていくかのようだ。

「おじいちゃんとの思い出の庭」が消えたのはさびしかった。
でも、時が流れていくことをわたしは、しみじみと感じた。。
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Sep 27, 2007

回復の見込み

「回復の見込みはありません」と、告げるとき、
きっと医者もつらいのだと思う。

聞くほうは必死な表情をしているに違いない。
すがるような視線は痛いだろうと思う。


そして、もう何も言うべきことがなくなり、
「それでは、、、」と言って医者(助手もいる偉い先生だ)が、
部屋を出て行くとわたしたちに大きな沈黙が訪れる。


わたしは誰の顔も見られなかった。
もちろん、泣き出すこともなく、
持ち帰る娘の洗濯物をまとめ始めた。
「お母さん、だいじょうぶ?」と彼女が言った。
なぜ?
どうして彼女はこんなにも穏やかでやさしいのだろう。
どうして、こういうときに真っ先に口を開き、
わたしを気遣うことができるのだろう。


事故による顔面のダメージは、
予測や楽観的希望を打ち砕くものだった。
「わたしはだいじょうぶよ」といって微笑みを見せるのが精一杯。

片目の視力を失うということがどういうことか、
わたしにはまだわからない。
書くこと、読むことが大好きな、姉妹のような彼女が、
その事実とどうやって折り合いをつけていくのか、

いまは見守るしかないのかもしれない。
Posted at 11:41 in nikki | WriteBacks (0) | Edit

Sep 14, 2007

なみだ

病室に入ると娘が泣いていた。 
黙ってそばにいる、
ひとりにしてあげるために離れる。
選択肢はこのふたつしかないと、
わたしはもう知っている。

もう、コドモではないのだから泣いてはいけないなんてことは、
絶対にないのだ。

もうコドモではないから泣きたいことは山ほどある。
泣いて当たり前の状況で、涙ひとつ見せずにがんばったら、
かえって心配になる。

ゆるやかになるべくおだやかに、
娘が立ち直りますように、、、。

彼女は手術を終えて、介助があれば車椅子に乗れるようになった。
でも、ダメージは両足にある。
ひとりでトイレにも行けない日々はどんなだろう。

愚痴ひとつこぼさずに耐える必要もないのに、
病気とともに生きてきた娘はまた、淡々と受け入れようとしていた。
わたしは彼女のために柔らかな素材のタオルを
娘の好きなピンク色を基調に、
何枚も用意しようと思う。
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Sep 12, 2007

小石

連絡を待っている 
連絡が来ない
そうして
あたしの前から彼が
去って行ったのだとようやく理解するとき
それをいつもあたしは
男の思いやりだと考えていた
『沈黙』というかたちで示された終止符を
何度も見つめてきた
あたしを傷付けないために
彼は黙って消えたのだと
都合よく考えようとしながらも
その静かな衝撃に耐えながら
あたしはまた一歩 森の奥へと入って行く

冷たい小石を拾ってポケットで温めながら
手は無意識に石の汚れを拭っている
彼はいい人だったに違いない
困ったようにあたしを見つめていた眼差しに
気がつかないふりをしながらよそ見をし
本当に寒かったので身体を寄せた

沈黙、という手段は 卑怯ではないよと
あたしは自分と男に伝えたいのに
もう その方法がない
彼は遠くて
あたしの感覚は麻痺している
好きだったあの低い声
含羞んだような笑顔とあたたかい手
もう届かないのだと何度も気がつくために
感情の池の淵を覗こうとする

静まり返った森の中で
ポケットの小石だけが
自分を支えている
けれど致命的な何か、はすでに刻印されているのかもしれず、、、
それを取り出して眺めることは
今は できそうにそうにない


