Jun 30, 2023
レイチェルの体験 そのさん

でもこの「お弁当箱」って、
どうなってるのか全くわからない。
分解して内部構造を調べたいわ。
バーボンハウスに帰れば、
いくつも同じパッケージがあるから、
いつでもどうぞ。
でもみんな拾い集めてきたもので、
私には作れないの。
レイチェルさんが構造を調べて
作ってくれたら最高だね。

二人が胴体の前方の蓋を閉じると、
頭部のハッチのような部分が開き始めた。

ハッチが開くと、その内側の基盤に
接着されていた顔面があらわになった。
ツナ、おかげでまた生き延びたわ。
それと、レイチェルさん。
どうもありがとう。

私はミトラ。
かっては人間だったけど、
瀕死の状態で、
戦闘用ロボットに改造されたの。
最終戦争の起こる前の、
もう随分昔のことですけど。

じゃあこれで修理も終わったし、
バーボンハウスに帰りましょう。
とツナは言った。

このサイドカー、
ものがいっぱいで乗れないよ。
それに機関砲みたいな形のロボットもいる。
それは、コーダっていうの。
コーダは、銃器の砲塔をさげて
軽く会釈をすると、
オートバイの後ろ座席が空いてるよ。
と言った。

とばすから、
しっかり捕まってね。
私は、もう少し
屑拾いしてから帰ります。
とミトラは言った。
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ミトラは直立して二人を見送っている。
あの腰の鉄球なんに使うの?
もちろん振り回して、
パーツの硬い装甲を叩き壊すためよ。
もっぱらお弁当箱の回収用ね。

二人を乗せたオートバイは、
瓦礫の広野を疾走して、
バーボンハウスに向かって行ったのだった。
解説)
レイチェルたちの
仮想世界の冒険は
日をまたいで続くようです。
Jun 29, 2023
レイチェルの体験 そのに
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バイクはどんどん近づいてきた。
運転しているのは若い女性のようだ。
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バイクは真近に来て停車し、
女性はレイチェルに声をかけた。
こんにちわ。
あなたがドロレスさんね。

いえ、私はレイチェル。
ドロレスは私の友人よ。
二人でこの世界に来たんだけど。
あなたはどなた?
私は、ツナ。
夏目ツナと言います。
二人で来たなんて驚き。
歓迎しますよ。
それはどうも。
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そのスーツ姿似合っていますね。
あなたは戦士タイプのアンドロイドかしら。
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え、私は人間よ。
こう見えてもロボット学者なの。
これはアメコミのコスプレで。
その時、レイチェルの背後で、
ブーンという音が高く聞こえた。
物体が完全に始動したようだ。
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そうそう、私ね。
ここにミトラの修理に来たの。
さあ、立ち上がって。
とツナが言った。
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物体は立ち上がると、
普通の人間の背丈より
ひとまわり大きな姿を現した。
全身は甲冑のような
金属製のパーツで覆われている。
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ツナが脇腹のスイッチを押すと
胴体の前面を覆うパーツが開いて、
内部に収納されている機械部分が見えた。
ツナは手早く上部から
パックになったケースを引き出すと、
交換作業を始めた。
これは私たちが「お弁当箱」と呼んでいる、
ミトラのエネルギーの供給装置なの。

横で内部の機械類をずっと観察していた
レイチェルは、
そこの右下の配線部分、
一箇所ポイントがズレてるよ。
それだと右足の駆動に無理が出るはず。
と言った。
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え、レイチェルさん、
すごいね。
前からミトラに言われてたんだ。
よく寝起きに足が攣ることがあるって。
原因はこれだったんだね。
戦闘型でも優秀なアンドロイドだね。
だから、私はアンドロイドじゃなくて、
ロボット学者だって言ったでしょう。
これでもロボット研究所に
長年勤務してたんだから。
解説)
続きは次回に。
Jun 28, 2023
レイチェルの体験
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ここはどこだろう。
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モノトーンの世界のようだ。
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色彩が蘇り、
視界が次第に鮮明になってきた。
岩壁の前には瓦礫が散乱している。
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しばらく歩いていくと、
地面に刺さった支柱の上に
奇妙なオブジェがあるのが見えた。
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頭部にツノのある両腕を腰にあてた
人形の直立像のようにも見える。
体には様々な部品が埋め込まれていて、
精密に作られているようだが、
いろんなスクラップを寄せ集めただけの
オブジェのようにも思えた。
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この仮想世界って、
どこまであらかじめ設計されているのかしら。
体験者の想念も反映されたりするのかしら。
などと考えながら、
レイチェルはさらに歩いて行った。
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やがてレイチェルは、
岩壁にもたれて足を伸ばしている
いかにもロボットらしい外見の物体を見つけた。
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レイチェルが近づくと、
その物体はブーンという
低い振動音を発し始めた。
休眠状態から目覚めかけているようだ。
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その時別の振動音が
レイチェルの耳に届いてきた。
音の方を振り向くと、
瓦礫に埋もれた広野の中を
一台のサイドカー付きのバイクが
こちらに向かってくるのが見えた。
解説)
続きは次回に。
Jun 27, 2023
ドロレスの体験

じゃあいってらっしゃい。
と言って、シェリー博士は装置のスイッチを入れた。
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前とちょっと違う感じがする。
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しかし到着して目にしたのは、
前と同じスクラップの廃棄場のような
風景だった。
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見渡す限りゴミの山。
まるで「日本アパッチ族」の世界ね。
あの蛇まだいるのかしら。
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ドロレスが少し歩いていくと、
ピポピポという警報を鳴らしながら、
ソーダに乗ったバンクがやってきた。
こんにちはドロレスさん。
井戸から落ちて大丈夫でしたか。
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ええ見ての通りよ。ああ、会えてよかった。
あ、あなたたち、私が再度現れても
驚いていないようね。
底なし井戸の暗闇は地の果ての時空の歪みと
同じだとツナが言っていました。
あなたは多分過去から来た人で、
また現れるだろうって。
ソーダが「そうだ、そーだ」と言った。
ツナって前にも言ってた人ね。
ぜひお会いしてみたいわ。
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ツナは今ミトラの修理に出かけていますが、
夕方には戻るはずです。
バーボンハウスに帰って待ちましょう。
「そーだそーだ」。
この辺りのナーガラは、
ヒゾッコが駆除してくれましたので、
道中は凸凹ですが安全です。
ドロレスは、また視界がモノトーンになって、
世界の動きが止まったような気がしたが、
言葉はよく聞き取れたので、
バンクたちの提案にに従うことした。

