Feb 04, 2025

ノヴァとエレナ

a1

リザードとアイスが
ホテルのロビーで話している。

フミコからすごい呪力を授かったようじゃないか。
私が枯らした巨木を魔法で再生させたのには驚いたよ。

木を枯らしたのはやりすぎでしょう。

ピピをさらった大きな九官鳥の巣があったからね。
九官鳥を殺したわけじゃないし、
あれでも手心を加えたんだ。
それはともかく、
つい先日、私たちの仲間の合同会議があってね。
宇宙からの訪問客用に、
このホテルを使えることになったんだ。

もう何人も泊まっているんでしょう。

それは既成事実を作るためだよ。
カコやルースが、会議でホテルの安全性を
証言してくれた。


a2

そこにマリアがやってきた。

こんにちわ。
私はこのホテル・ナジャの
雇われ支配人のマリアと言います。

ああ、黒猫に変身する魔族の娘さんですな。
私はリザード。
これからはこのホテルを、宇宙からの訪問客用に
ちょくちょく利用させてもらうつもりです。
どうぞよろしく。

こちらこそ。
でもこのホテルは去年の暮れにオープンしたばかり。
それにアフリカの広大なジャングルの奥地の、
小さな集落の外れにあります。どうしてここに。

その立地が重要なんですよ。
すごく長くなりますが、ざっと解説しますと、
私たちレプテュリアンは、大昔にこの星に来て、
あなた方魔族と共存共栄していました。
しかしさる事情である時から、この星の人間や魔族と、
直接接触しないことを決めたのです。
また私たちは同時期に宇宙連合という
あなた方のいう国連組織のような共同体に参加しました。
宇宙連合と仲良くやっていくために、
宇宙連合参加惑星からの訪問客を受け入れているわけです。
しかし、今言ったように様々な制約がある。
この星を保護観察しているのは私たちレプテュリアンなので、
私たちが訪問客の案内役を務めるのですが、
それは円盤を使った上空からの観察旅行になります。
しかし当然ながら地上に降りてみたい、
この星の生物と直に交流してみたいという要望も多くてね。
そういう彼らの欲求を満たすモデルケースとして、
私と友人のシベールがこのホテルを選んだのですよ。
すごく辺鄙な場所にあるので、万が一トラブルが起きても、
世界的なニュースになりそうもない。
文明化されていない自然環境がまだふんだんに残されている。
それにここがポイントですが、人間社会では生きづらい
異形の魔法生物たちが運営しているので、
多様な容姿の惑星からの訪問客にとっても馴染みやすい。
それがこのホテルを選んだ理由なのです。

すごく長い解説でしたが、
なんとなく納得できましたわ。
とマリアが言った。

とはいえ、合同会議でホテル利用の暫定的な許可は得ましたが、
とりあえず今は、お試し期間ということで、
問題があれば利用禁止になるという状態です。


a3

おお、早速訪問客が到着したようですな。
広場にあるっていう岩の転送装置は使わないんですか。

ふむ。装置のことをご存知でしたか。
あれは大昔にリクガメの採取や観察に
使っていたものです。
これからは大いに利用できそうですが、
あの円盤は多分ルナシティからのものです。
私たちの一般的な移動手段なのですよ。


a4

アイスとリザードとマリアが
出迎えに行くと、
円盤からシベールが降下してきた。


a5

やあアイス。
去年の10月14日にサラたちの部屋で会って以来だね。
よく日付まで覚えてるのね。
まさか君は覚えていないのか。
日付までは。

人がバラバラ降りてくるわ。
とマリアが言った。


a6

こちらはエレナと、えーっと。
ああ、僕の名前は発音できないだ。
ノヴァって呼んでよ。
この星の言葉で新星っていう意味だろう。
かっこいいから。


a7

リザードは、ノヴァたち一行の
チェックインの手続きをしている。

ヴィヴィアンは来てないのかい?
残念でした。
でも、ご両親のハリー夫妻は泊まってるみたいよ。


a8

ノヴァとエレナは
リンリンに部屋に案内されていった。

彼らは宇宙連合加盟の惑星から
来た人たちだ。
一種の地球マニアや地球ウォッチャーだよ。
エレナは地球人になりすまして、
君たちの住む町に行ったことがあるって
言ってたぞ。
ふーん。どうりでどこかで見た顔だと思ったわ。


a9

二人がロビーに行くと、
マリアとシベールが話していた。

私とリザードは、
訪問客のガード権ガイドという役職で、
特別に人間や魔族との接触が認められたんだ。
前から接触してたんでしょう。
うんまあ、接触禁止というのは建前だからなあ。
ははは。

なんだか、話がどんどん
ややこしくなっていくみたい。
とアイスは思っている。



解説)
続きます。
Posted at 20:21 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Feb 03, 2025

