Apr 30, 2023
サラたちの部屋で
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メルティとサルバドールは、
サラたちの部屋を訪問した。
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サラはね。
去年の暮れに、私がこの町に初めて来た時、
町を案内してくれて、
このお部屋でコーヒーをご馳走してくれたの。
サラは、町の人に頼まれると、
いろんなコスプレの衣装を作ってくれるのよ。
ふむ。芸術家の才能がおありなのですな。
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そんなんじゃないのよ。
そういう役目をさせられてるだけ。
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役目をさせられているだけと。
それこそ芸術家の魂というものです。
ところでこの部屋には、
とてもシュールな味わいがありますな。
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あの大きなリクガメ。
このこは、オセロっていうの。
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窓際の仮面の男性。
あ僕は、ジェイソンって言います。
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棚の上に載った置物のような男性の頭部。
わかりましたかな。
私はお父さんと呼ばれていますが、
本名は小津静雄と言います。
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それに棚の下に寝そべっている、
ツノの生えた動物。
メメは、メーメーと言った。
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皆さん、この世のものではないようですが。
ここにいる経緯は様々だけど、
前のことは私もよくは知らないの。
部屋には
「Lucy in the Sky with Diamonds」
が低く流れている。
解説)
特に骸骨親子の由来は
謎のままなのでした。
Apr 29, 2023
広場にて
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サルバドールたちは、
大道芸人たちの歌声に聴き入っている。
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夢食いの出現に
緊張しているドラコを、
メルティが宥めている。
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なんという演奏と歌唱力だ。
この人間たちの心には、
私の仲間が住み込んでいるのだろうか。
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通りすがりのトラ猫の姿にも、
サルバドールは、感動している。
このシュールさこそ、
私が夢の中でやってみたかったことだ。
バルテュスの「地中海の猫」さながら。
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なんというジューシーな味わいだ。
サルバドールは肉まんにも感動している。
この人、大丈夫かしら。
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肉まんを食べながら歩いていると、
声をかけられた。
コスプレコンテストに
登録されませんか。
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新規の参加者が少なくて。
某有名画家のそっくりさんコスプレ、
ということで。
絵画コレクターのマンスフィールドさんが、
特に気に入ったようだ。
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あまり似てないけど、
尋常じゃない雰囲気がいいわね。
と言っている。
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お気に召した?
ええ。
この町は、なんというか、
住み心地良さそうですな。
そうでしょう。
私もまだあまり良く知らないんだけど、
前に案内してくれたサラっていう友達がいるの。
彼女の家に行ってみましょう。
解説)
サルバドールは、
町が気に入ったようです。
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バルテュス「地中海の猫」
Apr 28, 2023
絵画を返す
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メルティとジョンは、魔法の扉を通って、
魔術劇場の応接間に絵画を運んできた。
ふわふわ漂いながら、
サルバドールもついて来たので、
ヴィヴィアンたちは驚いている。
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ハリーさん。
この絵、せっかくマンスフィールドさんから
いただいたんだけど、
こちらの世界にお返しします。
私の夢の中に置いておくと、
ここにいるサルバドールさんみたいに、
いろんな夢魔を呼び寄せるようで。
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ふむ。なるほど。
では、私が預かっておこう。
絵を見たくなった時には、
いつでもここに来ればいい。
ところで、あなたが有名な夢魔
サルバドールでしたか。
お噂はかねがね。
私はハリーと申します。
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いかにも。
ここが魔術劇場ですな。
夢食いの夢魔たちの間でも評判ですよ。
ふむ、ただならぬ悪魔の気配がするが。
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それは私。
ハリーの娘、ヴィヴィアンと申します。
ところでサルバドールさん、
お越し早々まことに失礼ですが、
この世界では、普通の人たちが
普通に暮らしているので、
そんなふうに空中に浮いていてもらっては、
困ります。
私が姿を変えて差し上げましょう。
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ヴィヴィアンが呪文を唱えると、
薄い煙がたちのぼり、
サルバドールが変身した。
なんとこれは。
メルティもね。
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薄い煙と共に、
メルティの姿も大きくなった。
メルティは、ありがとう♪
と言っている。
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二人が応接間から
広場に出て行った後、
ハリーとヴィヴィアンは
話し合っている。
夢魔っていうから、
フュースリーの絵みたいに、
ツノでも生えているのかと思ったのに、
案外普通のおじさんだった。
お前だって、悪魔には見えないよ。
そういわれればそうね。
この絵のことだけど、
前に見た時とは違った、
なんか変わった力を感じる。
どうやら夢食いたちの発する
衝撃波をたて続けに受けて、
魔法の扉のようなものに、
変性したようだ。
どんな世界に続いているのやら。
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メルティとサルバドールは、
魔術劇場の魔法の扉を抜けて、
広場に足を踏み入れていた。
解説)
新しいエピソードの
始まりのようです。
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フュースリー「夢魔」
Apr 27, 2023
メルティの夢の部屋 そのきゅう
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部屋の隅に戻った一行は、
あれこれと話し合っている。
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私のような夢食いは、
夢を見た当人が目覚めた後も
心の中に固定観念のようにとどまって、
イメージを送り続けることができるのですが、
先ほどはそれどころではなかった。
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メルティのこの夢の世界は、
かなり特別なのだよ。
とシュレディンガーが言った。
彼女は子供の頃からの病気で
ずっと眠り続けていて、
ずっとこの夢の中の部屋の世界にいるんだ。
けれど高い壁に囲まれたこの部屋から、
いつか外に出たいと願っていて、
魔術師ハリーとの出会いによって、
その願いが叶った。
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今ではね。
ハリーさんたちの住む世界と、
魔法の扉を通して、
行き来できるようになってるの。
でも、その世界から
私が絵画を持ち込んじゃったために、
芸術家の夢に宿る夢食いである、
あなたを招き寄せちゃったのね。