ドロレスが、バンクたちに案内されて歩いていくと、
途中でリヤカーに大きなスクラップを載せて、
曳いていくドーダに出会った。
ああしてスクラップから、
まだ使えそうな部品や私たちのエネルギー源となる、
燃料を回収しているのです。
ドーダは一行に気がつくと、
「やあドロレス。これはどーだ。大物だろう」
と嬉しそうに言った。

やがて一行は建物のある場所に到着した。
これがバーボンハウスなのね。
そうです。この井戸は飲料水用ですので、
飛び込めませんよ。
とバンクが言った。
飛び込んじゃだめだよ。
とソーダとドーダが言った。
シャレを言わない時もあるのね。
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ドロレスはバラックのような建物を眺めた。
ドアの横に立っている柱の上に
機械が設置されていて、
その上の照明が点灯してこちらを向いている。
監視カメラ付きなのかしら。
とドロレスは思った。
解説)
仮想世界の話がまた始まりました。
Jun 26, 2023
二度目の実験へ

探偵事務所では、
みんなでレイチェルの買ってきた
肉まんを食べていた。
私、立ち会えなかったけど、
実験は成功したの?

うん。大体のところは。
視界が静止状態になったり、
時々、モノクロになったりしたみたいだけど。
それって大問題じゃない?
信号機の色が見えなかったら、
交通事故に遭っちゃうよ。
最初の試みだからね。
それと、実は今まで話してなかったんだけど、
ドロレスはロボットなんだ。
だから仮想現実空間の感じとり方も、
人間の場合とはちょっと違ってて。
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え。と言ったきりレイチェルは
黙り込んで、しばらく考え込んでいるようだった。
それから口を開いた。
作ったのは、シェリー博士でしょ。
人間そっくりのロボットを作れる人って、
博士しかいないし、
博士の研究所の謎の爆発事故で、
行方不明になったロボットが一体あったのは知ってる。
それが生き残っていたっていうわけね。

その推理は当たっているわ。
ドロレスは私が最初に作った人間そっくりのロボット。
ドロレスは爆破事件の後、
関係当局の捜索を逃れて逃亡生活を送っていたんだけど、
アンの噂を聞きつけて、アンに会いにこの町に来たのよ。
その後、ドロレスの捜索は打ち切られて、
爆破で破壊消滅したと見做されたんだけど、
私は生きていると信じて、きっとアンに会いに来ると思ったから、
友人のエリスのいるこの町のこの探偵事務所に捜索をお願いしたの。
その結果、無事再会できて、今ではここでお世話になってる。
でも軍やロボット研究所にドロレスの生存が知られると、
没収されてしまうでしょう。だからあなたにも言えなかった。
レイチェルさんも今はロボット研究所をおやめになって、
アンの世話をされている自由の身。
研究所や軍に私の生存の報告なんて。
とドロレスがちょっと心配そうに言った。

もちろん。報告なんてしないから安心していいわよ。
とレイチェルは言った。
バトラー博士は悪い人じゃないけど、
研究所の方針は軍や政府と一体だから、
捕まれば軍事転用の実験材料にされるのがオチね。
成果がでなければ、アンみたいに、
研究所の広告塔として客寄せパンダにされる。
でも。
とレイチェルはいった。
ドロレスを匿うために秘密にしてたのはわかるけど、
そんなドロレスに危険を犯して
仮想現実体験をさせるなんて、誰の発案なの?
シェリー博士じゃないわよね。
まだ、何か隠したいことがあるんじゃない?
言っちゃっていいかな。
とドロレスが言った。
それは私の望み。
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」って、
いう小説があるでしょ。
私もいつか夢が見てみたくて。
それでどうだったの?
ロボット犬が出てきた。
電気犬みたいなものね。
レイチェルさん。
ドロレスの秘密をお話ししたのはあなたを信頼してのこと。
まだ他にもお話ししていない秘密があります。
実は私もロボットなの。
とミューが言った。
え。とレイチェルが。
そうか。やっぱりただの天才少女じゃなかったのね。
あ、ミューは少女なの?ジェンダーフリー?
でも誰がミューを作ったの?シェリー博士?
その話をするとすごーく長くなりますが、
今聞きたいですか?
あ、まだ実験途中なのよね。
また今度ゆっくり聞かせてください。

この仮想現実空間体験装置、
てっきり人間専用だと思ってた。
私はそのつもりで開発のお手伝いしたけど、
この第二世代のヘルメットって、
空間の共有ができるんでしょう。
どんな世界かな。

また同じ仮想空間に行けるのかな。
とドロレスが言った。
いろんな異世界体験ができるわけじゃなくて、
この機械は、特定の空間だけだから同じだよ。
ただ時間と色彩の処理がちょっと解決されていない。
風景の動きが止まって、
手抜きみたいに見えるかもしれないけど、
全く違うからね。とミューが言った。
ドロレスもみんなも納得するしかなかった。

その頃エリスは着替えを済ませて、
散歩でもしようと階下に降りてきた。
あら、大きなテーブル。

やあ、エリスさんこんにちわ。
この空き地に大きなテーブルを置かせてもらって、
ペンギンで注文したコーヒーも
運んできてくれることになりました。
一緒にいかがですか。
テーブル席を拡張していただいたお礼に、
ささやかですが、オレンジのサービスです。
エリスさんもどうぞ。とリズが言っている。
解説)
途中やや会話のセリフが長くなりましたが、
なんとか二度目の実験が始まるようです。
Jun 25, 2023
メアリー=ケイトの帰宅

妹と旅行していたメアリー=ケイトは、
郊外からの道を、
サラたちと暮らす家に帰宅中だった。
5月初めから家を空けていたので、
ほぼ二ヶ月ぶりの登場。

おや、珍しくこんなところに人がいる。

こんにちわ。
ヒッチハイクですか?

