Jul 16, 2024

フミコの帰郷 そのに

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鏡の扉を抜けると、
そこは山の遺跡の中の広場だった。

ここに水盤があるね。
この側の石畳の下に
私たちより前に来たハンスっていう探検家が、
フミコのお墓の副葬品を集めて
隠してあるって聞いたよ。

ええ、さっき肩飾りを受け取ったとき、
グリーンマンも言ってたわ。
そんなことも話してたんだ。
彼はああみえて結構お利口さんなのよ。


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ここはね。
山の上にあって気候がいいから、
避暑地になっていたの。
山頂の展望台とも近いし。
展望台って、ストーンサークルのことかな。

そこには展望台って呼ばれる施設があって、
周囲の巨石群は、空から都を訪れる人たちのための、
目印になったりしていた。
でも戦争の時に徹底的に破壊された。

二人は建物の中に入っていく。


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確かに風が通り抜けて見晴らしも良くて、
気持ちがいいところね。
そうでしょう。
ここで友達とおしゃべりしたり
お昼寝するのが最高だった。


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ところでさっき
グリーンマンと話してたのはね。
とフミコが言った。

「あなたは長い間、ここが廃墟になってからも、
いつか私が蘇ることを信じて、
ずっとこの土地を守っていてくれたけれど、
もうそれも終わり。
私は私が死んだ後も、残された人たちが
安全に暮らせるように、あなたや動物たちに
この土地を守るように魔法をかけた。
でも長い歳月が流れ、住む人はもう誰もいない。
あなたは充分立派に役目を果たしてくれた。
もう自由になれるように魔法を解いてあげる」
って、私が言ったの。
そうしたらグリーンマンはちょっと考え込んでから、
これまで通りでいいって言ったのよ。

彼のいうのには、
何百年かに一度は、昔ここに住んでいた
人の子孫がこの遺跡を訪れることがあって、
伝承の記憶をよすがに、
都のいにしえの栄華を偲んでいくそうなの。
自分ではもう先祖の過去も知らずに
導かれるように来る人もいるという。
その人にとって、そんな体験は
一生に一度きりのことかもしれない。
でもその一度きりの体験の記憶が、
世代を超えて蘇り、繰り返されているんだと。
そんな魔族の末裔の訪問が絶えるまで、
この土地を守り続けたいというのよ。

その気持ちは嬉しいけど、
って私が言いかけたら、
いつの間にか周りに寄ってきていた動物たちが、
そうだそうだって言い出しちゃって。
私泣きそうになって、
わかったわかったって言って
逃げてきたの。


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ここは広場。子供がよく走って
よそ見してつまづいて転んで泣いてたわ。


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まるで別の星で見た記憶のように、
鮮やかに蘇る。


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あんなところにグリーンマンが。
彼はこの土地の中ならどこにでも
鏡の扉を出現させることができるから、
ああやってついてくるのよ。
次は祭壇のある湖の洞窟に行きましょう。


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ここの扉は特別なの?
ここだけは光る石でできてるの。
リザードたちの月の扉と同じ
仕組みが残っている。
彼らと一緒に暮らしていた頃の名残よ。


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ラッセルたちから話は聞いてたけど、
ここはすごいな。
魔族たちはこの土地に来て、
最初はこの洞窟に住んだと言われてる。
横穴式の住居跡があるはずよ。


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ここは私の墓所。
元は別世界に旅立つ人たちのための
特別な鏡の扉が置かれた祭壇だったの。
そんな場所にみんなで私を葬ってくれた。

グリーンマンがまた来てるわよ。
こっちにくればいいのに。
ああしてついてきて
覗いてみてるのが好きなのよ。
しょうもないやつなのね。



解説)
続きます。
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