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ふむ。
お嬢さんのパワーには驚ろかされたが、
別の世界とも繋がっていたとは、
それでは私にコントロールできるわけがないな。
私のような夢魔にとっては、何より、
夢見るものが孤独であることが肝心なんだ。
それに魔術師ハリーの名は聞いたことがある。
魔術劇場の主宰者だろう。
彼なら魔法の扉を作ることもできるだろうな。
あそこを飛んでいるのは、
悪魔のしもべと言われるコウモリのようだが、
もしかして、その異世界から?
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そうそう。
ひそこは、派遣コウモリだよ。
なんと、その世界には
魔族の他に、悪魔もいるのか。
悪魔だけじゃない。
すぐ近くに迷いの森があって、
管理局にも隣接している。
とシュレディンガーが言った。
私はメルティが子供の頃に
飼っていた子猫の精霊に導かれて、
この夢の世界にやってきたんだが、
早々に管理局の局長に
見つかってしまったんだ。
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悪魔の他にあの天使もいるのか。
それはさぞかしシュールな世界だろうなあ。
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そうでもなくて、見かけは、
ごく普通の人たちが暮らす普通の世界よ。
でも夢食いのドラゴンがすでに住んでいるし、
奇妙なところも随分あるから、楽しいの。
私、この絵画を、
あちらの世界に返すことにする。
このままだと、またあなたみたいな
夢食いを招き寄せるかもしれないから。
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お嬢さん。それは賢明なアイデアですな。
管理局の注意勧告ではないが、
美術品の異世界への持ち込みは、
とかく誤解を生じます。
私も固まっているところを助けていただいた感謝と、
先住者である百猫の王シュレディンガーに
敬意を評して、退散することにしましょう。
これからどうするの?
とりあえず、その世界を訪問して、
芸術の才能のありそうな人を探すことにします。
さらに迷いの森までたどりつければ、そこから、
さまざまな異世界に移動することもできますから。
解説)
メルティの夢の部屋でのハプニングも
どうやら一段落したようです。
Apr 26, 2023
メルティの夢の部屋 そのはち
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絵画の中から
シュレディンガーが飛び出して来た。
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すごい衝撃波を受けて、
飛ばされて絵の中に
吸い込まれてしまったようだ。
気がつくと薄暗い霧の中に
横たわっていたんだ。
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絵の中に別の世界があったの?
深い霧でよく見えなかったけれど、
そこも夢の世界のようだったよ。
猫たちの声が聞こえたので、
その方角に走って来たんだ。
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衝撃で世界が消えた時に
絵の中に別の夢が生まれたのかしら。
それとも、元々この絵には、
魔法の扉みたいな力があったのかしら。
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ひそこが飛んできて、
ギターや一輪車を見つけたよ、
と報告している。
さっき見て回った時には、
一面の草原で、何もなかったのに。
元の夢が、どんどん復元されているんだね。
見に行ってみよう。
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前から気になっていたけど、
この安全第一ってなんなの?
とピノコが訊いている。
この場所でね。私はずっと前から、
トンネルを掘っているの。
壁の向こうの世界に出るために。
でも掘り出した土は、
透明で誰にも見えない。
前に手伝ってくれたサラもそう言ってたわ。
そのあたりに掘りかけの穴があるはずよ。
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ジョンはスコップを手に取って、
地面を確かめてみた。
確かにこのへん凹んでいる。
すくうと土の重みはあるけど、
確かに目には見えないね。
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ジョンがさらに掘ってみると、
なんと、サルバドールが埋もれていた。
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助け出されたサルバドールは、
お礼を言っている。
飛ばされて穴に落ちたところまで
覚えてはいるんだけど。
気がつくと、身動きできない状態でした。
お嬢さん。
あなたはすごい能力をお持ちだ。
良い夢食いになれますよ。
とサルバドールは言った。
解説)
どうやら全員無事に
見つかったようです。
Apr 25, 2023
メルティの夢の部屋 そのなな
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メルティたちは、
顔の出現に驚いている。
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そのピンクがかった顔はよく見ると、
メルティそっくりだった。
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叫んだのは私。
でもその原因を作ったのはあなた。
世界には見かけと違うものもある。
夢の中にものを持ち込む時には
よく考えてね。
顔は普通の顔色を取り戻し、
かすかに微笑みを浮かべて、
やがて赤いバラの花の中に
沈むように消えていった。
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今のはなあに。
すごく綺麗な人だったわね。
もっと言って。
最初一瞬、モローの「出現」かと思ったわ。
何のこと言ってるの?
などと話していると、
ジョンが目を覚ました。
あ、ジョン、大丈夫?
わけわかんないけど、大丈夫だよ。
と言っている。
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メルティたちは部屋の探索を続け、
一巡りして帰路についている。
ここから草がなくなっているよ。
懐かしい明かりの灯った樹木も生えている。
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樹木の枝にぶら下がっていた、
派遣コウモリのひそこが、
羽ばたいて騒いでいる。
ヴィヴィアンが気遣って、
差し向けてくれたのね。
なんて言ってるの?
机や椅子がどんどん出現してるって。
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魔法のドアの近くの
部屋の隅まで帰り着くと、
家具セットが出現していた。
メルティたちは
絵画も運んできて、
一息ついてお茶を飲んでいる。
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シュレディンガーさんも、
サルバドールさんも、
結局見つからなかったね。
猫たちもなんだか寂しそう。
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メルティが絵を見ていると、
その時、微妙な変化が。
あれ。あの顔。
解説)
夢の世界の話は、
まだ続くようです。
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ギュスターブ・モロー「出現」
Apr 24, 2023
メルティの夢の部屋 そのろく
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メルティとピノコは、部屋を探索していて、
テキサスレンジャーのジョンの帽子を見つけた。
あれ、この帽子動いてるよ。
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帽子の下から子猫が顔を出した。
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こっちこっちって
言ってるよ。
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子猫についていくと、
飛ばされた絵画が落ちていた。
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やがて、
どこからか猫たちが集まって来た。
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まだ猫たちがいるっていうことは、
シュレディンガーさんもどこかに。
この夢の世界から消えてなかったんだ。
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メルティたちは
探索を続けることにした。
大きな花が咲いている。
おや、あれは。

