Jan 31, 2025

春節の踊り そのに

a1

健太のガルーダの舞は
佳境に入っていた。

健太は身を屈めると
「今日も日本晴れ。」と呟いて。


a2

大きく飛翔した。


a3

観衆が息を呑んで見守る間、
しばらく空中に留まっているように見える。


a4

ゆっくりと着地して、
きめのポーズをとっている。


a5

ご観覧ありがとうございました。
では、みなさんご一緒に、
楽しく踊りましょう。
と言っている。


a6

さっそく演奏がファンキーな曲に切り替わり、
みんな一斉に踊り出している。


a7

えらいやっちゃいいじゃないか。
えらいやっちゃいいじゃないか。
という大道芸人たちの掛け声が聞こえる。


a8

よさこいよさこい。
とケンも叫んでいる。


a9

サラとフミコも見物に来ていた。

みんな踊りが好きですね。
サラさんは踊らないんですか?
ええ、見てるだけで充分。


a91

その被り物、ガルーダっていうの?

ああ、フミコ。
ガルーダはインドの神話に登場する
神鳥だっていう話よ。
とアイスが言った。

宇宙にはそういう顔の生物もいるよ。
いつか会った事がある気がするんだ。
とピピが言った。

大昔にこの星に来てたのかもしれないわね。
とフミコが言った。


a92

ヒゲの隊長とルビーが話している。

毎年春節にみんなで踊るのが恒例になりましたな。
ルビーさんは踊らないんですか。
カオス状態になった時止める人がいないとね。
なるほど。さすがCG。
じゃあ私もちょっと踊ってきます。



解説)
続きます。

春節のガルーダの舞とみんなの踊りは、
2024年1月14日「春節 そのご」でも見られます。
今回はそのほぼ再現になりました。
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Jan 30, 2025

春節の踊り

a1

午後になって、
広場のスペースが空けられ、
踊りの準備が整ったようだ。


a2

ルビーが挨拶している。

みなさん。ではこれから、
春節恒例のガルーダの舞を
披露していただきます。
演じるのは、マンゴー亭のシェフで
舞踏家の丹下健太さんです。


a3

いよいよ始まるわね。


a4

静寂を破って、
ローレンスの甲高いトランペットの
音色が鳴り響いた。


a5

健太が顔を上げて、
ガルーダの舞が始まった。


a6

音楽に合わせて奇妙な態勢で
身をくねらせている。


a7

春節って、去年は確か2月10日からでしたけど、
毎年違うんですね。
私たちは新暦使ってるからね。
旧暦だと今年は新暦の1月29日からが新年なのよ。


a8

アイスとダックとピピは、
マンゴー亭で肉まんを食べていたが、
ピピは思わず旅行バッグから這い出して、
踊りを見ている。

あれどこかの星で見たような顔だなあ。
ピピ、這い出すとまずいよ。


a9

やっぱり、それただの人形じゃなかったのね。
とツナが言った。
ヴィヴィアンが人形の精霊か何かに、
魔法をかけたんでしょ?


a91

そうじゃないのよ。
とアイスが言った。
ピピもダックも宇宙から来たお客様なの。

ふーん。
私たちも未来世界からきたお客様よ。

ほんとに
ややこしい設定だね。
と誰かが言った。


a92

ガルーダの舞が終わったら、
また去年みたいに、
みんなで踊り出すのかしら。
マンネリだけど楽しみだわ。



解説)
続きます。
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Jan 29, 2025

広場などで

a1

部屋に戻ったサラは、
あれこれ旅行の話をしている。


a2

その大きな石の門みたいな岩が、
転送装置だったのよ。
それで宇宙ステーションっていうところに
カコに連れて行って貰ったの。


a3

その装置、覚えているわ。
大昔のことだけど。
空から来る人たち専用の発着場は、
高原の別荘地の近くの山の上だったけれど、
そういう転送装置も都の近傍にいくつかあったのよ。
あれはリクガメの観察や収集のために
レプテュリアンたちが作ったの。
でも私がその装置で行ったのは
宇宙ステーションじゃなかったわ。