ホテルへ行くアイスたち

a1

アイスとピピとダックは、
ホテルに帰るために、
鏡の扉を使って魔術劇場に入った。

黒猫がいて、
私も一緒に連れて行って。
と言っている。


a2

黒猫はダッグのバッグの中に
飛び込んだ。

これはなんですか?
完璧に猫に変身してるけど、
マリアっていう魔族の娘さんよ。


a3

ピピは驚いている。
変身って、化け猫ですか。
全然不正解。
と猫のマリアは言った。


a4

一行は鏡の扉を使って
フラハの家の裏庭まで行き、
ジャングルを通って、
ホテル・ナジャに戻ってきた。
マリアはバッグから飛び降りて
走り出している。


a5

マリアはホテルの入り口で出会った
ドビーと話しているようで、
話し声が聞こえる。

お帰りなさいマリアさん。
ホテルの調子はどう?
順調です。今日もお客さんが来ました。
するとマリアは人間に変身した。


a6

ホテルまで運んでくれてありがとう。
おかげで楽ちんだったわ。

マリアさんは犬猫猿鳥同盟の
ボスなんですよ。
だからこのホテルのオーナーでもあります。
とドビーが言った。

どちらも名前だけだけどね。
本当のボスはヴィヴィアン。
私は彼女に頼まれてやってるのよ。
とマリアが言った。

宇宙に変身する生物は沢山いますが、
これほど一瞬で見かけが変わるのは珍しいですね。
とピピが言った。

私の生まれつきの特技なの、
魔法はこれしかできないけど。
あ、箒があれば空も飛べるわ。
とマリアが言った。


a7

アイスは宿泊の手続きをしている。
ダックとピピは食堂に向かうようだ。
そこにリンリンがやってきた。

アイスさん、お久しぶりです。
去年の10月にサラさんとフミコさんとご一緒に、
ホテルの下見に来られて以来ですね。
今日はお泊まりですか。
嬉しいなあ。お部屋にご案内しますよ。


a8

この前、見せてもらったお部屋ね。
そうですそうです。
サラさんはもう泊まって行かれたんですよ。


a9

なるほどねえ。
サラもこうしてこの鏡を見たのかしら。


a91

アイスが部屋を出て、ロビーに行くと、
なんとリザードがソファに座っていた。

おや、アイスじゃないか。
元気にしてたかい。



解説)
続きます。
Posted at 20:25 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Feb 02, 2025

エリスの日曜日

a1

エリスは、春節で賑わう広場に出かけて、
コンテストの参加賞のチョコレートの掴み取りを
行っている。


a2

ついでに屋台で海鮮ラーメンを食べる。

ふーふー。
寒い中で食べるのがいいのよね。


a3

エリスは、お土産にマンゴー亭で肉まんを買って
事務所のあるペンギン前に帰って行った。


a4

ウェイトレスのリズとはるなが立ち話を話していた。

コンテスト優勝おめでとう。
仕事中で行けなかったけどアナウンス聞いたわ。
華やかな花魁姿だったんですってね。


a5

そうなのよ。あれカツラが大変だったのよ。


a6

僕もあのコンテストで優勝したことあるんですよ。
バービー人形のケンに似てるっていうのが、
評価のポイントだったそうです。

そう言われれば似てるかも。
あら、エリスじゃない?
お帰りなさい。


a7

広場で屋台のラーメン食べてきたんだけど、
体が冷えちゃった。
熱々のカフェオレいただける?


a8

これはお裾分けよ。
と言って、エリスは、チョコ二つと
肉まんを2個、手提げの袋から取り出した。


a9

今日は掴み取りで、
ガーナのチョコが掴めたの。
それって滅多に混ざってない貴重品ですね。
私掴めたことないわ。


a91

マンゴー亭の肉まんは美味しいなあ。
私たちはなるべく出歩かないようにしてるから、
久しぶりの味ね。


a92

いらっしゃればいいのに。
春節で賑やかみたいですよ。

行っても構わないんだけどね。
あまり私用で人間社会と接触しないのが、
一応管理局の決まりなのよ。

それでいつも店内に入らず、
ここが指定席なんですね。


a93

管理局の人たち。
見かけは私たちと変わらないのに、
色々大変なのね。



解説)
続きます。
Posted at 21:04 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Feb 01, 2025

コンテストの発表

a1

カオス状態寸前の住民の踊りが終わった翌日。
広場には春節恒例のラーメン屋台が出店していた。

昨日は楽しかったね。
卒倒する人もいて、
久しぶりにこの薬缶が活躍したわ。
などと話している。


a2

餃子のお代わりです。どんどん食べてね。
とレイが言っている。


a3

春節といえば、餃子。
餃子といえばラーメンね。


a4

それは即席のチキンラーメンでしょ。
こういうのは、なかなか食べられないから、
土産話になるんですよ。


a5

ルビーのアナウンスが始まった。

みなさん。
1月のコスプレコンテストの
優勝者を発表します。


a6

厳正中立な審査の結果、
優勝したのは、
花魁のコスプレをしたリズさんです。


a7

リズはドルフィンの二階で
アナウンスを聴いていた。

その扮装、ずっと着替えなくて
正解だったわね。
よかった。
これで心おきなく
明日からペンギンのバイトに戻れるわ。


a8

リズは万雷の拍手に迎えられて、
トロフィを授与されている。


a9

おめでとう。
審査員全員一致で決まったのよ。
なんとなく予定調和の気がしますけど、
嬉しいわ。


a91

ルビーがマンゴー亭にいくと、
ダックとピピが
アイスと一緒にホテルに戻るところだった。

お礼を言いに来ただけなのに、
色々ご馳走になっちゃって。
ちょうど春節に重なったから
踊りも見られてラッキーだったわね。
またいつでも遊びに来てね。



解説)
続きます。
Posted at 20:22 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 31, 2025

