11 詩集の売上げ
先日ポエトリーグループの友人が、昨年出版した詩集について地元の書店で朗読とサイン会を行なったのだが、1日で24部売れたのだそうだ。地元の作家を支えたいという好意に助けられたにしても、詩集にしては喜ばしい数である。
2008年に詩の出版社Bloodaxe Books(ブラッドアックス・ブックス)のエディターが書いた記事によると、ほとんどの詩集の発行部数が1000部を上回ることはなく、印税は500ポンドに満たないそうだ。イギリスにおける詩集の売上げは書籍全体の売上げのわずか0.06%だというから、そういう数になるのだろう。また、「Writers'and Artists' Year Book」に掲載されていたエッセイによると、詩集の売上げ部数は300部以下というケースが大半を占めるという。
イギリスには日本のように詩集を謹呈する習慣はない。詩集は買うものであり、唯一の例外は、書評を書いてもらうことが目的で、新聞や雑誌に送付する場合だ。だからポエトリーグループの誰かが詩集を出すと、おめでとう!という雰囲気の中で仲間が購入する。その分日本と比べて販売部数が多くなりそうだが、劇的に増えるということもないだろう。詩の読者=自分で詩を書く読者ということも言われていて、これも日本とさほど変わらない気がする。朗読会も、50人以上の観客が来るのは限られた有名詩人だけで、普通はそれ以下の数である。
「詩はマイナーアートだよね…」と、ポエトリーグループの別の友人はつぶやいていた。つくづくそうだなと思う(「マイナーアートこそが、新しくておもしろいものが生まれてくるところよね」と付け加えていたけれど)。先述したアーツ・カウンシルを含む芸術団体からの助成金も、昔と比べると少なくなっていて、詩人を含む芸術家たちは不満を抱いている。不況続きもあって、詩の出版や文学フェスティバル、クリエイティブライティング、教育への援助はさらに減っていくかもしれない。イギリスも日本同様、詩集の出版にはあまり夢を抱けない国という気がする。その一方、外国人であるわたしの目から見れば、詩を書いていくには、日本よりも恵まれている数々の点があると思う。こちらの詩人が言うように、アーツ・カウンシルはもはや大きな財源を期待できる団体ではないかもしれない。しかし詩、しかも名前の確立した古典詩人だけではなく、現在詩を勉強している人たちや無名の現代詩人も視野に入れた詩という分野が、たとえ小額ではあっても助成金を出すに足りる芸術であると認められているということは、自分のやっていることは意義のあることだという心の支えになる。