その宇宙ステーションは、今は宇宙連合が使っているけど、
昔はレプテュリアンたちの母船だったって、
カコが言ってたわ。古い転送装置はその名残だって。

なるほどねー。
何千年も経って、
変わったのは地上だけじゃないのね。

なんのことかよくわからない。
とメアリー=ケイトは思っている。


a4

その頃広場は割と賑わっていた。


a5

今井舞がルイを乗せた乳母車を押している。
二人でアコーディオンの音色を聴いているようだ。


a6

ベーカリーには特殊部隊の
ひげの隊長が来ていた。

今年はもう今日から春節ですなあ。
部隊訓練が重なっちゃって
人員が割けず申し訳ない。
いえいえ、こんなこともありますよ。
今年の龍の踊りは中止ということにします。

ちょっと残念。
と佳奈が言っている。


a7

ダックとピピは
子供達に話しかけられていた。

そのお人形かっこいいですね。
おじさんのマスクもすごいなあ。
コスプレコンテストできっと優勝だよ。


a8

マンゴー亭では春節シーズン用の
大きなテーブルが設置されていた。
ナディアとツナが肉まんを食べている。


a9

マスター、春節の龍の舞は中止だそうですけど、
ガルーダの踊りはされるんですか。
ああ、あれは午後から演じるつもりだよ。
せっかくのお祭りだからね。
広場の準備の方をよろしく頼むよ。
わかりました。


a91

ホテルに戻る前に、
そこのマンゴー亭で肉まん食べて行かない?
美味しいので帰って自慢できるわよ。
それは楽しみですね。
僕はチョコがいいけど、
それも食べてみたい。
とピピが言った。



解説)
続きます。
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Jan 28, 2025

ピピたちとベランダで

a1

サラはダックとピピと連れ立って
魔術劇場を経由してデジャに戻ってきた。

あら、今度はまた変わったお客さんね。
ダックって言います。
私はヴィヴィアン。よろしくね。
お父さんたちは?
まだホテルにいるみたい。
よほど気に入ったのね。


a2

サラは、ルビーに会いにベーカリーに行った。

ルビー、あなたとフレイムが、
ジャングルの洞窟で
二人の宇宙人を助けたことがあったでしょ。
お礼を言いたいっていうんで、
お連れしたの。

ふーん。どこに?

ドルフィンの二階のベランダで待って貰っているわ。
ちょっと目立つので、
あまり人目につかないようにしてるのよ。

私もついて行っていい?
とアイスが言った。

もちろんどうぞ。
あなたなら驚きそうもないから。


a3

一行が洗濯物干し場のベランダに行くと、
ダックが座っていた。

お久しぶりです。その節は
お世話になりました。
あ、もう一人の方は?

フレイムね。声をかけたから
すぐ来ると思うわ。
とルビーが言った。


a4

サラがバッグのチャックを開くと、
中からピピが現れた。

こんにちわー。あの時はどーも。
と言っている。

さすがにピピの姿は、
広場の観光客も驚くと思うので、
バッグの中に入っていて貰ったのよ。
とサラが言っている。


a5

元気そうでよかったわ。
あなたたちをジャングルの洞窟で見つけたのは確かだけど、
翌朝、あなたが九官鳥に攫われて、
その後を円盤で追いかけて鳥の巣から救出したのは、
リザードでしょう。
私たちはあなたたちを見つけて一晩一緒に過ごしただけ。

その話ね。私の体験とも辻褄が合うのよ。
とアイスが言った。
私はジャングルの山の上で枯れかけた大きな樹木を見つけて、
魔法で元の姿に戻したの。
そこに大きな九官鳥の巣があったらしくて。

そうですそうです。
私を攫ったのはその九官鳥で、
山の上の大きな木の巣の中に囚われていたんです。
とピピが言った。

それは奇遇でしたね。
ともあれ、あなたたちが見つけてくれなければ、
私たちは暗い洞窟の中で
ジャングルの獣たちの餌食になっていたでしょう。
やはり命の恩人に変わりはないのですよ。
とダックが言った。

