Apr 18, 2025
新たな計画

これ、恐竜の子供って確か?
いつか図鑑で見たトリケラトプスの
幼体によく似てるのよ。形だけだけど。
それって成長すると、
どのくらいの大きさになるの?
確か全長9メートル、体重12トンくらいだって。
名前つけてないんでしょ。
トリコにしたら?
まだ飼うと決めたわけじゃないのよ。
勝手について来たんだから。
植物食だから放し飼いにしてればいいのよ。
あちらにテーブルが用意できました。
とヤミーが言った。

ラルゴはミミコと再会していた。
ラルゴさん。あなたが第一発見者だったのね。
ミミコがヤビーさんに頼んで
探してもらっていた人はあなただったって、
言っているわ。
戻って来てくれて、とても嬉しいって。
僕の確信は外れちゃったみたいですね。
てっきりフミコさんのことだと思ったんですが。
とヤビーが言った。
でも変ですね。
私はご覧の通り通り人間ではありません。
とラルゴが言った。
ミミコは、心が人間だって言ってるわ。

探索の結果の報告の会合が開かれている。
アイスは、ラルゴの住む家を見つけて、
ラルゴに事情を聞いたこと、
二人で戻ってくる途中で
シェルター型ロボットを見つけたことや、
ブラッキーを退治したことなどを話した。
ナディアは、北に向かって飛行している途中、
透明なバリアに阻まれ、
その先に進めなかったこと、
突然怪鳥に襲われて地上に落ちてしまったこと、
不思議な岩の門を見つけて、
その先の洞窟で、卵を狙うナーガラを退治したら、
卵からかえったトリコがついて来たことなどを話した。
いろいろ成果があったわね。
これからやってみたいことは、二つ。
とアイスが言った。
一つはなんと言っても北方の調査ね。
私は、以前迷いの森っていう所に探検に行って、
そこで、透明なバリアに対面したことがある。
バリアの向こうに世界があるのに入り込めないの。
でもナディアの潜った岩の門は、
その向こうに通じているんだと思うわ。
魔法が使えるようになって、
そういう異世界との間を繋ぐ、
扉のようなものがあるのはわかるのよ。
その場所に調査に行きましょう。
もう一つは?
それはシェルター型ロボットの回収ね。
これはラルゴさんと、
作業用ロボットの皆さんにお願いするわ。
動くかどうか試してみたいの。
もしロボットが使えるなら、何かの時に、
ミミコをシェルターに避難させることができる。
私はまず飛行装置の修理をしなくちゃ。
とナディアが言った。
シチューあんまり減ってないわね。
味付けの問題でしょうか。
などとサラとヤミーが話している。

会合ののち、ロボットたちはさっそく、
シェルター型ロボットの回収に出かけて行った。
フミコにさっき聞いたんだけど、
ラルゴさんが、人間の心を持っているって、
ミミコが言ったんですってね。
とサラが言った。

あまり思い出したくないことだけど、
その意味はわかるわ。
とナディアが言った。
あのラルゴ4型は機械軍によって戦争末期に開発された。
純粋な戦闘用ロボットじゃなくて、
機械軍に捕虜となった優秀な人間の兵士の
脳を組み込んだサイボーグだって噂があったの。
その人の個人的な記憶を一切消し去って、
兵士の身体の運動能力だけを利用しているっていう。
そういうサイボーグ化は人類の側もやっていたけど、
改造前の人格も消しちゃうなんて彼ららしい発想だわ。

人間だった頃の人格の記憶は消し去られていたけど、
深層にある人間的な感情や心の動き方が、
ミミコの泣き声で蘇ったという訳ね。
それでラルゴは、生理的な感情にかられて、
ミミコを抱いて戦場を逃れて森に隠れ住んでいた。
感情を取り戻したせいで、
ロボットの仲間たちを裏切った罪悪感に
ずっと苦しめられていたなんて。

その時、ジャングルの中から
なんとツナとレイチェルが現れた。
サラの部屋の鏡の扉から来ちゃった。
ここは仮想現実世界とよく似たジャングルで、
ロボットたちが暮らして居るんでしょう。
サバイバルのプロとロボット学者のお出ましよ。
と言っている。