いえ、私たち、この町でツノのあるものを
ずっと探しているんですが、
カタツムリくらいしか見つからなくて。
郊外に来ても畜産農家はないんですね。

ツノのあるもの?
うちのペットのメメには、
立派なツノがありますよ。
なんの動物かは謎なんですけど。
よかったら名刺を差し上げますから、
ご覧になりたければ、いつでもどうぞ。

メメもオセロも元気してるかな。
と呟きながら、
メアリー=ケイトは去っていった。

なんかすごくラッキーな遭遇でしたね。
絵に描いたような、というか、
画像に写したようなといういうか。

メアリー=ケイトは、
サラたちの家に戻ってきた。
ただいまーと言っている。
あ、ルビーお久しぶり。
ルビーはね。すごく物騒な
話をしてくれていたのよ。
なんでも、二人組のテロ集団の残党が、
メメを探しているんですって。

ふーん。メメっていえば、
さっき、ツノあるものを探してるっていう
二人組の女性に出会ったばかり。
一人はオレンジ色の髪じゃなかった?
うん。
そうそれよ。
ますます要警戒ね。
とルビーは言った。

メアリー=ケイトの旅行土産は
缶ビールの詰め合わせだった。
これはいくらあってもいいわね。
と言われている。
解説)
缶ビールの詰め合わせは、
ホビーオフのバラ売りで。
金属製なので重量感があります。
検索すると、J.DREAMのガチャ、
「ミニチュアお中元ギフトマスコット」の
「4.ビールセット」でした。
Jun 24, 2023
紫陽花とカエル
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高台の休憩所では、
ルルが鉢植えの手入れをしていた。
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青々としたカポックは、
本物のようだ。
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フェイクグリーンばかりだけど、
紫陽花尽くしだね。
もう6月も終わりだから。
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このアオガエル、
ずいぶん大きいんじゃない?
と和歌子が言った。
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でもすごく可愛いわよね。
と江本友恵が言った。
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そこに散歩中の
ヴィヴィアンがやってきた。
あら、今日は素敵なお店開いてるのね。
何見てるの?
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すごく大きなアオガエルが
いるんですけど。
ふーん。このこ、
もっと大きくなりたいって、
言ってるよ。
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ヴィヴィアンが手をかざして、
呪文を唱えると、
薄い煙が立ち込めて。
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カエルはさらに巨大になった。
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カエルは
嬉しそうに去っていった。
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この人、
なんでもありなのね。
と友恵は思っている。
解説)
このところ満開のアジサイや、
新しいカポックの鉢植えなどを
載せたついでに、
梅雨時なのでアオガエルも。
大きなアオガエルは、
ポンプ式でジャンプするタイプの
セリアの幼児むけ玩具です。
藻が繁殖したような器の緑色の水は、
半透明のとろっとした粘土です。
綺麗なので買ってあったものですが、
使い道は普通になりました。
Jun 23, 2023
ドロレスの帰還
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装置の明かりが赤く点灯している。
帰ってきたみたいよ。
とシェリー博士が言った。
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お帰りなさい。
初めてみた夢の世界、
どうだった?
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想像してたのと随分違ったわ。
井戸の底に落ちていく途中で、
世界が変わったんだけど。
夢から目覚める時って、
そういうものなんですか。
それは色々。
そんな目覚め方をする
夢を見ることもあるわね。
とシェリー博士が言った。
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正確に言うと、ドロレスが体験したのは
人間が睡眠時に見る夢じゃなくて、
この装置が作り出した仮想現実世界なんだよ。
人間の見る夢に似ているって言うだけ。
世界からの出口は滞在時間との兼ね合いで、
出現するように設定してあったの。
物の形や音の感じはどうだったの?
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時々色彩が感じられなくなって、
モノトーンの世界になったように見えたわ。
それに一度写真の静止画像みたいに
世界の動きが止まった感じがした。
でも普通に会話できたから、
時間が止まったわけじゃなくて変な感じだった。
あれ?
そこにあるヘルメットって、
初めて見るけど。
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ああ、これね。
ドロレスが向こうに行ってる間に、
探偵さんに頼んで
シェリー研究所から運んできてもらった、
第二世代の装置なんだ。
これを使えば、一緒に同じ世界に行ける。
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その時、エリスと翠が帰ってきた。
あら、実験まだ続いているみたいね。
着替えたらすぐ散歩にでもいくから、
どうぞごゆっくり。
すごいヘルメットね。
ミューって、こんなのも作れるの?
と鷲尾翠が感心している。
ロボット研究所のスクラップを
ドーリスさんに譲ってもらって
改造したんだよ。
と、ミューが言った。
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その頃、レイチェルも
探偵事務所に急いでいた。
肉まん買ってたら遅くなっちゃった。
と呟いている。
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あら、大きなテーブル。
こんにちわレイチェルさん。
ここにテーブル置かせてもらったんですよ。
とミラとバグが言っている。
横には知らない男性が立っている。
あ、こちらは友人のウェルズ。
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管理局に勤めるウェルズです。
と男性は言った。
あ、どうも。
私はレイチェルと言います。
今ちょっと急いでるので、いずれ改めて。
と言って別れて、
レイチェルはペンギンの二階にある
事務所への階段を駆け上っていった。
解説)
ペンギン前の空き地のテーブル板は、
セリアで買った鍋敷を使用しています。
Jun 22, 2023
ドロレスの夢 そのに
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ロボットの発する
ピポピポという音に反応して、
蛇はそそくさと退散していった。
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危ないところでした。
あの蛇ナーガラに噛まれると
