Jan 25, 2025
バー・エデン そのさん
リザードも席について話している。
なるほど、お姉さんにも再会できて、
あの広場の店の肉まんも食べられましたか。
観光を楽しまれているようで結構なことだ。
ところで、あのホテル、
できれば公式に観光用に利用できればと
思っているんですが、どうでしょうか。
私まだ泊まる前に帰ってきた状態だからね。
これから戻って1泊してから感想を教えるわ。
でも印象は良かったわよ。
やはりね。楽しい感想をお待ちしてます。
リザードさん、ご自身でお泊まりになってみればいいのに。
とサラが言った。
ああサラさん。
そこがちょっと微妙なところなのです。
私たちレプテュリアンは、自ら人間や魔族との接触を禁じています。
ところが一方で宇宙連合に加入して以来、
いくつかの友好惑星文明から、
あの星を観光したいという要望があるんです。
大抵円盤に同乗してもらって上空から私たちが案内するんですが、
中には地上に降りたいというケースもある。
それで安全な場所にホテルがあれば好都合なわけです。
あのホテルの立地はアフリカのジャングルの中で最適。
しかも至近に私たちが大昔に使っていた転送装置もある。
その上、ホテルは人間や魔族ではなく、精霊の化身や
魔法生物たちが運営しているから、無用なトラブルも避けられる。
ただし。
ホテルには当然、人間や魔族も泊まりに来るでしょうから、
もし私が泊まりに行けば、そこで接触が生じる。
今の状態では、それが規約違反となるわけです。
すごく長い説明だったけど、ご事情はわかったわ。
とサラが言った。
もし、ルースやカコがホテルに泊まって
快適に過ごされたという前例があれば、
全体会議で外惑星からの観光客用にホテルの使用を
例外的に認めるという決定が下されるための
有力な理由づけになるわけです。
そうしたら観光客をガードするという名目で、
晴れて私も泊まれるようになるでしょう。
結局、鶏を調査したいというルースやそれに付き添った私は、
あなたの深謀遠慮の構想に利用されたわけね。
あ、全然非難してるわけじゃないのよ。
すごくいい構想だと思うし、
あなたの立場なら私でも同じことを考えたかもしれない。
とカコが言った。
そこにシベールがやってきた。
おいおい。帰ってこないと思ったら、
こんな店の奥で油を売っていたのか。
おや、カコと、たしかサラさんだったね。
四人は隣のテーブル席に移動した。
ふーん。サラさんたちは
あの町からアフリカまで固定式の魔法の扉で
移動したんだって。
あの星の科学文明はまだまだ未熟だけど、
魔族の連中のやることはやはり別みたいだな。
もっともフミコだけが特別なのかもしれないが。
いや、ヴィヴィアンという
蘇生の魔術を使える悪魔もいたな。
シベールさん、お言葉ですど、
その固定式の魔法の扉を作ったのは
フミコでもヴィヴィアンでもなくて、
アイスっていう普通の人間の女性よ。
アイスはフミコから呪力を授かったの。
とサラは言った。
アイスか。彼女がそんなに変わったか。
蘇生してフミコの呪力を授ける力が
パワーアップしたんだ。
普通の人間が呪力を持つようになると、
これはあの惑星の文明全体が
やがて大化けするかもしれないな。
とリザードが言った。
姉が言ってた通り、
面白そうなことが起こってるのね。
とカコが言った。
そこにダックがやってきた。
こんにちわ。みなさん。
立ち聞きする気はなかったんですが、
僕の耳は結構なんでも聞けちゃうんで。
実はさっきピピが、チョコパフを
カコさんからいただいたんですが、
そのあとで、あのチョコパフは、
ホテルで朝食にもらったって言ってましたよね。
そのことをピピに話したら、
絶対そのホテルに泊まりに行きたいって言い出して。
良かったら連れて行ってもらえませんか。
ピピ。
君はあの星で九官鳥に攫われて
危うく光もののコレクションに
されるところだったんだぞ。
ホテルは安全なんでしょう。
一度襲われた僕が泊まれば、
ホテルが安全だっていう
いい証明になるよ。
とピピが言った。
話を聞いていたのか。
ピピはチョコパフが食べたいだけなんでしょうけど、
いいんじゃない。私たちと一緒に行きましょう。
ダックさんもいらっしゃる?
お供しましょう。
ホテルがすでに複数の友好惑星文明の
観光に使われているという
既成事実があれば全体会議で有利ですよ。
話を聞いていたのか。
かくて4人はバー・エデンを後にして、
転送装置に向かった。
4人は地球に移動してきた。
解説)
続きます。