Apr 30, 2024
春たけなわの日々 そのはち

今日は曇天ながら気温が上昇している。
ジェニーたちの部屋では、
ナオミが戻ってきて
ジェニーの気分転換ぶりに驚いている。

その乙姫様みたいな髪型はなんていうの?
稚児髷(ちごまげ)っていうのよ。

サラたちの部屋には
メルティが来ていた。
あなたも気分転換?
いいえ。今日はお誘いにきたの。
この前魔術劇場では、局長と一緒で、
部屋を案内してたので言い出せなかったけど、
久しぶりに私の世界に遊びに来ない?

その頃、広場では。

今日は蒸し暑いねー。

もう4月も終わりなんですね。
ということは明日が今月のコンテストの発表か。
今月も選考が悩ましいわ。

子供たちは今日も滑って遊んでいた。
フローラも着替えをしたようだ。

ナディアとマヤが小声で話している。
昨日はどうなることかと思ったわ。
実はナディアは私の娘で、
二人が実の親子だって言っても
とても信じてもらえそうもないからね。
あの子はCGの新人で佳奈っていうのよ。
今はドルフィンのスタッフしてる。
それで戦闘服のこと知ってたのね。

その頃佳奈はベランダで
アイスたちと話していた。
翠さんは探偵助手になりすまして
諜報活動してるんですか?
と、佳奈が聞いている。

諜報活動っていうより、
基本的にCGのメンバーは、
普段は普通の職業についているのよ。
何かの時に動員されるわけ。
境界警備隊みたいなのは特別なの。
でも、普段から情報収集はしてるわね。
以前はよくペンギンに出かけて、
常連のお客さんから情報をもらってた。
こんな平穏そうな町にもスパイみたいな人って
いるんですか?

郊外に住んでいるジムっていう人や、
マンゴー亭やデジャによく出入りしている
アンジーっていう人は英国の諜報機関の人よ。
とアイスが言った。
でもCGと敵対しているわけじゃない。
何かの時は協力する関係にあるの。
これまでも、町にヴィヴィアンが来た時、
協力して警護に当たったりした。
ヴィヴィアンって、あの魔法使いの。
その時は英国のマフィアや
ヴァンパイアの過激派が動いていてね。
他にも、秘密組織ジゾックス騎士団の残党の、
魔王メイヴを復活させようという企みを阻止したり、
水面下ではいろんな事が起きているの。
普通の町の住民たちのほとんどは知らないけどね。
平和な着せ替え人形のままごと遊びみたいな
世界だと思うと違ってるわけですね。
どうしてそんな比喩を思いつくのかな。

その頃、魔術劇場の前では、
入り口の番人のエヴァに扉を開けてもらい、
メルティとサラが劇場に入るところだった。
お土産に肉まん買っていこうよ。
と言っている。
解説)
今回もほぼ続きでした。
Apr 29, 2024
春たけなわの日々 そのなな

ケヤキの若葉が生い茂って、
山々も堤防も隠れて見えなくなった。

みんな出かけてるね。
僕が留守番してるから
ジェニーも気分転換してくれば?
と文学青年が言った。

ジェニーはサラを訪ねていった。

広場は平穏に賑わっている。

子供たちは相変わらず
スケートボードで遊んでいる。

ドルフィンに鷲尾翠が
衣替えに来ていた。
これ着てたの?
襟が豹柄で気に入ってたけど
流石にもう春だからね。

農家の出店には、
ナディアがドラゴニアベリーを運んでいた。
いつもどうもね。
あ、マヤ。
と佳奈が言っている。

CGの戦闘服着てたらまずいんじゃないの?
この子誰だっけと思って、
ナディアは戸惑っている。

そこにマヤが駆けつけてきた。
佳奈、この子はね、
私の双子の妹で、ナディアっていうの。
この服はコスプレなのよ。
そーなんですか。
その時、ルビーが佳奈を呼ぶ声が聞こえた。

なんでしょう。
あなたに紹介しようと思って。
身分を隠しているCGの仲間よ。
あ、鷲尾翠さんでしたよね。
今年のお正月に探偵事務所で。
名前の由来を伺っていた時に。
ああ、あの時の学生さん。よく覚えてたわね。
私、表向きはあの探偵事務所で助手をしてるの。

その頃、サラたちの部屋では、
ジェニーの気分転換が終わっていた。

ちょっと変えすぎじゃないですか。
このくらいにしないと。
と言われている。
解説)
今回もあれこれと。
Apr 28, 2024
春たけなわの日々 そのろく

広場は平穏を取り戻している。

大道芸人たちの演奏も
始まったようだ。

ドミノ、その楽器はなあに?
サズって言うトルコの民族楽器よ。
ドルフィンの倉庫の隅で見つけたの。

あのからくり人形はどこに?
郊外に向かったみたい。
子供たちもついていったわ。

ジルさん、助かりました。
森林公園に設置していただけるなんて。
皆さんの評判が良かったし、
ギルダも僕もあのフォルムが気に入っちゃったのでね。

その頃、茶運び人形は、
郊外の森林公園に向かっていた。
公園管理を任されている、
ソローと権太が付き添っている。

時々ゼンマイ巻かないと止まるけど、
これよく動くね。
公園に飾るなんてジルさんも酔狂だなあ。
いやいや案外
観光の目玉になるかもしれないよ。

その頃広場のベランダでは、
トマソンとサルバドールが話していた。
今回の作品は随分作風が変わりましたな。
夢の世界で、これというモデルが見つからなくて、
戻りぎわに見かけた人形をモデルにしたのです。
でも作っていて、こういうものこそ自分は
作りたかったのだと思いました。

なるほどなあ。
もう私の力は必要ないのかも。
え、サルバドールさんは、
すごい夢魔だって噂で聞いたんですけど、
やっぱり本当だったんですか?
とうたが尋ねた。
うーん。そう呼ぶ人もいますが、
私は芸術を愛する芸術家の味方なのです。
ただし人の夢の中に入り込んで、
想像力や創造力を増強する力を持っている。
それを当人や周囲が囚われた状態と思えば、
そんなふうに呼ばれることもあるだけなのですよ。
僕もハリーさんたちが話しているのを聞いて、
なんとなく気がついてはいました。
迷いの森でサルバドールさんとお会いして以来、
あの世界の夢ばかり見るようになったのだし。
でもたとえ操られていたのだとしても
とても感謝していますよ。
とトマソンが言った。
サルバドールはちょっと
うるっとしているようだ。

その頃、茶運び人形は
森林公園に到着していた。

やがて、茶運び人形は、
花壇の中央に設置されたのだった。
天使の彫像の方が良かった気がするなあ。
これはこれでユニークだよ。
などと言っている。
解説)
前回の続きのような展開に。
サズは遥か昔に製作した楽器アイテムで、
2006年2月3日「剣と魔法の国 その5」
に一度だけ登場しています。
Apr 27, 2024
春たけなわの日々 そのご

広場では、
相変わらず人だかりがしていた。

ドルフィンに戻ってきていた
マヤと佳奈が話している。
マヤはロボットに詳しいんでしょう?
あれは江戸時代に、からくり半蔵と呼ばれた、
細川半蔵っていう人が書いた指南書「機巧図像」を
元に作られたゼンマイ仕掛けの「茶運び人形」を、
そのまま6倍スケールに巨大にしたものよ。

あの涼しげな澄んだ瞳と
謎めいた微笑みが素晴らしいですなあ。
ずっとみていると
気分がくるくるしてくるようだ。
とサルバドールが言っている。
そうなの?
とアイスが言っている。

なんか足りないのよね。
とモモコ。
ルビーさん、これどうするんですか?
お店の前で邪魔だからね。
とりあえず撤去するしかないかな。

そこにトマソンが
巨大な器を持ってやってきた。
これを置くのを忘れてました。

これで完成なんです。
トマソンさん。
いつもの空き缶やペットボトルと違って、
粗大ゴミ扱いするのは、
ちょっと躊躇するんですけど、
ここはお店の前なので。
ああ、捨ててもらっていいんですよ。
作品を作って路上に設置するまでが、
僕の芸術行為なんです。