春節の踊り そのに

a1

健太のガルーダの舞は
佳境に入っていた。

健太は身を屈めると
「今日も日本晴れ。」と呟いて。


a2

大きく飛翔した。


a3

観衆が息を呑んで見守る間、
しばらく空中に留まっているように見える。


a4

ゆっくりと着地して、
きめのポーズをとっている。


a5

ご観覧ありがとうございました。
では、みなさんご一緒に、
楽しく踊りましょう。
と言っている。


a6

さっそく演奏がファンキーな曲に切り替わり、
みんな一斉に踊り出している。


a7

えらいやっちゃいいじゃないか。
えらいやっちゃいいじゃないか。
という大道芸人たちの掛け声が聞こえる。


a8

よさこいよさこい。
とケンも叫んでいる。


a9

サラとフミコも見物に来ていた。

みんな踊りが好きですね。
サラさんは踊らないんですか?
ええ、見てるだけで充分。


a91

その被り物、ガルーダっていうの?

ああ、フミコ。
ガルーダはインドの神話に登場する
神鳥だっていう話よ。
とアイスが言った。

宇宙にはそういう顔の生物もいるよ。
いつか会った事がある気がするんだ。
とピピが言った。

大昔にこの星に来てたのかもしれないわね。
とフミコが言った。


a92

ヒゲの隊長とルビーが話している。

毎年春節にみんなで踊るのが恒例になりましたな。
ルビーさんは踊らないんですか。
カオス状態になった時止める人がいないとね。
なるほど。さすがCG。
じゃあ私もちょっと踊ってきます。



解説)
続きます。

春節のガルーダの舞とみんなの踊りは、
2024年1月14日「春節 そのご」でも見られます。
今回はそのほぼ再現になりました。
Posted at 20:25 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 30, 2025

春節の踊り

a1

午後になって、
広場のスペースが空けられ、
踊りの準備が整ったようだ。


a2

ルビーが挨拶している。

みなさん。ではこれから、
春節恒例のガルーダの舞を
披露していただきます。
演じるのは、マンゴー亭のシェフで
舞踏家の丹下健太さんです。


a3

いよいよ始まるわね。


a4

静寂を破って、
ローレンスの甲高いトランペットの
音色が鳴り響いた。


a5

健太が顔を上げて、
ガルーダの舞が始まった。


a6

音楽に合わせて奇妙な態勢で
身をくねらせている。


a7

春節って、去年は確か2月10日からでしたけど、
毎年違うんですね。
私たちは新暦使ってるからね。
旧暦だと今年は新暦の1月29日からが新年なのよ。


a8

アイスとダックとピピは、
マンゴー亭で肉まんを食べていたが、
ピピは思わず旅行バッグから這い出して、
踊りを見ている。

あれどこかの星で見たような顔だなあ。
ピピ、這い出すとまずいよ。


a9

やっぱり、それただの人形じゃなかったのね。
とツナが言った。
ヴィヴィアンが人形の精霊か何かに、
魔法をかけたんでしょ?


a91

そうじゃないのよ。
とアイスが言った。
ピピもダックも宇宙から来たお客様なの。

ふーん。
私たちも未来世界からきたお客様よ。

ほんとに
ややこしい設定だね。
と誰かが言った。


a92

ガルーダの舞が終わったら、
また去年みたいに、
みんなで踊り出すのかしら。
マンネリだけど楽しみだわ。



解説)
続きます。
Posted at 20:28 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 29, 2025

広場などで

a1

部屋に戻ったサラは、
あれこれ旅行の話をしている。


a2

その大きな石の門みたいな岩が、
転送装置だったのよ。
それで宇宙ステーションっていうところに
カコに連れて行って貰ったの。


a3

その装置、覚えているわ。
大昔のことだけど。
空から来る人たち専用の発着場は、
高原の別荘地の近くの山の上だったけれど、
そういう転送装置も都の近傍にいくつかあったのよ。
あれはリクガメの観察や収集のために
レプテュリアンたちが作ったの。
でも私がその装置で行ったのは
宇宙ステーションじゃなかったわ。

その宇宙ステーションは、今は宇宙連合が使っているけど、
昔はレプテュリアンたちの母船だったって、
カコが言ってたわ。古い転送装置はその名残だって。

なるほどねー。
何千年も経って、
変わったのは地上だけじゃないのね。

なんのことかよくわからない。
とメアリー=ケイトは思っている。


a4

その頃広場は割と賑わっていた。


a5

今井舞がルイを乗せた乳母車を押している。
二人でアコーディオンの音色を聴いているようだ。


a6

ベーカリーには特殊部隊の
ひげの隊長が来ていた。

今年はもう今日から春節ですなあ。
部隊訓練が重なっちゃって
人員が割けず申し訳ない。
いえいえ、こんなこともありますよ。
今年の龍の踊りは中止ということにします。