呼ばれてないけど、
しばらく戻れそうもないとなると、
仮想現実の世界が恋しくなっちゃってね。
中毒なのよ。
機材を持ってきたわ。
何かのお役に立つでしょう。
などと二人は押しかけた言い訳をしている。

そこにタイミングよく、
ロボットたちが戻ってきた。
シェルター型ロボットを運んできましたよ。
と言っている。
解説)
続きます。
Mar 18, 2025
フリーマーケット そのよん

探偵事務所には、
郊外でビストロを経営している
アルが訪ねてきていた。
お店を休みにして、
フリマを見に来たついでに寄ったんだ。

それで、このワイングラスを
買ったのね。
なかなか素敵じゃないの。

うん。だけど一脚しかなかったんだ。
自分用に使うことにしたよ。

ジェニーたちの部屋には
ナオミが戻ってきていた。
面白そうな古雑誌が沢山あったけど、
買うと置き場所に困るでしょ。
それで座り読みして、
結局肉まんだけ買ってきたの。
文学青年は?
出かけたわよ。
やっぱり。

サラたちの部屋でも
フリマのことが話題になっていた。
部屋に売れそうなものないのに
ジェットが出店しちゃって。
古本を売るって言ってたでしょ。
あれはドルフィンの倉庫の
書庫から借り出したのよ。
じゃあ売れたら丸儲けなのね。

そのころ広場で文学青年は、
「宮沢賢治全集 第三巻」を手に取っていた。
それ全集だけど一冊しかないんですよ。
いいんです。この巻には
「春と修羅」の第二集が収録されているんです。

アルのビストロが休みになったので、
店でアルバイトをしているキサラとシオンも
フリーマーケットに来ていた。
これリカちゃん人形ね。
どっちが買う?

カコは古着のジャンバーを買ったようだ。

観光客のロジャーは、
靴のサイズを確かめている。
ちょっと大きいかな。
大きくても大丈夫ですよ。
そういうものです。

子供たちは貰ったドラクエのフィギアを
ドルフィンの2階に行って預けている。
飾る場所がないので、
ここに置かせて。
いいわよ。結局マンスフィールドさんの
コレクションに戻るのね。

ルビーはジャンと話していた。
てっきりフィギアの出店すると思ってたのに。
ちょっと出遅れちゃってね。
っていうか、僕はフィギアは集めるのが趣味で、
売りたいものはあんまりないんだ。
わかる気もするけど。
解説)
続きます。
Jan 18, 2025
ホテルでの会合

サラたちがハリーたちの部屋に行くと、
フラハが何やら話していた。
サラがカコとルースを紹介し終わると、
フラハが再び口を開いた。

さて、いまの話の続きだが。
私がこの土地にやってきて
先住部族の長老から、やがてやってくる精霊の
出現を待つようにと言われて、
この土地を譲り受けたというところまで話したね。
空き地にあるあの岩はその頃からあったんだ。
変わった形をしたすごく目立つ岩だろう。
元々先住民の祭祀に使われていたらしいが、
そんな言い伝えだけが残っているような状態だった。
出現したというプレートは、ここに来る前に
シーザーと確認してきたが、確かに
私もみたことがないものだったね。

どうやらみなさん、
あの転送装置のことで、お騒がせしているようですね。
とルースが言った。
実は、あの岩にプレート部分を出現させたのは私たちです。
昨晩、この星に来るのに使ったんですよ。
あの岩全体が転送装置になっているんです。
装置があの場所に設置されたのははるか昔のこと。
この星の魔族の住む都が栄えて、
レプテュリアンと交流があった頃のことだと聞いています。
その頃には他の天体からの訪問者も多く、
ああした転送装置があちこちに作られていたのですよ。
そのほとんどは破棄されたり、その存在さえ
忘れ去られてしまったようですが。

ふむ。今のご説明でプレートが出現した理由がわかりました。
ところで転送装置とおっしゃいましたが、
あなた方は、その装置でどこか別の場所から移動してこられた。
それは、われわれ魔族が魔法で出現させることのできる
鏡の扉によく似ているようですな。

