Feb 10, 2025
思わぬ要請
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しばらくしてルースがやってきた。
リザードさん、それとそこの金髪の方、
アイスさんですよね。
メイズがちょっと来ていただけないかと。
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メイズって?
宇宙連合の確か天使族出身の女性で
この船の艦長だよ。
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アイスさん。
宇宙ステーションにようこそ。
私は艦長のメイズと言います。
こちらは副艦長のオニール。
および立てしてごめんなさい。
こっちから出向くべきだったけど、
ちょっとあなたにお願いしたいこともあって。
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艦長といっても、
基本はリザードたちのいう地球オタクなの。
私もオニールも地球に行ったことがある。
それもあなたの住む町に。
え、そうなの?
ええ。それはともかく、さっきの幻影には驚いたわ。
あんな鮮やかなイメージは久しぶりに見た。
あ、船内はどこもモニタリングされてるのよ。
さっそく、あなたのことも調べさせてもらったわ。
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さて本題に入ると、
レプテュリアンたちが宇宙連合からの観光客用に
地上のホテル利用を許可したのはご存知の通り。
それは私たち宇宙連合にとっても
歓迎すべきことなんだけど、
当然不測のトラブルが発生する可能性もある。
そんな時、あなたの力を借りたいのよ。
力って、何をすればいいんです?
ホテル使用を申請したのはリザードとシベール。
彼らはレプテュリアンの中でも長老で、
特別な存在とみなされている。
何かトラブルがあった時、リザードたちと
協力して解決に当たって欲しいの。
私はただの人間ですよ。
それが重要なのよ。
レプテュリアンは宇宙連合に加入したとはいえ、
これまでの経緯から、あなたたちの地球は
一応レプテュリアンたちの独占的な保護下にある。
そんな環境下で起きるトラブルが
連合内部での対立にまで発展することは避けたいの。
そのためには中立的な立場にいるものの介入が最適なのよ。
リザードはどう思う?
ふむ。それは、いいかもしれないな。
トラブルの処置は当然我々に押し付けられると思っていたが、
地球の住民の側の調停役がいれば何かと役に立ちそうだ。
ただアイスは一般人というわけではなく、
CGという国際的な機密組織にも所属している。
個人的にはアイスが
計り知れぬ呪力を持っているのは認めるが、
そのあたりはどうなのかな。
それも考えたけれど、
その組織は惑星内での平和維持活動が目的で、
私たち宇宙連合と敵対しているわけじゃないし、
存在さえ把握していない。特に問題はないわよ。
どうするかは、もちろんアイス次第だけど。
冒険は好きだから手伝ってもいいわよ。
とあっさりとアイスはいった。
これで決まりね。
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リザードがシベールに話を伝えに行くといって、
席を立つと、三人はメイズに促されて
別室に向かった。
宇宙連合で正式にあなたをスカウトしたいところだけど、
連合加盟の惑星出身者じゃないから残念。
あなたはこれまでCGでミッションをこなしたり、
異世界から侵入した怪物を退治したり、
機転を効かせて探検チームを野生動物から守ったり、
いろんな活躍をしてきたのね。
私のこと、なんでも知ってるのね。
レプテュリアンたちは地球を保護監視してるって、
建前では言っているけど、実態は放置状態。
自分たちで人類との接触を禁じてからは特にね。
いろんな惑星から訪問者が地球に入ってるのよ。
当然、宇宙連合の加盟惑星からも。
だから情報を集めようとすればそれは容易いこと。
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広いドームのような部屋に入ると、
中空に円盤が静止していた。
あなたは一度行ったことのある場所や
誰かの場所の記憶のイメージがあれば
その場所の幻影を生み出したり
鏡の扉を作ってそこに移動できるんでしょう。
でも目的地がいつもそんな場所ばかりとは限らない。
移動手段として、この乗り物を一台提供するわ。
え、これはレプテュリアンたちの。
私、円盤の操縦なんてできないわよ。
パイロットには最適な人がいるの。
元は人間だけど彼女は特別。
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円盤から女性が降下してきた。
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彼女はサニー。
元地球の米国空軍のエースパイロットだった。
かって航空機事故で不時着して
瀕死の状態だったところを私たちが救出したのよ。
宇宙連合のおかげで助かったの。
救命措置を受けてサイボーグの体になったけどね。
とサニーが言った。
円盤の操縦は彼女に。
用事があればいつでも呼んでね。キャプテン・アイス。
とアイスに小さな送信機を手渡しながらサニーは言った。
解説)
続きます。
Jan 10, 2025
ホテル・ナジャで
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サラは着替えを済ませた。
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ガラス戸を開けると、
程よい熱気と風が吹き込んできた。
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リンリンが紅茶を運んできてくれた。
ありがと。
ハリー夫妻がお戻りになったようですよ。
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サラは挨拶をしに、
フロントまで出て行った。
やあサラ。
今年もよろしくね。
と言われている。
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散歩から帰ってきて
一休みしようと思ってたところだ。
もしよかったら僕らの部屋に来ないか。
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どの部屋も似た感じみたいだけど、
このテラスからは結構眺めがいいだろう。
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私は去年一度アイスとフミコと一緒に、
出来上がったばかりのこのホテルに
来たことがあるんですけど、
その時は山上のストーンサークルから直接魔法で来て、
ホテルを見学してすぐに帰ったので、
このあたりのことは全然知らないんです。
私たちも似たようなものよ。
去年、フミコに招待されて高台の遺跡を訪れ、
近くの山頂にあるというストーンサークルを訪れただけ。
ホテルやマークの集落のあるこのあたりには
初めて来たの。
暮れからずっとホテルに逗留して毎日散歩してるから、
少しづつ様子がわかってきたけどね。
ジャングルの中はとても無理だけど、
マークの集落だったら案内してあげられるよ。
集落の住民たちとも結構知り合いになれたし。
とハリーが言った。
ありがとうございます。
でもちょっとこれから一人でうろついてみます。
成果は明日にでも。
そう言ってサラは席を辞したのだった。
解説)
続きます。