ちょっと残念。
と佳奈が言っている。


a7

ダックとピピは
子供達に話しかけられていた。

そのお人形かっこいいですね。
おじさんのマスクもすごいなあ。
コスプレコンテストできっと優勝だよ。


a8

マンゴー亭では春節シーズン用の
大きなテーブルが設置されていた。
ナディアとツナが肉まんを食べている。


a9

マスター、春節の龍の舞は中止だそうですけど、
ガルーダの踊りはされるんですか。
ああ、あれは午後から演じるつもりだよ。
せっかくのお祭りだからね。
広場の準備の方をよろしく頼むよ。
わかりました。


a91

ホテルに戻る前に、
そこのマンゴー亭で肉まん食べて行かない?
美味しいので帰って自慢できるわよ。
それは楽しみですね。
僕はチョコがいいけど、
それも食べてみたい。
とピピが言った。



解説)
続きます。
Posted at 20:22 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 28, 2025

ピピたちとベランダで

a1

サラはダックとピピと連れ立って
魔術劇場を経由してデジャに戻ってきた。

あら、今度はまた変わったお客さんね。
ダックって言います。
私はヴィヴィアン。よろしくね。
お父さんたちは?
まだホテルにいるみたい。
よほど気に入ったのね。


a2

サラは、ルビーに会いにベーカリーに行った。

ルビー、あなたとフレイムが、
ジャングルの洞窟で
二人の宇宙人を助けたことがあったでしょ。
お礼を言いたいっていうんで、
お連れしたの。

ふーん。どこに?

ドルフィンの二階のベランダで待って貰っているわ。
ちょっと目立つので、
あまり人目につかないようにしてるのよ。

私もついて行っていい?
とアイスが言った。

もちろんどうぞ。
あなたなら驚きそうもないから。


a3

一行が洗濯物干し場のベランダに行くと、
ダックが座っていた。

お久しぶりです。その節は
お世話になりました。
あ、もう一人の方は?

フレイムね。声をかけたから
すぐ来ると思うわ。
とルビーが言った。


a4

サラがバッグのチャックを開くと、
中からピピが現れた。

こんにちわー。あの時はどーも。
と言っている。

さすがにピピの姿は、
広場の観光客も驚くと思うので、
バッグの中に入っていて貰ったのよ。
とサラが言っている。


a5

元気そうでよかったわ。
あなたたちをジャングルの洞窟で見つけたのは確かだけど、
翌朝、あなたが九官鳥に攫われて、
その後を円盤で追いかけて鳥の巣から救出したのは、
リザードでしょう。
私たちはあなたたちを見つけて一晩一緒に過ごしただけ。

その話ね。私の体験とも辻褄が合うのよ。
とアイスが言った。
私はジャングルの山の上で枯れかけた大きな樹木を見つけて、
魔法で元の姿に戻したの。
そこに大きな九官鳥の巣があったらしくて。

そうですそうです。
私を攫ったのはその九官鳥で、
山の上の大きな木の巣の中に囚われていたんです。
とピピが言った。

それは奇遇でしたね。
ともあれ、あなたたちが見つけてくれなければ、
私たちは暗い洞窟の中で
ジャングルの獣たちの餌食になっていたでしょう。
やはり命の恩人に変わりはないのですよ。
とダックが言った。

ものは考えようねー。


a6

やがてフレイムがやってきた。
懐かしいわね。
ピピ。あなた洞窟の前で焚き火した時、
しきりにチョコを食べたがっていたでしょう。
これはお手製のチョコパフよ。


a7

なななんと。
フレイムさん、僕の言葉覚えていて
くれたんですか。

ピピは感激している。


a8

ちょっと失礼。
と言って立ち上がると、
サラはドルフィンの
二階の部屋に通じるドアをノックした。


a9

あらサラじゃない?
どうしたの。
ニッキー、悪いけど、
このバッグの中の私の服預かってくれない?
今、バッグだけ必要なの。
いいわよ。


a91

ピピさん、ダックさん、
このバッグ、差し上げるので、
町を見物するなら人目につくから、
ピピさんはバッグの中に入って、
ダックさんに運んでもらってね。

ああ、お気遣いありがとう。

帰り道は私がエスコートするわ。
本部に呼び出されて行けなかったけど、
あのホテルに泊まってみたかったし。
とアイスが言った。

また留守するつもりね。
とルビーが言った。


a92

サラは部屋に戻ってきた。

おかえりー。
2泊三日のアフリカ旅行からご帰還ね。
あれ旅行バッグどうしたの?
と言われている。



解説)
続きます。
Posted at 20:27 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 27, 2025

夢と翌朝

a1

その夜、サラは移動と食べ過ぎの疲れもあって、
ぐっすり眠った。


a2

ここは海底のようだ。
カニに似た生き物がいる。


a3

これは合成に失敗したAI画像のようだが、
巨大なカニのようにも見える。


a4

その時背後からふわっと。


a5

サラは組み敷かれてしまった。
うう。


a6

息が苦しくなって目が覚めた。
ベッドから起きて外を見ると、
夜が明け始めていた。
ハヨーハヨーという鳥の声がする。


a7

シャワーを浴びて、
着替えてロビーに行くと、
カコとルースの姿が見えた。

おはよ。早起きなのね。


a8

ホテルにも一泊したし、
ルースの調査も私の目的も果たせたから、
宇宙ステーションに戻るわ。
とカコが言った。

月の地下都市で、
レプテュリアンたちの合同会議がもうすぐ開かれるの。
リザードたちの、このホテルを、
特例で宇宙連合からの観光客向けに使用させて欲しい、
という議案も審議されるはず。
もっともそれは彼らレプテュリアンたちの内部規約の話で、
許可されなくても、私たち異星からの
親善大使には適応外なんだけどね。
でもリザードたちのために証言してあげてもいいと思っている。
あなたともお友達になれたし、
あのお店の肉まん美味しかったから、また遊びにくるわ。

