Apr 12, 2025
ヤビーたちの世界 そのに

やっぱりアフリカのジャングルに似てるわ。
せせらぎが聞こえる。
近くに小川があるのね。
はい。

サラは小川を見つけた。

その時、岩陰から蛇が。

みじかで銃声がした。
サラの背後にナディアが立っている。
サラ。これはナーガラって言って、
食べると美味しいけど、危険な毒蛇なのよ。
人間を狙うから気をつけて。
ありがとう。
やっぱりここはアフリカとは違うわね。

フミコとアイスが話している。
さっきの銃声は?
ナディアが毒蛇を退治したらしいわ。
あの音で、ミミコが目覚めて話しかけてきたの。
このペンダント、私に持っていて欲しいって。
やはり同じものだったのね。

どうしてこの廃屋にいたのか聞いてみた?
赤ちゃんだからよくわからないって。

ナディアとヤビーが話していた。
ナディアさん、すごいですね。
機械軍の兵器にも詳しかったみたいだし。
戦争経験者だったからね。
CGで生き残ったのは私だけみたい。
なんとCGだったんですか。
ところで、この辺りにナーガラはかなりいるの?
はい。僕たちロボットは襲わないんですが、
時々ミミコを狙ってくるんです。
危険地帯なのね。

私たちのバーボンハウスに行ければ、
安全なんだけど。
方角も距離もさっぱりわからないからね。

四人はこの先のことを相談している。
どうしたものかなあ。
ここは人間が住むには危険よ。
ナーガラが出没するみたい。
私が結界を張るわ。
とフミコが言った。
アフリカの遺跡の周辺のように、
森や生き物に守ってもらうのは無理でも、
建物への侵入は食い止めることはできる。
フミコはまさかここで暮らすつもりなの?
先のことはわからないけど、
ミミコをほっとくわけにいかないでしょう。
バーボンハウスに行ければ、
人もロボットも大勢いるしずっと安全よ。
私の記憶を辿って、鏡の扉を作っていけないかな。
とナディアが言った。
残念だけど、それはたぶん無理よ。
転送装置が計算中で停止してるんでしょう。
仮想現実世界はAIが作ってるものだから。
それに、この世界と似てはいるけど、
地続きなのかどうか、それもよくわからない。
ヤビーの記憶と私の記憶は重なるし、
ナーガラがいたりドラゴニアベリーもあるし、
同じ世界のように思えるんだけど。
とナディアが言った。
あなたの記憶もAIの生んだ仮想現実、
ヤビーもロボットなのよ。
そう言われると返す言葉もないわね。
ミミコを連れて帰ると言う選択肢は?
魔族のハリーたちなら喜んで受け入れてくれるわよ。
ロボットたちもシェリーの研究所で開発したことにすれば、
なんとか言い訳ができそうじゃない?
アフリカに行けば人目を気にする必要もなさそうだし。
とサラが言った。
それも一案ね。
問題は、地球を宇宙人たちが観察しているって言うこと。
異世界からロボットたちが来たことが知られると、
宇宙連合がどう考えるか。
彼らは機械文明が勝利した諸惑星連合と
対立してるって言う話だから。
侵略者だと見做されかねないって言うことか。
来るのは作業用ロボットだから考えすぎじゃない?
だといいけどね。レプティリアンもいるのよ。
ロボットたちにも意見を聞いてみないと。
ヤビーは心配そうに聞いている。
解説)
続きます。
Mar 12, 2025
アイスたちの会話の続き

マンゴー亭での、
アイスたちの会話は続いていた。
サニーの見かけは
ほぼ人間と変わらないけれど、
その体は再生されたものなのね。
私の行動を追跡していた
二体のロボットたちが、
事故前の私のデータを集めておいてくれたの。
体の内部や皮膚組織は強化されてるけど、
体のサイズはほぼ事故当時のものよ。

そこまでの医療機器は開発してませんが、
設備さえあれば可能なはずです。

人間のサイボーグ化は
今の人類にはまだまだ無理だって、
地球オタクの間では言われているけど、
あなたの知能ならできそうね。

そこにツナがやってきた。
ミュー、やっぱりここにいたのね。
広場に出かけたまま帰りが遅いので、
シェリー博士が心配してたわよ。
あ、アイスさんたちと、
つい話し込んじゃって。
こちらはツナ。
なんて紹介したらいいか、
仮想現実世界からのお客さんです。

どうぞよろしく。
とツナは言った。
私はミューが作った仮想現実体験装置が
生み出した未来世界の住人で、
言ってみればゲームの中のNPCみたいなものね。
でも、その装置が改良されて
過去にも転送可能な機能を持つようになり、
どういうわけか、あなたたちの現実世界に
こうして遊びに来てるっていうわけ。

ツナさん。
あなたたちの話は、未来世界に行った
レイチェルやドロレスから聞いているけど、
あなたとこうして話すのは初めてね。
未来世界で採れる果物を転送してきて、
こっちの世界で農家に卸してるって聞いたけど。
とアイスが言った。
ええ。いいアルバイトになるのよ。
今、サイボーグの話をしてたところなんだけど、
未来世界にサイボーグはいるの?
サイボーグ?
ええ、いるわよ。最終戦争の前に、
戦闘用に開発されたの。
私たちの未来世界は最終戦争後の世界で、
戦争の生き残りがわずかに残っている。
みんな親しい友達よ。
ちょっとその姿を
思い浮かべてみてくれないかしら。
いいわよ。