確かに似てるわね。
あの転送装置は、レプテュリアンたちが作ったもので、
その頃彼らと交流があったあなたたち魔族の使っていた魔法から
転送の原理のヒントを得た可能性はあるわ。
ただあれはレプテュリアンの転送装置としては大昔のもので、
あの巨大な岩全体の内部が精密機械になっているの。
今ではもっとコンパクトなものが使われている。
呪力だけで生み出せる鏡の扉に
近づいていると言うことですかな。
そんなふうにも言えるわね。
ただし、広大な宇宙には無数の異なる文明があって、
その中には生物進化の果てに生まれた
想像を絶するような高度な精神文明も含まれます。
精神ということでいえば、あなたたち魔族の持つ呪力もそう。
レプテュリアンたちの一部はまだその秘密を知りたがっている。
でもご自分たちの尺度だけで世界を押しはかるのは危険ですよ。
ご自身にとって危険というだけですが。
カコさん!
いま思い出したんだけど、
あなたって、顔立ちが管理局に勤める
ミラっていう人にそっくりね。
おっしゃってることも、壮大なようで、
さりげなくアドバイスするところは局長にも似てる。
とサラが言った。
あら。
ミラや管理局の局長を知ってるの?
ええ、特に局長とは仲良しよ。
去年は草冠をプレゼントしてもらったし。
ふーん。ミラは私の姉なの。
姉が管理局にスカウトされて随分になるけど、
どんな環境に派遣されてるのか
ずっと興味があってね。
ルースがこの星の鶏のことを調べたいっていうので、
便乗してきたのよ。

お二人とも宇宙から来られたんですね。
転送装置で来られたって驚きですけど、
転送装置のすぐ近くにこのホテルができたって、
ご存知だったんですか。
ええ。
一応この星にずっと住み込んでるのはレプテュリアンたちで、
私たちとは友好関係にあるの。過去の内紛の結果、
彼らはこの星の人間や魔族との直接的な接触を
自分たちには禁じているけど、それは建前ね。
ご存知だと思うけれど、彼らは透明なマントを着て、
あなたたちをよく観察してるし、接触している人もいる。
この星にルースの顔立ちに似た鳥がいるっていう情報も
そんなレプテュリアンから聞いたのよ。
ホテルができたことも
リザードっていうレプテュリアンから聞いたの。
とカコが言った。
リザードって、あの人だね。
と一同が言った。
みなさん、リザードも知ってるの?
知能の高い類人猿や魔法生物がやっているホテルだから、
歓迎して泊めてくれるだろうって言ってたわ。

なるほどねー。
リザードがずっとホテルのことを観察してたなら、
犬猫猿鳥同盟が招待券風割引券を送って、
ハリーさんたちや私がホテルに泊まりにくることも
知っていたのかもしれない。
そこにカコさんとルースさんが泊まりに来たら、
当然私たちは出会うことになる。。。
リザードはどこまで予想してたのかな?
サラ、考えすぎじゃない?
あなたがホテルに泊まりに来たのはたまたまでしょ。
私たちもそうよ。誘ってもヴィヴィアンは来なかったし。
とカーミラが言った。

やがて会合が終わった。
ルースはフンボルトに勧誘されている。
犬猫猿鳥同盟に入りませんか。
宿泊料金無料の特典が付きますよ。
それって何する団体?
時々集まってお茶を飲む会です。
カコ、あなたはこれからどうするの?
よかったらミラのところに案内するわよ。
そうねえ。
姉に内緒で来て、
環境の様子だけ見て帰るつもりだったので、
姉がどこに住んでるかも調べていなかった。
サラが、姉を知ってるとなると、
会ってみてもいいかな。

サラは、とりあえずコートやマフラーを羽織って、
カコをミラのもとに案内することにした。
二人は鏡の扉のあるフラハの家に
やってきた。
やあ、先ほどはどうも。
あの鶏みたいな顔の人は一緒じゃないのかい?
ルースは、自分によく似た魔法生物たちに
興味を持ったみたいで、ホテルに残るって。
人間たちの町に行くことも気にしてたみたい。
あの町の広場界隈なら、
一年中なんでもありのコスプレコンテストやってるから、
変わった顔してても誰も気にしないのに。
ふーん。楽しそうなところね。
じゃ行きますか。
解説)
続きます。