三日三晩もがき苦しんだ末に
死んでしまうところでしたよ。
とロボットは言った。
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あ、助けてくれたのね。
でも私なら大丈夫。
私はロボットだから、
噛まれても平気なのよ。
え、そんなはずありませんよ。
ナーガラはロボットは襲いませんし、
あなたには生体反応があります。
あなたは人間です。
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そ、そうなの?
そーだそーだ人間だ。
とロボット犬が言った。
最近、ナーガラが増えて困っているんです。
蛇を駆除するひそこ型ロボットのヒゾッコが、
片方の翼をなくしてしまって。
おや、そこにある
翼はヒゾッコのものではないですか。
あ、そうなの?
そこに落ちていたのを見つけたの。
それより、ここはどこなの?
あなたたちは誰?
そう言いながら、ドロレスは、
また視界がモノトーンになったのを
感じていた。
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私の名前はバンク76号です。
バンクと呼んでください。
この二匹のロボット犬はソーダとドーダと言います。
ソーダは「そーだ」と言った。
ドーダは「どーだ」と言った。
あ、私はドロレス。
よろしくね。
ドロレスは、
視界がカラーに戻ったのを感じたが、
会話している間、
世界の動きが止まっているようにも感じた。
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ヒゾッコの翼を、
見つけていただいたので、
すぐに修理にかかれます。
このあたりはナーガラが多いので危険です。
私たちについてきてください。
ドロレスはついていくことにした。
するとドーダが背中に乗せてくれた。
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井戸の上に壊れた機械のようなものが
置かれていて、時々体を震わせている。
ドロレスがドーダから降りると、
ドーダは、「乗り心地はどーだ」と言った。
良かったわよ。とドロレスが言うと、
ソーダが「そうだそーだ」と言った。
二人ともダジャレが好きなようだ。
これって、生きてるの?
ヒゾッコは、片方の翼を失くして、
嘆き悲しんでいるのです。
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この翼をつければいいのね。
瞬間接着剤持ってる?
ドロレスは、瞬間接着剤を借りて、
ヒゾッコの体を
井戸の側におろしてもらい、
折れた跡のある接合部分に
手早く接着剤をつけて、
井戸の側面により添わすように、
微妙に角度を調整して固定すると、
嘆きたくなっても、体を震わさないで
じっとしていてね。
とヒゾッコに言った。
すごいですね。
そんな器用なことができるのは、
ツナさんと同じだ。
ドロレスはやはり人間ですよ。
とバンクが言った。
ずっと驚きを隠せない顔をしている。
ソーダはさっそく「そうだそーだ」と言っている。
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ツナさんって、
この世界に他にも人間がいるのね。
それに、この井戸の中はどうなってるの?
とドロレスは覗き込んでいる。
その井戸は、
底なしと言われています。
ゴミを捨てるのにいいんですよ。
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ドロレスは、
身を乗り出して覗き込んでいるうちに、
急に頭が重くなった気がして、
井戸の底に吸い込まれるように
落ちていってしまった。
解説)
エピソードの進行中に
フィギアの修理もしてしまうという、
随分安易な、
バーチャル世界だったようです。
Jun 21, 2023
ドロレスの夢
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探偵事務所では、
仮想現実体験装置の実験が
始まろうとしていた。
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レイチェルがまだ戻ってこないけど、
始めちゃう?
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うん。レイチェルは、
ドロレスがロボットだということを、
まだ知らないんだよね。
いずれ話さなくちゃと思うけど、
このロボットが見る夢の実験は微妙だから、
まずは私たちだけで始めた方がいいと思う。
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了解。じゃあ始めます。
シェリー博士が装置の
ボタンを押すと、青いライトが
点灯して機械が始動した。
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ドロレスは夢を見ている。
ここはどこ?
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やがて視界がはっきりしてきた。
そこはモノトーンの世界だった。
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何か微調整されたようで、
色彩が戻ってきた。
一面のスクラップ置き場のようだ。
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ドロレスは翼のようなものを
見つけて拾い上げた。
鳥の羽根の一部みたい。
金属製だけど。
また世界がモノトーンになった。
夢って、こんなふうになるのね。
とドロレスは思っている。
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さらにドロレスが
周囲を見渡していると、
筒状の金属の中から
蛇が顔を出して、
ドロレスの背後から近づいてきた。
どうやらドロレスを狙っているようだ。
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その時、
蛇を威嚇するように、
ピポピポという音を発信しながら、
二匹のロボット犬が現れた。
一匹の背にはさらにロボットがまたがっている。
解説)
どうなるのでしょう。
Jun 20, 2023
ツノあるものを探して
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アンの記憶データから、
ツノのあるものの記憶画像を
検索して抜き出しました。
とレイチェルが言っている。
ご苦労様、
さっそく見せてください。
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これは、去年のハロウィンの
仮装コンテストの時の画像ね。
たしかに、アンジーがツノをはやしてる。
でもこれは魔女の扮装だったから。
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これは、農家の岸さんが、
ナマハゲのコスプレをしてる時の画像。
頭には鹿のツノをはやしてるけど。
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これもハロウィンの時の仮装ね。
ルイちゃんがツノをはやしてるみたいに見える。
でもみんなコスプレで、
町に住むツノあるものとは言えないんじゃない?
やっぱり町にはそんな人いないよ。
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待って。
この画像は何?
今年の春、アンがサラさんたちの部屋に、
ストーブの撤去の手伝いに行った時の画像のようですね。
それがどうして検索に引っかかったのかしら。
あ、右下をアップしてみて。