        2005/10
Posted at 13:46 in poem | WriteBacks (0) | Edit

仕事を終えて、外に出ると夕焼け空だった。

「秋がきたんだ・・・」と思った。

夕刻6時頃、空を見るときが好きだ。
あと30分もすればこのハイライトシーンは終わり、
空は夜の色へと急ぎ始める。

この時刻、亡き父親が「黄昏」「誰がそれ」と教えてくれたひととき、
以前は自転車に乗ってどこかに向かっていることが多かった。

空を見ながら自転車に乗っていた。
帰宅途中のときもあったし、夕方からの仕事のときもあった。
空を見ながらゆっくりとどこまでも走っていたかった。
どこへも行きたくはなかった。
秋を纏い始めた雲と空に身を委ねてしまいたかった。

いまは、デスクを離れて、公園の出入り口に鍵をかけに行く。
朝は「長いな」と思っていた勤務時間を終え、
外に出ると空が待っている。
約束をかならずまもるひとのように、、、。

でもわたしは、いつだって空のもとへはいけなかった。
自転車は目的地を目指したし、
今だって空を見上げた少しあとにはデスクに戻り、
ロッカーで制服を脱いでさっさと帰り支度を始めている。

バス停に着くまでに決めなければいけない。
今日は娘の病院へ行くかどうか、今夜のご飯は何にするか、、。
それから、それから、、そう、いろんなこと。

果たされなかった約束の苦さや、信じることの難しさで、
空は濃度を深めていくようだ。
Posted at 13:32 in nikki | WriteBacks (2) | Edit

Sep 09, 2007

待つ

右足骨折のための手術は、無事に終了。
あとは免疫抑制剤との攻防だと思う。
「感染症」。。。。新たな敵に遭遇した気がする。

足と、顔面、が主な打撃だった。
足の術後は目の精査になると思う。

彼女の大切なコブタのぬいぐるみ、バムセ。
恋人は事故車から真っ先に拾い上げた。

わたしと彼は、ふたりで手術が終わるのを待った。
娘のバッグとぬいぐるみを預かって・・・。
彼はバムセのお腹に娘の腕時計を巻いて、
祈るように待ち続けた。 070907_1354~0001
Posted at 14:01 in nikki | WriteBacks (0) | Edit

Sep 04, 2007

病院の窓

集中治療室から、一般病棟個室に移った。 
あとは回復へと踏み出すのみ。

持病のある患者なので決定まで時間がかかったけれど、
ようやく足の手術日も決まった。
娘は寝返りも打てないから睡眠不足。

自分がいる場所もわからない。
わたしは廊下の窓からこんな写真を撮って彼女に見せた。
造花の飾られた六階の窓。

きっとここまで歩いていけるようになろうね。 070904_1351~0001
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Aug 29, 2007

事故

娘が交通事故に遭った。

日曜の午後、のんびり買い物していたわたしは、
娘の携帯から電話を受けた。
仲良く暮らすために引越し途中のはずの娘の恋人からだった。

「すみません、交通事故をおこしました。」
彼は娘が搬送された病院名を告げ「意識はあります」と言った。

「意識はあります・・・?」

それが何を意味するのか、不安と焦りに駆られて病院へ急ぎ、
ひたすら待った。
娘は大きな手術を二度もして、入退院を繰り返してきた。
ようやく幸せを手にしたところだったのだ。

救急車で運ばれた患者の家族が待機する場所は、
プライバシーのために仕切られてはいたが、
薄い壁や通路には緊張感が張り詰めていた。

そこは不幸を比較しあう場所ではない。
だが、看護師の小声、緊迫感、嗚咽、立ち上がって通路に出た家族の
足取りの不確かさ、、、。
さまざまな思いが胸をよぎる。

警察に行っていた恋人は軽症で別の病院で手当を受けて、
戻ってきてうなだれていた。

やっと医者の説明が聞けた。

事故の大きさのわりにはダメージはひどくない。
記憶障害や手や足の切断など、
最悪の事態を覚悟しなければいけないのだろうかという不安は、
とりあえず免れた。
内臓も、脳も、今は大丈夫らしい。
これは「不幸中の幸い」なのか!?
わからない。


