Jul 31, 2024

あれこれと

a1

フミコはたまきたちに招かれて、
ジェニーたちの部屋で
買ってきたばかりのスイカを食べていた。

懐かしい味。
と言っている。


a2

やっぱり。
スイカの原産地は南アフリカの
砂漠やサバンナだって聞いたことがあります。
とジェニーが言った。


a3

私たちの都は交易も盛んだったので、
市場に行くと
手に入ったお馴染みの味よ。


a4

その頃、サラも帰宅して
冷やし中華の材料をテーブルに並べていた。


a5

このトマト、ジャンの家庭菜園で
採れたんですって。
あの人多趣味だねー。


a6

全日本冷やし中華愛好会って知ってる?
随分昔に「空飛ぶ冷やし中華」っていう
本を出したところだよ。
古本屋にあるかな。


a7

アイスは、デジャでハリーに会っていた。

話ってなんだい。


a8

実はジャンのジオラマの村に鏡の扉を作って、
マークの集落と繋げたいと思っているんですが、
一応ハリーさんにもお知らせしておこうかと。


a9

ふむ。
知らせてくれるのは嬉しいが、
そんなことわざわざ私に断らなくてもいいんだよ。
呪力をどんなふうに使おうと全て君の自由だ。
ただし自己責任でね。

ありがとうございます。
あともう一つお伝えしたいことが。
マークの集落にはフラハという魔術師がいて、
色々お世話になったんですが、
彼はハリーさんの幼馴染だと言ってました。

なんと、懐かしい名前だな。
フラハはそんなところにいたのか。

変わった名前ね。
とヴィヴィアンが言った。

スワヒリ語で、幸せとか喜びとか希望
という意味のおめでたい言葉だよ。

そうだな。あいつにも会えるというわけか。
だったら、いっそのこと、鏡の扉は、
魔術劇場の中に作ったらどうかな。
どうせ古代の呪術で固定式のやつを作るんだろう。
誰でもアフリカに飛んでいけるような扉を、
公の場所に作ると、やがて大騒ぎになるぞ。


a91

どこに作るかは、私も気になっていたんです。
魔術劇場の中なら安心だし、
この町の一般人や観光客にも知られずに済む。
じゃあ、そうさせてもらいます。
さっそくマークにも知らせないと。
じゃこれで失礼します。


a92

アイスさん格好いいですね。
とバーテンダーのジョニーが言った。

アイスって、あんなに礼儀正しかったっけ。
自分が強力な呪力を得て、魔族について
敬意を払うようになったのかもしれないな。
お前とは。

私は悪魔だからね。
それにこれからどうなるか
わからないでしょ。
そりゃそうだな。


解説)
続きます。
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Jul 30, 2024

スイカを買いに

a1

ジェニーたちの部屋で。

連日猛暑だね。
スイカでも食べたいわ。


a2

服着替えたことだし、
スイカ買いに行こうよ。


a3

たまきとナオミは、
広場に出かけた。

涼しそうなお揃いのショートパンツね。
セリアで売ってたのよ。
サイズがぴちぴちだったけどなんとか。


a4

暑さのせいで割と閑散とした広場には
浴衣姿の舞や駒井魔子がいた。

大道芸人たちの歌声が流れている。

おとぎ~ばなし~の王子でも~🎵


a5

たまきは早速スイカを買っている。


a6

美味しそうなの食べてるね。
と、たまきは舞に声をかけている。


a7

ベーカリーで無料で作ってくれるのよ。
特別サービスなんですって。
私もう食べすぎちゃって。
と魔子が言っている。


a8

ベーカリー前は子供たちで
賑やかだった。
奥に見知らぬ女性がいる。

あの人は?
ヴィヴィアンが変身して
魔法で蘇らせたっていう噂の人。
フミコって言うらしいよ。


a9

フミコはルビーと話していた。

すっかり寝坊しちゃって。
でもこれ食べたらシャキッとしたわ。
昔はこんな食べ物なかった。
歌にもあるからねー。

とルビーが言っている。


a91

ソフトクリームをもらったたまきは、
さっそくルビーたちに話しかけている。

毎日暑いねー。
これってすごいサービスじゃない?
サラからマシンの差し入れがあってね。

あ、こんにちは。
わたしはたまき。

私はフミコって言います。
この世界には来たばかりなの。
そうなんですってね。
よかったら私が案内しましょうか。

それいいね。
と椅子に座っていたアイスが言った。
町の人はみんな知り合いみたいなものだけど、
たまきなら信頼できるし
暇そうだし古株で特に顔が広いから、
案内してもらうのにうってつけだよ。
私はちょっとハリーに相談事があるので、
たまきお願いするわ。

了解。
暇そうで古株は余計でしょ。


a92

大道芸人たちは
2番の歌詞を歌っている。

おとぎ~ばなし~の王女でも~
むかし~はとて~もたべられない
アイスクリ~ム アイスクリ~ム🎵


a93

サラもトマトを買いに来ていた。
このトマト美味しそうね。
急に冷やし中華が食べたくなっちゃって。
と言っている。


a94

全日本冷やし中華愛好会って知ってますか?
そんなのあるの。



解説)
続きます。

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Jul 29, 2024

広場に戻る

a1

翌朝、ジャンのバービーハウスに泊まった
アイスとマークは、倉庫の鏡の扉から
魔術劇場に戻ることにした。
広場にトマトを届けるため、
ナタリーも一緒に行くことになった。

明るいと、
庭のジオラマ村がよく見えるね。


a2

よくこんなに作ったなあ。


a3

ジャンとマークが話している。

ずっと君と同じタイプのフィギアが欲しかったけど、
精霊の君に会えたから大満足。
すごく驚きの体験だったよ。

僕も自分とそっくりのフィギアが
あんな物語の主人公になっていたなんて
なんだか不思議な気分ですよ。
一晩お世話になりました。
今度はぜひ私の家にも遊びにきてください。


a4

3人がジャンの家の倉庫から
黒いドアを使って魔術劇場に移動すると、
カーミラが遅い朝食を食べていた。

二人とも朝帰りなのね。
と言われている。


a5

ゆうべは遅くなったので
郊外のジャンの家に
泊めてもらったんです。
フミコの様子はどうです。

まだ起きてこないところを見ると、
ぐっすり眠っているんじゃないかしら。


a6

その時、
魔術劇場の部屋の整頓や管理を
メルティと二人で任されているデュアンが、
鏡の扉から現れた。


a7

大変です。
フミコさんが起きてこないので、
ちょっと彼女の寝室に様子を見にいってみたら、
ぐっすりお休みのようでしたが、
部屋の隅に見慣れない観葉植物が。
と思ってよく見ると、
なんとその植物には手足と顔があって、
私を見ると忽然と姿を消したんです。


a8

ああ、それきっとグリーンマンよ。
グリーンマンはフミコの可愛がっている生き物で、
アフリカからついてきたんだわ。
結構ひとみしりのようなの。

魔術劇場の中の各部屋は、
それぞれが魔法陣の上にあって、
魔術で生みだされた異世界のようなもの。
特別な呪文を唱えないと出入りできないはずだけど。
とカーミラが言った。

グリーンマンは古代の呪法を授かっているから。
きっとフミコのことを強く思い浮かべると、
呪文になる言葉が脳裏に浮かんで、
心中で唱えるとフミコのそばに移動できるのよ。

そんなのありなの。
とカーミラが言った。


a9

アイスとマークは広場に出てきた。


a91

ひと足さきに広場に来ていたナタリーは、
農産物直販店にトマトを搬入していた。

美味しそうなトマトだね。
食べごろなのを選んできたのよ。
今晩は冷やし中華だね。
などと話している。


a92

アイスは、
佳奈に出会った。

これアイスじゃなくてソフトです。
と佳奈に思いつきのジョークを言われている。


a93

ベーカリーのテーブル席では
みんなソフトクリームを食べていた。


a94

ルビーとレイチェルが話している。

あれエスプレッソマシンでしょ。
サラに頼まれて、
私がソフトクリームメーカーに改造したのよ。
サラがみんなにも使ってもらってって。



解説)
続きます。
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Jul 28, 2024

ジャンの倉庫で

a1

今日は採れたてのトマトで、サラダと
シチューを作って、みんなに夕食をふるまう予定なの。
リリスはそういうと、ドアからジオラマ村に帰っていった。


a2

さて、これから何しようか。

ジャンのフィギアのコレクション見せてよ。
マークも興味あるでしょう。
とアイスが言った。


a3

これ、ほんの一部なんだけど、
と言いながら、ジャンは箱に入った、
フィギアを運んできた。


a4

ふーん。
精密にできてるんだね。

総統のフィギアもあるんだ。
これは僕が加工して
ペイントしたオリジナルなんだよ。
ジャンはちょっと得意そうだ。


a5

これは米軍兵士だね。
僕のフィギアも、こんな感じなのかな。


a6

これは、さっきの人。

リリスの本当の姿だよ。
っていうか、どっちが本当ってわからないけど。
その人形に宿っている精霊がリリスなんだ。
落とすと後で怒られるから気をつけて。


a7

さっきリリスも言ってたけど、
この写真コミックにも、
リリスそっくりの顔の魔女デジャが登場するのね。

そうなんだ。
それも僕がその本の世界に
親みを感じた理由の一つなんだ。
とジャンが言った。


a8

やがて時が流れ。

もう夜が更けたわね。
そろそろ母屋に引き上げない?
明日は広場に行って、収穫したトマトを
岸さんの農産物直販店に届けるの。
ちょっとしたお小遣いになるのよ。
とナタリーが言った。

アイスたちはどうする?
泊まっていったら?


a9

それがいいよ。
アイスもマークも
バービーハウスに泊まるなんて
初めてだろ。
まだ話も尽きないしさ。
とジャンが言った。

鏡の扉で魔術劇場に帰ってもいいけど、
もう夜も更けてるし。
じゃあ、そうさせてもらおうかな。
マークどう?

う、うん。
よろしくお願いします。


a91

4人が倉庫を出て
母屋に向かう途中、
庭のジオラマの集落では、
家家に灯りが点っていた。


a92

見ているとやがて明かりは消えていき、
一軒の家だけ点っている。

あれはリリスの酒場だよ。
今頃みんなで
トマトシチューを食べてるんだろうね。
などと言っている。



解説)
続きます。

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Jul 27, 2024

マークのフィギア

b1

ジャンは棚から本を取り出して
手に取りながら言った。

君のことは、この本に載っているんだ。

そーなんですか。


b2

これは、
マーク・ホーガンキャンプと
クリス・チェレンの共著で、
2016年に出版された
「Welcome to MARWAENCOL」。
解説文も多く含まれているが、
いわゆるアートブック、
グラフィックノベルの写真版だな。


b3

写真漫画なんですね。

そのストーリーに登場する、
主人公のマーク大尉の写真を見たまえ。

おおこれは私そっくりの顔立ちだ。

僕はね。僕と同じように、
6分の1サイズのフィギアを撮影した
連続写真で、ストーリーを作っている人が
いることにも感動したんだが、
戦争中に主人公マークが乗っていた戦闘機が不時着して
マークは地元の村の住民に助けられ、
その村のリーダーになってドイツ軍と戦うという、
その本のストーリーにも惹かれてね。
その主人公に使われているフィギアが欲しくなって、
ずっと探していたんだ。

そのモデルが僕だったというわけですね。


b4

その本の内容は、著者の一人、
マーク・ホーガンキャンプさんの体験も含めて、
ロバート・ゼメキス監督の、
「マーウェン」っていう映画にもなっているの。
ジャンはその映画にも感動して、
色々ジオラマ世界のことを空想していたんだけど、
そんな時、この倉庫の扉の向こうに
その本や映画の世界みたいに、
フィギアたちの暮らす村が出現した。
だから、マークさんのフィギアは、
ジャンにとってとても特別な意味を持っていたのよ。
とナタリーが言った。


b5

その時、扉からリリスが現れた。
あ、よかった。まだいたのね。
と言っている。


b6

アイス。村に来てくれていたんですって?
店の裏の畑にいたので気が付かなかったわ。
おや、トマトの収穫はこちらも同じみたいね。


b7

あなた、その本に出てくるマーク大尉にそっくりね。
ジャンがとうとう探していたフィギアを入手して、
ヴィヴィアンに魔法で人間の姿にしてもらったの?