ものは考えようねー。


a6

やがてフレイムがやってきた。
懐かしいわね。
ピピ。あなた洞窟の前で焚き火した時、
しきりにチョコを食べたがっていたでしょう。
これはお手製のチョコパフよ。


a7

なななんと。
フレイムさん、僕の言葉覚えていて
くれたんですか。

ピピは感激している。


a8

ちょっと失礼。
と言って立ち上がると、
サラはドルフィンの
二階の部屋に通じるドアをノックした。


a9

あらサラじゃない?
どうしたの。
ニッキー、悪いけど、
このバッグの中の私の服預かってくれない?
今、バッグだけ必要なの。
いいわよ。


a91

ピピさん、ダックさん、
このバッグ、差し上げるので、
町を見物するなら人目につくから、
ピピさんはバッグの中に入って、
ダックさんに運んでもらってね。

ああ、お気遣いありがとう。

帰り道は私がエスコートするわ。
本部に呼び出されて行けなかったけど、
あのホテルに泊まってみたかったし。
とアイスが言った。

また留守するつもりね。
とルビーが言った。


a92

サラは部屋に戻ってきた。

おかえりー。
2泊三日のアフリカ旅行からご帰還ね。
あれ旅行バッグどうしたの?
と言われている。



解説)
続きます。
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Jan 27, 2025

夢と翌朝

a1

その夜、サラは移動と食べ過ぎの疲れもあって、
ぐっすり眠った。


a2

ここは海底のようだ。
カニに似た生き物がいる。


a3

これは合成に失敗したAI画像のようだが、
巨大なカニのようにも見える。


a4

その時背後からふわっと。


a5

サラは組み敷かれてしまった。
うう。


a6

息が苦しくなって目が覚めた。
ベッドから起きて外を見ると、
夜が明け始めていた。
ハヨーハヨーという鳥の声がする。


a7

シャワーを浴びて、
着替えてロビーに行くと、
カコとルースの姿が見えた。

おはよ。早起きなのね。


a8

ホテルにも一泊したし、
ルースの調査も私の目的も果たせたから、
宇宙ステーションに戻るわ。
とカコが言った。

月の地下都市で、
レプテュリアンたちの合同会議がもうすぐ開かれるの。
リザードたちの、このホテルを、
特例で宇宙連合からの観光客向けに使用させて欲しい、
という議案も審議されるはず。
もっともそれは彼らレプテュリアンたちの内部規約の話で、
許可されなくても、私たち異星からの
親善大使には適応外なんだけどね。
でもリザードたちのために証言してあげてもいいと思っている。
あなたともお友達になれたし、
あのお店の肉まん美味しかったから、また遊びにくるわ。

僕も犬猫猿鳥同盟に加入したので、
またお茶を飲みにきますよ。
とルースが言った。


a9

サラも、恩人のルビーとフレイムに会いたいという、
ピピとダックを案内がてら町に戻ることにした。

別れ際にサラは、カコに
深海で奇妙なカニに襲われる夢を見たことを話している。

それは、きっとあの卵を食べ過ぎたせいよ。
私もたまに見るわ。
とカコが言った。



解説)
続きます。
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Jan 26, 2025

ホテルに帰って

a1

サラたちはホテルに戻ってきた。

シーザーが声をかけている。
サラさん、お散歩からお戻りですか。
あ、あそこにいるのは。

やっほー。洞窟ではお世話になったねー。
とピピとダックが言っている。


a2

いらっしゃいませ。
予約してないんだけど、
私の友人二人なの。お部屋空いてるでしょ。
空いておりますとも、
リンリンがご案内します。

あ、部屋に行く前に食事いただけないかしら。
チョコパフが食べたいんですけど。
わかりました。
リンリンがご案内いたします。


a3

ピピとダックは、
さっそく注文したチョコパフを食べている。

君はチョコレートが好きだねえ。
この星のチョコは特に美味しいんだ。
最初に一人で食べに来たのはもう19年前だよ。
そんなになるの?
うん。盗んじゃったから、
人に捕まりそうになったけど。


a4

リンリンがお代わりを運んできた。

ねえ、君は去年、洞窟に落ちた僕たちを
助けてくれたリンリンだよね。
はい。そうです、よく覚えてますよ。
大きなゴリラのシーザーにはホテルの前であったよ。
他の二人の人、ルビーとフレイムは元気なの。
会っていませんが元気だと思いますよ。
せっかく来たから会ってお礼が言いたいなあ。
ここからは遠い町に住んでいますが、鏡の扉を使えばすぐ行けますよ。
鏡の扉ってレプテュリアンたちの使う転送装置みたいなもの?
似たようなものだと思いますよ。


a5

サラとカコがホテルのロビーに行くと、
ルースとドビーが談笑していた。
どうやらルースはホテルのスタッフたちと
親しくなったようだ。


a6

カコ。ピピやダックを連れてきたの?
連れてきたというより、
ピピにあなたがくれたチョコパフをあげたら、
どうしてもホテルに来たいっていうから案内したの。
ピピはチョコに目がないからなー。

あの、アヒルみたいな顔の人、
ダックっていうんですか。
あの人も犬猫猿鳥同盟に入ってくれないかなあ。
とドビーが言った。

どうかしらね。
何も変わったことはなかった?
ハリーさんたちは?