ドルフィンのスタッフのリタと佳奈が、
撤去作業に取り掛かるために近づいてきた。
なんだか勿体無いな。
人間に似てるせいかしら。
なんでも顔がついてると捨てられなくなるのよね。
壊さずに移動できないの?
などと話し声が聞こえる。
移動ならできますよ。
とトマソンが言った。

ゼンマイを巻いてありますから、
あとは茶碗の中に水を注げばいいんです。
受け皿の部分が重さを感知して移動するんです。
さっそくアイスがバケツで水を運び、
舞がヤカンから水を注いでいる。

茶碗の水の重みで
内部の歯車のストッパーが外れ、
茶運び人形はそろそろと動き出していった。
解説)
なんとなく
一件落着ふうになったのでした。
Apr 26, 2024
春たけなわの日々 そのよん

ミルフィーユは
ジェニーたちの部屋に帰ってきた。
うわ。随分。
と言われている。

すっかり健康そうになって。
せっかく気分転換したから外出しようよ。

ということで、翌朝、
たまきとミルフィーユは
ペンギンにコーヒーを飲みに出かけた。
イメチェンですね。
とはるなに言われている。

二人の姿に気がついて
店内からジュリアナたちがみている。

ジュリアナとエリカは、
日焼け仲間が増えたのね。
と喜んでいる。

カオリも顔を覗かせた。
色白で対照的なので登場したようだ。

この夏はこれで。
私はずっとこのままよ。
昔はやってたの?
みんな微妙に違うのね。
などと言い合っている。

その頃、広場に向かった
モモコとナオミは、思わぬ光景に
遭遇していた。

ルビーさん。
これ人形ですよね。
そうみたい。
今朝出現していたのよ。
モモコは、
これって見覚えがある。
と思っていた。

エトナは早速カメラを構えて
撮影している。
この頭、微妙に動くよ。
と、舞が言っている。

誰が置いたか大体見当がつくわね。
でもいつものオブジェとはちょっと違う。
大道芸人たちが演奏できなくて困ってますよ。
どうしましょうか。
燃えないゴミの日はいつだっけ?
などと言っている。
解説)
ちょっとだけ
変わったことが起きたようです。
Apr 25, 2024
春たけなわの日々 そのさん

天候が回復したようで、
草木は光を浴びている。
モモコとナオミは部屋に帰ってきた。
みんな気分転換したのね。

ミルフィーユも
気分転換してみたら?
どんな感じがいい?
うーん
健康的なのがいいなあ。

ミルフィーユは
サラたちの部屋を訪ねることにした。
なんとなく無茶振りだなあ。

その頃、ハーレーたちは、
道路の傍にバイクを停めて
パトルールの車両を待ちながら、
立ち話をしていた。
境界警備隊っていつ頃できたんですか?
地元で迷いの森って呼ばれていた
森林地帯で、失踪者が相次ぐので、
立ち入り禁止区域になって、
それから軍が調査に入ってからね。
調査隊が部隊毎消えたこともあって、
軍とCGが協力して監視のための
部隊が置かれたのよ。
3年前くらいかしら。
フェンスまで作られて随分物々しいんですね。
色々不可解なことがあるらしくてね。

そこに境界警備隊のバギーが走ってきて、
急停車した。

みんなに紹介したい新人がいて、
あなたたちが来るのを待ってたのよ。
とハーレーが言った。

レイブンとコフィ、
ベレー帽かぶっているのが
リーダーのイメルダよ。
佳奈です、どうぞよろしく。
と佳奈は言った。

あなた、CGのこと知ってる?
とレイブンが言った。
いえ、地球の平和を維持するための
国際的な秘密組織というくらいしか。
そうか、秘密だから無理ないわね。
どんな組織なんですか。
それが秘密なのよ。
新人を混乱させてはダメよ。
とハーレーが言っている。

マヤ、こんなところで珍しいわね。
このところずっと出歩かなかったから、
久しぶりに郊外まで散歩に出て、
ついでに詰所に立ち寄ったら、
みんな出払ってたので帰る途中だったの。
そしたらハーレーたちに出会って。
なるほど。
そういえば、野菜運んでるの見たって聞いたけど。
ああ。あれはね。
暇だからたまに農家の手伝いしてるのよ。
そうなの。
お互い暇だからねー。
とイメルダは言った。

その頃、サラたちの部屋では。
こんな感じだけどどうかしら。
ありがと。嬉しいわ。
すごく健康的で気分転換になります。
とミルフィーユが喜んでいる。
解説)
今回もあまり脈絡なく
時が過ぎていくのでした。
Apr 24, 2024
春たけなわの日々 そのに

今日も雨模様で、
木々の緑がしっとりと濡れている。
たまきは部屋に帰ってきた。

髪切ったのね。

なんだか別人みたい。
気分転換よ。

気分転換、気分転換と言いながら
モモコとナオミはサラたちの部屋に出かけていった。

その頃、佳奈をのせた
ハーレーのオートバイは
郊外の道を走っていた。
もうすぐ境界警備隊の詰所に
到着するよ。

誰か歩いてくる人がいる。
あれはマヤよ。彼女もCGのメンバー。
ドルフィンでアンのメンテをしてるって聞いたわ。
え、私見たことないですけど。

マヤが軽く手をかざして、
ハーレーはバイクを止めた。
後ろの子は佳奈、この春入ったばかりのCGの新人よ。
まだ研修中でドルフィンのスタッフっていうことに
なってる。
とハーレーがマヤに佳奈を紹介した。
どうぞよろしく。
私はマヤ。去年の7月にアンのメンテナンスっていうことで、
不在中だったレイチェルの代わりにドルフィンに配属されたの。
あなたの1年先輩っていうことになるわね。
レイチェルが帰ってきて交代でメンテナンスしている。
でも顔を合わせたことなかったわね。
私、10日前にドルフィンに配属されたばかりなんです。
でもこの町に来たのは去年の暮れで、あちこちの家を回って、
学校の自由研究で名前の由来調べをやってました。
そしたら、CGにスカウトされて。
今までお会いしたことなかったのは、逆に珍しいですね。
最近はシェリー研究所に篭りきりで、
アンのメンテもレイチェルに任せきりだったからね。
あ、今みんなパトロールに出てて詰所にいないわよ。
ここで待ってれば、もうすぐ通ると思う。
とマヤは言った。

その頃、サラたちの部屋では、
二人の髪型の気分転換が終わっていた。
後ろで編んでまとめてもらったの。
とナオミが言った。

私はちょんまげを
おろしてもらったの。
とモモコが言った。

二人はたまには
気分転換しないと。
と言っている。
解説)
たまきとナオミとモモコのヘッド、
いずれも古くからのストックで、
10数年前には登場していたことが
あったと思います。
Apr 23, 2024
春たけなわの日々

たまきもサラに
髪を短くしてもらった。
さっぱりしたわ。

どんな感じかな。

そんなに日焼けしてたっけ?
ルージュの色も変えたのね。
などと言われている。

その頃、広場では、
ハーレーと佳奈がオートバイに乗っていた。
今日は時間があるから、
このまま郊外の境界警備隊の詰所まで帰って、
この新人を仲間に紹介してくるよ。

二人を乗せたバイクは
Uターンすると、
排気音とともに走り去っていった。

詰所には軍の兵士たちもいるんでしょう。
CGの一員だって疑われないですか。
そう思われても特に問題ないのよ。
そう言われればそうですね。

隣のマンゴー亭では、
サルバドールが、ジェニーフレンドたちの
会話に参加していた。
今走っていったオートバイ、
スワット仕様だったでしょ。
とロベリアが言っている。

サルバドールさん。
ご支援のお申し出はありがたいんですが、
私、ヴィオリンはあくまでも趣味なんで、
プロの演奏家になるつもりはないんです。
と奈々子は言っている。
それはなんとも残念ですなあ。

