Apr 12, 2024
ジェーンの世界 そのに
ジェーンはフォークを手にして、
男(トマソン)に声をかけてみることにした。
こんにちわ。
あなたはどなた?
トマソンは最初びっくりしたものの、
ひと月ほど前にモモコから聞いていた、
夢の世界に住む女性の話を思い出した。
僕はトマソンと言います。
もしかして、あなたはジェーンという名前ですか?
え。どうして知ってるの?
やっぱりそうか。
僕は今、夢の世界にいるんです。
僕と同じ夢を見たことがあるっていうモモコっていう人が、
そこにジェーンっていう友達が一人で暮らしているって、
教えてくれました。
ふーん。モモコの住んでる世界から来たのね。
最近会ってないけど、彼女元気なのかな。
トマソンは、自分が
実物の6倍のスケールのオブジェを作る
造形作家であり、路上アーティストであること、
完璧な作品を作りたいと望んでいたら、
ある時から、全てが6倍のスケールの
夢ばかり見るようになったこと、
それ以来、夢を見るたびに、
制作するオブジェのモティーフを求めて、
夢の世界を探索していることなどを話した。
でも、あなたがここに暮らしているっていうことは、
ここは夢の世界じゃなくて、モモコさんが
言っていたように、実在する別の世界なんですね。
どうもそういうことみたいね。
でもあなたがこれまで何度もここに来てたのなら、
お互い気がつきそうなものだけど。
それは僕もそう思います。
ただ、僕のみる夢は最初はぼやけていたんです。
最近どんどん風景がクリアになって、
現実感が増してきて、もう起きている時と変わらない。
こうしてあなたと出会えたのも、
そういう変化と関係があるのかもしれません。
あ、あそこに美味しそうなイチゴがあるわ。
とジェーンが言った。
ジェーンたちはテーブルから床に降り立った。
ちょっと待っててね。
と言ってジェーンはキッチンの隅に隠してあった
紐を持ってきて投げ上げ、
手挽きコーヒーミルの金具に引っ掛けて、
器用に登っていった。
紐の輪に足をかけて、ゆっくり登って。
と言っている。
いつもこんなことしてるんですか?
もちろんよ。
二人はガスレンジを横切って、
苺の入った網かごの置かれた
まな板のある場所までたどり着いた。
これ美味しそう。
もらっちゃうんですか?
借りるだけなの。
ちゃんと書き置きしておくから。
いいのかなあ。
ついでにお水も汲んでおくわ。
指サックの靴が役にたっている。
ジェーンは、
カッターの刃で作ったナイフで
イチゴをスライスして、
ボトルのキャプに水を注いだ。
二人は明るい出窓のスペースで
イチゴを食べている。
この甘酸っぱさ、絶対夢じゃない。
とトマソンが言っている。
解説)
今回は合成なしのオールロケでした。
トマソンがモモコからジェーンの話を聞いたのは、
2024年3月9日「春の足音 そのろく」でのことです。
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