僕も犬猫猿鳥同盟に加入したので、
またお茶を飲みにきますよ。
とルースが言った。


a9

サラも、恩人のルビーとフレイムに会いたいという、
ピピとダックを案内がてら町に戻ることにした。

別れ際にサラは、カコに
深海で奇妙なカニに襲われる夢を見たことを話している。

それは、きっとあの卵を食べ過ぎたせいよ。
私もたまに見るわ。
とカコが言った。



解説)
続きます。
Posted at 20:25 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 26, 2025

ホテルに帰って

a1

サラたちはホテルに戻ってきた。

シーザーが声をかけている。
サラさん、お散歩からお戻りですか。
あ、あそこにいるのは。

やっほー。洞窟ではお世話になったねー。
とピピとダックが言っている。


a2

いらっしゃいませ。
予約してないんだけど、
私の友人二人なの。お部屋空いてるでしょ。
空いておりますとも、
リンリンがご案内します。

あ、部屋に行く前に食事いただけないかしら。
チョコパフが食べたいんですけど。
わかりました。
リンリンがご案内いたします。


a3

ピピとダックは、
さっそく注文したチョコパフを食べている。

君はチョコレートが好きだねえ。
この星のチョコは特に美味しいんだ。
最初に一人で食べに来たのはもう19年前だよ。
そんなになるの?
うん。盗んじゃったから、
人に捕まりそうになったけど。


a4

リンリンがお代わりを運んできた。

ねえ、君は去年、洞窟に落ちた僕たちを
助けてくれたリンリンだよね。
はい。そうです、よく覚えてますよ。
大きなゴリラのシーザーにはホテルの前であったよ。
他の二人の人、ルビーとフレイムは元気なの。
会っていませんが元気だと思いますよ。
せっかく来たから会ってお礼が言いたいなあ。
ここからは遠い町に住んでいますが、鏡の扉を使えばすぐ行けますよ。
鏡の扉ってレプテュリアンたちの使う転送装置みたいなもの?
似たようなものだと思いますよ。


a5

サラとカコがホテルのロビーに行くと、
ルースとドビーが談笑していた。
どうやらルースはホテルのスタッフたちと
親しくなったようだ。


a6

カコ。ピピやダックを連れてきたの?
連れてきたというより、
ピピにあなたがくれたチョコパフをあげたら、
どうしてもホテルに来たいっていうから案内したの。
ピピはチョコに目がないからなー。

あの、アヒルみたいな顔の人、
ダックっていうんですか。
あの人も犬猫猿鳥同盟に入ってくれないかなあ。
とドビーが言った。

どうかしらね。
何も変わったことはなかった?
ハリーさんたちは?

ハリーご夫妻ならまだお部屋にいらっしゃいますよ。
とドビーが言った。


a7

サラとカコはハリーたちの部屋を訪ねた。

えー、町に行ってお姉さんに会って、
それから戻ってきて、
あの転送装置を使って宇宙にも行って来たの?
すごい行動力ね。
あ、ハリーならベランダにいるわ。
とカーミラが言っている。


a8

サラはハリーにも、カコが姉に会えたことや、
転送装置を使って行った宇宙ステーションの
酒場でレプテュリアンたちに会ったことなどを、
大雑把に報告している。


a9

レプテュリアンたちの他にも、
姿形の違う色々な星出身の人がいて、
みんな宇宙連合っていう組織に加入していて、
この星にも観光で来てるっていうのは驚きだったわ。
リザードやシベールは
ここを観光に来る宇宙人向けのホテルにしたいっていう
考えがあるみたいだけど。

あの二人はレプテュリアンの中でも特別なのよ。
二人とも何千年も生きていて、
かって人類の魔族と交流があった時代のことを覚えている。
その時代に使われていた古い転送装置のことを、
私に教えてくれたのも、その時代の記憶があったからよ。
一般のレプテュリアンたちはもう
そんな時代があったことも知らない。
あなたたちもそうでしょう。

カコさん、あなたはご存知なのかな。

いいえ、私は宇宙連合の親善大使で彼らの担当になってから、
彼らの母星にある古い資料を調べてわずかなことを知っただけ。
彼らの母星はずっと遠くにあるの。
私は最初はその星に赴任していたんだけど、
昔の彼らの宇宙進出時代の名残のような星が、
今でも銀河系の辺境にあるって聞いたの。
でもその星は特別な星で、なぜか管理局の本部が置かれている。
だったら姉がその星にいるはずだって思って
やって来たのよ。

私たち魔族にとっても、
その昔、魔族だけが住む華やかな都があったという話は、
不確かな伝承でしかありませんでした。
去年頭蓋骨からフミコという女性が蘇生するまでは。
この前彼女に案内されて、古い都の遺跡を訪ねたのですよ。