こんなに本人の意思がはっきりしてると、
夢の中に忍び込めそうもないなあ。
とサルバドールは思っている。
解説)
あれこれと
春の日が過ぎていきます。
Apr 22, 2024
ティモテのことなど

今日は時々小雨。
モモコはジェニーたちの部屋に
帰ってきている。

雨があがるとウグイスが鳴いて
教えてくれるのがいい感じね。
たまきはさっそく散歩に行ったよ。

それでその巨人って
どんな人だったの。
隣のキッチンにいたから、
姿を見たわけじゃないのよ。
見つかったらどうなるの。
モスラに出てくる妖精みたいになるのかな。
古すぎてわからない。
などと話している。

隣の高台では、
たまきがティモテと出会って
話していた。
この近くに、
すごく器用な人がいるって聞いて。
きっとサラのことね。
私知ってるから連れてってあげる。

たまきはティモテをサラに紹介している。
あなた、印象的な長い髪で
コンテストで優勝した人でしょう?
そうなんですけど、
髪を短くしたいんです。
もう地面に届きそうで。

その頃広場には、
CGのハーレーが遊びに来ていた。

調子はどう?
私が境界警備隊に配属されたのは
去年の9月だけど、
至って平穏よ。もう暇で暇で。
そういえば新人が入ったって聞いたけど。

もう噂になってるのね。こちらが佳奈ちゃん。
表向きはドルフィンのスタッフっていうことに
なってるから、よろしくね。
どうも。佳奈です。
ルビーさん。ベーカリーの皆さんの他にも、
身分を隠してるCGのメンバーって、
この町にいるんですか?
いるわよ。
今度紹介するわ。

その頃、サラたちの部屋では、
ティモテのヘアーカットが終わっていた。

こんな感じよ。
わーすっきりしました。
私も短くしてもらおうかな。
とたまきが言っている。
解説)
ティモテの長髪は、ヘッド全体を交換しているだけで、
実際に髪をカットしたわけではありません。
Apr 21, 2024
ジェーンの世界 帰還

ジェーンが投げ上げた紐を伝って、
3人はサイドテーブルの上に
登って行った。
エリコは花瓶に生けられた小枝に
器用に体を絡ませて見下ろしている。

モモコ、あなたたちは今
とても危険な状態にあるの。
居間の隅にある扉のついた建物。
あれが見つかれば大変なことになるのよ。
あ、うん。
でもエリコはどうして私がここにいるって
わかったの?
私はいつもあなたの心の中にいる。
と言っても、私の体は迷いの森にあるんだけど。
あなたがどこにいるのか位はわかるのよ。
あなたは第二のお母さんだからね。
そう言ってエリコは微笑んだ。
それで急いでやってきてみたら、
すごく危ないことになってた。

エリコの忠告を受けて、
二人は元の世界に戻ることにした。
慌ただしかったけど、楽しかった。
テレビ体操も覚えたし。
また遊びに来るからね。
とモモコが言っている。

二人の姿が鏡の扉の中に
吸い込まれるように消えると、
魔術劇場も消えてしまった。

モモコたちは、
魔術劇場の応接間に帰り着いた。
やあ、おかえり。
それはなんだね?
とハリーが言っている。

モモコは異世界での出来事をハリーに話した。
なるほど、忠告してくれたエリコというのは、
迷いの森に住む生き物で、
君たちの行った世界は、
迷いの森とも繋がっているんだね。
迷いの森の奥にあの世界があって
エリコたちだけが通れる通路があるんです。
ふむ。私たち魔族の先祖が、
迷いの森からやってきたという
古い言い伝えがあるんだ。
もしかすると、その世界が
私たち魔族の故郷かもしれないなあ。
じゃあ、ジェーンは、
魔族のご先祖様の一族かもしれないですね。
魔法なんて全然使えないみたいですけど。
ふむ。
このクラッカーうまいなあ。
それで、トマソン氏はいかがでしたかな。

ジェーンにもらったイチゴを食べて、
ここが夢ではなくて現実だと実感した時から、
なんだか自分が変わったような気がしていたんです。
そうしたら、こっちの世界で眠っていた筈の
僕の体が消えちゃったって、モモコさんに教えられて。
ふむ。モモコさんが探しに行かなければ、
それこそ神隠しに合うところでしたな。
感謝してます。
オブジェのヒントは見つからなかったんですが、
向こうではジェーンに色々案内してもらったんです。
あれ作ろうかなあ。

ハリーへの報告を済ませてモモコが
魔術劇場から出ると、
広場はかわりなくぼちぼち賑わっていた。

その透明なレインシューズ
かっこいいわね。
と舞に言われている。
解説)
長いようであっという間の、
モモコたちの冒険が終わったのでした。
Apr 20, 2024
ジェーンの世界 そのじゅう

モモコは、
家の主がリモコンの操作をしているのを、
キッチンテーブルの上で見ていた。

家の主はケトルに水を入れて火にかけ、
冷蔵庫の扉を開けて食パンやマーガリンを探している。
いつもの行動パターンだ。

ジェーンは、素早く身を翻して、
椅子の上に滑り降りた。

ここなら安全。
カリカリとコーヒー豆を挽く音がして、
やがてトースターから食パンが跳ね上がる音や、
淹れたての珈琲の香りが漂ってきた。

ジェーンは椅子の上に潜んで
朝食中の家の主人と一緒に
テレビニュースを視聴していた。
あ、カーテンがずれちゃってる!
気がつかれなきゃいいけど。
とジェーンは思った。

やがて家の主が朝食を済ませて
二階に引き上げた後、
ジェーンはテーブルの上に
開封されたクラッカーの箱を見つけた。

ジェーンはクラッカーの包みを抱えて、
無事にモモコたちのところに戻ってきた。
心配してたのよ。
大丈夫、いつものことだから。

その時、モモコの頭の中で、
懐かしい声がした。
モモコ聞こえる?
上よ上。

モモコが見上げると、
サイドテーブルの上の花瓶の中に
巨大な虫のようなものの姿が見えた。
あ、エリコ。
解説)
続きます。
Apr 19, 2024
ジェーンの世界 そのきゅう

家の主人も二階の寝室で眠りこみ、
夜も更けて居間のサイドテーブルの縁から
かすかな明かりが漏れている。

書籍で遮蔽されたテーブルの棚の中では、
ジェーンたちがプチトマトを食べながら
歓談していた。
それとこれとは、大根と牛蒡くらいの違いよ、
いいえ、レンコンとちくわくらいの違いはあるわ。
などと話している。

やっぱりこの世界楽しいわ。
プチトマトがこんなに大きいなんて。

暮らしていくのは結構大変なのよ。
毎日危険と隣り合わせで。
紙芝居にしたら面白いでしょうね。
なぜ紙芝居なの?
レトロなのがいいんですよ。
そういえばトマソンさん
芸術家だったんだ。
好きなことしているだけですよ。
みんな人生は芸術なんです。

3人の話は尽きず、
春の夜は更けて行った。

翌朝。
モモコは、ジェーンから分けて貰った
輪ゴムと指サックで履き物を作っている。

嬉しいなー。
ジェーンとおんなじだ。

その時、遠くでドンドンという物音が聞こえた。
人が階段を降りてくる音のようだ。
モモコさん、
登ってきてください。
とトマソンが呼んでいる。

二人は棚の中に隠れて
推移を見守っている。

どこかでリモコンのスイッチが押され、
モニターに画像が映し出された。
あ、テレビ体操だ。
モモコはどこに?
キッチンの方に出かけてるはずです。
解説)
よくわからない事態に。
Apr 18, 2024
ジェーンの世界 そのはち

鏡の扉から出て来たモモコは
居間のガラス戸沿いに歩いて行った。

あ、あれはトマソンさんだ。

トマソンは大きな鉢を押して
位置をずらせている最中だった。

声をかけると
トマソンは振り向いた。
モモコさん。
どうしてここに。
魔術劇場の寝室で
ずっと眠っていた
あなたの体が
消えちゃったのよ。
え、そんなことが。

この世界で眠って起きても、
この世界の夢から覚めないんです。
体も消えちゃったとなると、
やっぱりもう戻れないのかなあ。
だから私が助けに来たのよ。
などと二人で話していると、
キッチンの方から
プチトマトを抱えたジェーンがやって来た。