いえ、僕は戦争中に砂漠の嵐を潜り抜けたら、
こちらの世界に辿り着いていたんです。
自分がフィギアだったなんて知らなかったんですよ。


b8

そうなのね。
私は人形の精霊のリリス。
その写真漫画にも、
デジャっていう魔女が出てくるでしょ。
そのモデルが私とそっくりなのよ。

すごい偶然ですね。
偶然なのかしら?


b9

あなたが元いた世界も、
たぶん誰かが想像したものね。
その人もきっとその本や映画を見て、
あなたの元になったフィギアを手に入れて、
空想の世界で戦場を設定して遊んでいた。
でも何かの理由で使われなくなった。
その時、ジャンがそのフィギアを
探し求めていることを知った誰かが、
この世界で再生できるように
導いたのかもしれないわ。

そんな誰かって、いるんですか。

私もピエロの服を着せられた人形だったけど、
何世代も持ち主が変わって、今では
ジャンのジオラマ村で暮らせるようになった。
人形やフィギアの運命なんて
何が起きるか分からないものなのよ。


b91

リリスは長い間いろんな人の思いを浴びて、
呪力を持つ精霊になったんでしょ。
私はこの前、魔族のフミコから呪力を授かったの。
魔術なんて柄じゃないけど、
その呪力を使えば、ジオラマの村と
アフリカのマークの家の間に、
この倉庫に出現するドアみたいに、
鏡の扉を生み出すことができる。
そうすればみんな簡単に行き来できるようになる。
でもそんなことして大丈夫かな。


b92

リリスは、
ちょっと考え込むような表情を浮かべた。

大丈夫か、というのが、安全かと言う意味なら
全く安全とは言い切れない。
でも何にでもトラブルはつきもの。
それに、あなたの考えていることには
もう前例があるのよ。

ジャン、覚えている?
この黒いドアは、私が家を建ててくれたお礼に
あなたにプレゼントしたもので、
特別な鍵を使って通れるものだった。
そんなことができたのは私がこの倉庫に
人形たちと一緒に、ずっと住んでいた精霊だったからよ。
でもアイスが授かったという魔族たちの呪力は別。
もっとずっと強力なものなの。


b93

2年前にヴィヴィアンは、マーリンが
ヴァンパイアたちのために作ったルーマニアの別世界に
義勇兵になっていきたいという村人たちの要望に応えて、
彼らのフィギアに魔法をかけた上に、私の酒場の中に
その別世界や魔術劇場の中に通じる扉を作った。
この黒いドアも鍵なしで通れるようにしてしまった。
それで、すごく便利になったけれど、
結果として村人の多くは別の世界に流出してしまったわ。

元々フィギアたちの村は、
ジャンの庭のジオラマの村作りの空想から始まった。
その思いがこの土地と共鳴して通路が開かれたの。
魔族の呪力は、そういうことと別に
根こそぎ世界を変えてしまう力を持っている。

でもアイスが、ジャンがずっと探していた
マーク大尉のフィギアの精霊を村に連れてきたのも、
魔族の呪力を授かったというのも、
新しい扉を作るためかもしれないわね。
退屈してたみんなも喜ぶでしょうから、
やってみたら?

あ、もうこんな時間。



解説)
続きます。

ジャンの言っていることは、
ほぼ現実をなぞっています。
ネットのホーガンキャンプ氏のサイトや、
映画「マーウェン」を見たり、
アートブック「Welcome to MARWAENCOL」
をネットで取り寄せたりしたのは、
2021年の夏の頃。
このマイブームが、ジオラマ村のエピソードに
発展していきました。
ドラゴン社製の主人公マーク大尉のフィギアは、
その頃から折々に探していましたが、
なんと3年越しに今年のドールショーで、
素体とヘッドのみのバラ売り状態で見つけました。
それがマークの登場する最近の
エピソードにつながっています。

「Welcome to MARWAENCOL」
のやや詳しい解説などは、
2021年8月13日「あれこれの会話」
に載っています。
Posted at 20:35 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 26, 2024

ジャンに会う

a1

アイスとマークは席を立って
出発しようとしている。


a2

リリスの酒場の二階にあるドアからは、
魔術劇場にも、ジャンさんの家の倉庫にも行ける。
倉庫への通路は、最初にリリスが生み出したものね。

リリスって。

あ、リリスっていうのは、人形の精霊で、
リリスの酒場を経営してる。
この村のフラハさんのような魔術師よ。
村の出現には彼女の力も関わっているの。

またややこしいんですね。

マークにもリリスを紹介したかったんだけど、
酒場に姿が見えなかったわね。


a3

多分畑に出ているのよ。
アイスたちが来たことを伝えて、
ジャンの倉庫にいるって言ってくるわ。
とエルザが言った。


a4

あ、もう帰っちゃうんですか。
もっとお話聞きたかったのに。
などとブランカたちに言われている。


a5

また来るわよ。
みんな歓迎してくれてありがとう。
とアイスは言った。


a6

二人がリリスの酒場の二階から
鏡の扉を使ってジャンの家の倉庫に移動すると、
ちょうどジャンとナタリーがいて、
二人は収穫したトマトの仕分け作業をしていた。


a7

おや、アイス。
君がそのドアから現れるなんて、
どういう風の吹き回しかな。
とジャンが意外そうな顔をしている。


a8

実はジオラマの村に行ってたんです。
こちらは友人のマーク。


a9

初めまして、
僕はフィギアの精霊で。
とマークが言いかけると。


a91

ジャンはマークの顔を
まじまじと見つめた。


a92

おお。
いまフィギアの精霊だと言ったね。
僕は君を、というか、君の元になった
フィギアを随分探していたんだよ。

え、そうなんですか。


a93

その横顔の輪郭線。
眉間の皺。険しいような
困ったような表情。
やっぱりマーク大尉だ。

この人があれだったのね。
とナタリーも言った。



解説)
続きます。
Posted at 20:24 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 25, 2024

フィギアたちの村で

b1

ビールや食べ物が運ばれてきて、
3人の会話は盛り上がっている。

私たち、ここはドイツの片田舎の小さな村、
という認識だったの。
村を守備していたドイツ軍と、
進駐してきた私たち連合軍が争奪戦を
繰り広げていたというわけ。
でも人間の世界と関係ができて、
わかったことは、ここの風景が、
人間の世界のコピーだったこと。
ジャンっていう人が、
自分の庭に作ったジオラマの集落や、
周辺の自然がそっくりコピーされていたのよ。

ファンタジックな話だね。
ブラッドベリが好きそうな。
とマークが言った。


そればかりじゃない。
ジャンさんの庭で、ジャンさんたちが
フィギアを使っていろんな情景を
作ったり、情況を設定したりすると、
この村で似たようなことが起きて、
時にはその逆の場合もあって、二つの世界に
対応関係があるっていうこともわかった。

なんだかいつも通り、
ややこしくなってきたな。


b2

それって、迷いの森から
怪物がやってくる前のお話でしょう。
怪物をアイスさんが退治してくれてからは、
米軍とドイツ軍が協力し合うようになって、
この村は至って平和。
ジャンさんがご自分の家の庭で、
フィギアで戦争遊びをしても、この村で戦争は
起きなくなったっていう話よ。
と側で聞いていたクリスが言った。


b3

そうそう。
この村の住民も人間の世界に引っ越したりして、
パラレルだった二つの世界が融合した感じね。
とアイスが言った。

村人もだんだん少なくなって、
どうなるのかなあ。


b4

ブランカは隣のテーブルの同僚たちと
話している。

ぶ、物騒だなあ。
そんなの手に持って。

さっきまでこのルガーで、
ハンナと射撃訓練をしてたところなの。


b5

平和とはいえ、
いつ何時怪物が襲ってくるかもしれないからね。
パトロール行ってる?
今日はエルヴィンさんが出かけてる。
彼はジョーたちと人間たちの町に引っ越したけど、
今でも欠かさずパトロールには協力してくれているんだ。
流石にわがドイツ軍部隊の元リーダーだね。


b6

噂をしていると
エルヴィンを乗せたキューベルワーゲンが、
ビアガーデン前に停車した。


b7

やあ、アイスじゃないか。
珍しいな、君がこの村にくるなんて。
とエルヴィンが挨拶している。


b8

アイスはマークをエルヴィンに紹介して、
ここにきた事情もかいつまんで話した。

ふむ。
マークさんは、アフリカ戦線に従軍されていたのか。
私もアフリカでは随分と暴れたものだ。
どこかで遭遇してたかもしれないね。

もしあれが地続きの現実だったら、ですね。
エルヴィン・ロンメル将軍の武勇伝、
砂漠の狐の噂はよく聞きましたよ。

私は自分がフィギアの精霊で、
元になったのがそのロンメル将軍だと
知った時はショックだったな。
私にとってはこの世界の記憶が現実なんだから。

僕の元になったのはどんなフィギアなんだろう。
とマークが言った。

そのことだけどさマーク。
私、あなたの顔どこかでみた気がするって、
ずっと思ってたんだけど、
やっと思い出したわ。本の写真に載ってたのよ。
とアイスが言った。


b9

マークとエルザは驚いている。

その本、ジャンさんの家で見たのも思い出した。
これからジャンさんに会いに行こう。

人間の世界とこちらの世界との最初の接点は、
ジャンさんの家にある倉庫のドアだったの。
フィギア好きのジャンさんはキーパーソンね。
あの本持ってたんだから、
きっとマークのことを知ってるわよ。



解説)
続きます。
Posted at 20:22 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 24, 2024

フィギアたちの村へ

a1

魔術劇場の中の鏡の扉から
フィギアたちの住む村の
リリスの酒場の二階に移動した
マークとアイスとエルザは、
酒場を出てエルザに案内されて村を見て回った。

3人は酒場の前の
ビアガーデンのようなところに
やってきた。


a2

クリス、ビールお代わり。
と客らしき兵士が言っている。


a3

アイスは、クリスと呼ばれた女性が、
リリスの酒場のカウンターで
バーテンダーをしていたのを
思い出した。


a4

近くにいた女性兵士たち、
ブランカとハンナが、
アイスたちに気がついたようだ。


a5

やあエルザ。
それにアイスさんが来るなんて珍しいわね。
とブランカが言った。

お会いできてうれしいわ。
とハンナが言った。
アイスさんはこの村の英雄ですから。
お連れの方は?


a6

ああ、この人はマーク。
あなたたちと同じフィギアの精霊よ。
私の友人で今日は村の見学に来たの。


a7

椅子席に座ったエルザは
さっそくクリスにビールを注文している。
いつもの大ジョッキを三つね。
あと食べ物は適当に。

了解。


a8

マーク、村の感じはどうだった?
とアイスが訊いている。

僕たちの集落と同じくらいの規模かな。
でも住民がフィギアの精霊ばかりなんて驚きだね。
軍装の人ばかりで、戦時中だった
前の世界を思い出したよ。

ブランカたちが
興味深そうに立ち聞きしている。


a9

マークさん。
戦地はどこだったんですか?
と、
好奇心を抑えきれずにブランカが尋ねた。

あ、アフリカ戦線でしたよ。
砂漠を転戦していたんです。


a91

マークはね、
この人間の世界に来てからも、
アフリカに住んでいて、ジャングルの中に
自分たちの集落を開拓したのよ。
とアイスが言った。

すごい方なのね。
行ってみたいわ。
などと話が盛り上がっている。



解説)
続きます。
Posted at 20:28 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 23, 2024