どんな世界にもロマンがあるのね。



解説)
続きます。

ピピが最初に登場するエピソードは、
2009年8月17日「不思議な体験」
に描かれています。

ルビーとフレイムとシーザーとリンリンが
ジャングルの中でリザードと出会い、
ピピとダックを探して欲しいと頼まれる話は、
2024年9月10日「休暇旅行へ そのろく」から、
9月14日「シーザーの家で」まで続いています。
Posted at 21:03 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 25, 2025

バー・エデン そのさん

a1

リザードも席について話している。

なるほど、お姉さんにも再会できて、
あの広場の店の肉まんも食べられましたか。
観光を楽しまれているようで結構なことだ。
ところで、あのホテル、
できれば公式に観光用に利用できればと
思っているんですが、どうでしょうか。

私まだ泊まる前に帰ってきた状態だからね。
これから戻って1泊してから感想を教えるわ。
でも印象は良かったわよ。

やはりね。楽しい感想をお待ちしてます。

リザードさん、ご自身でお泊まりになってみればいいのに。
とサラが言った。



a2

ああサラさん。
そこがちょっと微妙なところなのです。
私たちレプテュリアンは、自ら人間や魔族との接触を禁じています。
ところが一方で宇宙連合に加入して以来、
いくつかの友好惑星文明から、
あの星を観光したいという要望があるんです。
大抵円盤に同乗してもらって上空から私たちが案内するんですが、
中には地上に降りたいというケースもある。
それで安全な場所にホテルがあれば好都合なわけです。
あのホテルの立地はアフリカのジャングルの中で最適。
しかも至近に私たちが大昔に使っていた転送装置もある。
その上、ホテルは人間や魔族ではなく、精霊の化身や
魔法生物たちが運営しているから、無用なトラブルも避けられる。
ただし。
ホテルには当然、人間や魔族も泊まりに来るでしょうから、
もし私が泊まりに行けば、そこで接触が生じる。
今の状態では、それが規約違反となるわけです。

すごく長い説明だったけど、ご事情はわかったわ。
とサラが言った。

もし、ルースやカコがホテルに泊まって
快適に過ごされたという前例があれば、
全体会議で外惑星からの観光客用にホテルの使用を
例外的に認めるという決定が下されるための
有力な理由づけになるわけです。
そうしたら観光客をガードするという名目で、
晴れて私も泊まれるようになるでしょう。

結局、鶏を調査したいというルースやそれに付き添った私は、
あなたの深謀遠慮の構想に利用されたわけね。
あ、全然非難してるわけじゃないのよ。
すごくいい構想だと思うし、
あなたの立場なら私でも同じことを考えたかもしれない。
とカコが言った。


a3

そこにシベールがやってきた。

おいおい。帰ってこないと思ったら、
こんな店の奥で油を売っていたのか。
おや、カコと、たしかサラさんだったね。


a4

四人は隣のテーブル席に移動した。

ふーん。サラさんたちは
あの町からアフリカまで固定式の魔法の扉で
移動したんだって。
あの星の科学文明はまだまだ未熟だけど、
魔族の連中のやることはやはり別みたいだな。
もっともフミコだけが特別なのかもしれないが。
いや、ヴィヴィアンという
蘇生の魔術を使える悪魔もいたな。

シベールさん、お言葉ですど、
その固定式の魔法の扉を作ったのは
フミコでもヴィヴィアンでもなくて、
アイスっていう普通の人間の女性よ。
アイスはフミコから呪力を授かったの。
とサラは言った。

アイスか。彼女がそんなに変わったか。
蘇生してフミコの呪力を授ける力が
パワーアップしたんだ。
普通の人間が呪力を持つようになると、
これはあの惑星の文明全体が
やがて大化けするかもしれないな。
とリザードが言った。

姉が言ってた通り、
面白そうなことが起こってるのね。
とカコが言った。


a5

そこにダックがやってきた。

こんにちわ。みなさん。
立ち聞きする気はなかったんですが、
僕の耳は結構なんでも聞けちゃうんで。


a6

実はさっきピピが、チョコパフを
カコさんからいただいたんですが、
そのあとで、あのチョコパフは、
ホテルで朝食にもらったって言ってましたよね。
そのことをピピに話したら、
絶対そのホテルに泊まりに行きたいって言い出して。
良かったら連れて行ってもらえませんか。


a7

ピピ。
君はあの星で九官鳥に攫われて
危うく光もののコレクションに
されるところだったんだぞ。

ホテルは安全なんでしょう。
一度襲われた僕が泊まれば、
ホテルが安全だっていう
いい証明になるよ。
とピピが言った。

話を聞いていたのか。

ピピはチョコパフが食べたいだけなんでしょうけど、
いいんじゃない。私たちと一緒に行きましょう。
ダックさんもいらっしゃる?