モモコ、久しぶりね。
どうやってここに?
夢を見てるわけじゃなくて、
前と同じように魔術劇場の扉を使ってきたの。
トマソンさんの体がなくなっちゃって、
本人を探しに来たんだけど、
扉が見つかると大変だから急いで帰らないと。

3人は居間の隅にある
魔術劇場の前まで行った。
せっかく来たんだから、
もう少しゆっくりしたいなあ。
僕もまだ作りたいオブジェのヒントを
見つけていないんです。
だったらカーテンで隠せば
きっと見つからないわよ。

ジェーンたちはカーテンを引っ張って、
魔術劇場を覆い隠している。

こんなんで大丈夫かなあ。
とモモコは思っている。

モモコがサイドテーブルの横に戻ると、
ジェーンたちはサイドテーブルの棚の中に
プチトマトを運び入れていた。
さっきトマソンが動かしていた鉢は、
足場用に使われていたのだった。

ここは仮の棲家なのよ。
とジェーンが言っている。

サイドテーブルの棚の中は、
3方をカーテンと家具と、
並んだ書籍に囲まれ、
タオル地の掛けられた箱の横に、
狭い入り口のある空間だった。
棚板の上には古い手袋や端切れが敷き詰められ、
非常用の照明器具らしきものが
横倒しにされたままになっている。
解説)
すぐ戻るつもりが
なんとなく思わぬ展開に。
Apr 17, 2024
ジェーンの世界 そのなな

モモコが扉を抜けると、
そこは魔術劇場の応接間だった。
ここにはほぼ2年ぶりですかな。
そろそろおいでになる頃かと
思っていましたよ。
とハリーが言った。

トマソンさんがずっと眠ったままだと聞いて、
気になって来たんです。
この前トマソンさんにお会いした時、
いつも見ているっていう
夢の世界のスケッチを見せてくれたんですけど、
その世界が、私がジェーンに会った世界に
そっくりだったの。
ずっと眠り続けているっていうことは、
その世界に行ったままなんじゃないかって。

そうでしょうとも。
私も同じことを考えていました。
私は魔術劇場の中で、魔法の力を使って、
その人が望む世界に行ける、
鏡の扉を作り出すことができますが、
それはあくまでも個人的な思いを
魔法の力で実体化する夢のような世界です。
けれど、かってモモコさんが訪れ、
今はトマソン氏も訪れていると思われる
ジェーンが住む世界というのは、
そうした個人的な夢や願望をもとに
魔法で生み出される異世界とは
かなり異質なのです。

この古い魔術の本を紐解いて
調べてみたのですが、
本来、願望と魔法の力だけでは行けない世界です。
だからトマソン氏に取り憑いた凄腕の夢魔である
サルバドールでさえ入り込むことができなかった。
私は何年も前に迷いの森を探検して、
ジェーンの住む世界に行き着いたことがあったの。
でもその時は、見えない境界に阻まれて、
入り込むことができなかった。
でもなぜか私だけがハリーさんの
魔法の力を借りれば行けるのね。

その時、鏡の扉が開いて
デュアンがやってきた。
今、トマソンさんの寝室に
様子を見に行ったんですが、
姿が消えていました。

ふーむ。
どうやら肉体があちらの世界に
移動してしまったようだ。
そんなことってあるんですか。
私、兵隊さんたちの村で、
話していた途中でジェーンが消えちゃったりするの
体験したことがあるわ。
とモモコが言った。

このままだと、
トマソンさんこの世界から
いなくなっちゃうよ。
私呼びに行ってくる。
勇気あるなあ。
とデュアンは思っている。

訪問は2度目だからわかっていると思うけど、
向こうの世界には
扉が魔術劇場ごと出現するはずだ。
劇場が見つかって扉が取り上げられると、
戻れなくなるから気をつけて。
とハリーが言った。

モモコが鏡の扉を抜けると、
そこは巨大な居間の隅だった。
解説)
モモコがジェーンの住む世界に
行きたくて、アイスと二人で
迷いの森を探検した経緯は、
2021年5月6日「モモコの計画」から
2021年5月12日「帰還まで」に
描かれています。
モモコとジェーンが会話中に
ジェーンが消えてしまうエピソードは、
2021年9月8日「願いのままに」。
その前後の回を見ると経緯がわかります。
Apr 16, 2024
ジェーンの世界 そのろく

ジェーンは面白そうなものが見たいという
トマソンを案内していた。
これは、からくり人形よ。
ゼンマイ仕掛けで、お茶を運ぶの。
随分埃をかぶっていますね。
ずっと前からあるけど、
私も動いてるところは見たことがないわ。

これはカラー写真付きの葉書ですね。

ずっと前から送ってくれる人がいて、
届くと大抵この箱に収納されているのよ。
花や虫や鳥の写真に季節感が溢れてるから
いつも覗くのが楽しみ。

世界が変わって、
その頃サラたちの部屋では、
みんなでお茶を飲んでいた。

そこに佳奈がやってきた。
就職の報告をしにきたようだ。

私、ドルフィン工房のスタッフになれたんです。
この町に住めるようになって嬉しい。
サラ先輩、皆さんも、
これからもよろしくお願いします。

こちらこそ。
良かったですねー。
とジェイソンも言っている。

その頃広場ではそこそこの賑わいだった。

これは倉庫に入荷した
新しい浮世絵です。
これで確か4枚目ね。
永谷園の鮭茶漬け食べたくなってきた。
などと言っている。

あら、佳奈ちゃんは?
サラ先輩のところに
挨拶に行くとか言ってたよ。

モモコは魔術劇場の入り口の
扉の管理をしているエヴァに話しかけていた。
トマソンさんが何日も眠ったままだって
聞いたんですけど。
そうなの。そのことを聞いて、
きっとあなたが訪ねてくるだろうって、
ハリーさんが言ってたわ。
どうぞ中へ。
解説)
なんとなく散漫に
少しずつ進展しています。
Apr 15, 2024
ジェーンの世界 そのご

ジェーンたちは
炬燵の裾で話していた。
あ、ジェーンさん。
僕まだこの世界にいるんだ。
そうみたいね。
よく眠ってたわよ。

今日はいい天気。
居間の網戸を閉め忘れてるなんて、
ラッキーだわ。
外に出かけるんですか。

滅多にないことだからね。
それにお花も見てみみたい。

一面の桜ですね。
あっちの方に行ってみましょう。

シュールな世界だなあ。

巨人が電気工事してますよ。
見つかると危険だから、
引き返しましょう。

ここもやばくないですか。
ちょっと見るだけ。

ここなら安全よ。
巨大だけどシャガの花綺麗ですね。

もう筍が。
今年は気温が高かったので、
例年より半月ほど早いって、
居間のテレビで言ってたわ。

クリスマスローズや
スノーポピーが咲いてる。
眠って目が覚めても
こっちの世界。
僕もう戻れないのかなあ。
どうなんでしょう。
私にはわからないわ。
解説)
今日は天気が良かったので、
屋外で撮影して合成しました。
Apr 14, 2024
ジェーンの世界 そのよん

ベランダにはヴィヴィアンもやってきて
サルバドールと話していた。
トマソン氏が何日も眠ったままらしいのよ。
あなたが夢魔として取り憑いているんでしょう。
起こすことはできないの?