ソフトクリーム

a1

久しぶりにサラたちの部屋。


a2

今日も暑いね。
てるてる坊主そろそろ片付けたら?
昨日の夜は雷雨があって停電したでしょう。
まだ必要なのよ。


a3

部屋にはレイチェルが来ていて、
ペンギンで使っていた古いエスプレッソメーカーを、
ソフトクリームメーカーに改造していた。


a4

これでもうすぐ完成よ。
だけどよくこんなこと思いついたわね。


a5

毎日暑いからね。
改造できないかなと思ってたら、
あなたがロボット学者だったこと
思い出したの。


a6

オセロは無心でバナナを食べている。


a7

みんな注目している。
ソフトクリームミックスを入れて、
そのスイッチを押せばいいのよ。
あ、コーンカップを忘れないで。


a8

なんとソフトクリームが
出来上がった。


a9

サラとレイチェルは
早速ソフトクリームを舐めている。
あま。


a91

実験成功。
実験だったのか。


a92

ねえ、頭蓋骨のお父さん。
この前佳奈がきて、
ウィヴィアンがフミコっていう人を
頭蓋骨から魔法で蘇生させたって言ってたわよ。
お父さんもやってもらったら?
とメアリー=ケイトが言っている。


a93

僕たちはこのままでいいんです。
この姿で蘇ったんですから。
と元人体の骨格標本だったジェイソンが言った。
机の下でメメもメーメーと言っている。



解説)
今回は思いつきで、見た目だけの
ソフトクリームメーカーの簡単工作。
ベースにぷちサンプルシリーズ「ぷちかわキッチン」の
「2、うれしいプレゼント」の
エスプレッソメーカーを使用しています。
パーツを二つに分離して、
間にスチロール板で作った箱状の枠を繋いで
アルミ箔のテープを巻いて高さを出しました。

ソフトクリームは主にアゾンで買ったバラ売りを使っています。
Posted at 20:26 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 22, 2024

マークを案内する

a1

アイスとマークが
魔法劇場を出ると、
広場は割と閑散としていた。
毎日暑いのでみんな家に篭りがちのようだ。


a2

マークじゃない?
と佳奈が言っている。
やあ佳奈。

鏡の扉を使って
アフリカから直行で来たのよ。
とアイスが言っている。


a3

こっちはマーク。
あっちはルビー。
一緒にベーカリーを経営してる
CGの仲間で私の相棒よ。
とアイスがルビーを紹介している。

佳奈から色々聞いてるわ。
どうぞよろしく。


a4

マークはフィギアの精霊なの。
誰かジャンのジオラマの村の人、
広場に来てないかなあ。

さっきジョー軍曹とエルザを
見かけたけど。


a5

ジョー軍曹とエルザは
マンゴー亭で肉まんを食べていた。


a6

また涼しそうなのに着替えたのね。
夏はこういうのが一番。
とアンナが言っている。


a7

やあ、ジョー、エルザ。
君たちに紹介したい人がいるんだ。
こちらはマーク。
君たちと同じように
かっては戦時中の世界で暮らしていた
フィギアの精霊だよ。


a8

それは珍しいですね。
魔族のヴィヴイアンやハリーが
フィギアや動物の精霊を、
魔法で人間の姿にしてしまうのは、
何度も見ていますが、あなたも?


a9

いや、そんなことのできる
魔族の存在を知ったのは
この世界に来てからのことです。
僕はてっきり自分が人間だと思い込んでいたので、
いまだに自分がどんなフィギアだったのかさえ
知らないんです。


a91

私たちもみんなそうでしたよ。
僕らがいたのはヨーロッパ戦線で、
小さな村をドイツ軍から守る部隊の軍曹だったんですが、
こちらの世界と接触があってから、
真相がわかってきたんです。
今はこんな格好していますが、
ずっと軍服姿で、なぜか、こんな
ドッグタグを身につけていたんです。

ジュー軍曹が取り出してみせたドッグタグには、
GIジョーと刻まれていた。


a92

私はエルザ。
戦地ではジョーの部下だったの。
戦場だった村は怪物に襲われたのがきっかけで、
アメリカ軍とドイツ軍が協力するようになり、
今では平和に共存して、
不意の怪物の襲来に備えながら暮らしている。
ルーマニアにある別の世界に行った人たちや、
私たちみたいにこの町に移住した人も多くて、
村人の数は減少気味だけど、
私たちの故郷であることに変わりないの。
私がご案内するわ。


a93

マンゴー亭の従業員の
アンナとレイはそばで話を聞いていた。

フィギアの精霊の人たちって、
私たち人間とどこが違うのか、
よくわからないけど、
故郷があるっていいわね。



解説)
続きます。
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Jul 21, 2024

町に帰る

a1

魔術劇場の応接間で
ハリーとヴィヴィアンとマリアが寛いでいると、
鏡の扉が現れ、
鏡の中からアイスが姿を現した。
続いてマークとフミコも出てきた。


a2

おや、お戻りね。
今あなたたちの噂をしていたところよ。
そちらの方は新しいお客様かしら。
とヴィヴィアンがいった。


a3

あ、僕はマークといいます。
アフリカのジャングルの奥地で
小さな集落の長をしています。

マークはフィギアの精霊なの。
ジャンのジオラマの村の、
人たちと同じ身の上みたいなので、
彼らに一度に会ってみたらって私が誘ったのよ。
とアイスが言った。


a4

なるほど。
私はこの館の当主のハリーで、
隣にいるのが娘のヴィヴィアン。
後ろに立っているのが姪のマリアです。
はるばる魔術劇場にようこそ。

はるばるって言っても鏡の扉を使えば、
一瞬でしょう。
ねえ最初にアイスが出てきたっていうことは、
まさか、アイスが魔法を使ったの?
とヴィヴィアンが言った。

そのまさかなの。
私、フミコに呪力を授けてもらっちゃった。


a5

一行は、運ばれてきた
料理に舌鼓を打っている。

魔法陣の上に建てられた、
この館の中なら別だけど、
どこでも鏡の扉が作れるなんてすごいわ。
私なんて同じ魔族なのに、黒猫に変身することと、
箒に乗って空を飛ぶことしかできないのよ。
とマリアが言った。

どちらも楽しそうね。
魔族はみんな特技を持って生まれてくる。
それは今も変わらないのかしら。


a6

変わらないわよ。
でも今では数も少なくなってね。
魔族でも魔法を使わない人たちもいるし、
自分が魔族だって知らない人もいる。
私、親戚以外の魔族の人に会ったのって久しぶり。
あ、犬猫同盟の集まりがあるから行かなくちゃ。
また今度お話ししましょう。
そういうと、マリアは出かけて行った。


a7

入れ替わりのように、
出現した鏡の扉から女性が現れた。


a8

あら、みなさん賑やかなこと。
私はハリーの妻のカーミラと言います。

あなたが話題のフミコさんね。
お部屋を用意してあるから、
いつでもご案内するわ。


a9

ありがとうございます。
早速ご厚意に甘えようかな。
なんだか蘇ってから
あちこち移動したせいか
ちょっと疲れちゃって。


a91

アイス、その素敵な指輪どうしたの?
とヴィヴィアンが聞いた。

フミコが、肩飾りの宝石を外して
作ってくれたのよ。
はめていると呪力が亢進するんだって。


a92

寝室もあるから
ゆっくりお休みになるといいわ。
ありがとうございます。
お言葉に甘えて。

二人は部屋を出て行った。


a93

私たちは
誰かジオラマ村出身の人がいないか、
広場に探しに行ってみるわ。
とアイスが言った。

ジオラマの村への鏡の扉は
魔術劇場の中からね。
呪文は彼らが知ってるから。
とヴィヴィアンが言った。

ありがとう。
ヴィヴィアン、さっき話した通り、
私どこでも鏡の扉を作れるのよ。もちろん、
その力は無闇に使わないつもりだけど。
では、ハリーさん、失礼します。

そう言って軽く会釈すると、
アイスとマークは部屋を出て行った。


a94

二人だけになった。

アイスのはめていた指輪って。

うん俗にいう魔法使いの指輪として
魔族の間では知られているものだな。
生前フミコがいくつか作ったものが、
ずっと伝わっていたのかもしれない。

それにしてもフミコが呪力を授けたのが、
アイスでよかったよ。
もしお前みたいなお転婆娘に授けていたら。

これからどうなるか
わからないでしょ。
そりゃそうだな。



解説)
続きます。
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Jul 20, 2024

フミコの帰郷 そのろく

a1

それにしても、
アイスが早く戻ってきたので驚いたよ。
ジャングルだけでも大変なのに、
そのうえ砂漠を超えて、
飛行機ではるばる海を越えて、
アイスの住む国まで、
急いでも片道で2、3日はかかるだろう。
とクラウドが言った。

フミコの魔法で一瞬で来たのよ。

そんなことが可能なの?

私にはわかるぞ。
リンリンから聞いたことがある。
古代の魔族は魔法で鏡の扉を出現させて
自由に遠方と行き来していたという。
グリューンも使えると言っていた。
とハンスが言った。

そういうことなのよ。
私の住む町にもフラハのような魔族の人たちがいてね。
その一家の娘さんがフミコを蘇生してくれたうえに、
一家の住む魔術劇場っていう館に
フミコは同居させてもらえることになったの。
私は故郷の様子が知りたいというフミコに便乗して、
蘇生が無事に成功したことを
みんなにお知らせしたくて来たんだけど、
あとはマークに会って帰るつもり。
とアイスが言った。


a2

フミコの蘇生が無事に成功したことは、
アーネストやアンドレアにも伝えておくわ。
またいつでも遊びにきてね。
というリンたちに見送られて、
アイスとフミコはクラウドの家を後にした。

マークっていう人は
この集落のリーダーだって言ってたわね。
そうなの。
あなたが無事に蘇生したら
あなたを案内してこの集落に戻ってくるから、
その時また会えるってマークに言ってあったの。
こんなに早くそんな機会が来るとは
思ってなかったけど。


a3

二人はマークの家に向かっていた。

マークはね。
あなたと同じように蘇生した人。
あ、それは全然違うかな。
マークは人間じゃなくて、
6分の1サイズのアクションフィギアの精霊なのよ。
でもずっと自分が人間だと思い込んでいた。
彼は戦争中に兵士として活動していたんだけど、
砂漠で嵐に巻き込まれて、そこを抜け出したら、
戦争がとっくに終わった未来であるような、
この世界に来ていたという。
でもマークが最初に生きていたのは、
誰かの想像が産んだフィギアの精霊たちの世界で、
あなたのように、同じこの世界の過去から
未来に蘇ったというわけじゃなかった。
だからこの世界に馴染めなくて、
ジャングルの奥地に集落を開いたんだけど、
リーダーのくせに寂しがり屋なの。

誰が考えたのかややこしすぎる話ね。


a4

マークの家に着くと、
クラウドの家で見かけたアマンダが
すでに庭仕事の手伝いに来ていた。
庭で草むしりをしていたマークが
気がついて近づいてきた。

アイス。驚いたな。
三日前に帰ったばかりだと思ったら、
何か途中でトラブルがあって
戻って来たのかい。

いいえ。無事に帰国して、
蘇生の呪術に成功したことを伝えに来たのよ。
この人がフミコ。


a5

アイスたちが移動に使った
鏡の扉の説明をすると、話題は
どうしてもその話になった。

鏡の扉と違って、
マークが体験した砂嵐は幽冥界との通路で、
魔法では生み出せないって、
フラウが言っていたけど。

それはその通りね。
誰でも死ぬことはできても、
自分だけの意思で戻って来れるような便利な扉はない。
鏡の扉で行けるのは現実に繋がっている別の場所や
命あるものたちの夢や想像、呪力で作られた異世界。
似ているようで全く別のことなの。

砂嵐の前にいた世界のことは、
もうあまり思い出すこともないけど、
僕はそこで第二次世界大戦の
アフリカ戦線に従軍していた兵士だったんだ。
アイスがよく似た戦争中の異世界に行ったことがあって、
そこではフィギアたちの精霊が暮らしていたというので、
初めて自分もフィギアの精霊だったことを知った。
とマークが言った。


a6

最初は自分が砂漠で戦死して、あの世にいき、
何かの計らいか偶然で、フミコみたいに未来の世界に
蘇ったんだとばかり思っていたけれど、
フラウにも最初からフィギアの精霊だと
わかっていたと言われてちょっとショックだったな。
今はもう昔のことは関係ないけどね。

戦時中だった世界が懐かしくならない?