あそこに倒れている人、
きっとジョンだよ。

ジョン。起きて。
とメルティが言っている。

その時、
バラの花の茂みから
ざわざわと音がして、
見上げると、人の顔のようなものが。
解説)
部屋の探索は続いているようです。
Apr 23, 2023
メルティの世界 そのご

なんかすごい音がしたみたいだったけど、
と3人が話していると、
魔法の扉が開いて
しょんぼりとした風情のメルティが出て来た。

みんないなくなっちゃった。
と言っている。
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メルティから事の成り行きを聞いた
3人は話し込んでいる。

多分普通の夢だったら、ショックで、
目が覚めてしまったところなんだろうね。
けれど、扉で外部の異世界と
繋がっていたから、目覚めなかったんだ。

みんな消えちゃったの?
メルティの夢が続いている限り大丈夫よ。
メルティの無意識の力が生んだ世界は、
メルティが望めば再生する。
でも、夢の外部から来たものは、
ある意味実在しているから、再生はしないし、
そもそも消し去ることもできないはず。
ということは、
ピノコもジョンもシュレディンガーさんも、
猫たちも、サルバドールさんも、
どこかにいるっていうこと?
あなたの部屋広いんでしょう。
飛ばされて部屋のどこかにいるはずね。
でもシュレディンガーやサルバドールは、
元々夢の世界の旅人だから、
存在を否定されて、
別の世界に飛ばされてしまったかも。
存在を否定するなんて。
私怖かっただけなのに。
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私、みんなを探しに行ってくる。
気をつけてね。
今のあなたは、ある意味
前の夢から覚めた寝起きの状態にいるの。
自分で消し去った世界に戻るんだから、
別の夢を見ることになるかもしれない。
うん。
マリアは「新時代だ~🎵」
と歌っている。
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草が生えてるわ。
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私が思い浮かべたわけじゃないのに。
きっとメルティの無意識が生やしたのよ。
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あ、あそこに。
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ピノコ、大丈夫?
わけわかんないけど、
平気だよ。
解説)
まだ未定の世界へ。
Apr 22, 2023
メルティの夢の部屋 そのよん
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二人とも、もうやめて。
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これは私の夢なのよ。
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メルティの体が
宙に浮き上がると。
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激しい衝撃波が
発生した。
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あら。
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何もなく、
誰もいなくなっていた。
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その頃、魔術劇場では、
メルティの部屋からぬけ出してきた
マリアが、ハリーたちに報告をしていた。
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サルバドールっていう夢食いが現れて、
シュレディンガーと対決状態になってるの。
あれどっちが強いの?
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サルバドール?
彼は芸術家の夢の世界に住み着いて、
霊感を与える夢魔だと噂で聞いているが。
どうしてそんな夢食いが、
メルティの夢に。
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メルティが夢の世界に持ち込んだ絵画を
メルティ自身が創造したものだって、
勘違いしてやって来たみたい。
誤解は解けたはずなんだけど。
なぜか、ここに住みたいって
メルティに向かって頼み込むように言い出して、
それを聞いていたシュレディンガーが怒り出しちゃって。
それは怒るわよね。
サルバドールはシュレディンガーがいたので、
対抗心を燃やしたのかもしれないけど、
相手が悪すぎるんじゃない?
いや、噂ではサルバドールも
なかなか強力な夢食いらしいよ。
とハリーが言った。
解説)
勝敗は不明のまま
別の展開になったようです。
Apr 21, 2023
メルティの夢の部屋 そのさん
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夢を乗っ取るだなんて人聞きの悪い。
そんな気は毛頭ありませんよ。
もっとも、私も、百猫の王といえども、
所詮は異世界を旅する夢食い。
全ては夢見る人の決めることです。
サルバドールは、
メルティの方を振り向いて言った。
お嬢さん、私がここに住めば、
あなたは独創的なインスピレーション得て、
優れた芸術家になることも可能なのです。
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芸術家って。
サルバドールさん。また誤解があるようね。
私は病気でずっと眠っているの。
この夢の世界でしか目覚めていられない。
だから目覚めた世界で
夢のヒントを元に何かを表現して
芸術家になるなんて不可能なことなのよ。

なるほど。そんなご事情がおありだったのですね。
しかしそれならなおのこと、
この夢の世界を思い通りに変えてみませんか。
そんな世界に行ってみたいと思いませんかー。
ララーラー♪
サルバドールの体は
さらに高みに浮き上がった。
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そういうのを乗っ取りと言うんだろう。
とシュレディンガーが叫んだ。
テキサスレンジャーは銃を構えているが、
サルバドールの奇妙な歌声のせいで、
体が動かないのに気がついた。
これは。
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シュレディンガーは
その様子を見てとると、
一声大きく咆哮した。
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あララー。
あたりに激しい衝撃波が伝わって
サルバドールは地上に落ちてきた。
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猫たちが
必死に取り押さえようとしている。
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しかし、それを振り切った
サルバドールは立ち上がり、
らラーラー!と叫んだ。

激しい衝撃波が発生して
器物が飛び交っている。
解説)
よくわからない戦いです。
Apr 20, 2023
メルティの夢の部屋 そのに

後ろの人の気配に、メルティは驚いて飛び退いた。
みんなも一斉に身構えている。
あなたはどなた?
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私はダリでしょう?
なんちゃって。
おや。百猫の王がいらっしゃいましたか。

君は夢魔サルバドールだろう。
好んで芸術家の夢に現れると言われる夢くい。
彼は夢の世界に住み着いて、
夢見るものにインスピレーションを
与えるとも言われているが、
強烈なイメージを見せて、
破滅させてしまうこともあるんだ。
とシュレディンガーが言った。
そんな恐ろしい夢食いがなぜここに?
それに私芸術家じゃないのよ。
とメルティは言った。
さすがに百猫の王。
一目で私のことを見抜かれたようですな。
それに、お嬢さんは芸術家ではないと。
そのお言葉にはちょっと同意致しかねますな。
その証拠に、こんな素晴らしいイメージが。
と言ってサルバドールは、
壁の絵画を見つめた。
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なにか誤解があるようね。
とりあえずメルティはお茶を淹れて
もてなすことにした。

メルティは、この絵画は、
自分の心に浮かんだものでなく、
別の世界で描かれた絵画を
運んできたのだと説明した。
なるほど、そういう事情があったのですか。
私たちのような夢食いは、素晴らしい才能を求めて
夢の世界を探索しているのです。
その目印となるのが、その人の夢の世界で、
どのようなイメージが描かれているのかということで、
優れたイメージは私の目には光り輝いて見えるのです。
そんな光に導かれて、ここに来たのですが。
その特異な光の原因は、お嬢さんの才能ではなく、
異世界からもたらされたものだとわかりました。

しかしそれはは本来ルール違反でしょう。
そういうことが行われると、
夢に現れる個性の意味が損なわれてしまい、
ひいては芸術創作の根幹に関わることなのに、
管理局は何もしないんだから。
特にあの天使が局長になってからたるんでいる。
とサルバドールは、絵画に目をやりながら、
やや不服そうに言った。
自分も異世界から来たピノコは、
私もメルティの夢を変えている異物なのかと
思って、ちょっと戸惑っている。
しかし、この変な人も外からやってきて、
夢見る人にインスピレーションを与えるのなら、
同じことじゃないの?
とも思った。

サルバドールは立ち上がると、
ふんわりと浮遊しながら絵画の前に行って、
じっと眺めている。
この絵は複写でその上右側の部分が欠けている。
しかし、えも言われぬ超現実的な魅力がある。
お嬢さん。
私がここに住めば、この夢の世界を
こんな絵の世界に変えてしまうこともできますよ。
あなたの無意識もそれを望んでいるからこそ、
この絵に惹かれたのではないでしょうか。
これは聞き捨てならない。