確かに取り憑いてはいたんですが、
彼がいるのは夢の世界じゃなく、
実在する異世界なんです。
私はそのきっかけを与えただけで、
私がその世界に導いたというより、
その世界が彼の眠りに引き寄せられてしまったんです。
最初に迷いの森で眠ったせいかもしれない。
起きてこないのは、
彼自身が目覚めるのを望んでいないからですよ。
すごいオブジェのヒントでも見つけて
夢中になっているのかもしれない。
次の作品が楽しみだなあ。

随分、気楽なものなのね。
あなたは芸術のためなら人を破滅に追いやることも
あるって聞いてるから、無理ないのかもしれないけど。
とヴィヴィアンが言った。
私は本人の願いを手助けしてあげるだけですよ。
芸術作品のためなら命も惜しくないという人もいるんです。
おお、この音色美しいですなあ。
ずっと眠ったまま夢を見ているとしたら、
私と同じね。
とメルティが言った。

ヴィヴィアンはデジャに戻った。
どうも埒があかなかったわ。
サルバドールの関心は、
ヴァイオリンの音色。
次は奈々子に取り憑くつもりなのかしら。

そのトマソン氏のいる異世界のことなんだが、
全てが6倍のスケールでできているというんだろう。
そういう世界だったら、
一昨年に魔術劇場にやってきたモモコという娘さんを
鏡の扉を使って案内したのを思い出したよ。
とハリーが言った。
そんなことがあったの?
お前が知らないのも無理もない。
あれはたしか、お前とカーミラが魔術劇場にやってくる
直前のことだったからな。
ハリーの後ろで二人のやりとりを聞いていたマリアが、
私もそのとき黒猫に変身して一緒に行ったのよ。
モモコの友達のジェーンという人がいたわ。
と言った。

その頃、ベランダで
ヴィヴィアンたちの話を立ち聞きしていた
キャサリンが、
二階の部屋に戻って報告していた。
魔術劇場に住んでるトマソンさんが
何日も目を覚まさないんだって。
あの人、この前この部屋に来た時も、
突然すやすや眠っちゃったからね。

トマソンさん、ずっとあっちの世界にいるんだ。
もしかしてジェーンと出会えたのかなあ。
とモモコは想像していた。

広場では、
佳奈がルビーと話していた。
しばらくぶりね。
と言われている。

この春、卒業して、
勧誘されてCGに就職したんですど、
採用試験もなかったんです。
と佳奈は言った。

あなたの適性や成績は全てしらべてあるの。
CGは秘密組織だから、
表向きはドルフィン工房に
スタッフとして就職したことになってる。
この先、本部に出向いて、いろいろ、
特殊な訓練受けるでしょうけど頑張ってね。
この服装も支給されたんですけど。
誰の案かしら。好きな服着ていいのよ。
解説)
ハリーが思い出したのは、
2022年3月14日「モモコの体験」
からの小旅行のことを指しています。
Apr 13, 2024
ジェーンの世界 そのさん

デジャを訪れたメルティは、
ヴィヴィアンとハリーとの話を続けていた。
眠り続けてるっていうトマソンさんのことを話すとね。
とヴィヴィアンがメルティに言っている。

あなたはサルバドールのことを覚えているでしょう。
忘れもしません。
去年の4月19日、私の夢に入り込んできて
シュレディンガーと対決した夢魔でしょう。
トマソンさんには、そのサルバドールが憑依しているのよ。
トマソンさんが眠り続けているっていうことは、
夢を見続けているっていうこと。
サルバドールが何か知ってるに違いないわ。
でもサルバドールさんは、
あれから迷いの森に帰ったはずですよね。
あなたは知らないかも知らないけど、
先月、町に戻ってきたのよ。

サルバドールは、トマソン氏と迷いの森で知り合い、
彼の芸術家としての才能に惹かれて、
自分でも入り込めない特異な異世界に
トマソン氏の夢を導いたらしいんだ。
その世界でトマソン氏がインスピレーションを得て、
制作したオブジェの実物を、自分の目で確認するために
この町にやってきたという話だよ。

サルバドールなら、今ベランダにいますよ。
と、広場を眺めていたゼロが言った。

ガラス戸越しに見る広場は
相変わらず賑わっていた。

子供達とアベルが
ローラースケートやスケートボードで遊んでいる。

奈々子のヴァイオリンの音色に
みんな聴き入っている。
この技巧、パガニーニも真っ青だ。
と誰かが言った。

ベランダでもサルバドールが
深刻そうな顔で
ヴァイオリンの音色に聴き入っていた。

そこにメルティがやってきた。
サルバドールさん、お久しぶり。
あ、ちょっと待って。
今いいところだから。
とサルバドールが言った。
解説)
鈴木すずの乗っている
スケートボード(キーホルダー)は
ダイソーで購入しました。
Apr 12, 2024
ジェーンの世界 そのに

ジェーンはフォークを手にして、
男(トマソン)に声をかけてみることにした。
こんにちわ。
あなたはどなた?
トマソンは最初びっくりしたものの、
ひと月ほど前にモモコから聞いていた、
夢の世界に住む女性の話を思い出した。

僕はトマソンと言います。
もしかして、あなたはジェーンという名前ですか?
え。どうして知ってるの?
やっぱりそうか。
僕は今、夢の世界にいるんです。
僕と同じ夢を見たことがあるっていうモモコっていう人が、
そこにジェーンっていう友達が一人で暮らしているって、
教えてくれました。
ふーん。モモコの住んでる世界から来たのね。
最近会ってないけど、彼女元気なのかな。

トマソンは、自分が
実物の6倍のスケールのオブジェを作る
造形作家であり、路上アーティストであること、
完璧な作品を作りたいと望んでいたら、
ある時から、全てが6倍のスケールの
夢ばかり見るようになったこと、
それ以来、夢を見るたびに、
制作するオブジェのモティーフを求めて、
夢の世界を探索していることなどを話した。
でも、あなたがここに暮らしているっていうことは、
ここは夢の世界じゃなくて、モモコさんが
言っていたように、実在する別の世界なんですね。
どうもそういうことみたいね。
でもあなたがこれまで何度もここに来てたのなら、
お互い気がつきそうなものだけど。
それは僕もそう思います。
ただ、僕のみる夢は最初はぼやけていたんです。
最近どんどん風景がクリアになって、
現実感が増してきて、もう起きている時と変わらない。
こうしてあなたと出会えたのも、
そういう変化と関係があるのかもしれません。

あ、あそこに美味しそうなイチゴがあるわ。
とジェーンが言った。

ジェーンたちはテーブルから床に降り立った。
ちょっと待っててね。
と言ってジェーンはキッチンの隅に隠してあった
紐を持ってきて投げ上げ、
手挽きコーヒーミルの金具に引っ掛けて、
器用に登っていった。
紐の輪に足をかけて、ゆっくり登って。
と言っている。

いつもこんなことしてるんですか?
もちろんよ。

二人はガスレンジを横切って、
苺の入った網かごの置かれた
まな板のある場所までたどり着いた。
これ美味しそう。
もらっちゃうんですか?

借りるだけなの。
ちゃんと書き置きしておくから。
いいのかなあ。

ついでにお水も汲んでおくわ。
指サックの靴が役にたっている。

ジェーンは、
カッターの刃で作ったナイフで
イチゴをスライスして、
ボトルのキャプに水を注いだ。
二人は明るい出窓のスペースで
イチゴを食べている。
この甘酸っぱさ、絶対夢じゃない。
とトマソンが言っている。
解説)
今回は合成なしのオールロケでした。
トマソンがモモコからジェーンの話を聞いたのは、
2024年3月9日「春の足音 そのろく」でのことです。
Apr 11, 2024
ジェーンの世界

デジャでヴィヴィアンとハリーが
話している。
魔族や悪魔と普通に付き合う天使って
聞いたことないわね。
あの天使は結構特別なんだよ。
それで局長を任されているんだろう。
それにしても、
デュアンの身の上話は初耳で驚いたわ。

俗世間から隠遁したがっていたデュアンと、
逆に自分だけの夢の世界に閉じこもって
他人のいる別世界に憧れていたメルティ。
二人に魔術劇場の部屋の管理してもらうなんて、
お父さんも考えたわね。
すべて成り行きだよ。
こっちも助かってるしね。

その時、メルティがやってきた。
おや、噂をすれば影かな。
この店まで来るなんて珍しいわね。
何かあったの?
実はこのところ
トマソンさんの様子が心配なんです。
ずっと眠ったきりで。
ということは。。。