数年前、「まさか」と思っていたことが目前に出現したとき、
再入院した娘を置いて、帰り道に入った深夜のファミレスには、
陽気に騒ぐ若者たちがいた。

若いひとたちはこんなにいるのに、
なぜうちの娘ばかりが何度もつらいめにあうんだろう・・・と、
思った。
同じように理不尽を感じる親は無数にいるだろう。
比較してはいけない。
けれどもやはり、今回も「なぜ・・・?」という思いから
逃れられずに苦しい。

渡された『所持品』には切り裂かれた血だらけの衣類がある。
彼女が大切に持ち歩いていたバッグの中では鏡が割れている。
わたしはなかなか正視できない。
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Aug 21, 2007

アンクレット

きっとわたしは 
あなたの気持ちを繋ぎとめるために
頷いたのだ
でも 卑怯者にはなりたくないな
わたしの有罪判決は
あなたの心には届いていない
ただ ふいにかすめた毒の香りが
あなたを惑わせたのに違いない

あなたは わたしの身につけているものを
すべて取り去り
「きれいだ」と 何度も言ってくれた
あなたがあまりに静かに
そっとつよく
わたしを抱いたので
わたしはあやうく
恋人の面影を見失いそうになった

大切にしてきたものは これで壊れてしまわないか
それは何?
それは温めてきたあなたとわたしの
微妙な安定感
あるいは恋人のこころとわたしのこころ

怖くはないの?と聞いたら
「こわい」と言った
まるで若い愛人のように
知りたいことさえ
知ろうともせずに・・・

わたしはもちろん娼婦でもなく
睫毛を伏せる少女でもない
ましてや時計を見上げる
童話の主人公である筈もないけれど
限られた時刻が
自分を見張っていることを知っている

わたしは駅の人込みにまぎれ
混雑する夕方のスーパーに辿りつこうとする
主婦だから
あなたがわたしの素足に飾りたいものは
きっと似合わない
でもそれが
秘密の約束なら
やっぱり欲しいかな

躊躇いと首肯の連鎖は
寡黙なあなたを
共犯者に仕立てるかもしれない
繋ぎとめるなんて たやすいことと
いつかわたしが教えてあげる
ありふれた御伽噺みたいに
こわくないように気をつけながらね



2005/11
Posted at 14:30 in poem | WriteBacks (0) | Edit

酷暑、残暑、晩夏。

仕事がない日には家事も雑事も山のようにある。 
山、というよりはキリのないゴタゴタだ。
そして、そういう日はたいてい体調が悪い。
もともとがクスリに頼って過ごす日々の積み重ね。
眠くて、眠くて、眠い、、、。

家を出て行った息子の部屋にはクーラーがない。
わたしはそれでも自分のスペースが欲しいから
そこを居場所にしている。。。暑い。
完璧に睡眠不足で、「眠った」という充足感がない。

だるい、頭痛もする、何もしたくない。

でも仕事がある日はどうにか頑張っている(つもり)。
もしかしたら無理してるのかもしれない。
休みだった今日は「やるべき事々」の前に立ち向かう元気がなく、
グダグダして終わってしまった。
クーラーのある部屋もあるのでそこを借りて昼寝した。
昼寝できるって嬉しい。

夏、早く終わらないかな~。
眠いのに眠れないわたしはイヤホンで中島みゆきさんの子守唄を
聴いている。
いつの間にかウトウトしている。
Posted at 14:11 in nikki | WriteBacks (0) | Edit

Aug 20, 2007

やせっぽちの猫にあう

公園を歩いていたら仔猫に合いました。 
「あ、にゃんこだ!」とその仔に向かって早足になると、
向こうも「あ、にんげんだ!しかもこわくなさそう♪」という
足取りでヒョコヒョコっと近寄ってきました。


細くて小さくて鳴き声も可愛らしいけれど、
うちにいる大きな飼い猫よりもずっと逞しい感じ。
070818_1530~0003
Posted at 12:37 in nikki | WriteBacks (0) | Edit

Aug 14, 2007

ピーチティー

この睡眠不足を増長させる夏、
わたしのお気に入りはこのピーチティー♪
桃はだいすきな果物。
たっぷりの潤い、甘くやわらかく官能的。



今日は古本屋でバイトでした。
この仕事はもう何年も続けているのだけれど、
街の片隅の小さな店は経営不振。
個人経営なので家族が動員されて、バイトが必要な日は減少。
でも、長くしているし仕事は好きだし、
辞めるわけにもいかない状態で、わたしはここともう一つへと、
二ヶ所で働いています。