ここに、ツノあるものが。

そうか。ツノあるものって、
サラたちが部屋で飼っている
ペットのことだったのね。

あのーそろそろ帰っていいですか。
とレイチェルが言った。
ちょっとやりかけてた作業が。
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あ、ありがとう。
もちろん。アンも広場に戻っていいわよ。
ルビーは思い出していた。
どうして忘れていたんだろう。
2年前の11月頃、ジェットが広場に
あのツノのあるペットをたぶん一度だけ、
散歩に連れてきたことがあったのだ。
その時聞いたペットの名前はメメと言ったはず。
私たちのすべきことは、
メメの存在をローズたちに
知られないうちに保護することね。
私が直接サラに会いにいってくる。
こちらの動きを知られないように。
もちろんローズたちを見かけたら、
即刻身柄を拘束して、とルビーは言った。
解説)
メメの一度きりの外出の様子は、
2021年11月29日「ベーカリーの前で」
で見られます。
Jun 19, 2023
サラたちの部屋で
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サラたちの部屋には、たまきが
ドールショーで買った風鈴を届けに、
遊びに来ていた。
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サラはさっそく窓辺に風鈴を吊っている。
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なかなか涼しげで、
いいわね。
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ケイさん、何してるの?
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この貝から、潮騒が聞こえるんだよ。
でもなかなか眠くならなくて。
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おや船長、いつの間に。
肩にオウムが留まっていますね。
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ああ、こいつか。
どうやら、契約書がなくなって、
幽霊船のある世界に住めなくなり、
わしがこの世界にとどまることを知って、
とんできたみたいだ。
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サラが見たっていう、
島の夢に出てきたオウムなんですか。
こいつはすごい能力を持っててね。
わしがこうして生きたふりができるのも、
こいつのおかげかもしれぬ。
賢いオウムなんですね。
名前はなんていうんです?
トンピリビというんだ。
最初の飼い主の名前をもらったんだ。
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美味しそうだね。
これ富士宮焼きそばでしょ。
とたまきが言った。
解説)
焼きそばは、アゾンのバラ売りで。
J.DREAMのカプセルトイ、
「ご当地めんマスコットBC」
(3、富士宮焼きそば)です。
Jun 18, 2023
それぞれの広場
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4人がツーリングから戻ってきて、
広場にはそこそこの賑わいが続いていた。
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エリスたちはベランダで休憩している。
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舞さん、お仕事中、
お邪魔してごめんなさいね。
いえいえ。
賑やかな方がいいんです。
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事務所には戻らないの?
今立て込んでるのでね。
何か機械持ち込んで、
実験してるみたいだから。
ボニーさんは?
ドルフィンに預けてたカメラ
取りに行ったみたいだよ。

その頃、ボニーはリタから、
ツーリングどうだった。
と聞かれていた。
気持ちよかったよ。
ゴールドウィングの調子も良かったみたい。

うたたちは旅芸人の
歌声と演奏に聞き入っていた。
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すごい歌声でしょう。
うん。特にドラゴンの子供の、
ダーダーという声が心に沁みるね。
あとでぜひ話が聞きたいな。
レオさんって、記者か何か?
そうじゃないんだけど、
音楽に興味があってね。

あれ、ロボットのアンは
抜けちゃったんですか。
さっきまでいたのに。
ドルフィンに呼ばれたの。
メンテナンスじゃないかな。
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ドルフィンの奥には、
探偵事務所から呼ばれた
レイチェルも来ていた。
というわけで、
突然だったけど、
またアンの記憶データを
再生してもらおうと思って
来てもらったの。
とルビーが言っている。
解説)
あれこれと
何やらまた。
Jun 17, 2023
ツーリング
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ツーリングに出た4人は
郊外に到着した。
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エリスはこの直線の堤防の道でコンディションを
確かめてから合流するわ。
と言った。
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見晴らしいいねー。
それに高級ソファーの乗り心地。
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ボニーとトムは林を抜けて。
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草原に出たので
フルスロットル。
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そうこうしているうちに
エリスたちも現れた。
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起伏のある林を抜けると。
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小さな池があった。
ここで休憩しよう。
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翠さんはバイクの運転は?
一応できるけど、
仕事じゃないと乗らない。
仕事って私立探偵の助手だったよね。
それとは別の仕事。でもそれは秘密なの。
それより、チョコでも食べない?
ああ、いいね。
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その車の調子良さそうだね?
ダート向きじゃないけど、
まだまだ走れそうね。
倉庫にしまっておくなんて勿体無い。
あなたのはホンダXR400でしょ。
知人からSWAT仕様のを譲ってもらったんだ。
ネイビーシールズや、CGでも使ってるらしいね。
解説)
近所の多摩川河川敷の公園や堤防などで
撮影した過去画像を背景に合成しています。
Jun 16, 2023
広場であれこれ
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広場には歌声をかき消すように
エンジンの始動音が響いていた。
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いいなあ、
ツーリングに出かけるんだ。
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バイクが3台
所狭しと並んでいる。
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準備はOK。
とボニーが言っている。
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随分ふかしてるわね。
子供達は騒音を気にしていないようだ。
ふかしたお芋
食べたいなあ。
と言っている。
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私たちも行きたいね。
今度サイドカー付き
オートバイで行きましょう。
運転は任せるから。
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じゃ出発。
と言ってボニーたちは走り出した。
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ドルフィンの中では、
ルビーがハリーに来てもらって
話を聞いていた。
それでその魔王メイヴのことなんですが。
何かご存知ないですか。
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確かに私は魔族の者だが、
魔王メイヴというのは聞いたことがないなあ。
魔王と言っても魔族の王ということではなく、
一部の人間たちが勝手にその力を畏れていうのだよ。
名前からすると古代ケルトの地母神と
関わりがあるのかもしれないが、
長い歴史の中で別世界の何かと融合したのかも。
別世界っていうと。
君たちCGがどう考えているか知らないが、
この世界が一つでないことは、
異世界から来た住人の存在からもわかるだろう。
それぞれの世界には
異なる魔的なものの系譜があり、
異なる世界の間を行き来する
夢食いと呼ばれる存在もいるんだよ。
もっとも、私にもまだまだ
わからぬことばかりなのだが。
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別世界から来たものだとすると、
管理局なら情報を持っているかもしれませんね。
とアイスが言った。
それにツノあるものって、
全然手がかりがないの。
とスーザンが言った。
犬や猫やペンギン顔の人はいるけど、
この町でツノのある人や動物、見かけたことないし。
ずっと広場にいるアンなら、
見てるかもしれないわね。
レイチェルに頼んで、またアンの記憶データを
再生してもらいましょうよ。
解説)
行きつ戻りつしながら進んでいます。
Jun 15, 2023
ドールショーのことなど
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一緒に行ったうたたちはどうしたの?
今頃、レオっていう人を広場まで案内してるよ。
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3人でドールショーの会場近くの
竹芝埠頭の展望デッキに寄ったんだ。
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記念撮影しようと思ってたら
そこにちょうど人がいたんで、
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スマホで撮影を頼んだの。
話をして、この町から来たって言ったら、
デイリープラネットで記事を読んで、
ちょうど遊びに行くつもりだったって。
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そのレオっていう人に
記念撮影してもらったんだけど、
それでうたたちが町の
広場まで案内することなったわけ。
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その頃、うたたちは
賑やかな広場に到着していた。
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エリスたちは
ツーリングに出かける準備をしている。
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私たちのバイクは?
愛車のハーレーでもよかったんだけど、
ずっと使っていないバイクの
調子を見てほしいってマスターに頼まれちゃって。
じゃあ、あれね。
ホンダのゴールドウィング。
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マンスフィールドさんは
入間ルイを乗せたベビーカーを押していた。
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君いくつ?
よくわかんない。
解説)
今回初登場のレオのヘッドと男性素体も
ドールショーで購入しました。
Jun 14, 2023
ドールショーのこと
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ジェニーがてるてる坊主を
吊っていると、たまきが
ドールショーから帰ってきた。
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随分色々あるのね。
ほとんど、ドルフィンで、
頼まれたものなのよ。
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これは風鈴。
うちには一年中吊ってあるのに。
綺麗だったから、サラたちの部屋に
どうかなって思って。
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リカちゃん用メガネに、
男性用の靴二足か。
それとノートが2冊。
どれもドルフィンで頼まれた実用品ね。
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それと、このアイス。
大きくてとても長持ちするんだ。
一人だけずる。
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ちゃんとお土産に
みんなの分も買ったのよ。
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モモコが袋の中の
大きな箱を開けると、
アイスクリームのセットが入っていた。
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これは美味しそう。
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ちょうど4人分なのね。
解説)
6月11日に浜松町産業貿易センタービルで
開催されたドールショー69に
行ってきました。
ソフトクリームのセットは、
箱入りのキーチェーンで、
秋葉原のアゾンのガチャで。
Jun 13, 2023
その後のあれこれ
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ジェニーたちの部屋で。
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そのてるてる坊主。
今年も梅雨入りしたからね。
あれ、たまきは?
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うたとキャサリンと一緒に、
ドールショーに出かけたよ。
お土産が楽しみ。
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そのてるてる坊主、いつの間に作ったの?
ドルフィンの倉庫から借りてきたの。
去年ので大丈夫なの?
この子はお利口さんだからね。
意味わかんない。
とモモコは思っている。
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その頃、探偵事務所では。
仮想現実体験装置が完成に近づいていた。
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ドロレスが心配そうに見ている。
本当にこれ、
大丈夫なんですか?
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暴れ出した時のために
ちゃんとベルトもつけるから大丈夫よ。
と言われている。
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そこにレーシングスーツに着替えたエリスが現れた。
あら、きまってるわね。
ハーレーのを借りたの。
これから翠とボニーたちとツーリングに。
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着替えを済ませた鷲尾翠も出てきた。
ミューは、
暴走しないように設定したから
きっと大丈夫だよ。と言っている。
解説)
並行して進行中のエピソードが多過ぎるのに、
さらにまた。
という感じです。
Jun 12, 2023
貝の夢 そのさん