それは守護の夢食いである私を差し置いて、
このメルティの夢を乗っ取りたいということかな。
とシュレディンガーは言った。

シュレディンガーは、身を翻し、
テーブルに飛び乗って、
サルバドールと睨み合っている。
これは一触即発。
ハリーやヴィヴィアンに伝えなくちゃ。
クロコに変身していたマリアは
急いで魔法の扉に向かった。
解説)
サルバドールは
随分昔に美術館の小物売り場で買い求めた
ダリの人形を使っています。
Apr 19, 2023
メルティの夢の部屋

ヴィヴィアンに体を小さくしてもらったメルティは、
マンスフィールドさんから貰った
クノップフの絵「スフィンクスの愛撫」を、
夢の部屋に運び込もうとしていた。

テキサスレンジャーも手伝っている。
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随分苦労していたみたいだが、
絵は魔法で小さくしてやらなかったのかい?
とハリーが訊いている。
ええ、大きいままの方が迫力あるでしょう。
とヴィヴィアンが言った。

部屋に戻って、
絵を壁に飾り終えたメルティたちは、
くつろいでお茶を飲んでいる。
気に入った?
いい絵でしょう。
ふむ。しかし、この絵は
メルティが心の中で思い浮かべたものではなくて、
向こうの世界から持ち込んだものだろう。
それはちょっと問題があるんじゃないか。
そうなの?
私すごく気に入ったの。

この絵に描かれたスフィンクスは、
やっぱり夢食いなの?
シュレディンガーさんの分身なの?
それとも身内か何かなの?

ふむ。制作者の想像力が生んだもので、
同じ夢食いという訳じゃない。
もちろん夢食いとは全てそういうものだと
いう言い方もできるけれど、
それは捉え方の違いなんだよ。

私と似た姿をした幻獣は、
中世の西欧では、マンティコアと呼ばれていた。
インドに棲息していて、体は赤毛のライオンで、
蠍に似た尾を持っていたと言われる。

私がそうであるように、
夢食いは夢の世界に実在するんだよ。
でも、その姿を夢で見たものは、
目が覚めて、自分が想像したものだと思うこともある。
昼間に装飾写本か何かで、こんな絵を見て、
それが影響したんじゃないかとかね。
そういうこともあるけれど、
それは本物の夢食いじゃないんだ。
おや、君の後ろに
本物の夢食いが現れたようだよ。

メルティの後ろに、
奇妙な人形風の男が浮遊しながら近づいてきた。
解説)
謎の展開です。
マンティコアの画像は
ヨハネス・ヨンストン「動物図譜」(1650)
の銅版画です。
Apr 18, 2023
春の海賊 そのに

ドミノは、サラたちの部屋を訪問して、
サラにコスプレの相談をしている。
映画のコスチュームは再現できないけど、
海賊っぽい扮装なら。
とサラは言った。

あっという間に着付けが終わって、
ドミノは広場に帰ってきた。
見かけが変わったので、ジョー軍曹は驚いている。

二人はコスプレコンテストの参加登録をしに、
ベーカリーのテーブルを訪れた。
映画「パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち」の
ウィル・ターナーとエリザベス・スワンの
コスプレということで。

役を演じたのはオーランド・ブルームと、
キーラ・ナイトレイね。
雰囲気は出てるわ。

その時、エルザもやってきた。
ジョー、私も一緒に登録参加させて。
と言っている。

君は誰の役?
その他大勢で、海賊の手下のつもり。

登録を済ませたドミノは、
再び大道芸人たちの歌の伴奏を始めた。

エルザは
さっそく海賊風コートを脱いでいる。
これ流石に暑いから。
バービーハウスでエルザと同居しているジェーンも
軍服を着替えてきたようだ。
すごい作業用のベストつけてるね。
これね。何か工事の時に手伝いしようと思って。

みんな衣替えして、ミリタリールックの人が
少なくなっていくね。
住民の多くは精霊の存在に気がつかないまま、
自然に町に馴染んでいくみたい。
カモフラージュのために続けてた
このコスプレコンテストもそろそろやめ時かな。
今日みたいなこともあるし、
続けてもいいんじゃない?
解説)
今回は海賊のコスプレでした。
合成画像では、ネットに掲載されていた、
映画のスチール写真を利用させてもらっています。
Apr 17, 2023
春の海賊

もう4月も半ばを過ぎたのに、
今月はコンテストの新規応募者がこないね。
ずっとやってるからね。
でも登録者の総数は多いんでしょう?
参加賞のチョコは人気だからね。

その時、
広場にジープが走り込んできた。

郊外のバービーハウスに住む、
エルヴィンとジョー軍曹が乗っている。
ジョー、その服装どうしたの?
とエトナが訊いている。
近くのバービーハウスに
引っ越してきた人と知り合って、
映画俳優に似てるから、
その俳優の出演した映画のコスプレしてみたら、
って言われたんだ。
引っ越してきた人って、ボニーのことね。
あの人そっくりさんを探すの上手なのよ。

軍曹、それって、どんな映画なんですか?
海賊が出てくる映画らしいよ。

広場でギター弾いてる女性も、
その映画に出演してた俳優に
似てるから誘ってみるといいって。
ふーん。その映画って、きっと、
「パイレーツ・オブ・カリビアン」
だね。
とエトナが言った。
エルザは、私もコスプレ
してみたいなあ。と思っている。
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ジョー軍曹は、さっそく、
ドミノに新しい扮装でコスプレコンテストに
参加しないかと相談に行った。

いいけど、
私そんな海賊風の服、
持ってないわよ。
サラさんに頼めば、
きっとなんとかしてくれますよ。
と軍曹が言っている。

将軍、
郊外の私たちのバービーハウスまで
送っていただけますか。
お安い御用だよ。
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エルザ、急にどうしたの?
いい機会だから、軍服脱いで、
海賊の扮装してくる。
私たちもそろそろ町民に馴染まないとね。
とエルザは言った。
解説)
かなりややこしいですが、過去のいきさつから、
元々、ジャンの持っていた兵隊のフィギアたちに
宿った精霊たちが暮らす異世界が生まれ、
訳あってその世界から、
この町の郊外のバービーハウスに引っ越してきたのが、
ジョー軍曹、エルヴィン・ロンメル将軍、
ジョーの部下だったエルザ、
ジェーン(元フィギアのジェーン)の4人、
という設定になっています。
Apr 16, 2023
植え替え
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ジェーンの住む家の居間では、
パキラの植え替え準備が整っていた。
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サイドテーブルの陰で
ジェーンたちが見守っている。
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ちょうど迷いの森から遊びに来ていたエリコも
一緒にいたのだった。
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植え替える鉢に
セリアで買った鉢底用ネットを、
底面の円形サイズに合わせて切ってネットを敷く。

