Jul 04, 2024
夜明けまで
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コウモリたちは寝ぐらに帰っていく。
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集落の遺跡前広場の周辺に
集まっていた獣たちも
潮が引くように去って行った。
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ジャングルは平穏な静けさを取り戻したようだ。
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とつぜん君が奇妙な言葉を唱え始めたので驚いたよ。
あれはリザードが教えてくれた魔族の呪文。
リザードが前に魔族の人たちが
フミコを復活させようとしたことがあったって、
話してたから、グリーンマンもその時立ち会って、
あの呪文を聞いていたはずだと思ったのよ。
それであの呪文を唱えれば、
気になって現れるだろうって思ったの。
それから、
アンドレアの盗んだ副葬品と一緒に
フミコの頭蓋骨も返して、
私には蘇らせる力はないけど呪文は知っている。
もし私たちを殺したらフミコの復活の可能性も
遠のくけど、それでもいいの?
って問いかけたというわけ。
先輩ってすごい。
うまく行ったのはたまたま。
グリーンマンにこっちの意図が通じたからよ。
先輩の呪文でフミコが蘇ったりしたら凄かったのに。
私魔力なんて全然ないから。
でも呪文を唱えていてなんだか変な感じがした。
撫でていた頭蓋骨にちょっと温かみが。
彼女はグリーンマンに影響を与えていたのかもしれないわね。
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一同も安堵して焚き火の周りでくつろいでいた。
アンドレアが副葬品を盗んで
隠し場所を秘密にしていたのは問題だったけど、
そういう心理もわからなくもないな。
とブラッドが言った。
僕もラッセルと同じく、
トレジャーハンターとも呼ばれる探検家だからね。
財宝目当ての探索に参加することもある。
彼女は日誌を書いたのがリンの父親の
ハンスさんだということも知らなかったんだろう。
前の探検隊が残した宝のありかを書いた
地図を見つけて、宝を独占したくなるなんて、
よくあることだよ。
それにアンドレアはこの調査隊に
ボランティアで参加してくれた一般人で、
学者ってわけじゃないんだし。
随分彼女の肩を持つのね。
襲われる原因を作ったのは確かだけど、
何も知らなかった彼女は被害者だとも言える。
アンドレアが正直に打ち明けてくれたから、
アイスの機転で助かったんだ。
そうでなければ理由もわからないまま
僕たちは今頃獣たちの夕食になっていたよ。
それはその通りかもしれないわね。
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やがて一行は寝支度を始めた。
シュラフ持ってきてたの?
けっこう虫除けになるんだ。
いいなあ。
と言っている。
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広場の隅で夜空を見ていた
アンドレアはアイスに声をかけられている。
澄んだ星空は素晴らしいわね。
ええ。
ところであなた、副葬品を全部持ち出して、
ジゾックスの再興資金を調達するつもりだったの?
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え、なぜそれを。
私のことを知ってたのね。
アンドレアは身構えている。
はっきり確信したのは、
さっきのあなたの告白を聞いていた時よ。
焚き火にくっきり照らされたあなたの顔を見ていて、
去年の7月、魔王メイヴの復活騒ぎで、
町の広場から逃走したローズの手下だったって、
思い出したの。
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ということは、マークの集落で
一緒に豹変亭を経営してるのがボスのローズね。
こんな辺境に落ち延びていたなんて、
国際警察機構やCGにも行方がわからないわけだわ。
ああ、でも本部には報告しない。
CGが介入して来ると、マークの集落や
この遺跡の存在が知られておおごとになるし、
あなたが正直に話してくれたおかげで、
グリーンマンの怒りを宥めることができたんだしね。
ジゾックスを再興して世界征服しようなんて
マーベルコミックの悪役みたいなことは考えずに、
地道に酒場を経営して更生しなさいって、
帰ったらローズに伝えといて。
あなたたちもう二人だけなんでしょ。
とアイスは言った。
足元見られてる気がして悔しいけど、
言ってることはごもっともね。
あなたは命の恩人だし、冷徹な人。
サラたちの部屋で手錠をかけられて以来、
ずっと恨んでたけど、
なんかもうどうでも良くなっちゃった。
とアンドレアは言った。
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長かった夜が明け、
象たちが水場に移動している。
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佳奈は鳥の声に目を覚ました。
ハヨーオッキーテ、ハヨー、ハヨー。
という鳴き声の後半が、オッハヨー。
というふうにも聞こえる。
あの鳥何の鳥だろう。
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ラッセルたちは、出発前に
水没したという都を一目見ておこうと、
遺跡の地下室に降りようとしたが、
入り口は閉じてしまっていた。
何かのはずみで開いたんでが、
何かのはずみで閉じたんでしょうか。
仕掛けを探すのが結構大変です。
と佳奈が言っている。
リザードは、
水没した都には滅多に来ないって言ってたけど、
大切なものがあるとも言ってたからね。
たぶんリザードか彼の仲間が閉じたのよ。
とアイスが言った。
仕方がないか。
ロマンなのに残念だなあ。
とラッセルが言っている。
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かくて一行は
マークの集落への帰還の途についたのだった。
解説)
続きます。
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