Haizara-Cho::Suigara-yama 99[Shinsuke Kirita]

ジャンに会う

アイスとマークは席を立って
出発しようとしている。




リリスの酒場の二階にあるドアからは、
魔術劇場にも、ジャンさんの家の倉庫にも行ける。
倉庫への通路は、最初にリリスが生み出したものね。

リリスって。

あ、リリスっていうのは、人形の精霊で、
リリスの酒場を経営してる。
この村のフラハさんのような魔術師よ。
村の出現には彼女の力も関わっているの。

またややこしいんですね。

マークにもリリスを紹介したかったんだけど、
酒場に姿が見えなかったわね。




多分畑に出ているのよ。
アイスたちが来たことを伝えて、
ジャンの倉庫にいるって言ってくるわ。
とエルザが言った。




あ、もう帰っちゃうんですか。
もっとお話聞きたかったのに。
などとブランカたちに言われている。




また来るわよ。
みんな歓迎してくれてありがとう。
とアイスは言った。




二人がリリスの酒場の二階から
鏡の扉を使ってジャンの家の倉庫に移動すると、
ちょうどジャンとナタリーがいて、
二人は収穫したトマトの仕分け作業をしていた。




おや、アイス。
君がそのドアから現れるなんて、
どういう風の吹き回しかな。
とジャンが意外そうな顔をしている。




実はジオラマの村に行ってたんです。
こちらは友人のマーク。




初めまして、
僕はフィギアの精霊で。
とマークが言いかけると。




ジャンはマークの顔を
まじまじと見つめた。




おお。
いまフィギアの精霊だと言ったね。
僕は君を、というか、君の元になった
フィギアを随分探していたんだよ。

え、そうなんですか。




その横顔の輪郭線。
眉間の皺。険しいような
困ったような表情。
やっぱりマーク大尉だ。

この人があれだったのね。
とナタリーも言った。



解説）
続きます。