水はけをよくするため、
鉢底石を敷き詰める。

パキラを鉢から外して、
根の部分の土を
馴染みやすいように、削いだり
ほぐしたりする。

新しい鉢の鉢底石の上に
市販の「観葉植物用の土」を少量入れてから、
土をほぐしたパキラを鉢の中の好みの位置に据えて、
周囲から「観葉植物用の土」を流し入れて完成。
この時、鉢を軽く叩いたり水で湿らせたりして、
根の部分が新しい土と十分に馴染むようにする。

作業が終わって人がいなくなってから、
ジェーンとエリコがテーブルから降りてきた。
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このパキラとテーブルヤシ、モモコたちの住む世界から
運ばれてきたらしいのよ。
とエリコが言った。
そうなんだ。
それで、テーブルヤシに
私たちと同じサイズのインコがとまっているのね。
あの子と、友達になれないかな。
解説)
パキラとテーブルヤシの
植え替えをしてみました。
植え替えの仕方の詳細については、
ネットに園芸関連の動画など沢山の情報があります。
そちらをご参考に。
ジェーンが一人で暮らす等身大の世界と、
モモコたちフィギアが暮らす1/6サイズの世界と、
エリコの暮らす「迷いの森」の世界は、
それぞれ隔てられていますが、3人は友人で、
エリコだけが、ジェーンの住む世界に
遊びに行くことができる(バケツの中に出入り口がある)。
という設定になっています。
Apr 15, 2023
観葉植物のこと そのさん
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このパキラも大きくなっちゃって。
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本当だね。
鉢が小さいままなので、
葉が茂って不安定になってきたみたい。
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そこにドルフィンのマスターがやってきた。
パキラを撤去することになりました。
と言っている。
なんというタイミング。
とルルは思っている。
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撤去作業が済むと、
マスターは通路の奥から、
バラの木の鉢植えを出してきた。
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これは水やりの手間は要りません。
あのパキラはどこに?
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その頃、ジェーンの住む家の居間では、
植え替え作業の準備がされていたが、
誰も知らなかった。
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その頃、サラたちの部屋では。
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広場のパキラが撤去されたんだって。
生長の早い観葉植物は大変ね。
と言っている。
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うちのは大丈夫だね。
と言いながら、
ケイは霧吹きで水をかけている。
解説)
観葉植物続きで掲載していて、
なんとなく思い立って、
植え替えをすることに。
Apr 14, 2023
観葉植物のこと そのに

でもね。
たまにドルフィンの倉庫に、
リアルな観葉植物が入荷することがあって。

ラカンマキやサボテンを飾っていたことも
あったのよ。

一昨年の暮れには、広場で、
ガラスの仕切りの中に、
並べていたりもした。
あ、それ覚えてる。
その頃には私、もうカメラに凝っていて、
観葉植物の立体写真を撮ろうとしたんだ。
結局撮らなかったんだけど。
とエトナが言った。

こういうリアルな観葉植物って、
若葉をつけたり小さな花が咲くと
すごく楽しいけど。

ハナキリンみたいに、
どんどん大きくなっちゃうのも
あるのよね。
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あのガジュマル、どうなったのかなあ。
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広場の植え込みに移されて、
大きくなりすぎて、撤去されたやつね。
あれから、どうなったのかしら。

その頃、ジェーンの暮らす家の
キッチンの窓際で
ガジュマルはさらに生長していた。

今年も若葉を芽吹いたようだ。
解説)
今回も過去画像の再掲です。
順に、
2015年2月1日「ガーデニング」
2021年12月21日「観葉植物と立体写真」
2015年2月20日「ハナキリンの花など」
2021年1月26日「ガジュマルの鉢植え」
2021年4月4日「事務所の同居人」
からピックアップしました。
時々ミニ観葉植物を情景セットに使うのは、
撮影を始めた頃からの遊びです。
常設の情景セットに配置しておくと、
何かとコンディションが気になるので、
撮影意欲の向上にいいのかもしれません(^ ^)。
Apr 13, 2023
観葉植物のこと

思い出に浸っていたルルに、
昔のことを知らないエトナたちが
話を聞きたがっている。

ルルはいつも水やりしてるでしょう。
いつ頃からやってるの?
そもそも最初の頃、
町にリアルな観葉植物ってあったの?

ジェニーたちのバンブーハウスに、
パキラの鉢植えがあったって聞いてるわ。
2006年の春頃のことね。

ルビーたちの経営していた「銀河食堂」や、

開店当初の喫茶ペンギンにもあったって聞いてる。
むしろ最初の頃は、
お店や室内にリアルな観葉植物を飾るのが、
主流だったのよ。

リアルといえば、観葉植物じゃないけど、
食用になるルッコラを育てたり。

葉ニンニクを卵とじに使える、
ニンニクの芽を育てたりもしてた。

私がハナキリンの花に出会って、
植物に興味を持つようになって、
水やりを始めたのは10年前くらいからだけど。

だんだん手間のかからない
フェイクグリーンの観葉植物を飾るのが
主流になってね。

中には庭に人工の樹木や灌木ばかりを植えて、
人工庭園を作ろうとした人がいたりしたの。
それって、ジルさんのことね。
その話、聞いたことがある。
とエトナが言った。
解説)
今回は植物中心の過去画像の再掲です。
再掲画像は、
2006年5月20日「バンブーハウス そのさん」
2006年8月29日「銀河食堂の夜」
2007年3月4日「カフェ・ペンギン」
2011年11月18日「水耕栽培」
2015年2月6日「オレンジとニンニク」
2013年4月8日「ハナキリン」
2016年7月30日「みどりをつくる」
2016年8月7日「みどりのにわ」
からピックアップしました。
ルル自身の身の上については、
2021年4月9日「ルルのはなし」に
掲載されています。
Apr 12, 2023
タンポポと七宝樹