まあ、ごくたまにはね。

だったら私の知っている、
フィギアの精霊たちの村に案内してあげられるわよ。
前にも言ったように、
私の住む町にいる魔族一家の館には、
彼らの暮らす世界に行ける鏡の扉があるの。
今ではその扉を使って村の住人たちの何人かは、
私たちの町に移り住んでいるわ。

アイス。
そんな面倒なことをしなくても
あなたの呪力で鏡の扉を生み出せば、
直接ここからその村に行けるのよ。

え。

でもまあ手順を踏んだほうがいいわね。
ひとまず魔術劇場のある町に戻って、
その村の人にマークを紹介して
承諾してもらってからのほうがいい。

私の生きていた頃には、
6分の1サイズのアクションフィギアなんてなかったけど、
木や土の人形に宿った精霊たちとはよく遊んだりした。
彼らを憶う人々の願いと彼らの願いが重なって、
そこに意志を持ったものの呪力が加わると
小さな夢のような共同の世界が生まれることがある。
そういう世界はうたかたのように
とても繊細で壊れやすいものなの。
不意の来訪者には拒絶反応を示すこともある。

そうなのね。


a7

アイスが魔術劇場を思い浮かべて
脳裏に浮かんだ言葉を口にすると、
部屋の中に鏡の扉が現れた。

マークさん、
私もアイスの住む町で 
いろんな人に出会うのが楽しみ。
あなたもいらっしゃる?

う、うん。
もちろん。
その前に庭仕事を手伝ってくれている
アマンダに留守番を頼んでくるよ。
この集落には泥棒なんていないけど、
猿が来て時々悪戯するんだ。


a8

マークはアマンダに訳を話して
留守番を頼んでいる。
貴重品は何もないけど、
大きな鳥の羽根だけが気がかりなんだ。

いいわよ。鏡の扉を使って行くなんて
フラウが聞いたらきっと羨ましがるわね。


a9

かくてアイスたちは
魔術劇場に戻って行った。
グリーンマンが
ちょっと悩ましそうな顔をして
その動きをじっと眺めている。



解説)
続きます
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Jul 19, 2024

フミコの帰郷 そのご

a1

コーヒーを飲んでいたフラハは、
裏庭に突然鏡の扉が出現したので驚いている。


a2

扉からは、アイスが、
知らない女性を連れて現れた。

君は先日マークと一緒に来た
アイス君だったな。
呪力がさっぱりだった君が
鏡の扉を使ったのか?

あ、まあそのようです。
あちらの女性はフミコよ。
この前の頭蓋骨、無事に蘇生に成功したの。


a3

フラハとアイスは
冗談のような挨拶を交わしている。

あなたがフラハさんね。
私の蘇生を試みてくださった方だと
アイスから伺いました。
私はフミコ、その昔魔族の都で
暮らしていました。

おお、伝承どうりだったわけか。

突然驚かせて悪かったけれど、
フミコの蘇生を気にかけてくれていた皆さんに、
特にハンスさんに早く伝えたくて、
この集落に戻ってきたの。
とアイスが言った。


a4

鏡の扉には出現させる呪文と、
移動するための呪文があるんだったな。
魔術の書があれば私にも可能なんだが。

魔術の書。私もハリーさんの魔術劇場で、
拝見しました。
でも私が生きていたのは、
その書物が編纂されるずっと前のこと。
呪力のある人はみんな自分で呪文を生み出す
力を持っていたのよ。

そうかハリーに会ったのか。
蘇生の呪文を唱えたのはやはりあいつだったか。

そうじゃなくて、フミコを蘇生させたのは、
私が言ってたハリーの娘のヴィヴィアンっていう悪魔。
とアイスが言った。
そうだ、フミコの蘇生って言えば
そのことをハンスさんたちに伝えにきたんだった。
そろそろ行かないと。


a5

ということで、
アイスとフミコはフラハの家を後にした。

フラハさん、ずいぶん鏡の扉にこだわっていたわね。
どこでも扉を生み出すことができれば便利でしょう。
今のあなたにはそれが可能なのよ。
でも無闇に使うべきじゃない。
鏡の扉に頼りすぎると肥り過ぎたりして
悲惨なことになるわ。
健康のために歩きましょう。


a6

二人はクラウドの家のまえにたどり着いた。
みんないるかなあ。


a7

アイスがあまりにも早く
戻ってきたので、
みんな何があったのかと驚いていたが、
魔術で蘇生したフミコが一緒にいるとを聞くと、
最初の驚きは別の驚きに変わっていった。


a8

お父さん、これで心置きなく
リンリンに会いに行けるわね。

うん。グリューンとの約束が果たせたことになるからな。
グリューンはもうフミコさんに会って、
知っているんだろうけど。
あ、グリューンっていうのは
グリーンマンのことですよ。
フミコさん、グリューンは元気でしたか?

ええ、今たぶんその辺にいると思いますわ。
とフミコは言った。


a9

なんとグリーンマンは、
ジャングルの茂みから姿を現した。
ハンスを見つめて
喜んでいるようにも見ようと思えば見える。

なんとあんなところに。

私たちについてきたんです。
そういうとフミコは、
何やらグリーマンに聞こえない声で
話しかけている。


a91

しばらくしてグリーンマンの姿は
ジャングルの中に消えていた。

何を話していたんです?

茂みから私たちの様子を見ていて、
ハンスさんがいるのに気がついて、
思わず顔を出したらしいわ。
ハンスさんが蘇生したことは、
リンリンから聞いて知ってたって。

シーザーがリンリンに
伝えてくれたんだわ。
とアイスが言った。

ハンスさん、
あなたが約束を守ってくれたことを、
すごく喜んでいましたよ。
リンリンも会いたがっているって。

そ、そうでしたか。

ずっと私たちについていきたいけど、
遺跡からあまり離れると
遺跡やジャングルを守れなくなる。
とも言ってた。
あなたはもう自由なんだから、
好きにしていいのよ。
って言っておいたわ。
あれで結構悩んでいるのよ。

複雑なストーカー心理なのね。
とアイスが言った。



解説)
続きます。
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Jul 18, 2024

フミコの帰郷 そのよん

a1

二人が月の扉のある部屋に戻ると、
リザードがまっていた。

おお、フミコ、蘇ったのだな。
ここの月の扉が使われたので、
もしやと思ってきてみたら、
やはりお前だったか。

リザード、本当に久しぶりね。
あなたが魔族の蘇生の呪文を
アイスに教えてくれたおかげで、
蘇ることができたの。
感謝してるわ。


a2

大昔の仲間内の戦争の結果、
というか、正確にはお前が死んでからのことだが、
我々レプテュリアンはむやみに人間と
接触してはならないという決まりになったんだ。
戦争が起きたのも、我々だけが
魔族と接触して文化を分かち合い、
仲間の嫉妬を買ったしまったのが原因だったからな。
ここの再興計画が中断したのもそのせいで、
魔族の協力が得られなくなったのでね。

だから人間に我々が記録した魔族の
呪文を教えるのは協定違反だったんだが、
あのグリーンマンの身の上が哀れでね。
再会を果たして自由にしてやったかい。

フミコはアイスにも話した
グリーンマンや動物たちとのやりとりを、
リザードにも伝えた。


a3

なんとそんなことを言ったか。
お前のかけた魔法が強力すぎたのかもしれないな。
はは冗談だよ。
彼らが遺跡とその周辺を
これからも守ってくれるのは
我々にとっても好都合だ。

私が蘇ったことをお仲間に知らせたの?

いや知らせるつもりもないよ。
知らせても、再生を繰り返して
生き継いでいる仲間も少なくなり、
お前の強大な呪力のことを覚えているものは、
もうほとんどいないだろう。

私はたまたまジャングルにリクガメ探しにきて、
知り合ったチンパンジーのリンリンに
何度かここの遺跡にまつわる昔語りをしていて、
お前のことをよく覚えていただけだ。
そうしたらグリーンマンの、お前を慕う、
哀れな話を聞いたのだよ。

あなたたちのリクガメ収集の趣味は変わってないのね。
とフミコが言った。

そうなんだ。
あ、そろそろおやつの時間なので
失礼するよ。
とリザードは言った。


a4

あっという間に行っちゃったわね。
レプティリアンって、
1日に何回おやつを食べるのかな。

ねえフミコ、もしできたら、
私、あなたの蘇生が成功したことを、
一緒にいった人たちにも教えてあげたいんだけど。
みんなどうなったか気にしていると思うの。

アイスはフミコより先に蘇ったハンスが、
特に気にかけていたことをかいつまんで話した。

鏡の扉を使ったらマークの集落にも行けるの?
とアイスが言った。

場所が特定できれば、どこにでも行けるわよ。
それはどのあたりにあるの?
この上にある集落の遺跡から
谷の渓流を越えてジャングルの斜面を登って
半日くらいの距離にある。

私が生きていた頃には、
都の近くにそんな集落なんてなかったわ。

マークっていう人が開拓したんだって。
それでマークの集落ってみんな呼んでる。
そこにはフラハっていう魔族の魔術師も住んでるの。
フラハは、あなたを甦らそうとしてくれた人よ。
呪力不足で頭蓋骨が震えただけで、
うまくいかなかったけれど。

ああ、なんとなく思い出した。
魔族の人だったら、
鏡の扉のことも知っているから
驚くこともないでしょう。
その人の家に行きましょう。

その前に、色々お世話になった
あなたに呪力を授けるから。


a5

そういうと、
フミコは持っていた肩飾りを手に取って、
肩飾りに嵌め込まれていた一粒の宝石を外し、
呪文を唱えた。

するとその宝石の嵌め込まれた
金の指輪が出現した。

これは私とグリーンマンからの
感謝の気持ちとして受け取って。


a6

フミコはアイスに向かって
呪文を唱えてから言った。

私は今、あなたに呪力を授けたの。
この指輪はあなたの呪力を昂めてくれる。


a7

どの指にはめればいいの?

右手の中指がいいのよ。
指輪には他にも効力があるけど、
それははめているとわかるわ。


a8

じゃあ、出発しましょう。
そのフラハの家の様子を思い浮かべて。
そして浮かんできた言葉を唱えるのよ。


a9

アイスが言われた通り、
フラハの家を思い浮かべて
脳裏に浮かんできた言葉を唱えると、
部屋の中に鏡の扉が出現した。
扉は中空に浮かんでいる。

こんなことが。

レプテュリアンの月の扉を使うと、
またリザードに迷惑かけるから。

彼らの月の扉や光の石は
たいてい固定された装置のようなもので、
マニュアルにある呪文で行き来するの。
魔族に伝わる鏡の扉は、
そういう使い方もできるし、
その都度出現させることもできる。
コツを覚えれば簡単で
ずっと便利よ。



解説)
続きます。
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Jul 17, 2024

フミコの帰郷 そのさん

a1

これでみんな見て回ったわ。
あとは地底の都の跡ね。


a2,jpg

二人は前にアイスがリザードと会話した
廃墟の一室に出た。

ここに出られるんだ。
彼らの月の扉を使ったの?

そうなの。
ここに来るためにリザードたちが
使っていた扉があったのを思い出したの。
今唱えたのは彼らの呪文よ。


a3

二人は回廊を歩いていく。

こんなふうに普通に呼吸できる空間を
少しずつ広げていく計画だったんだけど、
ここは私が死ぬ前とあまり変わっていない。


a4

あそこから外の様子を
見られるはず。
とフミコは言った。


a5

これを映し出しているのは、
私たちの魔法じゃなくて
リザードたちの技術。
彼らは水中が苦手だから。


a6

すっかり水草に覆われているけど、
華やかな都だったのよ。


a7

あ、マービーだ。
とアイスが言った。

マービーって、あの生き物のこと?