水盤の中央から
水が湧いているようだ。
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水をひとすくいして、
口にしてみると、
夢見の水の味がしたような気がした。
さらに覗き込むと
水底に小さな貝が見えたので、
サラはその貝を拾った。

その場から出て見上げると、
木の梢にオウムのような鳥が
留まっているのが見えた。
木の枝ぶりは海風のせいか
波のようにうねっている。

アーチのある場所に戻ったサラは
海を見ている。
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心地よい潮風の中
届くのは寄せ返す波音ばかり。
サラはだんだん眠くなってきた。

サラが目覚めると、
部屋にはキャップテン・クックドゥーが
遊びに来ていた。

本当に海の夢が見られたわ。
海の夢っていうより、
海辺の夢で、どこかの島みたいだった。

その島はね。
たぶん誰かが浜辺でその貝を拾った島だよ。
夢は貝の思い出なんだ。
契約さえすれば、貝の記憶は封印されて、
海賊船で航海する夢が見られたはずなんだが、
契約書は破ったので、
貝自身の想い出が解き放たれたんだろう。
島には赤っぽいオウムもいたのよ。
ああ、それはきっと私の飼っていたオウムだよ。
そんなことってあるの?
封印が解かれても、
私の想い出が少し残っていたんだろう。

あ、やっぱり消えてなかった。
島には泉があって、
そこでこの縞模様の貝を拾ったの。
それは珍しい。
海辺で拾った貝でないとしたら、
どんな世界が見られるのやら。
と船長が言った。

僕はふつうの海辺の夢がいいなあ。
海パンに着替えて寝るべきかなあ。
泳ぐのもいいけど、
フカに気をつけてね。
とサラが言った。
解説)
新たな謎を孕みつつ、
サラの夢の探索は終わったようです。
Jun 11, 2023
貝の夢 そのに

サラが砂浜の
波打ち際を歩いていくと、
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やがて緑に覆われた
小山の裾の岩場に出た。
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この辺りの海水の透明度も高い。
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魚が沢山いそうだなあ。
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岩場は続いていて、
ところどころに潮溜りがあった。
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小山のやぶの中に小径を見つけたので、
サラは行ってみることにした。
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そこには小さな泉があった。
奥の小高い場所には、
石造りの建造物があって、
水が流れ落ちている。