サラはオセロを連れて
高台の休憩所まで
散歩に来ていた。

今日はルルはいないの?
広場まで水やりに出かけてる。

このカメ、
オセロっていうんでしょう。
タンポポの鉢を見上げているよ。
ほんとだ。
そういえば、タンポポは好物なのよ。

サラは、先日、
空き地で記念撮影をした時、
タンポポが沢山咲いていたことを、
思い出していた。

その頃、広場では、
いつものように大道芸人たちの歌声が流れ、
ルルが水やりを済ませたところだった。

七宝樹が小さな若葉をつけている。

ボニーとジュリアンが
町に帰って来たって知ってた?
とリタが言っている。
えー。十数年ぶりよね。

ドミノのギターの旋律が、
思い出を誘うBGMのように流れている。
ルルはしばし懐かしさでいっぱいになった。

その頃サラは、足を伸ばして、
空き地までやって来ていた。
オセロは嬉しそうだ。
解説)
今年の元旦から登場している多肉植物の七宝樹。
当初あった葉はほとんどが縮れて枯れてしまい、
心配していましたが、
春になって小さな新芽があちこちに。
(ネットで調べたところ、杞憂だったようで、
解説動画に「冬は普通茎だけになるようです。」とありました)。

この七宝樹、昨年暮れにカインズホームで購入して
自転車で帰宅する途中バッグの中で、
茎の一部が折れてしまったのですが、
駄目もとで、そのまま別のポットに刺しておいたところ、
こちらもなんと新芽をつけました。
Apr 11, 2023
家を見に行く

ギルダは、お待たせ。
と言っている。

なんかすごい軍用車両ですね。
ビンテージものでしょう。
それにコスプレもきまってますね。
あ、これは。
とギルダは言いかけたが、
ジルが押しとどめて、コスプレコンテストの
優勝を狙ってるんですよ。
と言った。

いざ発進。
帽子を飛ばされないようにね。

今日は天気がいいから、
ちょっと遠回りだけど、
森林地区の方から行ってみる。

滴るような緑が綺麗ですね。
この車体、随分汚れが目立つけど。
春の砂埃のせいよ。
そうなのか。

ここを抜けていけば、
もうすぐ。

間隔をおいて、
同じ外観の建物がぽつんぽつんと
建っているのが見える。
やがて一行は目的のバービーハウスのある
小高い丘に着いた。

あれがバービーハウスか。
16年前にはこういう住宅の話は
聞いたことなかったね。
きっと世界観が違ったんだよ。
などと言っている。

屋内を見ますか?バービーハウスは
どれも外観も間取りもみんな同じです。
とジルが言っている。
解説)
今回も続きです。
バービーハウスの写っている画像は、
2021年6月8日「バービーハウスへ」で
掲載した画像をベースに合成しています。
バービーハウスの室内風景は
その時の、サラがキサラの住む
バービーハウスに遊びに行くという一連のエピソード、
2021年6月9日「バスルーム」。
2021年6月10日「寝室とリビング」
2021年6月11日「朝のアルバム」
2021年6月12日「シオン」
などで紹介されています。
Apr 10, 2023
そのまた続き

ボニーがドライブから
帰ってきたようだ。

楽しかった?
うん。自然の景色は変わっていないね。
またこの町で暮らしたくなっちゃったよ。

絵画の前には
猫が集まってきていた。
シュレディンガーさんと
勘違いしてるのかな。

このスフィンクスのテーマは、
クノップフが傾倒していた
ギュスターヴ・モローの影響だって言われてるの。

モローには、
「オイディプスとスフィンクス」
っていう素晴らしい作品があってね。

マンスフィールドさん。
もしできたら、この絵、
お借りできないかしら。
私の部屋に飾りたいの。
いいわよ。
大事にしてくれるなら
差し上げるわ。
複製の縮小版だし、
絵の右の部分の尻尾のところが随分切れてるから、
ドルフィンの倉庫に預けっぱなしだったの。
お蔵入りさせとくより、その方が世のためね。
やったー。
言ってみるもんだなあ、とメルティは
喜んでいる。

何箇所かに通話していたジルは、
最後にギルダに連絡をして話し終えた。
これから、空いているバービーハウスに
案内しますよ。
と言っている。

二棟並んでいる、
バービーハウスを用意してくれるって。
これから見に行って、
気に入ったら暮らしてみるつもりだけど、
君はどうする?
久しぶりに郊外を走ったら、
すっかり懐かしくなっちゃって、
僕も住める場所があれば。

そこにギルダの運転する
キューベルワーゲンが走り込んできた。
解説)
今回も時の流れのままに。
Apr 09, 2023
その続き

マスターに聞いてみたら?
ちょっと倉庫を探してみます。

これですね。
そうそう。これです。
どうもありがとう。
このスフィンクス、ちょっと、
シュレディンガーさんに似てる。
とメルティが言った。
そうなの?
と3人が一斉に言った。
3人はシュレディンガーの
人面のライオンの姿を
みたことがなかったのだった。

このスフィンクスの顔のモデルは、
クノップフが溺愛していた
妹のマルグリットだって言われてるのよ。
とマンスフィールドさんが言った。

そこに、ルビーと連れ立って
ジルがやってきた。

ジルは、郊外の賃貸のバービーハウスなら
いつでも手配できますよ、と言っている。
ジュリアンもみんなに勧められて、
この町に逗留することにしたのだった。

その頃ボニーは
郊外のオフロードを走り回っていた。

若葉の緑が瑞々しい。

ボニーは、
この町にまた住むのもいいかな。
と思っている。
解説)
今回もなんとなく続きです。
後半の3枚は、一昨年の4月に撮影した
多摩川堤防付近の風景画像をベースに
合成した画像です。
Apr 08, 2023
翌日のこと

昨夜はよく呑んだなあ。
ペンギンでエスプレッソでも飲んで
しゃきっとしよう。
とルビーは思っている。

あ、ルビーさん。
春っぽい服装に。
ええ。席空いてるかしら。

その時、ちょうど店から
ジルが出てきた。
あ。ジルさん。
そうだ、ちょうどよかったわ。
ルビーはジルに、
昔の知人が町に戻ってきたんだけど、
住めそうな家を探しているの。
郊外のバービーハウス、空いてないかしら?
と訊いている。

その頃広場では
今日もそこそこの賑わいだった。

ボニーは、さっそく
ドルフィンからモトクロス用のバイクを
借りていた。
これ、ほとんど借りる人いないのよ。
キサラくらいかな。
とエトナが言っている。

ヘルメットも保管してあったなんて、
嬉しいなあ。
どこか、出かけるの?
うん。ちょっと郊外を走ってくる。

ベーカリーのテーブルでは
アイスとジュリアンが話していた。
昨晩はよく呑んだね。
久しぶりに「赤と黒」の頃を思い出しちゃった。
そういえば、あのお店に
変わった絵がかかっていたでしょう。
青年と人面の豹が寄り添っているような。
あの絵、すごく気に入ってたのを、
思い出しちゃった。

