Jul 21, 2024
町に帰る
魔術劇場の応接間で
ハリーとヴィヴィアンとマリアが寛いでいると、
鏡の扉が現れ、
鏡の中からアイスが姿を現した。
続いてマークとフミコも出てきた。
おや、お戻りね。
今あなたたちの噂をしていたところよ。
そちらの方は新しいお客様かしら。
とヴィヴィアンがいった。
あ、僕はマークといいます。
アフリカのジャングルの奥地で
小さな集落の長をしています。
マークはフィギアの精霊なの。
ジャンのジオラマの村の、
人たちと同じ身の上みたいなので、
彼らに一度に会ってみたらって私が誘ったのよ。
とアイスが言った。
なるほど。
私はこの館の当主のハリーで、
隣にいるのが娘のヴィヴィアン。
後ろに立っているのが姪のマリアです。
はるばる魔術劇場にようこそ。
はるばるって言っても鏡の扉を使えば、
一瞬でしょう。
ねえ最初にアイスが出てきたっていうことは、
まさか、アイスが魔法を使ったの?
とヴィヴィアンが言った。
そのまさかなの。
私、フミコに呪力を授けてもらっちゃった。
一行は、運ばれてきた
料理に舌鼓を打っている。
魔法陣の上に建てられた、
この館の中なら別だけど、
どこでも鏡の扉が作れるなんてすごいわ。
私なんて同じ魔族なのに、黒猫に変身することと、
箒に乗って空を飛ぶことしかできないのよ。
とマリアが言った。
どちらも楽しそうね。
魔族はみんな特技を持って生まれてくる。
それは今も変わらないのかしら。
変わらないわよ。
でも今では数も少なくなってね。
魔族でも魔法を使わない人たちもいるし、
自分が魔族だって知らない人もいる。
私、親戚以外の魔族の人に会ったのって久しぶり。
あ、犬猫同盟の集まりがあるから行かなくちゃ。
また今度お話ししましょう。
そういうと、マリアは出かけて行った。
入れ替わりのように、
出現した鏡の扉から女性が現れた。
あら、みなさん賑やかなこと。
私はハリーの妻のカーミラと言います。
あなたが話題のフミコさんね。
お部屋を用意してあるから、
いつでもご案内するわ。
ありがとうございます。
早速ご厚意に甘えようかな。
なんだか蘇ってから
あちこち移動したせいか
ちょっと疲れちゃって。
アイス、その素敵な指輪どうしたの?
とヴィヴィアンが聞いた。
フミコが、肩飾りの宝石を外して
作ってくれたのよ。
はめていると呪力が亢進するんだって。
寝室もあるから
ゆっくりお休みになるといいわ。
ありがとうございます。
お言葉に甘えて。
二人は部屋を出て行った。
私たちは
誰かジオラマ村出身の人がいないか、
広場に探しに行ってみるわ。
とアイスが言った。
ジオラマの村への鏡の扉は
魔術劇場の中からね。
呪文は彼らが知ってるから。
とヴィヴィアンが言った。
ありがとう。
ヴィヴィアン、さっき話した通り、
私どこでも鏡の扉を作れるのよ。もちろん、
その力は無闇に使わないつもりだけど。
では、ハリーさん、失礼します。
そう言って軽く会釈すると、
アイスとマークは部屋を出て行った。
二人だけになった。
アイスのはめていた指輪って。
うん俗にいう魔法使いの指輪として
魔族の間では知られているものだな。
生前フミコがいくつか作ったものが、
ずっと伝わっていたのかもしれない。
それにしてもフミコが呪力を授けたのが、
アイスでよかったよ。
もしお前みたいなお転婆娘に授けていたら。
これからどうなるか
わからないでしょ。
そりゃそうだな。
解説)
続きます。
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