トマソンは、夢の世界にいた。
いつも見る世界なので、
自分で夢を見ていることを自覚しているが、
このところ感覚が鮮明になり、
あらゆるものがクリアに感じられて、
感覚的にはとても夢とは思えない。

一人でサバイバル生活をしているジェーンは、
その隣の居間で、
サイドテーブルの上に座っていた。

カラーの輪ゴムが入った箱と、
透明な指サックの入った袋を見つけたので、
指サックに足を入れて輪ゴムで留めて、
靴の代用品の工作をしていたのだった。
これならシンクで水に濡れても大丈夫。
と呟いている。

その時キッチンの方で物音がした。

振り向くと、
キッチンのテーブルの上に、
男の人が立っている。

ジェーンは身を翻して
サイドテーブルの縁にぶら下がると。

思い切りよく飛び降りた。
予想した通り、
うまく座布団の上に着地した。

ジェーンは、
キッチンテーブル目指して
小走りに走り。

屑籠を利用して
椅子の上までよじ登って、
男(トマソン)の様子を窺っている。
解説)
ジェーンの住む世界と、
トマソンの夢の世界が、
重なったようです。
Apr 10, 2024
花の季節 そのきゅう

サラと局長は魔術劇場を辞して、
呼びに来たバグたちと共に
ペンギンの前にやってきた。
オリュンポスからお呼びがかかるって、
何か重大な案件なんですか。
そうでもないのよ。
毎年春先にフローラの代役頼まれていて、
今年も役目を終えたんだけど、
その報告をクロリスにするの忘れてたの。

また来年遊びにくるからね。
ええ、楽しみにお待ちしてます。

局長はバグを伴って
地下通路から迷いの森に帰って行った。
局長お忙しいんですね。
今回の休暇はこっちに二週間以上いたからね。
本人はお忍びって言ってるけど、
管理局の職員はみんな知ってるのよ。
まあ何か重大事件がなければ
局長不在でも仕事は回るから、
あまり気にする人はいないけど。
オリュンポスって、
神話に出てくる神々の住む世界でしょう。
管理局はそんな世界とも繋がっているんですか?
もちろん。
でも神々の世界を管理してるっていう訳じゃない。
局長は毎年春先になるとフローラに頼まれて
眠っている花々を目覚めさせる代役をしてるんだけど、
そういう繋がり方ね。
フローラのオリュンポスでの呼び名がクロリスなの。
ややこしいんですね。
古代ローマとギリシャの神話空間の違いね。

夕方になって、
ジェニーたちの部屋にエトナが遊びに来ていた。
この前文学青年と舞と3人でお花見をして、
酒造に立ち寄った時の画像を
パソコンで表示しているのだった。

これでおしまい。
ここは酒造の黒塀の前。
この後二人と別れた後も私は散歩を続けたの。
とエトナが言った。

これは「身代わり地蔵」の写真よ。
このあたりにはお寺も多いんだよね。
と文学青年が言った。

お稲荷さんの前を通りかかったら、
魔子さんに出会ったわ。
この人よくここで掃除してるんだよ。

それから普通に桜の咲いてる場所を探して。
あ、ここは図書館だね。

桜を撮影してたら、向こうに誰か。
たまきじゃないの?
小さすぎてよく見えない。

たまきだったの。
これは玉川上水に架かる福生橋のたもと。
水鳥が泳いでるよ。

そうそう思わず撮影しちゃった。
いつもこのあたりにいるんだよ。

画像鑑賞会が終わり、
みんなは酒造でお土産に買った
日本酒を飲んでいる。
身代わり地蔵ってなんなの?
お地蔵様が怪我したときなどに
身代わりになってくださるのよ。
魔子さんって本当はキツネだって知ってた?
たまきが図書館に通ってたなんて信じられない。
などと話している。
解説)
今日は天気が良く、
ちょうど返却期限日だったので図書館へ。
後半はその道すがら撮影した画像を
とり混ぜて使っています。
Apr 09, 2024
花の季節 そのはち

魔術劇場の中。
メルティは扉を抜けて、
二人を別の部屋に案内した。
この部屋は共同のスペースです。
逗留する人達の憩いの場。

室内にはカーミラとデュアン、
パペとヘルミーネがいた。
ヘルミーネはバナナのケースを
テーブルに運んできたところのようだ。
メルティはみんなを紹介して、
今、局長とサラに
魔術劇場の中を案内していた
ところだと言った。

これはこれは管理局の局長さん。
お初にお目にかかれて光栄ですわ。
ハリーやヴィヴィアンから
お噂はかねがね。
私はハリーの妻のカーミラと言います。
サラさんもお久しぶり。
とカーミラは言った。
魔術劇場が広場に越してきたので、
農産物の一時的な保管場所に使えて、
すごく便利になったんです。
とヘルミーネが言った。

ヘルミーネは農家の直販店の手伝いを
しているので広場でよく見かけるし、
カーミラとも何度か挨拶したことはある。
パペというゼンマイ仕掛けの人形の奏でる
「ある愛のうた」も聞いたことがある。
でもこのデュアンっていう人は、、、
とサラは思っている。

サラさん。私のことをご存知ないでしょうね。
普段外に出ないので。とデュアンは言った。
でもあなたが町に来る前から、
ずっとこの町に住んでいたんですよ。
2021年や2022年のハロウィーンには
修道女のコスプレで参加してたんです。
そこで知り合ったハリーさんに勧められて
2年前から魔術劇場に住むことになりました。
デュアンはね。
ずっと魔術劇場の屋内の管理を手伝ってくれているの。
入居者が増えたので、メルティにも頼んだんだけど。
もともとハリーのお招きしたお客様で
自由な身の上なのに感謝してるわ。
とカーミラが言った。

カーミラに先導されてサラたちが扉を抜けると、
そこは新しい応接間のようで、
ハリーとヴィヴィアンがワインを飲んでいた。
二人も着席して歓談が始まった。

魔術劇場の中はいかがでしたか。
最近は簡易ホテル状態になっていますが。
とハリーが言っている。

それぞれのお部屋が
鏡の扉で繋がっていて、
部屋数も自在に増やせるなんて、
便利そうですね。
管理局でも取り入れたいくらい。

あら。魔法を使えば簡単なんじゃない?
管理局には、そんな魔術師がいないのかしら。
とヴィヴィアンが言った。
この世界でいうハリーのような魔術師はいないわね。
もちろん私たちにも、
異世界を生み出すことや消滅させることは
簡単にできますよ。
でもそれは魔術とは別の力。
ついでに言うと、便利そうで取り入れたいけど、
管理局の中ではあなたたちの魔法は無効なのよ。
ああ、仕事の話はやめましょう。
と局長が答えた。

私はデュアンさんのことがお聞きしたいわ。
デュアンさんは私より前からこの町にいたって
おっしゃってましたよね。
でも広場にはおいでにならない。
何か特別な理由があるんですか。

特別な理由っていうこともないんですけど、
色々人間関係でごたごたがあって、
私修道院に入ろうと思っていたんです。
そんな思いもあって、ハロウィーンには
修道女のコスプレを着てたの。
その姿を見かけた私が声をかけたのです。
魔術劇場の中なら修道院のような
俗世間と離れた暮らしができますよってね。
とハリーが言った。

そのとき、鏡の扉から
エヴァが現れた。
お話中申し訳ないですが、
局長さん。管理局の方が入り口においでになって、
なんでもオリュンポスの方から
お呼びがかかっているとか。
あ。約束すっかり忘れてたわ。
もうそんな時期なのね。
行かなくちゃ。
と局長が言った。
解説)
デュアンのこと。
デュアンは、修道女のコスプレで、
2021年10月31日「ハッピーハロウィン」
2022年10月27日「もうすぐハロウィーン」
などに登場しています。
2022年の11月に入ってからデュアンが
魔術劇場で暮らすことになった、
という記載があります。
サラが町で暮らし始めるずっと以前の、
2008年4月24日からの「デュアン」シリーズに
登場していますが、
その後の行方は杳としてしれず、
色々苦労していたようなのでした。
Apr 08, 2024
花の季節 そのなな