ええ。マービーはグリーンマンみたいに、
ここで誕生した変異種じゃないかって、
リザードが言っていたわ。
マービーが生まれたのは、
あなたが亡くなって後のことだって。
でもいつもここで何をしてるのか、
リザードもよく知らないって言ってたわよ。


a8

ここでは都の一部を再興するために、
リザードたちと協力して
魔法を相当使ったから、そのせいで
生まれたんでしょうね。
誰かが住んでくれれば嬉しいわ。
とフミコは言った。

マービーは姿を見られていることに
気が付かずに遠ざかっていった。


a9

水底にはマービーがゴルゴーって呼んでた
タコと魚のキメラみたいな
生き物もいたわよ。

ふーん。
長い歳月の間に私の知らないことが
色々と起きていたのね。

ジャングルには、
リンリンやシーザーっていう、
知能が進化した動物たちも生まれているの。



解説)
続きます。
Posted at 20:23 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 16, 2024

フミコの帰郷 そのに

a1

鏡の扉を抜けると、
そこは山の遺跡の中の広場だった。

ここに水盤があるね。
この側の石畳の下に
私たちより前に来たハンスっていう探検家が、
フミコのお墓の副葬品を集めて
隠してあるって聞いたよ。

ええ、さっき肩飾りを受け取ったとき、
グリーンマンも言ってたわ。
そんなことも話してたんだ。
彼はああみえて結構お利口さんなのよ。


a2

ここはね。
山の上にあって気候がいいから、
避暑地になっていたの。
山頂の展望台とも近いし。
展望台って、ストーンサークルのことかな。

そこには展望台って呼ばれる施設があって、
周囲の巨石群は、空から都を訪れる人たちのための、
目印になったりしていた。
でも戦争の時に徹底的に破壊された。

二人は建物の中に入っていく。


a3

確かに風が通り抜けて見晴らしも良くて、
気持ちがいいところね。
そうでしょう。
ここで友達とおしゃべりしたり
お昼寝するのが最高だった。


a4

ところでさっき
グリーンマンと話してたのはね。
とフミコが言った。

「あなたは長い間、ここが廃墟になってからも、
いつか私が蘇ることを信じて、
ずっとこの土地を守っていてくれたけれど、
もうそれも終わり。
私は私が死んだ後も、残された人たちが
安全に暮らせるように、あなたや動物たちに
この土地を守るように魔法をかけた。
でも長い歳月が流れ、住む人はもう誰もいない。
あなたは充分立派に役目を果たしてくれた。
もう自由になれるように魔法を解いてあげる」
って、私が言ったの。
そうしたらグリーンマンはちょっと考え込んでから、
これまで通りでいいって言ったのよ。

彼のいうのには、
何百年かに一度は、昔ここに住んでいた
人の子孫がこの遺跡を訪れることがあって、
伝承の記憶をよすがに、
都のいにしえの栄華を偲んでいくそうなの。
自分ではもう先祖の過去も知らずに
導かれるように来る人もいるという。
その人にとって、そんな体験は
一生に一度きりのことかもしれない。
でもその一度きりの体験の記憶が、
世代を超えて蘇り、繰り返されているんだと。
そんな魔族の末裔の訪問が絶えるまで、
この土地を守り続けたいというのよ。

その気持ちは嬉しいけど、
って私が言いかけたら、
いつの間にか周りに寄ってきていた動物たちが、
そうだそうだって言い出しちゃって。
私泣きそうになって、
わかったわかったって言って
逃げてきたの。


a5

ここは広場。子供がよく走って
よそ見してつまづいて転んで泣いてたわ。


a6

まるで別の星で見た記憶のように、
鮮やかに蘇る。


a7

あんなところにグリーンマンが。
彼はこの土地の中ならどこにでも
鏡の扉を出現させることができるから、
ああやってついてくるのよ。
次は祭壇のある湖の洞窟に行きましょう。


a8

ここの扉は特別なの?
ここだけは光る石でできてるの。
リザードたちの月の扉と同じ
仕組みが残っている。
彼らと一緒に暮らしていた頃の名残よ。


a9

ラッセルたちから話は聞いてたけど、
ここはすごいな。
魔族たちはこの土地に来て、
最初はこの洞窟に住んだと言われてる。
横穴式の住居跡があるはずよ。


a91

ここは私の墓所。
元は別世界に旅立つ人たちのための
特別な鏡の扉が置かれた祭壇だったの。
そんな場所にみんなで私を葬ってくれた。

グリーンマンがまた来てるわよ。
こっちにくればいいのに。
ああしてついてきて
覗いてみてるのが好きなのよ。
しょうもないやつなのね。



解説)
続きます。
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Jul 15, 2024

フミコの帰郷

a1

鏡の扉が現れたのは、
集落の遺跡の建物の中だった。


a2

鏡をすり抜けてフミコが姿を現した。


a3

続いてアイスもやってきた。
ああ、こんなふうに変わり果てて。
とフミコが言っている。


a4

ジャングルの眺めは変わらない。


a5

あそこの石畳が動いて、
地下へ降りる階段が開いたんだけど。
ええ、その仕掛け覚えてるわ。
戦さの前には仕掛けはなくて、
誰でも自由に降りていけたの。


a6

二人は集落の遺跡の外に出て、
遺跡前の広場を歩いている。

ここには賑やかな市が立ったの。
魔族以外の人たちとの交易も盛んだった。

この城塞都市みたいな造りはどうして。
最初は他の部族からの攻撃を防ぐためだった。
でもこんな風にしたのは、むしろ権威付のためよ。
この牢固で神聖そうな壁のおかげで、
地上での争いはほとんどなくなった。


a7

ちょっとだけ一人にしてね。
と言ってフミコは広場に佇んでいた。
はるか昔を思い出しているようだ。


a8

やがてジャングルの茂みから
グリーンマンが姿を現した。
嬉しそうな顔をしているようにも
見ようと思えば見える。


a9

フミコも気がついて
グリーンマンに近づいていった。
グリーンマンはバッグから
肩飾りを取り出して、
フミコに差し出している。

二人は声に出さない会話をしていた。
グリーンマンの顔には
やはり嬉しさが滲み出ている気がする。


a91

私の頭蓋骨を受け取ってくれて、
魔術師を見つけて私を蘇らせてくれたあなたに、
お礼を言いたいって言ってる。

お礼なんて。
まあよかったよかった。
と照れながらアイスは言った。


a92

やがて周りに動物たちが集まってきた。
フミコはかなり長い間、
アイスには聞き取れない会話をしていた。


a93

二人は鏡の扉のある建物に戻った。

アイスは他の遺跡は見たの?
調査隊は三つのグループに分かれて別行動したからね。
私が見たのはこの集落跡と地下の都だけ。
だったらこれから見てまわりましょう。
どんな様子か知りたいの。
と肩飾りを外したフミコが言った。

うん。ところでさっき
何話してたの?
色々とね。あとで話すわ。



解説)
続きます。
Posted at 20:25 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 14, 2024

フミコとの対話

a1

魔術劇場では
4人が応接室でくつろいでいた。


a2

どうです。その魔術書を読まれた感想は。
出版されたのは随分昔で、
古いものと聞くが。


a3

私からすれば新情報が盛り沢山です。
特に黒表紙の本は薬草のことで為になるわ。
赤い表紙の本はほとんど既知の呪文ばかり。
でもこんなマニュアルがあると便利ですね。
私たちは文字を持たなかったから。

でもすらすらお読みになって。

読むというより感じとるんです。


a4

カメ新聞か。
これ見るの久しぶり。
去年の一月以来かしら。
レプテュリアンが地底世界や
月の裏側で発行している新聞だって、
そのとき管理局のミラが言ってたけど、
私は彼らには直接会ったことがない。
フミコは昔仲良くしてたんでしょう。

いい人たちですよ。
特に私たちと交流していた人たちは。

新聞に書き写してある蘇生の呪文は、
水没した都でリザードが教えてくれたのよ。
彼らは魔族の呪文を聞き取って記録保存していたの。
とアイスが言った。

あなたは地下の都まで行ったのね。
水没した都の一部の再建を、彼らと協力してやっていたの。
私はその途中で死んじゃったんですけど、
あれがどうなったのか。


a5

フミコは立ち上がると、
さっと手を振って、短く呪文を唱えた。

するとそこに扉が現れた。

a6

この館は魔法陣の上に建てられているんですね。
魔法の効力が素晴らしいわ。
この扉は今、私の故郷の集落の跡と繋がっています。
そこに行っても、もう人は誰もいないことはわかっていますが、
そこに私の帰りをずっと待っているものがいるんです。
彼に私が蘇ったことを知らせに行ってきます。


a7

なるほど、お見事な呪文ですな。
鏡の扉は、この魔術劇場の中では、
各部屋の出入り口にも使っています。
あなた専用の部屋もすぐ用意しますから、
お戻りになったら是非自由にお使いください。

重ね重ね、ありがとうございます。
今の私に人間の知り合いはあなた方だけ。
必要なことを済ませたら、
また戻ってきて、お世話になりますわ。
その節はどうぞよろしく。


a8

私も一緒に行っていい?
もちろんよアイス。
こんなふうに呪文を呟いて。

二人は鏡の扉の中に消えていった。


a9

お前、とんでもない人を蘇らせたな。
そうなの?
あの人の特別な能力は、
多分生き物全般に呪力を授けることができることだ。
それって変わった能力なの?
魔族というのは魔法が使えるだけで
体は普通の人間とかわらないだろう。
彼女は普通の人間にも呪力を与えて、
魔族と同等の力を持つようにしてしまえるのさ。
ふーん、そのどこが凄いのか、
いまいちよくわからないけど。
まあいいさ。
くれぐれも仲良くやってくれよ。
喧嘩する理由なんてないよ。
いい人みたいだし。



解説)
続きます。
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Jul 13, 2024

新たな出会いなど

a1

喫茶ペンギンの前で、
バグとミラが話している。
はるなが今日のサービスはバナナです。
と言っている。


a2

今度の波動はすごかったね。
発信源はこのすぐ近くだよ。あんな強力なの、
これまで体感したことがなかった。

この近くっていうことは、
魔族のハリー一家が怪しいわね。

使われたのは前のと同じタイプの蘇生の呪文だ。

情報管理部に戻って、
詳細を確かめてこようか。


a3

でも報告あげても、
局長動くかなあ。
あ、このバナナ甘くておいしいね。
なんだか癖になりそう。


a4

友達の佳奈から、
さっき旅行のお土産にもらったんです。
佳奈はアフリカに行ってたんですよ。
とはるなは嬉しそうに言った。


a5

その頃、魔術劇場に招かれたフミコは、
ハリーに面会していた。

おや、これは新しいお客人かな。
フミコって言います。


a6

アイスは知ってるわよね。
うん。顔馴染みだよ。
フミコはね。大昔にアフリカで生きていた魔族の人、
私が魔法を使って頭蓋骨から蘇生したのよ。

なんとお前、あの蘇生の呪文を唱えたのか。

正確には古代の魔族が使っていた呪文だけどね。
アフリカで栄えていた古代の魔族っていうと、
お父さんのご先祖かもしれないわよね。

ふむ。魔族と言っても色々だからね。
アフリカに魔族たちの都があったという話は聞いているが、
それ以前に、すでに魔族は世界に分散していた。

よくご存知ですね。
おっしゃる通りですわ。
私たちの都の歴史は、
魔族全体の歴史のごく一部なのです。
とフミコは言った。


a7

その頃、マンゴー亭では、
ルビーたちが話していた。

それでラッセル、
これからどうするの。


a8

あそこの遺跡調査はほぼ終わり、
副葬品が入手できれば希少で学術的な価値もあるが、
なにせ所有者が蘇っちゃったからね。
遺跡の存在もとても公表するわけにいかない。
最終的にはクラウドたちと相談して決めることだけど。
僕はまたどこか別の秘境を探すよ。


a9

いくつになっても探検をやめないで、
新たなロマンを求め続けるあなたらしいわね。
それでさっき話していた大きな鳥の羽根の話は?