建造物のアーチの間からは
はるかに海が見える。
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サラは泉の水が
湧いている場所を見つけた。
解説)
サラの探索は続いているようです。
Jun 10, 2023
貝の夢
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気がつくとサラは海辺にいた。
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波打ち際に近づいて。
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寄せ返す波を見ている。
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潮風になぶられながら。
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たゆたう泡を見ている。
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ひかりの縞のゆらめきも。
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いつまでも見飽きない。
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サラは渚を歩いて行った。
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この浜辺は
どこまで続いているのだろう。
解説)
7年前の島旅行の時の画像を
背景に合成しています。
Jun 09, 2023
デッキチェア
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ジェットはビールを注いでいる。
暑い日はもうこれに限るね。
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サラ、どうしたのその格好。
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このデッキチェアね、
ドルフィンの倉庫から借りてきたの。
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さっそく貼り替えて。
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夏向きになったでしょ。
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気分はもうトロピカル。
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キャプテン・クックドゥーから
もらった貝を耳に当てて。
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サラは気持ちよさそうに眠ってしまった。
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あれがやりたかったんだね。
どんな夢見てるのかなあ。
あれ、ビールまだ注いでるの?
おかわりだよ。
解説)
もうすぐ夏が。
Jun 08, 2023
ベビーカーの工作
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広場は今日も
なかなかの人出だった。
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チョコレート食べたいなあ。
これは参加賞なんだよね。
と鈴木すずと池谷圭が話している。
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一枚ずつとっていいわよ。
みんなには内緒ね。
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本当?
やったー嬉しいな。
言ってみるもんだね。
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子供は可愛いわね。
そういえば子供って言えば、
最近入間ルイちゃん見ないわね。
遊びには来てるんだけど、
二階で世話してもらってるの。
すぐ動き回るので、
広場ではずっと見てられなくて。
ベビーカーがあるといいんだけど。
それなら、使えそうなものが、
倉庫にあったわよ。
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マスター、あのディスプレイ用のベビーカー、
実用品に改造できないかな。
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さっそく改造工作が始まった。
パイプを繋げて
背を高くしてるんだね。
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あっという間に
ベビーカーが完成した。
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入間ルイは乗せてもらって
喜んでいる。
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おかげさまで。
これで安心して審査員を続けられます。
それはよかった。
解説)
セリアでミニチュアの
ベビーカーを見つけたので、
工作して、1/6スケールで使えるようにしてみました。
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背が低いのだけが難点でした。
工作に使ったのは
曲がるタイプの黒いストロー12本。
セロテープ、黒いビニールテープ。
補強用の透明なエンビの切れ端。
カバー用の端切れとクッションです。
Jun 07, 2023
キャサリン そのさん
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うたたちはドルフィンに行って、
リタに倉庫にある古着のことを聞いている。
奥にあるから好きなのを選ぶといいわ。
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数分後、3人は倉庫から出てきた。
キャサリンはさっそく
着替えを済ませている。
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上着とドレスを脱いで、
レザーのショートパンツに履き変えただけね。
これなら動きやすいわ。
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キャサリンは、ナップザックを
自分が背負うと言い出して、
実行している。
いつも運んでもらって、
重くて大変だろうなと思ってたの。
今は本が一冊しか入ってないけど。
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そこにボニーとトムがやってきた。
彼らはドルフィンの倉庫に
オートバイの下見に来たのだった。
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あ、トム。
コンテストの優勝、じゃなかった。
そっくりさん特別賞おめでとう。
ありがとう。
あ、彼はボニー。僕の友人。
こちらは、ヒッチハイカーのうたさんだよ。
あとは。
キャサリンとたまき。
ふたりとも私のお友達。
とうたが言った。
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ボニーは、たまきとは
以前町にいた頃からの顔馴染みだった。
そっくりさん特別賞って、何か賞品あったんですか。
とたまきがトムに聞いている。
いや。急に作った賞らしくて、
特になかったけど、チョコレートの掴み取りを
2回させてもらったよ。
そっくりさん、と言えば。
とボニーが言った。
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キャサリンさんって、
誰かに似てるって言われません?
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うたはちょっと戸惑っている。
うたは、フィギアヘッドを作る時
参考にした写真のことを
思い出していたのだった。
キャサリンは、さあ?
と言いながら、
謎の微笑みを浮かべている。
解説)
本当はキャサリンが同名の大女優に
似ているかどうかは、
微妙なところです。
Jun 06, 2023
キャサリン そのに
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あなたのおかげですわ。
とキャサリンは言った。
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私はちょっときっかけを
与えてあげたの。
その姿を望んだのは、
あなたの創造主よ。
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そうなんですね。
うた。
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ああ、キャサリン。
夢みたい。
ヴィヴィアン魔法を使い放題ね。
怖いものないみたいだし。
などと後ろでアンジーと
レイラが話している。
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たまきさんにも
お世話になりました。
あ、お世話なんて、
私は案内してあげただけ。
その格好、
なかなかシックで、
ドールショー向きだけど、
これからも二人でヒッチハイクするんなら、
動きやすい服に着替えたら?
とヴィヴィアンが言った。
ドルフィンの倉庫に古着が色々あるよ。
とたまきが言った。
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その頃ベランダでは。
新たに洗濯物が干されていた。
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晴れの日は貴重だわ。
と今井舞が言っている。
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ニッキーは、
取り込んだ洗濯物をたたんでいるようだ。
たまに出演しないと
忘れられちゃうからね。
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セキセイインコは、
いつもここにいるので、
よく写り込んでいる。
解説)
後半は洗濯したので
ついでに撮影した情景です。
Jun 05, 2023
キャサリン
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うたとたまきは、
デジャに向かった。
会員制ですが。
とヨシフに言われている。
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ヴィヴィアンさんに会いに。
リリスが話しておくからって。
あ、失礼しました。
お話は伺っています。
なんとなくそうかなって思ったんですが、
出番がなかなかないもので、
ついお引き止めしてみたくなりました。
と言っている。
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かくて、二人はヴィヴィアンに
会うことができた。
挨拶を済ませたうたは
さっそくフィギアを取り出している。
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この子なんですけど。
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これが私のキャサリンです。
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なるほどねえ。
うんうん。
気持ちはよくわかるよ。
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ヴィヴィアンは呪文を唱え始めた。
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すると薄い煙が立ち上り、
フィギアはぼんやりと輪郭を失い、
等身大の女性が現れた。
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さすがヴィヴィアンさん。
とジョージが言っている。
解説)
今回はヴィヴィアンの
一人舞台のようでした。
Jun 04, 2023
それぞれの話
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鷲尾翠は、ドルフィンの奥にいたルビーに、
喫茶店で仕入れた情報を伝えている。
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二人連れの女性で、
一人はオレンジ色の髪、
一人は変わった模様の入った
Tシャツを着ていたって。
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ローズたちに間違いないわね。
魔王メイヴか。
まさかイカとタコの怪物じゃないでしょうね。
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それはドラクエの海冥王メイヴでしょ。
検索すると、メイヴって、
ケルト神話に登場する「酩酊」を意味する女王の名前よ。
でもさまざまな伝承があることから、
太古のケルトの地母神に由来するとも言われている。
中世のジゾックス騎士団が信仰していたのは、
この系統みたい。
魔王っていうのなら、あっち系でしょ。
ハリーなら何か知ってるかもね。
とアイスが言った。
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名前の由来はともかく、ローズたちより先に
ツノあるもの、っていうのを探し出して、
復活を止めないとね。
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その頃ベーカリーの2階の休憩スペースでは、
ボニーたちがビールを飲みながら
歓談していた。
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じゃあ、ボニーとは
そのときモトクロスのレースで知り合ったの?
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雨上がりのレースで
コンディションは最悪。
二人とも泥まみれになってたんだ。
そういえば、
エリスはハーレーまだ乗ってるの?
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最近はほとんど。
2年前に、郊外のキサラの家の
バーベキューに呼ばれたとき以来かな。
キサラかー。懐かしいなあ。
彼女もバイクマニアだったね。
そうだ。そんなに乗ってないんなら、
今度一緒に行かない?
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そのとき、ちょっと遅くなっちゃった。
と言いながら、
鷲尾翠がビールを持ってやってきた。
ツーリングの話でしょ。
私も行きたい。
と言っている。
解説)
エリスのライダー姿は、
2021年6月15日「エリスとハーレー」
で見られます。
Jun 03, 2023
広場であれこれ
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ベーカリー前の広場は、
参加賞を貰いにきた人たちで、
そこそこ賑わっていた。
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ジャンの家から戻ってきた
うたとたまきが話している。
ヴィヴィアンさんって、
どこにいるの?
魔術劇場に住んでるけど。
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普段はバーのデジャにいると思うよ。
さっそく行ってみよう。
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君、お名前は?
池谷圭と言います。
圭は、天才少年なんだよ。
ふーん。そうなの?
肉まん美味しい?
はい。