ハリーご夫妻ならまだお部屋にいらっしゃいますよ。
とドビーが言った。


a7

サラとカコはハリーたちの部屋を訪ねた。

えー、町に行ってお姉さんに会って、
それから戻ってきて、
あの転送装置を使って宇宙にも行って来たの?
すごい行動力ね。
あ、ハリーならベランダにいるわ。
とカーミラが言っている。


a8

サラはハリーにも、カコが姉に会えたことや、
転送装置を使って行った宇宙ステーションの
酒場でレプテュリアンたちに会ったことなどを、
大雑把に報告している。


a9

レプテュリアンたちの他にも、
姿形の違う色々な星出身の人がいて、
みんな宇宙連合っていう組織に加入していて、
この星にも観光で来てるっていうのは驚きだったわ。
リザードやシベールは
ここを観光に来る宇宙人向けのホテルにしたいっていう
考えがあるみたいだけど。

あの二人はレプテュリアンの中でも特別なのよ。
二人とも何千年も生きていて、
かって人類の魔族と交流があった時代のことを覚えている。
その時代に使われていた古い転送装置のことを、
私に教えてくれたのも、その時代の記憶があったからよ。
一般のレプテュリアンたちはもう
そんな時代があったことも知らない。
あなたたちもそうでしょう。

カコさん、あなたはご存知なのかな。

いいえ、私は宇宙連合の親善大使で彼らの担当になってから、
彼らの母星にある古い資料を調べてわずかなことを知っただけ。
彼らの母星はずっと遠くにあるの。
私は最初はその星に赴任していたんだけど、
昔の彼らの宇宙進出時代の名残のような星が、
今でも銀河系の辺境にあるって聞いたの。
でもその星は特別な星で、なぜか管理局の本部が置かれている。
だったら姉がその星にいるはずだって思って
やって来たのよ。

私たち魔族にとっても、
その昔、魔族だけが住む華やかな都があったという話は、
不確かな伝承でしかありませんでした。
去年頭蓋骨からフミコという女性が蘇生するまでは。
この前彼女に案内されて、古い都の遺跡を訪ねたのですよ。

どんな世界にもロマンがあるのね。



解説)
続きます。

ピピが最初に登場するエピソードは、
2009年8月17日「不思議な体験」
に描かれています。

ルビーとフレイムとシーザーとリンリンが
ジャングルの中でリザードと出会い、
ピピとダックを探して欲しいと頼まれる話は、
2024年9月10日「休暇旅行へ そのろく」から、
9月14日「シーザーの家で」まで続いています。
Posted at 21:03 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 25, 2025

バー・エデン そのさん

a1

リザードも席について話している。

なるほど、お姉さんにも再会できて、
あの広場の店の肉まんも食べられましたか。
観光を楽しまれているようで結構なことだ。
ところで、あのホテル、
できれば公式に観光用に利用できればと
思っているんですが、どうでしょうか。

私まだ泊まる前に帰ってきた状態だからね。
これから戻って1泊してから感想を教えるわ。
でも印象は良かったわよ。

やはりね。楽しい感想をお待ちしてます。

リザードさん、ご自身でお泊まりになってみればいいのに。
とサラが言った。



a2

ああサラさん。
そこがちょっと微妙なところなのです。
私たちレプテュリアンは、自ら人間や魔族との接触を禁じています。
ところが一方で宇宙連合に加入して以来、
いくつかの友好惑星文明から、
あの星を観光したいという要望があるんです。
大抵円盤に同乗してもらって上空から私たちが案内するんですが、
中には地上に降りたいというケースもある。
それで安全な場所にホテルがあれば好都合なわけです。
あのホテルの立地はアフリカのジャングルの中で最適。
しかも至近に私たちが大昔に使っていた転送装置もある。
その上、ホテルは人間や魔族ではなく、精霊の化身や
魔法生物たちが運営しているから、無用なトラブルも避けられる。
ただし。
ホテルには当然、人間や魔族も泊まりに来るでしょうから、
もし私が泊まりに行けば、そこで接触が生じる。
今の状態では、それが規約違反となるわけです。