お供しましょう。
ホテルがすでに複数の友好惑星文明の
観光に使われているという
既成事実があれば全体会議で有利ですよ。

話を聞いていたのか。


a8

かくて4人はバー・エデンを後にして、
転送装置に向かった。


a9

4人は地球に移動してきた。



解説)
続きます。
Posted at 20:24 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 24, 2025

バー・エデン そのに

a1

そこに
先ほど森の見えるカウンター席に座っていた
男性がやってきた。

やあミラ、髪型変えたのかい。

え、それって人違いよ。
私はミラの妹のカコ。
姉とは双子の姉妹なの。


a2

ななんと、それは失礼しました。
僕は管理局の時間管理部のウェルズと言います。
ミラとは長年の付き合いで、
情報管理部の彼女がここにくるなんて、
珍しいなあと思い、
つい気安く声をかけてしまったんです。
それにしてもよく似てるなあ。


a3

ウェルズはカコに勧められて席についた。

姉とは今日会ってきたばかりなの。
そこのサラさんに案内してもらって。

そうですか。
あの惑星にはレプテュリアンたちの円盤で?

いえ。彼らの古い転送装置を使ってね。

なるほど。あれを使ったんですか。
でもミラたちが住んでいるのは
確か管理局の本部のある領域の至近の町。
その近くに転送装置が残っていましたっけ。

そうじゃなくて。
とサラが口を挟んだ。
私たちが使った装置があるのはアフリカ。
そこから町までは魔法の扉で移動したのよ。

なるほど。そういうわけでしたか。
実はあの町では、以前遭難したロボットたちが、
帰還用に作った転送装置が、人間に贈られたことがあって、
その転送装置が盗まれるという事件があったんですよ。
その時、盗まれた転送装置はレプリカにすり替えて
事なきを得たんですが、それでつい
装置のことが気になったんです。

しかしあの星の魔族が作るという魔法の扉が
普通に移動手段として使われてるとなると、
結構厄介だなあ。


a4

あら、管理局の時間管理部って
普通の転送とは関係ないんじゃないの。
あなた方の専門はタイムパトロールでしょう。

いやいや、関係はあるんですよ。
あれが逃走に使われるとまず追跡が困難なんです。
それに魔法の扉がもし時間の扉のようなものに進化したら
この宇宙の時間の秩序は全面的に乱れてしまう。
今でもタイムマシンを使った犯罪については、
半ば野放し状態なのが実情ですが。

管理局も大変そうね。そういえば、最近
あの星では魔術師が増えて、魔法も派手になったって
姉が言ってわ。


a5

私には魔法のことは全然分からないけど、
確かにフミコやアイスやヴィヴィアンを見てると、
なんでもできちゃう気がするわね。
とサラが言った。

あ、サラ、それみんな食べちゃったの。
ええ、癖になるお味ね。


a6

じゃあ、僕はそろそろ仕事に戻ります。
と言って、ウェルズが席を立った後、
ウェイターがおかわりを持ってきた。

ねえ、ところでカコ、
あなたは、ここの常連みたいだし、
レプテュリアンとも親しいんでしょ。
どこか遠くの星から、はるばる地球に、
観光に来ただけとは思えないんだけど。


a7

鋭い質問ね。
でも観光に来たのも、ルースの調査に
付き合ってきたのもみんな本当のことよ。
ただ話していなかったこともある。

あなたがペンギン前で席を外していた時に、
姉たちには話したんだけど、
私は管理局からのスカウトを断った後、
宇宙連合にスカウトされて就職したの。
というか、宇宙連合に加入している星からは、
親善大使のような形で何人か選抜されるわけ。
微妙に政治的なことだけど、
連合にしてみれば人質みたいなものかもね。
その代わり連合の友好関係の象徴だから、
特権的な身分が保証される。
仕事は他の加盟文明との交流の促進。
基本、異星人と楽しく交流していればいいのよ。
私の担当がレプテュリアンたちの文明になってね。
それでここにいるっていうわけ。
ルースや、さっき会ったピピも私と同じ身分よ。
友好親善大使みたいなものだから、VIP待遇。


a8

なるほどねー。
そんな大使に選ばれたら楽しそうね。

あなたの星の文明は宇宙連合に加入してないし、
加入できる文明段階に達する前に
滅びるんじゃないかとも思われてる。
レプテュリアンたちが保護観察している状態なの。
あ、それはレプテュリアンたちの言い分だけどね。

そんなこと言ってるの?
聞いたことなかったわ。

レプテュリアンたちが連合に加入する時、
あなたたちの星の扱いがネックの一つだったのよ。
彼らは今でも月の裏側や南極に地下都市を作っている。
それが異なる惑星文明への植民計画や、
侵略行為だと見做されるかどうかで、
かなり激しい議論があったんだけど、
人間や魔族と直接接触しないという内部規約を作り上げて、
なんとか加入を認められた。

ふーん。
複雑な事情なのね。


a9

そこにリザードがやってきた。

カコ、もう帰ってきたのかい。
ホテルの泊まり心地はどうだった?
あ、君はサラだったね。

あらリザード。
噂をすればなんとやら、
って、ことわざがあったわね。
噂をすればトカゲだっけ。

それは違うだろう。



解説)
続きます。

ウェルズの話していた
転送装置盗難事件の話は、
2023年10月24日「盗まれた転送装置」
から始まっています。
2023年10月27日「盗まれた転送装置 そのよん」
で盗難事件は決着しますが、
犯人であるブラウンが仮想世界に逃げて、
追って行ったウェルズと対面する
2023年11月17日「ブラウンの回想 そのさん」
までで事件が最終決着しています。
仮想現実体験装置の世界の別の話や、
ブラウン(ウェルズの過去の分身)が
登場するのでややこしいのはいつもの通り。
Posted at 20:27 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 23, 2025