ベーカリーのテーブルでは、
参加賞の掴み取りが続いていた。
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ピエールは、
どうやっったら
たくさん掴めるかと、
観察している。

掴み取りを終えたエリスと鷲尾翠が話していた。
月に一度の楽しみになっちゃったね。
事務所は今立て込んでるから、
外出できてちょうどよかったわ。
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そこにボニーがやってきて声をかけた。
エリス、久しぶり。
あら、ボニー。
町に帰ってきたって聞いてはいたけど、
会うのは初めてね。
二人はバイクの趣味が共通していて、
以前からの知り合いだったのだった。
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今、物干し台の休憩場所に
バイク好きの友人を待たせてるんだけど、
これから缶ビール買っていくところ。
一緒に行かない?
いいわよ。旅行中の話も聞きたいし。
あ、私は、ちょっとルビーに
話があるから後から行くわ。
と翠は言った。
解説)
それぞれの場面で、
普通に時が流れていくようです。
Jun 02, 2023
ジャンの家で
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たまきとうたを乗せた車は、
郊外のジャンの家に到着した。
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車の音に気がついて
家からジャンが出てきた。
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ジャンに庭のジオラマの村を案内してもらったあと、
うたは倉庫で、フィギアのコレクションや、
アルバムも見せてもらった。
ジャンはうたの持参したフィギアに見惚れている。
この子よくできてるね。
名前はなんていうの?
キャサリンっていうんです。
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その時、魔法の扉が開いて、
リリスが現れた。
あら、お客様だったのね。
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あ、あなたは、このまえ広場で、
高台の休憩所へ行く道を教えてくれた方ね。
あの時はどうもありがとう。
とうたが言った。
どういたしまして。世間は意外と狭いのよね。
とリリスは言った。
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あら、このフィギア新作なの。
僕のじゃなくて、うたさんの。
ふーん。
と言いながら、
しばらくリリスはフィギアを見つめて
考え込んでいるようだった。
うたさん、って仰るのね。
あなた、このフィギアに
いつも話しかけたりしてるでしょう。
ええ。
フィギアに精霊が宿ってる。
いつか人間になりたいって、言ってるよ。
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え、そうなんですか。
その時ジャンの家に居候している
ナタリーも買い物から帰ってきた。
あなたもいつもそう願っているんでしょう。
よほど大事にされて、そういう思いが通じたのね。
人形の精霊にはよくあること。
とリリスは言った。
でも、そんなこと可能なんですか?
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できっこないと思うでしょう。
でも、ヴィヴィアンなら、
あっという間にやってくれるよ。
とリリスは言った。
解説)
話は新展開に。
Jun 01, 2023
5月のコンテストの結果発表
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月初めの広場はかなりの賑わいだった。
たまきたちは、
車でジャンの家へ出かける準備をしている。
その時、
コスプレコンテストの結果を告げる
ルビーのアナウンスが流れ始めた。
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皆さん。
5月のコスプレコンテストの優勝者を発表します。
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5月は空前の海賊ブームというか、
安易なバンダナブームとなり、
新しいコスプレでの登録者が激増しました。
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厳正な審査の結果、
優勝したのは、
映画トップガンのコスプレをした、
トムさんです。
今日もマンゴー亭に来て、
肉まんを食べていたトムは、
驚いている。
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トムってだれ?
という声が飛び交っている。
あの人、私をバイクに
乗せてくれた人だよ。
あそこで肉まん食べてる。
かっこいいね。
とたまきが言った。
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トムは万雷の拍手に迎えられて、
トロフィを授与されようとしている。
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いや、僕なんかより、
あの人の方がふさわしいですよ。
海賊ブームを象徴するいで立ちだし。
とトムが指差して言った。
魔術劇場から船長が顔を出したのだった。
そう言われればねー、
とジョー軍曹も頷いている。
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トムが辞退したので、再協議の結果、
キャップテン・クックドゥーが優勝者となり、
トムには、そっくりさん特別賞が
与えられることになった。
謙虚で思慮深いトムの言動は、喝采を浴びている。
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ちょっとしたハプニングもあって、
面白かったわ。
そろそろ出発する?
私、いく前に
参加賞のチョコレートもらってくるね。
とたまきが言っている。
解説)
今月も無事に
恒例行事から始まったようです。