ああ、あれね。

あれは、クノップフの、
「スフィンクスの愛撫」だね。
残念だけど絵画類は店を閉店する時、
全部処分しちゃったから。
人面の豹と聞いて、メルティが
聞き耳を立てている。

その絵だったら、
コピーの縮小版を持ってるわ。
確かドルフィンに預けてあったはず。
と、絵画のコレクターでもある、
マンスフィールドさんが言った。
解説)
今回は前回の翌朝という設定で、
エピソードも続きの内容です。
2007年1月25日「クラブ「赤と黒」 そのいち」
から画像を一枚再掲しています。
Apr 07, 2023
ジュリアン

夜が更けて、ベーカリーの店仕舞いをした後、
アイスとルビーがデジャにやってきた。
ジュリアンたちと歓談している。

あれから16年も経つのに、
あなた変わらないわね。
君もね。なぜだろうね。

二人は「赤と黒」で過ごした
16年前のことを思い出していた。

まだタバコ喫ってるの?
何度かやめようと思ったんだけどね、
タバコを喫う仕草も必要なのよ。
ふーん。
そういうものなんだね。

あの二人、訳のわからないことを
言ってる。
とルビーは思っていた。

ジェニーのアルバム見てたら、
僕が撮影したルビーさんの写真があって、
懐かしかったですよ。
と、ほろ酔いのボニーが言った。
ああ、あの赤い服の写真ね。
ルビー、アルバム見る?

ジュリアンは、これからどうするの?
とゼロが言った。
どうするかな。
店はそれぞれ現地のスタッフに任せているから、
一応身軽なんだけどね。

だったら、
またこの町で暮らしてみれば?
とルビーが言った。

郊外のバービーハウスだったら
ジルに言えば、
きっとすぐ借りられるよ。
とアイスが言った。
解説)
過去の画像は、
2007年1月27日「クラブ「赤と黒」スナップと解説」
から再掲しました。
ボニーのフィギアが過去に数多く登場していたのに対して、
ジュリアンは、「赤と黒」の店内風景に一度登場しただけです。
フィギアヘッドは、元はドイツ軍兵士のもので、
その後は16年間、軍装で段ボール箱に眠っていました。
ただ謎めいたクラブのオーナーという
役回りが気に入っていたので、
思いつきで再登場ということに。
Apr 06, 2023
ボニーの写真

ジェニーから借りてたアルバムがあったわ。
これ、貴重な町の思い出ね。

これは2007年のお正月、
僕が町に来た翌年の写真だね、
この時は宝くじ売り場で、
新春宝くじを売っていたんだ。
この頃からもうシティポリスがいたのね。
とヴィヴィアンが言った。

僕がカメラに懲り始めたのはその年の4月頃で、
これは初めて撮影した記念写真。
ペンギンの店内にいた人に
並んでもらって撮影したんだ。
マスターのマリーネもいるのね。
あとは私の知らない人ばかり。とエトナが言った。

これもペンギンに来たルビーに頼んで、
撮らせてもらった肖像写真。
ルビーすましてる。

そのころは、カメラに夢中で、
街角に出て、いろんな人の写真を撮った。
この写真に写っている女性たち、
それぞれ別々に撮影させてもらったんだよ。
劉麗華、麻生久美子、白鳥ジュン、アイス、鷲尾翠、
ライトニング。
アイスと、翠しか知らないなあ。

有名人のそっくりさんを探して撮影したこともある。
町中を探し回って、結局、17人も見つけたんだ。
これはオルセン姉妹に撮影を頼んでいるところだね。
そんなに撮ってたから
伝説の写真家って言われてるのね。

これは、ビストロのアルさんに頼んで、
「スカーフェイス」のトニー・モンタナ風の
扮装をしてもらって撮影したんだ。
右上のは映画のスチール写真だよ。

これは2010年のお正月の記念写真だね。
文学青年や探偵と助手の鷲尾翠、ルルもいる。
ボニーさんの髪型が気になる。

この後の写真はないのね。
僕は町を出たからね。
世界のあちこちで
モトクロスのレースに出たりしながら、
写真も趣味で撮ってた。
あのオートバイ、
まだドルフィンで借りられるよ。
とエトナが言った。
解説)
主にボニーがカメラマンとして登場している画像を
探して再掲してみました。
2007年1月1日「新年の街角スナップ」
2007年4月8日「カフェ・ペンギンで記念撮影」
2007年4月10日「ルビーの変身」
2007年4月15日「リペイントの街角 そのいち」
2008年7月14日「そっくりさんを探して そのよん」
2009年1月24日「映画「スカーフェイス」の写真を撮る」
2010年1月5日「新年の街のスナップ そのに」
よりピックアップ。
ボニーのフィギアは、
単体で売られていた他のフィギアとは違い、
元々ラジコンのモトクロスバイクに
アクセサリーとして付属していたもので、
ヘッドだけを他のボディにすげ替えて使っていました。
2006年のの3月頃に購入したものです。
Apr 05, 2023
ジュリアンとボニー

エトナが、デジャを紹介している。
あの店なら、とりあえず落ちつけて、
昼間からお酒も飲めますよ。

だったら夜までいてよ。
お店閉めたら行くから。
とルビーも言っている。

ということで、
ジュリアンとボニーはデジャで、
一息ついたのだった。

クラブの経営みたいな仕事、まだやってるの?
ああ、世界のあちこちでね。
この町を出たのは、もう16年前になる。
ところがこの前、店に来たボニーと
ばったり出会ってね。思い出話に花が咲いて、
この町が懐かしくなって。というわけさ。

あ、新聞に私の写真が載ってる。
とエトナが言った。
この記念写真、あなたが撮ったの?

みんなが空を見上げてしまい、
撮影に苦労した時のことを
エトナは一瞬思い出していた。

君も写真家だったのか。
デイリープラネットに載るなんて、
すごいね。
とボニーが言った。

ボニーさんでしょう。
私はヴィヴィアン。
この町には去年来たばかりだけど、
噂はジェニーたちから聞いてるわ。
アルバムで、昔の写真を見せてもらったことがあるの。
あ、時間はあるんでしょう。
あのアルバム、ジェニーから借りて、
魔術劇場にあるはずだから持ってくるわ。
と言って、
ヴィヴィアンは席を立った。

それはわざわざどうも。
昔のアルバムか。懐かしいなあ。
解説)
エトナが思い出している撮影シーンの画像は再掲で、
2023年2月7日「広場で記念撮影」
からピックアップしました。
エピソードはボニーの再掲画像を使う話に
無事に流れていくようです。
Apr 04, 2023
画像生成AIで遊ぶ