バー・エデン

a1

奥のいつもの席空いてる?
空いてますよ。
どうぞごゆっくり。


a2

店内にはレプテュリアンたちがいる。

あれはリザードとシベールね。
知ってるの?
このお店の常連なの。


a3

あれは。
店内であなたたちの星の映画を見てるのよ。
映画のコスプレをしてるマニアたちね。


a4

さらに店の奥に進むと、
カコは、鶏頭の人に声をかけられた。

あ、カコさん、
おや。ルースは一緒じゃないんですか?


a5

ルースはまだ惑星にいるわ。
私だけちょっと戻ってきたの。

それで鶏の調査はどうでした?
残念だけど、関係なさそうよ。
そうでしたか。

あ、ピピさん。
いいものあげる。
そういうとカコはテーブルの皿を手に取ると、
コートのポケットから取り出した
チョコパフを乗せて差し出した。

これホテルでもらったの。
あなたチョコが大好物でしょ。

ピピは喜んでいる。


a6

二人は店の奥のテーブル席についた。

今のチョコパフは?
あなたがホテルでコートを置きに
部屋に戻って行ったとき、
ルースからわけてもらったの。
ホテルで朝食に出してくれたんだって。
そうだったの。

ねえ、この席から外が見えるけど、
あれ、森でしょう。とてもここが
宇宙ステーションの中とは思えないわ。


a7

そこが良くて、
いつもこの席に座るのよ。
あれはホログラム。
宇宙空間で、
星ばかり見てるの飽きるでしょう。
あそこの席の人みたいに、
ひととき故郷の地上の風景を偲んだり。
まあ、楽しみ方はそれぞれだけどね。


a8

ウェイターのレプテュリアンが
やってきた。

カコさん、
いつもの、おもちしました。
ありがと。


a9

これは何?
私の故郷の星の深海で採れる
甲殻類の卵よ。

サラは一粒食べて
沈黙している。



解説)
続きます。
Posted at 20:23 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 22, 2025

宇宙ステーションへ

a1

あそこって、
もしかして転送装置で行くの?
そうなの。
ちょっとした酒場なんだけど、
宇宙ステーションの中にあるのよ。


a2

私と同じように
この上に乗ってね。
と言い終わると、カコの姿は消えていった。


a3

サラは言われた通り、
発光しているプレートの上に乗ってみた。


a4

ふっと一瞬意識が途切れ、
気がつくとそこは。


a5

無事に転送できたようね。
まっすぐ歩いてこっちに来て。
とカコが呼んでいる。


a6

ここはステーションの下層の隅っこの方だから
ちょっと歩くわよ。とカコが言っている。


a7

随分大きな宇宙ステーションなのね。
元はレプテュリアンの母船だったんだけど、
今では宇宙連合が改造して使っているからね。
彼らの古い転送装置があるのは昔の名残。
宇宙連合って?
あなたたちの星だと国連とかそういう感じかしら。
銀河系宇宙の様々な惑星文明の連合体。
あ、姉の勤めている管理局とは全く別組織よ。
あれはあれで結構厄介なの。


a8

この向こうはどうなってるのかしら。
そこのボタンに触ってみて。


a9

サラがボタンに触れると
白っぱく発光していた窓の
向こうの視界が開けた。

なんか人がテレビ見てるみたい。
そこは制御室のひとつね。
会話中なのよ。


a91

あの突き当たりのドアの向こうが
宇宙酒場。
通称エデンって呼ばれてる。


a92

カコがドアの前に立つと
センサーが稼働して、
音もなくドアが開いた。


a93

やあカコさん
いらっしゃい。
という声がした。



解説)
続きます。
Posted at 20:24 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 21, 2025

ホテルへの帰路

a1

サラは自分の部屋からカコたちのいる
ペンギン前に戻った。


a2

おかげで姉と久しぶりにゆっくり話ができたわ。
これからどうしましょう?
来る時に通りがかった広場を見物してみたいな。


a3

二人は広場に戻った。


a4

カコは大道芸人たちの歌と演奏を聴いている。
カコさんたちの住む星にも音楽はあるんですか。
あるわよ。音楽や詩は多くの文明で共通しているの。


a5

二人はマンゴー亭で休憩することにした。


a6

このお店の食べ物のことは、
リザードからも聞いていたわ。
確かに癖になりそうな味ね。


a7

そうでしょ。

うちの肉まん目当てに
広場に通ってくる観光客もいるんですよ。
とレイが言っている。


a8

やがて二人はアフリカに戻ってきた。

これお土産です。
と言っている。


a9

サラには、すごくお世話になっちゃったわね。
お礼に何かしたいんだけど。
お礼なんて。

私の気がすまないの。
そうだ。あそこで一杯飲みましょう。
あそこって?



解説)
続きます。
Posted at 20:21 in n/a | WriteBacks (0) | Edit
February 2025
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
           
 
Search

Categories
Archives
Syndicate this site (XML)

Powered by
blosxom 2.0
and
modified by
blosxom starter kit

新規投稿