手枕は艪の音となる桜かな あざ蓉子
春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなくたたむ名こそ惜しけれ 周防内侍
この俳句と短歌はどちらも女性が詠ったものです。この「手枕」が相手の男性の腕であるのか、自分の腕であるのか?ここはお料理の甲斐があるというものです。さまざまに調べてみましたが、これは「相手の腕を借りた枕」と解釈できるのではないでしょうか?
俳句の解釈は、人それぞれにどのようにでも展開できるだろう。
しかし、百人一首にもあるこの短歌は「千載集」における「枕書」で解釈できるでしょう。
『二月ばかりの月あかきよ、二条院に人々あまたゐあかして、物語などし侍りけるに、内侍周防より、ふして枕をさがなと、しのびやかにいふをききて、大納言忠家、これを枕にとて、かひなをみすの下よりさし入れて侍ければ、読侍ける』
したがって、この「かひなく」は「腕=かいな」と「甲斐なく」の掛詞です。この周防内侍への返歌があります。言葉に遊び慣れた宮廷人の様子がわかります。
契ありて春の夜深き手枕をいかがかひなき夢になすべき 大納言忠家
http://www7a.biglobe.ne.jp/~katatumuri/poem/yougo50.htm#modoru
ここ↑では、こんな解釈がある。
『草枕は手枕に対応する。つまり、家にいるときは妻の手枕を楽しめた。しかし古代では、家を離れて旅に出ると、旅館などなかった。夜は草を積み上げて枕にするが、決して快適とはいえない。運が悪ければ、旅は死につながった。これを岩枕と表現した。したがって、 「草枕」は無意味に用いられたのではなくて、家を離れた男が死の恐怖まで連想する言葉だった。』