もともと、丈夫ではないので多少、無理してますが、
もう少し頑張ります。


そろそろミクシィからこちらへ引っ越してこようかと、
考えています。
「goo」は多分、気紛れに書き続けます。分らないけど。

そして、ここには少し以前の詩をのせていこうかと、
今は考えています。
詩集には入っていない詩を集めて、、、、。
「ここにおいで」といって、、、。
好きな果物の手触りを懐かしむように。。。 070814_1456~0001
Posted at 13:51 in nikki | WriteBacks (0) | Edit

Aug 13, 2007

メッセージ

気がつかないふりをして 
言葉を送り続けていた

言い訳のように 陽が沈み
ついでのように 日付けが変わると

無意識にポケットを探りながら
あなたの抱擁を 思い出していた
バスに乗りたいのに乗れなくて
冬の陽が暮れるまで歩くつもりもないのに

また言い訳のように夜がきて
見知らぬ朝が訪れるまで
頑ななこころと形容詞をつけて
それでも最終章と添え書きをして
あなたに送る
受け止めてもらえる希みだけは
いつでも棄てない
そんなわたしを知っている
無数の『あなた』が
今夜も読んでいるのは
誰からのメッセージだろう

もしかしたら
投げかけたはずの
自分のフレーズが戻って来て
戸惑ってはいないか
「それで・・・」と言いかけて止めた
あのとき交錯した視線を
思い出そうとして



2004/
Posted at 14:34 in poem | WriteBacks (0) | Edit

空色のスカート 続き

雨は上がったみたい 
今日は木曜だから
あたしは森の外に自転車を出す

空から降り注ぐ
7月の陽射しの中
錆びついたハンドルに手をかける
枯草色のシャツと
薄汚れたジーンズに
履き古したスニーカー
『どこまで行くつもりだ?』

思わず自分に聞きたくなる

『行ける所まで・・・』

笑ってみる


笑顔にならない

空色のスカートの思い出を脱ぎ棄てて
いま走り出す
野ウサギのように
雨上がりの空は迷路ではなく
どこかへ
どこまでも
続いている



2005/07
Posted at 14:04 in poem | WriteBacks (0) | Edit

栗鼠

                昨日は泣いていたけれど 
今日は かぼちゃパンを食べている
客のひいた 古本屋のレジの前にすわり
ポットから紅茶を注いで

パンにはローストされたかぼちゃの種が
トッピングされている
わたしは りすのようにそれをかじりながら
りすになれたらいいのに と少し思う

小さくて 敏捷で
可愛らしくて 凶暴で
そして ほどほどに自由で

走り回って遊び
木の実をかじり
丸くなって眠る

木登りが好きだった子供の頃みたいに
地上から離れて空へも遠い
気に入った枝を見つけるだろう

わたしは小さなりす
風の子守唄に 目を閉じる
Posted at 13:51 in poem | WriteBacks (0) | Edit

電話

お盆休みに関係なく仕事はあり、 
今日は平日なので、土日の残務整理をしています。
ようやくそれもひと段落つき、ホッとしているところに電話。

ウッカリしていましたが、イタズラ電話の主でした。
前にも受けたことがあります。
今日は他の℡と間違えて、
聞かれるままに名前を名乗ってしまいました。

「きみ、いい声だね」でアッと思い出し丁重に断って切ろうと しましたが、気味悪くしゃべり続けます。
「きみは何曜日にそこにいるの?」
「ほんとはね、顔、知ってるんだよ」ときて
「おこづかい、助けてあげるよ」ときました。

歳はそれなりにとっていますが、わたしも女性です。
制服を着てここに座っていて、お客様には笑顔で対応します。

なんだか怖くなるような電話でした。
暑気払いにはなったかも・・・・?

