Jun 26, 2023
二度目の実験へ
![b1](/~shimirin/blog/kirita/entries//20230626202229.files/b1.jpg)
探偵事務所では、
みんなでレイチェルの買ってきた
肉まんを食べていた。
私、立ち会えなかったけど、
実験は成功したの?
![b2](/~shimirin/blog/kirita/entries//20230626202229.files/b2.jpg)
うん。大体のところは。
視界が静止状態になったり、
時々、モノクロになったりしたみたいだけど。
それって大問題じゃない?
信号機の色が見えなかったら、
交通事故に遭っちゃうよ。
最初の試みだからね。
それと、実は今まで話してなかったんだけど、
ドロレスはロボットなんだ。
だから仮想現実空間の感じとり方も、
人間の場合とはちょっと違ってて。
![b3](/~shimirin/blog/kirita/entries//20230626202229.files/b3.jpg)
え。と言ったきりレイチェルは
黙り込んで、しばらく考え込んでいるようだった。
それから口を開いた。
作ったのは、シェリー博士でしょ。
人間そっくりのロボットを作れる人って、
博士しかいないし、
博士の研究所の謎の爆発事故で、
行方不明になったロボットが一体あったのは知ってる。
それが生き残っていたっていうわけね。
![b4](/~shimirin/blog/kirita/entries//20230626202229.files/b4.jpg)
その推理は当たっているわ。
ドロレスは私が最初に作った人間そっくりのロボット。
ドロレスは爆破事件の後、
関係当局の捜索を逃れて逃亡生活を送っていたんだけど、
アンの噂を聞きつけて、アンに会いにこの町に来たのよ。
その後、ドロレスの捜索は打ち切られて、
爆破で破壊消滅したと見做されたんだけど、
私は生きていると信じて、きっとアンに会いに来ると思ったから、
友人のエリスのいるこの町のこの探偵事務所に捜索をお願いしたの。
その結果、無事再会できて、今ではここでお世話になってる。
でも軍やロボット研究所にドロレスの生存が知られると、
没収されてしまうでしょう。だからあなたにも言えなかった。
レイチェルさんも今はロボット研究所をおやめになって、
アンの世話をされている自由の身。
研究所や軍に私の生存の報告なんて。
とドロレスがちょっと心配そうに言った。
![b5](/~shimirin/blog/kirita/entries//20230626202229.files/b5.jpg)
もちろん。報告なんてしないから安心していいわよ。
とレイチェルは言った。
バトラー博士は悪い人じゃないけど、
研究所の方針は軍や政府と一体だから、
捕まれば軍事転用の実験材料にされるのがオチね。
成果がでなければ、アンみたいに、
研究所の広告塔として客寄せパンダにされる。
でも。
とレイチェルはいった。
ドロレスを匿うために秘密にしてたのはわかるけど、
そんなドロレスに危険を犯して
仮想現実体験をさせるなんて、誰の発案なの?
シェリー博士じゃないわよね。
まだ、何か隠したいことがあるんじゃない?
言っちゃっていいかな。
とドロレスが言った。
それは私の望み。
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」って、
いう小説があるでしょ。
私もいつか夢が見てみたくて。
それでどうだったの?
ロボット犬が出てきた。
電気犬みたいなものね。
レイチェルさん。
ドロレスの秘密をお話ししたのはあなたを信頼してのこと。
まだ他にもお話ししていない秘密があります。
実は私もロボットなの。
とミューが言った。
え。とレイチェルが。
そうか。やっぱりただの天才少女じゃなかったのね。
あ、ミューは少女なの?ジェンダーフリー?
でも誰がミューを作ったの?シェリー博士?
その話をするとすごーく長くなりますが、
今聞きたいですか?
あ、まだ実験途中なのよね。
また今度ゆっくり聞かせてください。
![b6](/~shimirin/blog/kirita/entries//20230626202229.files/b6.jpg)
この仮想現実空間体験装置、
てっきり人間専用だと思ってた。
私はそのつもりで開発のお手伝いしたけど、
この第二世代のヘルメットって、
空間の共有ができるんでしょう。
どんな世界かな。
![b7](/~shimirin/blog/kirita/entries//20230626202229.files/b7.jpg)
また同じ仮想空間に行けるのかな。
とドロレスが言った。
いろんな異世界体験ができるわけじゃなくて、
この機械は、特定の空間だけだから同じだよ。
ただ時間と色彩の処理がちょっと解決されていない。
風景の動きが止まって、
手抜きみたいに見えるかもしれないけど、
全く違うからね。とミューが言った。
ドロレスもみんなも納得するしかなかった。
![b8](/~shimirin/blog/kirita/entries//20230626202229.files/b8.jpg)
その頃エリスは着替えを済ませて、
散歩でもしようと階下に降りてきた。
あら、大きなテーブル。
![b9](/~shimirin/blog/kirita/entries//20230626202229.files/b9.jpg)
やあ、エリスさんこんにちわ。
この空き地に大きなテーブルを置かせてもらって、
ペンギンで注文したコーヒーも
運んできてくれることになりました。
一緒にいかがですか。
テーブル席を拡張していただいたお礼に、
ささやかですが、オレンジのサービスです。
エリスさんもどうぞ。とリズが言っている。
解説)
途中やや会話のセリフが長くなりましたが、
なんとか二度目の実験が始まるようです。
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