うん、巨大な鳥の発見にはロマンがあるんだが、
もし魔法や魔族が絡んでいるとすると、
僕の求めるロマンとはちょっと違うんだなあ。


a91

私は一人でも出かけて行って、
マークと一緒にその鳥を探したい。
せっかく友達になれたんだし。
でもマークの集落まではあまりにも遠いのよね。
と佳奈は言った。



解説)
続きます。
Posted at 21:09 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 12, 2024

蘇生の呪術

a1

佳奈がお土産のバナナを
知り合いに配りにいったあと、
二階のデジャから肉まんを食べに
ヴィヴィアンが降りてきた。

おや、アイス。
しばらくぶりね。
休暇で旅行にいってたんだって?
と言っている。


a2

アイスは、
実はあなたに頼みたいことがあるんだけど。
と言って、かいつまんで、
ヴィヴィアンに旅先でのいきさつを説明した。

ふーん。アイスの直々のご指名とあれば、
断るわけにいかないわね。


a3

アイスはヴィヴィアンにカメ新聞を
手渡した。
この呪文、魔法の書に載っているのと
微妙に違うわね。
古代の魔族はこんなふうに唱えていたんだ。

できそう?
微妙な違いだからすぐ暗記できるよ。
でも死者の頭蓋骨の蘇生はやったことがない。
自然の摂理に反する呪法で、
蘇る途中で失敗すると恐ろしいことが起きるから、
滅多なことで使うなって、
ハリーに釘を刺されてるのよ。


a4

でもやっちゃうけど。
というと、
ヴィヴィアンは両手をかざして
呪文を唱え始めた。


a5

あたりに薄い煙がたちのぼり。

しかし頭蓋骨は小刻みに震えただけで、
何も起きなかった。


a6

こうなったら、本気を出すわ。
そういうとヴィヴィアンは
本来の悪魔の姿に変身した。
呪文を唱え指先に思念を集中している。


a7

ヴィヴィアンの目がひときわ輝いている。


a8

すると、頭蓋骨の輪郭が薄らぎ、
薄い煙の中から女性が現れた。


a9

あなたが蘇らせてくれたのね。
どうもありがとう。
わたしはフミコ。
とその女性は言った。


a91

どういたしまして。
お礼ならそこにいるアイスに言って。
私は頼まれてお手伝いしただけなの。
だけどエネルギー使いすぎて、
流石にもうフラフラよ。
とヴィヴィアンは言った。


a92

アイス。あなたのことは知ってるわ。
あなたも蘇生の呪文を唱えてくれたでしょう。
その時は、あなたたちのいうグリーンマンを
呼び出すためだったけど、
あの時私の意識は目覚めかけていたの。

私呪力や魔力なんて全然ないのよ。

無心の境地は似たようなものなのよ。
だから私はあなたにも呪力を授けられるわ。
グリーンマンにそうしたようにね。


a93

あら、あなたって変幻自在なのね。
そうか。あなたも当然魔族なのね。
でもそんな変身ができるっていうことは。

私は魔族というか、
魔族とヴァンパイアのハイブリッドで生まれて、
それからなぜか悪魔になったのよ。
ヴィヴィアンっていうの。
パワーを使い切ったみたいだし、
普段はこの姿の方が楽だから。

そうだ。父にも紹介したいから、
すぐそこの魔術劇場に来ない?
父は純正魔族だし、あなた方の子孫かもしれない。

喜んで伺うわ。



解説)
続きます。
Posted at 20:27 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 11, 2024

旅行の報告

a1

4人を乗せたジープは、
町の広場に到着した。


a2

随分早かったのね。
とルビーが言っている。


a3

うん色々と事情があってね。
とラッセル。


a4

アイスと佳奈は
竹の飾り付けを見ている。

そういえば七夕だったんだね。
私も短冊に願いごと書きたかったなあ。
と佳奈が言っている。
何書くの?
いつか先輩みたいになりたいって。


a5

3人はルビーに遺跡調査旅行の
報告をしている。

なるほど、色々大変だったのね。
それってお土産?


a6

このキノコはバター炒めが美味しいらしいよ。
現地でも滅多に手に入らないんだってさ。

このバナナは、帰りに寄った村で、
叩き売りしてたの。
現地ではいつでも手に入るんだって。
と佳奈が言った。


a7

それでそれが問題の頭蓋骨ね。
ヴィヴィアンはどこに?
デジャにいると思うよ。
あれ、調査隊って、
もう一人いたんじゃなかった?
ブラッドならドルフィンのベランダに。


a8

ブラッドはベランダで、
マヤたちと話していた。

アフリカの夜空って
澄んでいてとても綺麗なんだ。
天の川がこうさーっと流れててさ。
七夕のこと思い出しちゃった。


a9

私ちょっと用事思い出したから、
席外すわ。
とナディアが言っている。



解説)
続きます。
Posted at 20:23 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 10, 2024

帰り道

a1

翌朝、リンとクラウドと
マークに見送られて、
ラッセルたち4人は帰路についた。


a2

時は省略するかのように流れ、
一行はジャングルを踏み分け、
目印の湖に行き着くと、
さらにジャングルを歩いて
川の上流から小舟ではるばると渓流を下り。


a3

ジャングルと砂漠との境界にある
村に到着したのは夕暮れまじかに
なっていた。


a4

CGのアフリカ支部にいる
久美子に連絡したら、
空港から明日の午後にたつ
輸送機があるって教えてくれたわ。
とアイスが言っている。

今日はこの村で一泊して
明日早朝に出て空港に向かおう。


a5

やがて夕暮れになった。
越えてきたジャングルの彼方に
夕日が沈んでいく。


a6

夜になってアイスと佳奈が
宿の周辺を散歩している。

こういう裸電球って
南国の旅情を感じるのよね。
などと話している。


a7

4人は村の屋台のような簡易食堂で、
夕食を摂ることにした。

マークの見せてくれた鳥の羽根。
大きかったね。
翼の風切羽根のようだったけど、
全体を想像すると巨大すぎる。
普通ありえないよ。
誰かが魔法をかけたんじゃない?
ジャングルの別の場所にも、
フラハみたいな魔法使いが
住んでいるっていうこと?
古代の都が衰退して、離散した魔族たちの
一部は周辺の部族に溶け込んだんだろう。
古代の魔族の末裔がいてもおかしくはない。

確かに翼竜なみの巨大な鳥を
見つけたら大発見だけど。
マークはきっとまたみんなと会いたくて
あの話をしたんだよ。
もっと近いといいのにね。


a8

翌朝、駐車場に停めてあったジープに
4人は乗って村を後にした。


a9

ジープは空港に向けてまっしぐら。
時は矢のように流れていく。


a91

到着した空港には、
CGの支部から出向いてくれた久美子が待っていた。

麻薬とか危ないもの持ってないでしょうね。
CGの専用輸送機に
コネで乗るんだからチェックはないけど、
見つかるとただじゃ済まないわよ。
普通のお土産の他に頭蓋骨が一つ。
それアイスの趣味なの?
と言われている。


a92

かくて一行を乗せた輸送機は
無事空港を発進し、
時はまたしても省略するかのように流れ、
10数時間のフライトののち
一行は帰国したのだった。



解説)
続きます。
Posted at 20:25 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 09, 2024

マークの家に寄る

a1

フラハの家では
佳奈とラッセルが加わって、
話に花が咲いていた。

ハンスさん。
ゴリラのシーザーのことはご存知なんですか。
私がいた時はまだ生まれてなかったな。
私の頭蓋骨を家宝にしてくれていたと、
さっきリンから聞いたが。

ハンスさんはこれからどうされるんです?
生き返ったばかりでまだ何も。

しばらくはクラウドの家で静養よ。

そのうちリンリンにも会いたいが、
自分だけ生き返って、
フミコの蘇生が叶わない以上、
なんだか申し訳ないなあ。

それを聞いていたアイスが、
ラッセルさん、帰りの出発を早めませんか。
と言った。
そうだね。明日にでも出ようか。


a2

なんか大勢で押しかけちゃったみたいで。
いやいやなかなか楽しかったぞ。
何かあればまた来るといい。
アイス君とやら、君は魔術はさっぱりなようだが、
なかなか見所がある。
それ褒めてるんですよね。


a3

ということで一行は
フラハの家を後にすることになった。

マークが、明日帰るんなら、
準備もあるだろうけど、
名残惜しいから、
これから僕の家に遊びに来ないか。
と言っている。
アイスと佳奈は是非行ってみたいわ、
と言っている。


a4

ということで、フラハの家からの帰り道。
マークの家へは、ラッセルも付き合うことになった。
リンはまた変わったトカゲに見とれている。


a5

この辺おかしなトカゲが多いのよね。


a6

蔓草の門の前でリンとハンス親子と別れて
4人はマークの家に向かっている。

佳奈は草陰で何かしているシーザーを見かけた。
シーザーは大きな袋のようなものを
背負っている。


a7

シーザーはマークとも知り合いのようだ。

キノコを採っていたんです。
みなさんにもお分けますよ。
それは嬉しいね。
これはバター炒めにすると美味いんだ。
とマークが言っている。

あなたにお礼にもらった頭蓋骨の人、
蘇生したのよ。ハンスさんっていう人。
と佳奈が言った。
それは良かったですね。
リンリンに会ったら伝えておきます。


a8

ちょっとひらけた場所に
マークの住居はあった。
あれが僕の家だよ。
とマークが言っている。


a9

見通しのいいリビングね。

裏手にジャングルが迫っているんだ。
何もないけどくつろいで。
と言っている。


a91

しばらくして、
マークはそうそうと言って
隣室から大きな羽根を持ってきた。

ラッセルにこれを見せたかったんだ。
僕も君のいろんな秘境探索の話に刺激されてね。
ジャングルの奥地に探検に行ったんだけど、
ある山の山腹で見つけたんだよ。
あの遺跡とは全然別の方角だよ。
だけどこんなに巨大な鳥の羽根って見たことある?


a92

君とブラッドもアイスも佳奈も
あの遺跡の調査を終えて、
ここに来る機会はもうないかもしれないね。
でも、改めていつか
この鳥の調査をするっていうんなら、
その時には僕が案内役で付き合うよ。
とマークは言った。


わかった。ブラッドと相談してみる。
とラッセルが言った。

私はもしフミコの蘇生がうまく行ったら、
フミコを案内してここに戻ってくることになるわ。
その時また会えるわよ。
とアイスは言った。



解説)
続きます。
Posted at 20:23 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 08, 2024

追加の訪問

b1

クラウドの家では、
寝坊した佳奈がアマンダと話している。

先輩たち頭蓋骨持ってもう出かけたのね。
私も気になるから行ってみたいんだけど。
集落の外れのフラハさんの家って、
遠いんですか?
そんなことないですよ。
道順教えましょうか。
だったら僕も気になるから、
散歩がてら付き合うよ。
とコーヒーを飲んでいたラッセルが言った。


b2

二人はフラハの家に向かって行く。
ほぼ一本道なんだね。


b3

その頃、フラハの家では、
ハンスがリンからナイフを借りていた。
お父さん。それどうするの。


b4

さっき鏡を見たら、
髭剃りたくなっちゃって、
と言っている。


b5

隣室では3人が話し込んでいた。

フラハ、これまであまりあの遺跡については、
君と話題にしたことはなかったけど、
君の知っている伝承には、魔術師フミコについての
言い伝えはなかったの?
とマークが言った。

その名前は聞いたことがなかったな。
私が聞いたのはその昔あそこに
魔族たちが暮らしていたということや、
住民たちは鏡の扉を使って自由に
往来していたというようなことだ。
トカゲ人間同士の戦争があって、
それに巻き込まれて人々が去り、
都が衰退して滅んだという話は知らなかったよ。

フラハさんも魔族なんでしょう。
ハリーやマーリンを知っているというし、
それも相当な呪力の持ち主なのは、
ハンスさんをあっさり蘇生させたのを見てもわかる。
そんなあなたが、
フミコのことを知らなかったなんて不思議。

そう思うのも無理はないが、
我々魔族にとっても、あまりにも昔のことだからな。
君たちが聞いたというその名前も、
同時代に生きていたというトカゲ人間だからこそ、
覚えていて、リンリンというチンパンジーにも伝えたのだろう。
それに魔族はもう今では都も国も持たず、
世界中に離散してひっそりと暮らしている。

君たちの話で興味深かったのは、
都の住民だった大部分の魔族は、
争いを逃れて異世界に去ったということだが、
我々魔族に伝わる古い伝承では、
我々はむしろ異世界からやってきたという、
話が残っていることだ。

ああ、その話、ハリーから聞いたことがある。
とアイスが言った。
私たちの暮らす町のすぐ近くに、
迷いの森と呼ばれる地域があって、先祖は、
そこから来たという言い伝えがあるって言ってたわ。
町には迷いの森の泉に湧いた不思議な水も、
地下水として流れ込んでいる。
ハリーはそんな土地柄が気に入って、
魔術劇場ごと移り住んでいるの。