すごく長い説明だったけど、ご事情はわかったわ。
とサラが言った。

もし、ルースやカコがホテルに泊まって
快適に過ごされたという前例があれば、
全体会議で外惑星からの観光客用にホテルの使用を
例外的に認めるという決定が下されるための
有力な理由づけになるわけです。
そうしたら観光客をガードするという名目で、
晴れて私も泊まれるようになるでしょう。

結局、鶏を調査したいというルースやそれに付き添った私は、
あなたの深謀遠慮の構想に利用されたわけね。
あ、全然非難してるわけじゃないのよ。
すごくいい構想だと思うし、
あなたの立場なら私でも同じことを考えたかもしれない。
とカコが言った。


a3

そこにシベールがやってきた。

おいおい。帰ってこないと思ったら、
こんな店の奥で油を売っていたのか。
おや、カコと、たしかサラさんだったね。


a4

四人は隣のテーブル席に移動した。

ふーん。サラさんたちは
あの町からアフリカまで固定式の魔法の扉で
移動したんだって。
あの星の科学文明はまだまだ未熟だけど、
魔族の連中のやることはやはり別みたいだな。
もっともフミコだけが特別なのかもしれないが。
いや、ヴィヴィアンという
蘇生の魔術を使える悪魔もいたな。

シベールさん、お言葉ですど、
その固定式の魔法の扉を作ったのは
フミコでもヴィヴィアンでもなくて、
アイスっていう普通の人間の女性よ。
アイスはフミコから呪力を授かったの。
とサラは言った。

アイスか。彼女がそんなに変わったか。
蘇生してフミコの呪力を授ける力が
パワーアップしたんだ。
普通の人間が呪力を持つようになると、
これはあの惑星の文明全体が
やがて大化けするかもしれないな。
とリザードが言った。

姉が言ってた通り、
面白そうなことが起こってるのね。
とカコが言った。


a5

そこにダックがやってきた。

こんにちわ。みなさん。
立ち聞きする気はなかったんですが、
僕の耳は結構なんでも聞けちゃうんで。


a6

実はさっきピピが、チョコパフを
カコさんからいただいたんですが、
そのあとで、あのチョコパフは、
ホテルで朝食にもらったって言ってましたよね。
そのことをピピに話したら、
絶対そのホテルに泊まりに行きたいって言い出して。
良かったら連れて行ってもらえませんか。


a7

ピピ。
君はあの星で九官鳥に攫われて
危うく光もののコレクションに
されるところだったんだぞ。

ホテルは安全なんでしょう。
一度襲われた僕が泊まれば、
ホテルが安全だっていう
いい証明になるよ。
とピピが言った。

話を聞いていたのか。

ピピはチョコパフが食べたいだけなんでしょうけど、
いいんじゃない。私たちと一緒に行きましょう。
ダックさんもいらっしゃる?

お供しましょう。
ホテルがすでに複数の友好惑星文明の
観光に使われているという
既成事実があれば全体会議で有利ですよ。

話を聞いていたのか。


a8

かくて4人はバー・エデンを後にして、
転送装置に向かった。


a9

4人は地球に移動してきた。



解説)
続きます。
Posted at 20:24 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 24, 2025

バー・エデン そのに

a1

そこに
先ほど森の見えるカウンター席に座っていた
男性がやってきた。

やあミラ、髪型変えたのかい。

え、それって人違いよ。
私はミラの妹のカコ。
姉とは双子の姉妹なの。


a2

ななんと、それは失礼しました。
僕は管理局の時間管理部のウェルズと言います。
ミラとは長年の付き合いで、
情報管理部の彼女がここにくるなんて、
珍しいなあと思い、
つい気安く声をかけてしまったんです。
それにしてもよく似てるなあ。


a3

ウェルズはカコに勧められて席についた。

姉とは今日会ってきたばかりなの。
そこのサラさんに案内してもらって。

そうですか。
あの惑星にはレプテュリアンたちの円盤で?