ねえ、なに遊んでるの。
と、モモコが尋ねている。

パソコンに「DuffusionBee」
っていう、無料アプリをダウンロードしたところ。
これは英文や画像を入力すると、
画像を作ってくれるっていう画像生成AIなのよ。

ここに、たとえば、
森の中に小川が流れていて、
白いウサギが遊んでいる。
っていうような文章を英訳して入れてみる。

わあ。綺麗だね。
「満開の桜の森の中、小川のそばでウサギが人参を食べている。」
という文章にしてみてよ。
とナオミが言った。
グーグル翻訳で文章を変換して、
A rabbit is eating carrots by a stream in a forest of cherry blossoms in full bloom.
これをコピペして実行すると。

ふーん。面白いね。
桜の森と小川とウサギと人参畑みたいなのが
合成されてるんだね。
じゃあ、次に
「満開の桜の森の中で、ウサギとカエルが相撲をとって、
負けたウサギが転んでいる。」って入れてみる。
とたまきが言った。
なにそれ。
鳥獣戯画風のイメージよ。
In the forest of cherry blossoms in full bloom, a rabbit and a frog are sumo wrestling,
A defeated rabbit is falling.

おお。想像をはるかに超えてるわ。
立っている人の顔の部分が変だけど、
あれカエルの顔のつもりなのかな。
お芋みたいに転がっているのがウサギだね。
相撲って、理解してないのかな。
確かめるために、
「青空の下、芝生の中の土俵の上で、立ち上がって喜んでいる蛙。」
ってやってみるわ。
Under the blue sky, on top of the ring in the grass, a frog stands up and rejoices.

こ、これは。

青空がないよ。
その代わりカエルが青い。
ただ寝てるみたいに見えるけど。
顔がおかしすぎる。
あれはツノなの?舌なの?
土俵も見えないけど、
芝草がカーブしていて、
サークルみたいになっているのが、
微妙に嬉しいなあ。

もー、騒々しくて本が読めない。
でも随分楽しそうだね。
と文学青年は言った。
解説)
今回、遊んでみた「DuffusionBee」は、
「Stable Diffusion」という画像生成AIの、
Mac用バージョンの無料アプリです。
Apr 03, 2023
再会と局長の帰還
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ペンギンを出たボニーとジュリアンは
広場にやってきた。
うーん。随分様子が変わったね。
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それに知らない人ばかりだ。
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あ、あそこに。
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もしかして、ジュリアン?
それにボニーも。
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ボニーはさっそく
エトナに声をかけられている。
あなた、もしかしてボニーさんでしょう。
あの伝説の肖像写真家の。
ジェニーのアルバムで見覚えがあるの。
確かにボニーですが、
伝説の写真家っていうのは。
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アイスたちはジュリアンに
駆け寄っている。
久しぶりすぎるわ。
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その頃、ペンギンの前では
局長たちが管理局に戻るところだった。
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コンテストの参加賞のチョコレートの他に、
肉まん、たくさん入れといたから、
お土産にどうぞ、と言っている。
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ありがとうサラ。
短い間だったけど楽しかったわ。
また休暇が取れたら遊びに来るね。
それにすごく会いたくなったら、
あなたの夢に出かけていくから。
それってルール違反じゃないんですか。
とミラが言った。
普通そうなんだけど、
一応私がルールだから。
解説)
今回は再会と別れのエピソードでした。
Apr 02, 2023
さまざまな思い
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ペンギンでコーヒー豆を買ったサラは、
局長と一緒に部屋に戻り、
ケイの淹れたコーヒーを飲んでいた。
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このコーヒー、美味しいわね。
私、管理局の天使とかじゃなくて、
こういう部屋で
普通の暮らしがしたかった。
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ボニーとジュリアンは、
ペンギンのマスターのマリーネと
再会していた。
この方たち、マスターのお知り合いですか?
とはるなが聞いている。
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そうなの。
私はクラブ「赤と黒」でバイトをやっていて、
閉店した時、お店の資材を譲ってもらって
このペンギンを始めたんだけど、
この人は「赤と黒」のオーナーだった人。
ふーん。
マスターの恩人なんですね。
いやー、みんな知らない人ばかりで、
浦島太郎の気分だよ。
広場の方に行けば、
ルビーやアイスに会えるわよ。
ベーカリーやってるからすぐわかる。
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その頃、ベランダでは
シュレディンガーがメルティたちと話していた。
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シュレディンガーさんは、
人間の姿になって、この町で暮らすんですか?
いや。
ここにはもう立派な夢食いのドラゴンがいるからね。
私はメルティの夢の部屋に戻るよ。
しかし管理局に見つかっちゃったし、
またいつか旅に出るかもしれない。
そしたら猫たちもいなくなるんでしょう。
寂しくなっちゃうわね。
とメルティが言った。
ピノコやテキサスレンジャーがいるから、
メルティの世界はもう安全だよ。
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せっかく友達になれたクロも
ついていっちゃうのだろうか、
とトラ猫は考えていた。
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バー・デジャでは、アンジーが、
届いたデイリープラネットを読んでいた。
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ケントさんの連載記事が
載ってるよ。
食の特集で、アルのビストロのピザ、
マンゴー亭の肉まんや
人気のカメロンパンについて書いてある。
現地の特産品として、さつまいものことも
載ってる。
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いつ調べたんだろう。
確かにここの焼き芋美味しいのよ。
解説)
今回はあれこれと。
Apr 01, 2023
3月のコンテストの結果発表
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広場には拡声器から声が
流れている。
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みなさん、3月のコスプレコンテストの
審査結果を発表します。
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3月の新しい参加登録者の中での優勝候補は、
バーバラ、BBさんたちのバービー人形のコスプレや、
ペンギンの扮装をしたフンボルトさん、
名前不明の旅行者の方達。
それから。
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あなた参加登録したの?
メガネの人に誘われたので、いいですよ、
って言っただけなのに。
新しい登録者が少ないので、
かなり適当に勧誘してるのよ。
もれなくチョコレートもらえるからいいんじゃない?
とアンジーが言った。
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厳正な審査の結果、優勝されたのは、
最後に駆け込み登録された、
中世の騎士風衣装のシュレディンガーさんです。
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私が代理で登録しといたの。
この猫感動のあまり麻痺してるよ。
とメルティが言った。
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優勝の賞品が王冠だって言ってたから、
シュレディンガーさんに
似合うんじゃないかって思って。
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優勝賞品の授与です。
シュレディンガーは
万雷の拍手と歓声で迎えられている。
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よく似合ってるわよ。
と言われている。
解説)
以前にも優勝賞品として登場した王冠は、
元々ペット用のアクセサリーなので、
百猫の王にぴったりなのでした。