薄曇りだけど、
今日もお花見日和ね。

気温上がりそうよ。
うん。羽織脱いでいくことにするよ。

文学青年が坂を降りていくと、
桜を眺めている今井舞に出会った。

二人で坂を降りていくと、
やはり桜を眺めているエトナに出会った。

3人は堤防までやってきた。
今日も人出が多いようだ。

エトナは盛んに撮影している。
流石に喉乾くね。
それ何はいってるの?
もちろん普通のお水よ。
などと話している。

文学青年は河原を眺めている。
じっと聞き耳を立てていると、
堤防を行き交う人達の喧騒が遠のいて、
豊かな春の川音が聞こえてきた。

ついでだから
近くの酒造まで足を伸ばそうか。
私まだ行ったことないの。
何年振りかなあ。

酒造の庭は一般に開放されていて
レストランなどもあり、
いつも来訪者で賑わっている。

庭には夫婦欅と呼ばれる
樹齢400年を超える二本の欅があって。

根元には、お米の神様「大黒天」と、
お水の神様「弁財天」が祀られている。

庭には資料館やお酒の直売店などもある。
3人はお土産にお酒を買ったようだ。
解説)
後半の画像は、近在にある石川酒造で撮影。
この酒造は日本酒「多満自慢」や地ビール「多摩の恵」で有名ですが、
最後の画像のお酒やビール瓶のラベルは別物です。
Apr 07, 2024
花の季節 そのろく

堤防の桜の帯が
ほんのり色づいている。
そろそろ花盛りみたいだね。

ということで、
ジェニーたちはお花見散歩に出かけた。
4人は多摩川にかかる睦橋の上から、
堤防の並木を眺めている。

堤防は行き交う人で賑わっていた。

まだほとんど散っていないね。
うす曇りの空だけど
かえって目に優しいわ。

堤防の斜面を這うように伸びた枝も花盛り。
ここは撮影スポットね。

探偵に声をかけられた。
振り向くとエリスもいる。
二人ともお花見に来ていたのだった。

明神下公園の前では
これから堤防に行くという
ジェニーフレンドたちにも出会った。
提灯や屋台はないの?
今年のさくら祭りは
3月末日で終わっちゃったのよ。
今年は開花が遅れたから。
花見酒が。
などと言っている。

屋台の撤去された公園の広場は
閑散としていた。
でもそこかしこに
シート広げてる人たちもいるよ。

たまきたちは、公園の隅のオブジェを見ている。
これ鳥が翼を広げているところみたい。
翼の部分が日時計になってる。
面白いね。あの影の位置、
もうすぐ午後2時なんだ。

やがて帰ってきた一行は
西陽の差し込む部屋で
留守番していた文学青年に報告している。
すごく綺麗だったわ。
それは良かったね、
僕も明日にでも行ってみるよ。
晴れるといいけど。
そうなの?
解説)
登場した公園のオブジェは
住谷正巳氏作「陽光と共に」。
福生市の鳥シジューカラがモチーフに
なっていると解説板にありました。
Apr 06, 2024
花の季節 そのご

ハリーやヴィヴィアンが気軽に声をかけて
入居希望者を受け入れるから、
魔術劇場の中には沢山新しい部屋が生まれてるの。
それでハウスキーパーみたいに時々様子を見て
報告してほしいって言われてね。
部屋はそれぞれ鏡の扉で繋がっているんだけど、
どの部屋に行けるかは特定の念じ方があって
その方法をハリーから教えてもらったの。
だから私はハリー一家の暮らす
一部の部屋を除いて出入り自由なのよ。
おかげで色んな人とお友達になれた。
良かったら様子見ついでにご案内するわ。
とメルティが言った。

サラたちがメルティに続いて
鏡の扉を抜けると、そこはベッドのある部屋だった。
この部屋は?
トマソンさんの寝室よ。
よくお休みみたいね。

トマソンさんは
大抵そのベッドで眠っているか、
隣の作業室に篭りきりで、
オブジェを制作してる。

次にメルティが案内したのは、
幽霊船の船長、
キャップテン・クックドゥーの部屋だった。
うたた寝していたクックドゥーは
物音に目が覚めたようだ。

やあメルティ。
それに、サラさんもご一緒ですか。
最近はうつらうつらすることが多くて。
おや、さらにお隣にいらっしゃる女性は。

あなたは幽霊船の船長さんね。
正確には元船長だった人物の
亡霊と言えばいいのかしら。
私は管理局の者です。
と局長が言った。
あなたが去年、生者の魂を幽冥界に
引き入れようとしたことは、
情報管理部のミラから報告を受けています。
あ、そのことを咎めに来たわけじゃないの。
今の管理局は、その程度のことに関心はないので
安心していいわよ。

こ、これは身に余るお言葉。
私は骸骨なので、そうは見えないでしょうが、
嬉し涙が止まりません。

そこに鏡の扉を抜けてフローラがやってきた。
こんにちわ。サラ。
あら、あなたも魔術劇場に泊まってるの?
そうなんです。
そちらの方はお忍びで休暇中という噂の
管理局の局長さんね。
私はフローラと言います。
春の花の女神と同じなんていいお名前ね。
と局長が言った。

ありがとうございます。
私、魔術劇場に泊まっているんですけど、
船長さんとお友達になって、
この部屋によく遊びにくるんです。
船長さんの貝殻で夢を見るのが楽しくて。
わかるわかる。
とサラが言った。
解説)
幽霊船長は去年6月に船員の勧誘のために
町を訪れたものの、ヴィヴィアンに説得されて
改心して魔術劇場の住人になりました。
その後サラたちと親しくなって、
海辺の夢が見られる貝殻を
サラにプレゼントしたのでした。
船長の初登場は
2023年5月14日「海賊ブーム そのなな」から。
5月18日「船長の話」、5月19日「船長の話 そのに」などに続き、
ジェイソンやサラたちと知り合うエピソードを経て、
2023年6月9日「デッキチェア」からサラの夢の
エピソードが見られます。
Apr 05, 2024
花の季節 そのよん

蒸したてでホカホカですよ。
私ジェニーフレンドのロベリアっていう人と知り合って
広場に遊びに行ってたんだけど、
レイが魔術劇場に肉まんを運ぶっていうので、
ついてきちゃった。
とメルティは言った。

私の世界と繋がる小さな扉のある部屋に
ピノコたちが来ているはずだから、
お食事が済んだら会いに行きませんか。
いいわよ、久しぶりね。
とサラが言っている。

飲茶の会食が終わり、
サラと局長はメルティに案内されて
鏡の扉を抜けて別の部屋に出た。
そこにはピノコやシュレディンガーと、
あいこちゃんがいたのだった。

局長とサラだ。
久しぶりです。とピノコが言った。
あいこちゃんは初対面でちょっと戸惑っている。
草の冠を被っている人はサラ。
操り人形だった私を修理してくれた恩人よ。
隣の人は管理局っていうところの局長さん。
とピノコが紹介した。
あ、私はジェニーフレンドのあいこです。
魔術劇場に泊まらせてもらってて、
さっきピノコと知り合いになったばかりなの。

これはこれは局長にサラさん。
昨年はお世話になりました。
とシュレディンガーが言った。
あなた、たてがみ薄くなった?
経年劣化というやつです。

小さな扉が開いて、ジョンもやってきた。
彼も局長とサラに挨拶している。
私はいつもメルティの夢の世界を
夢食いの侵入などから守っているので、
なかなか町まで出かけることはないんですが、
時々魔術劇場の中まで来て、
別世界の雰囲気を味わっているんですよ。
とジョンが言った。

みなさんお元気そうで良かったわ。
この鉢植えの植物はなあに?
とサラが言った。
これは私たちの世界から、
ここに運んできたの。
この部屋何にもないから
インテリアなのよ。
とピノコが言った。