いえ。彼らの古い転送装置を使ってね。

なるほど。あれを使ったんですか。
でもミラたちが住んでいるのは
確か管理局の本部のある領域の至近の町。
その近くに転送装置が残っていましたっけ。

そうじゃなくて。
とサラが口を挟んだ。
私たちが使った装置があるのはアフリカ。
そこから町までは魔法の扉で移動したのよ。

なるほど。そういうわけでしたか。
実はあの町では、以前遭難したロボットたちが、
帰還用に作った転送装置が、人間に贈られたことがあって、
その転送装置が盗まれるという事件があったんですよ。
その時、盗まれた転送装置はレプリカにすり替えて
事なきを得たんですが、それでつい
装置のことが気になったんです。

しかしあの星の魔族が作るという魔法の扉が
普通に移動手段として使われてるとなると、
結構厄介だなあ。


a4

あら、管理局の時間管理部って
普通の転送とは関係ないんじゃないの。
あなた方の専門はタイムパトロールでしょう。

いやいや、関係はあるんですよ。
あれが逃走に使われるとまず追跡が困難なんです。
それに魔法の扉がもし時間の扉のようなものに進化したら
この宇宙の時間の秩序は全面的に乱れてしまう。
今でもタイムマシンを使った犯罪については、
半ば野放し状態なのが実情ですが。

管理局も大変そうね。そういえば、最近
あの星では魔術師が増えて、魔法も派手になったって
姉が言ってわ。


a5

私には魔法のことは全然分からないけど、
確かにフミコやアイスやヴィヴィアンを見てると、
なんでもできちゃう気がするわね。
とサラが言った。

あ、サラ、それみんな食べちゃったの。
ええ、癖になるお味ね。


a6

じゃあ、僕はそろそろ仕事に戻ります。
と言って、ウェルズが席を立った後、
ウェイターがおかわりを持ってきた。

ねえ、ところでカコ、
あなたは、ここの常連みたいだし、
レプテュリアンとも親しいんでしょ。
どこか遠くの星から、はるばる地球に、
観光に来ただけとは思えないんだけど。


a7

鋭い質問ね。
でも観光に来たのも、ルースの調査に
付き合ってきたのもみんな本当のことよ。
ただ話していなかったこともある。

あなたがペンギン前で席を外していた時に、
姉たちには話したんだけど、
私は管理局からのスカウトを断った後、
宇宙連合にスカウトされて就職したの。
というか、宇宙連合に加入している星からは、
親善大使のような形で何人か選抜されるわけ。
微妙に政治的なことだけど、
連合にしてみれば人質みたいなものかもね。
その代わり連合の友好関係の象徴だから、
特権的な身分が保証される。
仕事は他の加盟文明との交流の促進。
基本、異星人と楽しく交流していればいいのよ。
私の担当がレプテュリアンたちの文明になってね。
それでここにいるっていうわけ。
ルースや、さっき会ったピピも私と同じ身分よ。
友好親善大使みたいなものだから、VIP待遇。


a8

なるほどねー。
そんな大使に選ばれたら楽しそうね。

あなたの星の文明は宇宙連合に加入してないし、
加入できる文明段階に達する前に
滅びるんじゃないかとも思われてる。
レプテュリアンたちが保護観察している状態なの。
あ、それはレプテュリアンたちの言い分だけどね。

そんなこと言ってるの?
聞いたことなかったわ。

レプテュリアンたちが連合に加入する時、
あなたたちの星の扱いがネックの一つだったのよ。
彼らは今でも月の裏側や南極に地下都市を作っている。
それが異なる惑星文明への植民計画や、
侵略行為だと見做されるかどうかで、
かなり激しい議論があったんだけど、
人間や魔族と直接接触しないという内部規約を作り上げて、
なんとか加入を認められた。

ふーん。
複雑な事情なのね。


a9

そこにリザードがやってきた。

カコ、もう帰ってきたのかい。
ホテルの泊まり心地はどうだった?
あ、君はサラだったね。

あらリザード。
噂をすればなんとやら、
って、ことわざがあったわね。
噂をすればトカゲだっけ。

それは違うだろう。



解説)
続きます。

ウェルズの話していた
転送装置盗難事件の話は、
2023年10月24日「盗まれた転送装置」
から始まっています。
2023年10月27日「盗まれた転送装置 そのよん」
で盗難事件は決着しますが、
犯人であるブラウンが仮想世界に逃げて、
追って行ったウェルズと対面する
2023年11月17日「ブラウンの回想 そのさん」
までで事件が最終決着しています。
仮想現実体験装置の世界の別の話や、
ブラウン(ウェルズの過去の分身)が
登場するのでややこしいのはいつもの通り。
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Jan 23, 2025