ふうん。それは良いところのようだな。
いつか遊びに行ってみたいものだ。

話が広がりすぎない程度にね。
と誰かが言った。


b6

ラッセルと佳奈は
フラハの家にたどり着いた。
ここね。

ちょうど家の前に出てきたリンが、
二人に気づいた。

つい気になって様子を見に来たんだけど、
蘇生は成功したの?
ええ。父だけは。
フミコの頭蓋骨はだめだった。
あ、今父を呼んでくるわ。


b7

リンはハンスを呼びに行った。
お父さん、佳奈とラッセルが
来てくれたの。
紹介するから。
あ、その顔。


b8

さっぱりしたけど、口髭だけ残したのね。
うん。なんとなく今の気分で。
と言っている。


b9

ハンスはラッセルと佳奈に
紹介されている。
リンさんの父君で、
探検家のヨハネスさんですね。
無事のご生還おめでとうございます。
ああ、ありがとう。
そうか、生還か。
まさに文字どうりのようですな。



解説)
続きます。
Posted at 20:20 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 07, 2024

七夕の日

a1

ところ変わって、
ここは町の広場。


a2

今日は七夕なので
竹が飾り付けられている。


a3

6月のコスプレコンテストは、
優勝者がいなかったんですね。
と今井舞がルビーに訊いている。

常連の応募者は多かったけど、
新規の参加登録者がいなくて、
協議の結果、優勝者なしで来月に持ち越し。
でも優勝者がいなくても参加賞はもらえるから。
みんなそっちがお目当てですからね。


a4

ナオミがコンテストの参加賞を
もらいにきていた。

今月はチョコパフか。
これ両手で掬っていいんですよね?
うん。


a5

参加賞をもらってナオミが帰宅すると、
たまきが短冊に願いごとを書いていた。


a6

これ、前にも書いたっけ?
もし人形なれたらどうするの。
人間の真似をして暮らすのよ。
複雑なのね。


a7

喫茶ペンギンの前でも、
はるながチョコパフをサービスに出していた。
バグとミラが何やら話している。


この前の波動。
どこかで魔族の蘇生の呪文が使われたようだね。
情報管理部は動かないの?

一応局長には伝えたわ。
でも反応はいつも通り。
世界はそこだけじゃないんだから、
って取り合ってもらえなかった。
局長は注意勧告に行くのが面倒なのよ。


a8

あの呪文が頻繁に使われるようになると、
ここの世界にとっては結構おおごとなんだけどなあ。
成功するには相当な呪力が必要なはずだけど、
そんなことのできる魔術師っていたっけ。
呪文を使った魔術師は特定できているの?


a9

一応情報管理部でチェックしてみたら、
波動の発生源はアフリカのジャングル。
大昔に魔族の都があった場所の近くね。
使ったのはそこに住む
フラハっていう男性の魔術師らしい。
これまで問題を起こした記録はないんだけど、
数百年は生きてる。


ふーん、そんな人がまだいたんだ。


a91

夜になって、
広場のベランダで、マヤとナディアの親子が
星空の天の川を眺めていた。
年に一度会える遠距離恋愛か。
ロマンチックね。
誰かのこと考えてる?



解説)続きます。
6月2日以降、生成AIで作った画像を使って、
撮影した人物画像と切り貼り合成してましたが、
今回は七夕なので気分を変えて、
久しぶりに情景セットで撮影しました。
Posted at 20:22 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 06, 2024

フラハの家で

a1

夜が明けた。

おはよ。今朝も快晴ね。
おはようございます。
あ、アイスさん。
リンとマークが待ってますよ。


a2

3人はさっそくフラハの家に向かった。

みんな早起きなのね。
ここでは夜明けとともに。

リンは変わったトカゲに見とれているようだ。


a3

フラハは家の戸口で
3人を出迎えてくれていた。


a4

こちらはリン。
ご存知と思いますが、
この集落でクラウド博士と一緒に遺跡の研究をしている。
今回の遺跡調査にも参加した人です。
とマークはリンをフラハに紹介した。

何度か見かけて顔は知っているが、
直接に対面してお会いするのは初めてだな。
何やら大変なものをバッグにお持ちのようだ。
ようこそ。どうぞよろしく。
とフラハは言った。

今日はそのことで伺ったんです。
実はバッグの中に二つの人の頭蓋骨が入っています。
それらを蘇生させていただけないかと。

なんとそんな難しいことを頼みにきたのか。
まあ、あっちで話を聞こう。
とフラハは言った。


a5

3人は遺跡調査で分かったことのあらましを
口々にフラハに話した。

それでこの頭蓋骨から、ハンスという人物と、
フミコという魔術師を蘇生させろというのか。
動物や物品に宿っている精霊に働きかけて
人間の姿で目覚めさせることはできるが、
頭蓋骨から死者を蘇生させるのは難しいんだぞ。

集落にたまに来る原住民たちの間では、
あなたならできるだろうっていう噂ですよ。
とマークがいい、
強力な魔術師だったらできるかもしれないって
リンリンも言っていました。
とリンも言った。

頼まれて古いトーテムの精霊を
呼び出したりしてやったりしたからな。
噂は尾鰭がつくものだよ。
その場に突然人の姿が現れるので。
同じことのように思えるかもしれないが、
生きている精霊に働きかけるのはわけが違う。
幽冥界に働きかけるわけだから、
強力な呪力と特別な呪文が必要なのだ。


そうその特別な呪文を、
教えてもらってきたって、さっき話したでしょう。
とアイスはかめ新聞をフラハに示した。

そ、そうだったな。
ではやってみるか。


a6

かめ新聞に書き付けられた呪文を暗記してから、
フラハはハンスの頭蓋骨を前にして、
呪文を唱えはじめた。

その槍も必要なんですか。
これは気持ちの問題だよ。


a7

薄い煙が立ち上ると、
頭蓋骨の輪郭が薄れていき
なんとハンスが蘇った。

ここはどこ?
と呟いている。


a8

お父さん、わかる?
リンよ。

駆け寄ったリンから話を聞いたハンスは
記憶を取り戻し、事態が飲み込めたようだった。


a9

フラハは続けて
フミコの頭蓋骨に向かって呪文を唱えたが、
頭蓋骨は微妙に振動しただけで、
何も起こらなかった。

うーむ。反応はするものの。
これは私の呪力不足のせいだろう。


a91

フミコと同時代に生きていた魔族の魔術師でも
蘇らせることができなかったというじゃないか。
それから途方も無い時が経っているし、
相当な呪力の持ち主でないとこれは
不可能だろうな。

分かったわ。
私魔族にも魔法にも詳しくないけど、
一人だけ心当たりがあるの。
とアイスが言った。


ハリーかい。それともマーリンかな。
確かに彼らは優れた魔術師だ。
だがあいつらとは何百年もの付き合いだが、
別の場所に移動できる鏡の扉や、
共同で夢見る異世界を生み出すことができても、
死者を蘇らせたという話は聞いたことがないぞ。

ハリーの養女で、マーリンの実の娘。
この前話したヴィヴィアンっていう悪魔よ。
確証はないけど、彼女ならできそうな気がする。
この頭蓋骨私に預からせて。

そうしてくれると私も嬉しい。
と二人のやりとりを聞いていたハンスが言った。
強力な魔術師を見つけてフミコを蘇らせるというのは
グリューンとの約束だったから。
その約束を果たせなかったまま死んだことが無念で、
私の魂は幽冥界に残されていたのかもしれないな。


娘との再会が叶わなかったのも、
無念だったんでしょう。
も、もちろんそうだよ。



解説)
続きます
Posted at 20:21 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 05, 2024

集落へ帰る

a1

時は省略するかのように流れ、
一行は無事にマークの集落まで帰りついた。


a2

アーネストは、集落の外れにある
自宅兼診療所に帰って行った。
帰りを待っていた部下たちに出迎えられている。


a3

住民たちは集落のリーダーのマークと
遺跡調査隊の無事帰還を喜んでいるようだ。


a4

アンドレアも豹変亭に帰って行った。
ずいぶん早かったのね。
財宝見つかった?
と言われている。


a5

クラウドの家への目印になる
蔓草の門のところまでやってきた。

マークは、リュックを家に置いてから、
また後で伺うよ。
と言って、自宅に帰って行った。


a6

クラウドの家の前では
留守番を頼んでいた女性アマンダが
出迎えてくれた。

早かったんですね。
と言われている。


a7

出かける時ばたばたしてたから、
紹介する暇がなかったけど、
アイスや佳奈は初めてよね。
この人はアマンダって言って、
この集落のいろんな家の手伝いをしてくれてるの。
シーザーからもらった頭蓋骨のこともあったから、
彼女に留守中いてもらったのよ。
どうぞよろしく。
とアマンダは言った。

それ何持ってるんですか。
と佳奈が言った。
これは水牛の角よ。


a8

あてがわれていた自室に戻った佳奈は
リュックを置いて大きく伸びをしている。

あー肩凝った。


a9

みんな自室で一息ついたあと、
やがてマークもやってきて
軽い懇談が始まった。

今晩はアーネストや
アンドレアにもきてもらって
夕食を兼ねた調査隊の打ち上げだ。

調査隊解散しても、アイスたち、
まだしばらくはここに居られるんでしょう?
とリンが言った。

ええ、遺跡調査が早く終わったから時間に余裕はあるの。
帰りもラッセルたちの予定に合わせるわ。
ジャングルを抜けた砂漠との境にある村に、
借りてきたジープが停めてあるから、
それで砂漠を越えて4人で空港まで。
そこで私と佳奈は、久美子に連絡して、
帰りもなんとかCGの輸送機にジープごと載せてもらう。
ラッセルとブラッドもよかったらどうぞ。
とアイスが言った。

それは助かるな。とラッセルが言った。
CGの輸送機だと運賃無料だし、フリーパスだからね。
事故で墜落しても記録に残らない貨物扱いだけどね。


僕も君たちの町まで付き合うよ。
あの町に知り合いがいて、また会いたいんだ。
とブラッドが言った。
マヤのことでしょ。
とアイスが言った。

さっそく遺跡調査の結果の資料の作成や
写真データの整理を始めます。
みなさんの撮影した写真も
参考にしたいのでぜひ協力してください。
とクラウドが言った。

それよりも何よりも父とフミコを蘇らせなくちゃ。
集落の外れに住んでいる魔術師フラハに頼んで。
とリンが言った。

彼とは親しいから、早速明日訪問しましょう。
みんなで押しかけてもなんだし、
リンさんと呪文の書かれた新聞を持っている
アイスさんと3人で行きましょう。
とマークが言った。

私もフラハさんのところに
よくお手伝いに行きます。
あの人私の遠い親戚なんですよ。
と側で聞いていたアマンダが言っている。


a91

やがてアンドレアとアーネストもやってきて
打ち上げの食事会が始まった。
食事は進み、雑談タイムになっている。

リンやクラウドはアフリカ専門みたいだけど、
ラッセルとブラッドは世界中で探検してるんでしょう。
驚きの体験ってあった?
それはいつもあるよ。
でも一番印象的だったのは、君たちの住む町で、
秘宝を守るドラゴンの子供の誕生に遭遇したことかな。
迎えに来た親ドラゴンもはじめて
見た。
ああ、ドラコのことね。
あなたは名うてのトレジャーハンターだったけど、
収集した財宝をみんなドラコに寄贈したんだったわね。
あれは1昨年の7月のことだった。
あのドラゴンの子供も古代の土偶みたいなものを、
守っていたけど、ここの古代遺跡と関係あるのかな?
話を広げすぎないで。
と言われている。


a92

すねの傷はどう?
もう全然大丈夫。
あの傷口から芽吹いた植物って、
花が咲くの?
どうなんだろう。
などと話している。


a93

これ美味しい。なんの肉かしら。
名前は知らない方がいいよ。
と言われている。


a94

みんな流石に疲れているということで、
食事会は早めにお開きになり、
アイスも自室に戻った。

やっぱり使う機会があったわね。
CG特製の弾丸が役にったわ。
と言いながら愛用のコルトの整備をしている。



解説)
続きます。
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Jul 04, 2024

夜明けまで

a1

コウモリたちは寝ぐらに帰っていく。


a2

集落の遺跡前広場の周辺に
集まっていた獣たちも
潮が引くように去って行った。


a3

ジャングルは平穏な静けさを取り戻したようだ。


a4

とつぜん君が奇妙な言葉を唱え始めたので驚いたよ。

あれはリザードが教えてくれた魔族の呪文。
リザードが前に魔族の人たちが
フミコを復活させようとしたことがあったって、
話してたから、グリーンマンもその時立ち会って、
あの呪文を聞いていたはずだと思ったのよ。
それであの呪文を唱えれば、
気になって現れるだろうって思ったの。
それから、
アンドレアの盗んだ副葬品と一緒に
フミコの頭蓋骨も返して、
私には蘇らせる力はないけど呪文は知っている。
もし私たちを殺したらフミコの復活の可能性も
遠のくけど、それでもいいの?
って問いかけたというわけ。