サラがじっと見つめると、
植物は眠りから目覚めるように
さわさわと揺れて、
やがて花の蕾が膨らんで行った。
ピノコは驚いている。

これは草冠の力。
というより、春の花の女神フローラの力が
まだ草冠に宿っているのよ。
と局長が言った。
解説)
サラと局長の魔術劇場の部屋巡りは
続くようです。
ピノコのこと。
ピノコは元々ハリーの注文で、
ドルフィンで作られた操り人形で、
たまきがピノコと命名しました。
一度劇中劇で使用されてのち10年以上
ドルフィンの倉庫で眠っていましたが、
サラが修理してハリーが動かしたところ
経年劣化で針金が切れて壊れてしまい、
人形に宿っていた精霊をヴィヴィアンが
魔法で人間に変身させ、
やがてメルティの夢の中で
暮らし始めた、という歴史があります。
ピノコが画像として登場した記録は
2023年1月14日「操り人形のことなど」の解説に。
Apr 04, 2024
花の季節 そのさん

ペンギン前では、
珍しく店のマスコットのフンボルトが
店内から休憩しに出てきていた。

ジェニーフレンドの皆さんが
一斉に広場に出かけたので、
お店が空いたわね。
いつもご苦労様。
フンボルトさん、バナナも食べられるの?
なんでも食べられるんですよ。
特に鯖の味噌煮が好きですが。

テーブルでは
バグとミラが話していた。
局長大丈夫かなあ。
全然心配ないわよ。
魔術劇場でハリーやヴィヴィアンと
会うんでしょう。
そうじゃなくて、居心地良すぎて、
休暇を勝手に延長するんじゃないかって。
ああ、それはありえるかも。
また自分がルールだからって、
言い出しかねないね。

その頃、魔術劇場では、
マンゴー亭から飲茶を取り寄せて、
会食が行われていた。

もう一年になるんですね。
局長におかれましてはお変わりなく。
昨年はとんだ飛び入りがありましたが、
今回はゆっくりしていってください。

ああ、百猫の王のことね。
彼は元気にしているのかしら。

シュレディンガーなら、
今もメルティの夢の世界で
元気に暮らしているわよ。
魔術劇場にも時々遊びに来ているみたい。
最近は同居人が多くて部屋も増えたので、
滅多に顔を合わせることがないんだけど。
とヴィヴィアンが言った。

やがて時はすぎ。
もうお腹いっぱい。
とサラが言っている。

追加の肉まんお持ちしました。
と言いながら、
マンゴー亭からレイがやってきた。
メルティも一緒のようだ。
メルティは、局長とサラに挨拶している。
局長はまだまだいけるわ。
と言っている。
解説)
特に仕事の話をしない
飲茶の会でした。
Apr 03, 2024
花の季節 そのに

今日も曇天で雨模様。

たまきは参加賞のチョコを
もらって帰ってきていた。
私も広場に行かなくちゃ。
とナオミが言っている。

たまきと一緒に遊びにきた
ミルフィーユも、しっかり
大量のチョコの入った袋を持っている。
チョコ鷲掴みにしたの?
3人分を預かってるのよ。

隣の休憩所では
みんなバラの蕾の出現に驚いている。
どうして急にここに。
サラがじっと見つめてたわ。
サラは魔法なんて使えないはず。
もしかするとあの草冠のせいかも。

サラと局長は
広場に戻っていた。

エリカとオリーブと
ジュリアナが話している。
ミルフィーユはどこ?
たまきと一緒にジェニーのところに行ったよ。
食べすぎないように、
私たちのチョコ預けたままなの。
それは賢いわね。一かけら分けて。

局長はサルバドールを見かけたので
話しかけている。
随分楽しそうね。
う、局長にはかなわないなあ。
この素晴らしいヴァイオリンの音色。
私がお手伝いすればさらに才能が。
掛け持ちはできないはず。
トマソンさんのことはどうするの?
そこが悩ましいところなのです。

ああサラ。ヴィヴィアンからお話は聞いてるわ。
とエヴァが言った。

ハリーさんがお待ちかねよ。
解説)
今日も昼過ぎから雨に。
散歩がてらの撮影は
そのうちに。
Apr 02, 2024
花の季節

サラと局長は
高台で休憩していた。
この植え込み、花が咲かないの?
とサラが言っている。

局長はカラスと話している。
そのカラス、最近よく見かけるんですよ。
何話してるんですか。
私を歓迎してくれてるの。
ところで局長は
コスプレコンテスト参加されたんですか?
今広場で参加賞のチョコの掴み取りやってますよ。
そうなの?知らなかった。
管理局の職員は、訪問した世界での契約や、
そういう催しには関与しない決まりなのよ。
でも確か去年の9月にバグさんが優勝しましたよ。
ふーん。それも初耳ね。

広場には、
ペンギンからもジェニーフレンドたちが到着して、
かなり賑わっていた。

ベランダではリエたちがくつろいでいる。

今日もあったかいわね。
もう上着がいらないくらい。
とリエが言った。

ユーリシアはさっそく
参加賞でもらったチョコを
かじっている。
あ、ヴァイオリンの音色が聴こえるわ。

広場に来た奈々子が
また大道芸人たちの演奏に
参加しているのだった。
サルバドールは、
音色に聞き惚れている。
この才能は。。

暑いので
ジュリアナも上着を脱ぎかけていた。
なんかかっこいいデザインの服着てるね。
すごく昔の服なのよ。

ミルフィーユとエリカと
オリーブたちも参加賞のチョコをゲットしていた。
ミルフィーユがみんなのもらったチョコを
まとめて保管しているようだ。
食べすぎると良くないから
分けて食べようよ。
と言っている。

サヤカも上着を脱いで
果物を物色している。

マンゴー亭では優勝したティモテと
ロベリア、リナたちが肉まんを食べていた。
ところで、私とティモテは遠い親戚なのよ。
私たちは顔の輪郭がそっくりなの。
とロベリアが言っている。

サラと局長が立ち去った高台の休憩所で、
粉川和歌子は、
サラがずっと見つめていた植え込みの茂みに、
バラの蕾を見つけた。
あら、いつの間に。
解説)
今回は主にジェニーフレンドたちの顔を撮影。
ティモテはジェニーフレンドとして
1990年に発売されましたが、
2000年に発売されたロベリア、
2001年に発売された桜子のヘッドには、
ティモテと同じ[8K27]という金型が使われている、
とネットの情報で知りました。
Apr 01, 2024
3月のコンテストの発表

4月になって
今日も広場はそこそこ賑わっている。

気温の高い日が続いたので
ドルフィンのスタッフたちは
ジャンパーを脱いでいる。

そのペンダント変わってますね。
とサヤカに言われて、
リタはイルカのペンダントを見せている。

ベーカリーでは
コンテストの選考会議が行われていた。
3月の新規応募者は、
ジェニーフレンドだけで、
15人もいるのよ。
とマンスフィールドさんが言っている。

みんな微妙に個性があるからねえ。
やっぱり見た目で決めようか。

やがてルビーが立ち上がって、
アナウンスが始まった。
みなさん。
3月のコスプレコンテストの
優勝者を発表します。
厳正な審査の結果、
優勝したのは、
美しいロングヘアーのティモテさんです。

拡声器のアナウンスは、
ペンギンにも届いていた。
今日が発表の日だったのね。
ティモテここにいる?
花見酒が。
などとみんなで話している。

ティモテはドルフィンの二階で
アナウンスを聞いていた。
優勝だって。
参加賞のチョコはもらえないの?
副賞で二回掴み取りができるはずよ。
やたー🎵。

ティモテは万雷の拍手と喝采を浴びながら、
トロフィを授与されている。

授賞式が終わると
参加賞のチョコの掴み取りが始まった。

長い行列ができている。

ティモテは舞たちに
話しかけられている。
素敵な長い髪。お手入れが大変でしょう。
シャンプーは何使ってるの?
もちろんそれは。
解説)
恒例のコンテスト発表の
回でした。