バー・エデン

a1

奥のいつもの席空いてる?
空いてますよ。
どうぞごゆっくり。


a2

店内にはレプテュリアンたちがいる。

あれはリザードとシベールね。
知ってるの?
このお店の常連なの。


a3

あれは。
店内であなたたちの星の映画を見てるのよ。
映画のコスプレをしてるマニアたちね。


a4

さらに店の奥に進むと、
カコは、鶏頭の人に声をかけられた。

あ、カコさん、
おや。ルースは一緒じゃないんですか?


a5

ルースはまだ惑星にいるわ。
私だけちょっと戻ってきたの。

それで鶏の調査はどうでした?
残念だけど、関係なさそうよ。
そうでしたか。

あ、ピピさん。
いいものあげる。
そういうとカコはテーブルの皿を手に取ると、
コートのポケットから取り出した
チョコパフを乗せて差し出した。

これホテルでもらったの。
あなたチョコが大好物でしょ。

ピピは喜んでいる。


a6

二人は店の奥のテーブル席についた。

今のチョコパフは?
あなたがホテルでコートを置きに
部屋に戻って行ったとき、
ルースからわけてもらったの。
ホテルで朝食に出してくれたんだって。
そうだったの。

ねえ、この席から外が見えるけど、
あれ、森でしょう。とてもここが
宇宙ステーションの中とは思えないわ。


a7

そこが良くて、
いつもこの席に座るのよ。
あれはホログラム。
宇宙空間で、
星ばかり見てるの飽きるでしょう。
あそこの席の人みたいに、
ひととき故郷の地上の風景を偲んだり。
まあ、楽しみ方はそれぞれだけどね。


a8

ウェイターのレプテュリアンが
やってきた。

カコさん、
いつもの、おもちしました。
ありがと。


a9

これは何?
私の故郷の星の深海で採れる
甲殻類の卵よ。

サラは一粒食べて
沈黙している。



解説)
続きます。
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Jan 22, 2025

宇宙ステーションへ

a1

あそこって、
もしかして転送装置で行くの?
そうなの。
ちょっとした酒場なんだけど、
宇宙ステーションの中にあるのよ。


a2

私と同じように
この上に乗ってね。
と言い終わると、カコの姿は消えていった。


a3

サラは言われた通り、
発光しているプレートの上に乗ってみた。


a4

ふっと一瞬意識が途切れ、
気がつくとそこは。


a5

無事に転送できたようね。
まっすぐ歩いてこっちに来て。
とカコが呼んでいる。


a6

ここはステーションの下層の隅っこの方だから
ちょっと歩くわよ。とカコが言っている。


a7

随分大きな宇宙ステーションなのね。
元はレプテュリアンの母船だったんだけど、
今では宇宙連合が改造して使っているからね。
彼らの古い転送装置があるのは昔の名残。
宇宙連合って?
あなたたちの星だと国連とかそういう感じかしら。
銀河系宇宙の様々な惑星文明の連合体。
あ、姉の勤めている管理局とは全く別組織よ。
あれはあれで結構厄介なの。


a8

この向こうはどうなってるのかしら。
そこのボタンに触ってみて。


a9

サラがボタンに触れると
白っぱく発光していた窓の
向こうの視界が開けた。

なんか人がテレビ見てるみたい。
そこは制御室のひとつね。
会話中なのよ。


a91

あの突き当たりのドアの向こうが
宇宙酒場。
通称エデンって呼ばれてる。


a92

カコがドアの前に立つと
センサーが稼働して、
音もなくドアが開いた。


a93

やあカコさん
いらっしゃい。
という声がした。



解説)
続きます。
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Jan 21, 2025

ホテルへの帰路

a1

サラは自分の部屋からカコたちのいる
ペンギン前に戻った。


a2

おかげで姉と久しぶりにゆっくり話ができたわ。
これからどうしましょう?
来る時に通りがかった広場を見物してみたいな。


a3

二人は広場に戻った。


a4

カコは大道芸人たちの歌と演奏を聴いている。
カコさんたちの住む星にも音楽はあるんですか。
あるわよ。音楽や詩は多くの文明で共通しているの。


a5

二人はマンゴー亭で休憩することにした。


a6

このお店の食べ物のことは、
リザードからも聞いていたわ。
確かに癖になりそうな味ね。


a7

そうでしょ。

うちの肉まん目当てに
広場に通ってくる観光客もいるんですよ。
とレイが言っている。


a8

やがて二人はアフリカに戻ってきた。

これお土産です。
と言っている。


a9

サラには、すごくお世話になっちゃったわね。
お礼に何かしたいんだけど。
お礼なんて。

私の気がすまないの。
そうだ。あそこで一杯飲みましょう。
あそこって?