先輩ってすごい。
うまく行ったのはたまたま。
グリーンマンにこっちの意図が通じたからよ。

先輩の呪文でフミコが蘇ったりしたら凄かったのに。
私魔力なんて全然ないから。
でも呪文を唱えていてなんだか変な感じがした。
撫でていた頭蓋骨にちょっと温かみが。
彼女はグリーンマンに影響を与えていたのかもしれないわね。


a5

一同も安堵して焚き火の周りでくつろいでいた。

アンドレアが副葬品を盗んで
隠し場所を秘密にしていたのは問題だったけど、
そういう心理もわからなくもないな。
とブラッドが言った。

僕もラッセルと同じく、
トレジャーハンターとも呼ばれる探検家だからね。
財宝目当ての探索に参加することもある。
彼女は日誌を書いたのがリンの父親の
ハンスさんだということも知らなかったんだろう。
前の探検隊が残した宝のありかを書いた
地図を見つけて、宝を独占したくなるなんて、
よくあることだよ。
それにアンドレアはこの調査隊に
ボランティアで参加してくれた一般人で、
学者ってわけじゃないんだし。

随分彼女の肩を持つのね。

襲われる原因を作ったのは確かだけど、
何も知らなかった彼女は被害者だとも言える。
アンドレアが正直に打ち明けてくれたから、
アイスの機転で助かったんだ。
そうでなければ理由もわからないまま
僕たちは今頃獣たちの夕食になっていたよ。
それはその通りかもしれないわね。


a6

やがて一行は寝支度を始めた。

シュラフ持ってきてたの?
けっこう虫除けになるんだ。
いいなあ。
と言っている。


a7

広場の隅で夜空を見ていた
アンドレアはアイスに声をかけられている。


澄んだ星空は素晴らしいわね。
ええ。
ところであなた、副葬品を全部持ち出して、
ジゾックスの再興資金を調達するつもりだったの?


a8

え、なぜそれを。
私のことを知ってたのね。
アンドレアは身構えている。

はっきり確信したのは、
さっきのあなたの告白を聞いていた時よ。
焚き火にくっきり照らされたあなたの顔を見ていて、
去年の7月、魔王メイヴの復活騒ぎで、
町の広場から逃走したローズの手下だったって、
思い出したの。


a9

ということは、マークの集落で
一緒に豹変亭を経営してるのがボスのローズね。
こんな辺境に落ち延びていたなんて、
国際警察機構やCGにも行方がわからないわけだわ。

ああ、でも本部には報告しない。
CGが介入して来ると、マークの集落や
この遺跡の存在が知られておおごとになるし、
あなたが正直に話してくれたおかげで、
グリーンマンの怒りを宥めることができたんだしね。
ジゾックスを再興して世界征服しようなんて
マーベルコミックの悪役みたいなことは考えずに、
地道に酒場を経営して更生しなさいって、
帰ったらローズに伝えといて。
あなたたちもう二人だけなんでしょ。
とアイスは言った。

足元見られてる気がして悔しいけど、
言ってることはごもっともね。
あなたは命の恩人だし、冷徹な人。
サラたちの部屋で手錠をかけられて以来、
ずっと恨んでたけど、
なんかもうどうでも良くなっちゃった。
とアンドレアは言った。


a91

長かった夜が明け、
象たちが水場に移動している。


a92

佳奈は鳥の声に目を覚ました。

ハヨーオッキーテ、ハヨー、ハヨー。
という鳴き声の後半が、オッハヨー。
というふうにも聞こえる。
あの鳥何の鳥だろう。


a93

ラッセルたちは、出発前に
水没したという都を一目見ておこうと、
遺跡の地下室に降りようとしたが、
入り口は閉じてしまっていた。

何かのはずみで開いたんでが、
何かのはずみで閉じたんでしょうか。
仕掛けを探すのが結構大変です。
と佳奈が言っている。

リザードは、
水没した都には滅多に来ないって言ってたけど、
大切なものがあるとも言ってたからね。
たぶんリザードか彼の仲間が閉じたのよ。
とアイスが言った。

仕方がないか。
ロマンなのに残念だなあ。
とラッセルが言っている。


a94

かくて一行は
マークの集落への帰還の途についたのだった。



解説)
続きます。
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Jul 03, 2024

アイスの決断

b1

本当のことを話してくれてありがとう。
それ渡してくれない?
とアイスは言って、
アンドレアから宝石のついた肩飾りを
受け受け取った。

それどうするんだい。
とラッセルが訊いている。


b2

私に考えがあるの。
一か八かだけど、
やってみるしかないわ。
アーネスト先生。
フミコの頭蓋骨の入ったバッグ持ってる?


b3

ここにあるよ。と言って
アーネストはリュックからバッグを取り出した。
これをどうするんだい?


b4

グリーンマンに返すのよ。
副葬品と一緒にね。

でもどこにも姿がみえないよ。
どこかに潜んでる。
私が呼んでみせるわ。


b5

アイスはジャングルの暗がりに向かって
歩いて行った。
茂みの中から低い豹の唸り声が聞こえる。

アイスはバッグからフミコの頭蓋骨を
取り出すと、その頭を撫でながら、
リザードにもらったかめ新聞を取り出し、
書き写してきた蘇生の呪文を唱え始めた。


b6

しばらくすると、
闇の中からグリーンマンが姿を現した。
アイスの唱える呪文に聴き入っているようだ。
だがアイスは魔術師ではないので、
何も起きない。


b7

やがてグリーンマンが近づいてきたので、
アイスは頭蓋骨をバッグに納め、
グリーンマンに差し出した。
バッグの中には副葬品の肩飾りも入っている。

グリーンマンは中身を確認すると、
じっと考え込んでいるようだった。


b8

やがてグリーンマンは、
バッグの中からフミコの頭蓋骨だけを取り出すと、
アイスに差し出した。
持っていけということのようだ。


b9

グリーンマンは去っていき、
アイスもジャングルの暗がりを後にした。

ふー。
寿命が100年縮まったわ。
と言っている。



解説)
続きます。
Posted at 21:37 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 02, 2024

アンドレアの告白

a1

日が暮れてコウモリが群れをなして飛び交っている。
湖の洞窟から集落跡の遺跡を目指してきているようだ。


a2

アイスとラッセルの報告を聞いた一同は、
夕食を済ませて話し合っていた。
遺跡の歴史の話も興味深かったけれど、
当面の問題はこの遺跡を守っているという
グリーンマンが怒っていて、
我々が極めて危険な状態にあるということだね。
とアーネストが言った。
グリーンマンの怒りがジャングルに生息する
他の獣たちに影響を与えているんじゃないかしら。
父たちの探検隊が全滅したっていうのも、
あちこちで興奮した動物たちに襲われたのかも。
とリンが言った。

とりあえず焚き火を盛大に燃やして、
この側に集まって夜を過ごそう。
銃を持って来てる人は弾丸を装填しておいて。
とマークが言った。

だけど、ラッセルの話だと
グリーンマンには知性があって、
フミコっていう人を復活させるために、
僕たちにわざと彼女の頭蓋骨を発見させて
持ち帰らせようとしたんだろう。
なぜ突然怒って我々を襲う理由があるんだ。
とブラッドが言った。


a3

遺跡前広場の周囲のジャングルには、
猿や蛇類も集まってきていた。


a4

豹の群れも。


a5

牝ライオンたちもいる。


a6

10や20ならならなんとかなるけど、
この数で一挙に来られたら
ちょっと無理ね。
とアイスが言っている。

ずっと黙ってみんなの話を聞いていた
アンドレアが立ち上がって言った。
みなさんにお話ししたいことがあるの。


a7

グリーンマンが怒った原因は
全て私にあるの。
グリーンマンが私のリュックを奪おうとしたのは、
その中にフミコの副葬品が入っていたからなのよ。


a8

アンドレアはリュックを背中から下ろすと、
カバーを開けてリュックの中から
宝石のついた肩飾りを取り出してみせた。

実は私、ドイツ語の読み書きができるの。
山の遺跡で頭蓋骨とバッグを見つけた時、
中にあったスケッチブックの日誌を読んで見たら、
副葬品の隠し場所が書いてあった。
咄嗟の思いつきで、そのページだけを
破いて抜き取ったの。
それから頭蓋骨と遺品を見つけたことを、
ブラッドとアーネストに知らせに行った。


a9

アンドレアは折りたたんだ
紙片をリュックから取り出して見せた。

ここに書いてあった隠し場所は
山の遺跡の広場にある水盤の側だった。
一枚の石畳をずらすと、水を流す設備のある場所に、
沢山の副葬品が押し込んであったわ。
私はアーネストとブラッドが、
遺跡の住居跡を探索している間に
その場所を見つけて、そこから、
この宝石のついた肩飾りを持ち出したのよ。

残りの副葬品は、この遺跡調査が終わった後で、
機会を見て再訪して運び出せばばいいと思ってた。
でもね。その時は本当に何にも知らなかったの。
ラッセルやアイスの話を聞いていたら、
私がこの副葬品を持ち去ろうとしたせいで、
グリーンマンを怒らせたんだって気がついた。

今となっては、
みんな殺されちゃうみたいだから、
どうしようもないんだけど。
この焚き火はまさに風前の灯ね。
死んじゃう前に本当のことを言っておきたかったの。
とアンドレアは言った。



解説)
続きます。
Posted at 20:27 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jul 01, 2024

ジャングルの異変 そのに

b1

一行はなかば洞穴のような
崖沿いの細道を抜けて、
谷の渓流にたどり着いた。


b2

川沿いに下ると、
目印の古い橋を見つけた。
ここからならルートがわかるね。
と言っている。


b3

川筋に沿って
中流域までやってきた。
もうすぐだよ。


b4

ワニもどきは怒っているようだ。


b5

一行は川を離れて、
集落の遺跡のあるジャングルに向かった。
しかし草むらには蛇が群れている。


b6

寄ってくる動物たちの気配もある。
リンやアンドレアは威嚇のために発砲し、
一行はじりじりと進んでいった。
集落の遺跡まで、もう間近なはずだ。


b7

突然、大蛇が現れて
行手に立ち塞がった。
あれ、猛毒のやつだ。


b8

大蛇は素早い動きで地を這って
アンドレアの体に絡みつき、
倒れたところにさらにもう一匹が。


b9

大蛇は口を大きく開けた。


b91

その時、二発の銃声が轟き、
二匹の蛇の頭は撃ち抜かれていた。


b92

あなたは命の恩人ね。
私たち地下の都の探索を終えたので、
地上の集落の方を再調査する準備をしてた時、
何発も銃声が聞こえたので飛んできたのよ。
とアイスが言っている。

なんか全体にすごい殺気を感じる。
と佳奈が言っている。


b93

一行はなんとか遺跡前の広場まで
たどり着いた。

すぐにでも撤収したいところだが、
もうすぐ日が暮れるし、
ジャングルには尋常でない雰囲気が漂っている。
今日はここでキャンプして出発は明朝にしよう。
とラッセルが言った。

今日僕とリンとクラウドは
人語を解すチンパンジーと出会って、
いろんな話を聞いた。
アイスも水没した都の遺跡を発見して、
トカゲ頭の人間のような生き物から、
遺跡にまつわる話を聞いてきたという。
これからそれらの情報をみんなで共有したいと思う。
なんだかジャングルがざわついていて、
警戒も必要だ。長い夜になるぞ。



解説)続きます。
Posted at 20:23 in n/a | WriteBacks (0) | Edit
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