ツナがミトラのことを
心の中で思い浮かべてみると、
ツナの背後にミトラのイメージが
鮮やかに浮かび上がった。
ああ、噂に聞く魔族の魔法ね。
彼女はミトラ。女性兵士だったけど、
戦場で瀕死の重傷を負って、
戦闘用ロボットに改造されたの。
目覚めた時ショックだったって言ってたわ。

次にツナが舞子のことを
心の中で思い浮かべると、
背景に舞子のイメージが浮かび上がった。
彼女は恋町舞子。
戦時下で移動中に車両が地雷に触れて
瀕死の状態で運ばれ、脳だけが摘出されて、
初期型の作業用ロボットに移植されたの。
顔の部分はホログラムで再現されてるのよ。
私たちが彼女を見つけた時は、
脳だけがカプセルに入っていたの。

みんな私と似たような身の上なのね。
とサニーが言った。
それにしても、近未来に
この星の医療や科学技術がそこまで発展するの?
いや、それはあくまでもミューの作った
仮想現実世界だけで可能なことなのか。

なるほどねー。
ところで近未来に起きるという最終戦争に
宇宙人たちは関与してたのかしら。
それとも人類と機械の戦いを、
傍観してたわけなのかな?
とアイスが言った。
宇宙人たちのことは、
仮想現実体験装置のデータには
入っていなかったから。
でもさっき情報を入力してもらって
私に直結しているAIが知ってしまったから、
未来世界が変わってしまうかもしれないわね。
とミューが言った。
解説)
続きます。
Feb 12, 2025
地球に戻る

アイスとノヴァとカーミラは
転送装置を使って地球に戻ってきた。
メイズ艦長って、
いつもあの福助みたいな格好してるの?
ええ。彼女は天使族出身なので、
あれで背中の羽根を保護してるっていう噂です。

やっぱりこの空気がいい感じ。
不純な成分が混じっていますからね。
私は濾過装置を使っています。
などと話している。

一行がホテルに向かっていると、
木陰にダックの姿が見えた。

ダックさん、ジャングル観光楽しんでる?
ええ、ちょっとみんなで工作してたんです。
工作?面白そうね。
私も見にってもいいかしら?
どうぞどうぞ。
あ、私たちはホテルに戻るわ。
ハリーに顔見せてあげないと。
とカーミラが言った。

一行はその場で別れて、
ダックとアイスはジャングルに分け入った。

ダックはどんどん進んでいく。

この星のジャングルは
見るものみんな珍しくてシュールですねえ。
そうなの?
まあ私にとっても似たようなものだけど。

こんなところにも小川が流れてるのね。
すぐこの先ですよ。

川沿いに円形の浴槽のような
仕切りが作られていた。
シーザーとピピと黒猫のマリアの姿が見える。
これを作っていたんですよ。
いかにも自然な雰囲気でしょう。
これは何?
露天温泉ですよ。
やあアイス。
この長方形の黒っぽい石の形をしているのが、
変換装置で、渓流を濾過して温水にしているんだ。
とピピが言った。
浄水器を兼ねたボイラーみたいなものらしいです。
とシーザーが言った。
解説)
続きます。
Jan 12, 2025
滝へ行く

ダリオさんはどこにお住まいなの?
僕の家はここから、かなり離れた山の麓にあります。
徒歩だと半日くらいかかりますよ。
でも、アイスが家に鏡の扉を作ってくれたおかげで、
今では魔術劇場経由で簡単に行き来できるんです。
ふーん。アイスともお知り合いなのね。
みんなとどうやって知り合ったのかしら。
話せば長いんですがお話しましょう。
元々私は別世界に住む魔術師で、
魔法の扉を使ってこの世界に移り住んできたんですが、
人里離れたジャングルの奥地に家を建てて
一人で暮らしていたんです。
それが去年の夏の嵐の夜に、
マークと佳奈とジョーとエルザが、
私の家に避難してきたのが出会いのきっかけでした。
話を聞くと佳奈たちも魔法の扉を使って
マークの住む村に来たという。
この世界にも魔族がいるらしいことを知って、
興味を持った私がマークの住むこの村を訪ねて、
さらにあなたたちの暮らす町まで案内され、
アイスやモモコや魔子さんはじめ、
ハリー一家や魔族の方達を紹介されたというわけです。
もちろんサラさんのお宅にも伺って、
お世話になったのはご存知の通り。
なるほどね。

その時、店にマークがやってきた。
やあダリオ。そちらはもしかしてサラさん?
そうだよ。こちらはマーク。
二人は初対面だったの?
多分ね。さっきフラハの家に寄ったら、
サラっていう人がホテルに来てるって言ってたから。
とマークは言った。

マークさんって、この集落を開拓した方ね。
お噂はアイスや佳奈から沢山聞いてましたけど。
僕もお噂はかねがね。観光ですか。
ええ。
何もない村ですけど、
近場であまり危険じゃない場所なら、
滝が見どころかな。
これから行ってみますか。

3人は滝を目指すことにした。
僕は元々この村の住民じゃないし、
その滝に行くのは初めてだよ。
とダリオが言った。
これまで観光で来る人なんて
ほとんどいなかったからね。
これから行く滝はね、
前に佳奈たちも案内したんだ。

ここは渓流沿いのお宅なのね。
アーネストっていうお医者さんの
自宅兼診療所なんだよ。
この渓流に沿っていくんだ。

マークが先導していく。
滑りやすいから気をつけて。

なぜか初めて見る景色という気がしないわ。
使い回しじゃないの?
え。何か言った?

もうこの先だよ。
とマークが言っている。

サラたちが段差を登り切ると、
一筋の白い水流が音を立てて
滝壺に流れ落ちている様子が見えた。
解説)
続きます。