そして、思わずパソコン私用しているわたしです。
仕事に戻ります。
Posted at 07:31 in nikki | WriteBacks (0) | Edit

Aug 09, 2007

この場所

裁定は ほぼ予測通りに進行した
逢引は見張られているし
パソコンのキィワードは読まれている

わたしには「目眩」という 新たな病態が与えられた
仰向けになろうとすれば必ず 天井や電球がぐるぐる回る
起き上がろうとするのも厄介だ

処方された少量の薬は
とても苦くて まるで効かない
目眩 苦い薬 効果なしという
三点セットで完結していて
きっとそれは繰り返される
笑いたいのに笑えない芝居みたいだ

この芝居小屋から抜け出す方法は あるのだろうか

挑むようにカメラマンを見据えている
写真のあなたはわたしです
手すりにつかまりながら
階段を上り下りして地下鉄を乗り継ぎ
あなたが帰ってきたかった場所は
ここですか?



2005/09
Posted at 07:55 in poem | WriteBacks (0) | Edit

Aug 04, 2007

Posted at 16:28 in poem | WriteBacks (0) | Edit

テッセン

新聞に中原中也と長谷川泰子の話が載っていた。
最後のページで記者は、
彼女の生き方を「テッセン」という初夏に咲く花に喩えていた。

六枚のがくが美しく、人は魅了されるけれど、
鉄のように強い蔓で何かにからみついている。
(自立できない)
強がっていても、頼れる人がいると甘えてしまう、
女性記者は自分もそうだと書いていた。

たしかに、強がりでいることは「強いこと」ではないから、
誰かを頼りにしたいし、こころのよりどころも欲しい。

精神的な(或るいは生活面でも)、「支え」を求め続けて、
自由奔放に生きた長谷川泰子という女性に改めて興味を持った。

そしてその生き方をあの紫の表情を見せるテッセンという花に
重ねてみた記者の視点もまた面白かった。
きっと若い女性記者なのではないかしら、と思ったりした。
Posted at 13:25 in nikki | WriteBacks (4) | Edit

Aug 03, 2007

地図を見る

灰皿町の地図を見ていました。
この町の真ん中近く、川が流れています。
わたしの家、その川に近いのがすごくすごく嬉しいです。


橋にもたれて川を眺めているのは大好きです。
いつまでたっても飽きずに見ています。
こどもの頃から近くに多摩川があったからでしょうか。


川は海へと続いています。
流れていくんですね。


さて、こことgooブログをリンクさせたので、見直してみました。
2005年の秋に「はてな」ブログへと引っ越しているので、
ずいぶん間のぬけたブログになってる感じです。
そう思って「はてな」に戻り、
地図を眺めるように「過去記事一覧」を見てみました。
そして、ところどころ「はてな」日記をgooに貼り付けて
空白を埋めようかと思い始めました。

去年は、ミクシィ率が多かったのでそれはそれで良しとします。

地図って面白い。
だって時間の流れに似ているから。。。
Posted at 08:57 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Aug 01, 2007

トップページの完成

「パソコンに触れるだけのわたしは、多分おんぶに抱っこに
なる可能性があります」と即効寄り掛かり状態で桐田さまに
メールでお願いして、トップページを作成していただきました。


そして、きれいにレイアウトされた出来上がりを見て、
いまさらビックリして、またドキドキしました。。。

「紫色の恋の夕景」にもいけるようになっているので、
マイペースのまま時間をみて書いていこうと思います。
そのうちミクシィから引っ越してくるつもりです。
Posted at 15:03 in n/a | WriteBacks (6) | Edit

Jul 24, 2007

ここから見える空

こんにちは、すみれこです。
ウロウロ、ぼやぼやしているうちにここに辿り着きました。
すごいお名前がたくさんあってドキドキしています。
それから、パソコンに詳しくないので不安もあります。
でも管理人さんにお聞きしながら、トライしてみようとおもいます。

この公園の野原にひっそりと咲いてる菫。
小さな根を逞しく張って、空を見上げようとしながら、心地よい風を感じています。
Posted at 15:51 in n/a | WriteBacks (2) | Edit
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