解説)
続きます。
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Jan 20, 2025

ボスの胸像

a1

カコとミラの話は弾んでいた。
この星に管理局の本部があるって、
レプテュリアンたちは知ってるの?
当然知ってるでしょうけど、特に付き合いはないのよ。
この星の生物種と異星人の交流には基本的に管理局は関与しない。
他にやることがたくさんあって、
そういう細かい話はパス。
私たちがここに引っ越してきたのは、
2023年の初頭のことだけど、
至って平和なものだね。
とバグが言った。


a2

私たちは特に人間たちとも親密に交流もしないし、
ここで時の推移を見守っているだけ。
それでも今ちょっと注目しているのはこの星の魔族の魔法。
魔術師が増えたり、近年だんだん派手になってきているの。
面白そうだねー。

a3

あ、お話中悪いけど
私お客さんが部屋に来て待ってるらしいので、
一旦部屋に帰ります。
とサラが言った。あとでまた戻って来ますよ。


a4

サラが部屋に戻ると、
コート姿の男性がいた。
あ、この人は政府高官のSPだった人では?


a5

やあサラさん。
うちのボスが今度退任するので、
記念に胸像を作ることになりまして、
工作のお得意なサラさんに依頼に来たんですが。

お留守だったので待っていたところなんですが、
そこの奥の女性があっという間に作ってくれたんですよ。


a6

ああ、サラ。
この人急いでいたみたいなので、
魔法を使って作ってあげたの。
とフミコが言った。


a7

テーブルの上には、
町の広場を何度か訪れたことのある、
元政府高官の胸像があった。


a8

流石にそっくりにできたのね。
とサラが言っている。
ありがとうございました。
今日は新大統領の就任式があるので、
対抗してご自宅の庭で
この胸像の除幕式をされるそうです。
急がないと。


a9

そういうと元SPの男性は
胸像を抱えて立ち去っていった。



解説)
続きます。
Posted at 20:24 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 19, 2025

姉妹の再会

a1

広場では平穏な日々が続いていた。


a2

ルルが植木鉢を並べて水をやっている。

ここのスペース、
魔術劇場が戻ってくるんじゃないですか。
その時はその時。
ここ殺風景だからね。


a3

佳奈は和服を着替えて
新そうなセーターを着込んでいる。
そのベレーは?
かっこいいでしょう。
倉庫にあったんです。


a4

サラとカコは鏡の扉を通って
デジャに現れた。

あらサラ。
もうホテルから戻ったの?
ハリーたちは元気だった?
そのお連れの方はどなた?

質問は一つづつ。
ご両親はお元気でしたよ。
こちらはカコ。
遠い世界から観光でみえたの。
あ、この人はヴィヴィアンと言って、
ハリーご夫妻の娘さんよ。

どうぞよろしく。


a5

二人はデジャを出て、広場を横切って
喫茶ペンギンに向かっている。


a6

サラさん。
と舞が声をかけた。
男の人がサラさんを探していましたよ。
なんか彫像の制作を頼みたいって言ってました。
サラさんたちの部屋の場所を教えてあげたんですが。
ありがと。
あとで部屋に帰ってみるわ。


a7

二人は高台の休憩所を通過している。

起伏があって風光明媚なところね。
そう見える?


a8

二人は喫茶ペンギン前の空き地に到着した。
いつものことで、
屋外のテーブル席でバグとミラが
お茶を飲んでいた。


a9

あら、カコじゃないの。
こんなところに現れるなんて。
何年振りの再会かしら。
とミラが言っている。


a91

忘れちゃったけど随分になるはずね。
お姉さんが管理局に就職してから、
ずっと会ってなかったから。
お姉さんがどんな環境で働いてるのか知りたくて、
この星に来てみたんだけど、
ホテルでここにいるサラと知り合って、
お姉さんのことを知ってるっていうんで、
連れてきてもらったの。


a92

ふーん。観光旅行のついでか。
いいわねー。私はここの元倉庫に住んで、
管理局の本部に勤めてるのよ。
毎日じゃないんだけど。

いつもここでお二人でお茶飲んでますよね。
とサラが言った。

そう見えるでしょ。
大抵そうなのよ。


a93

それにしても、管理局は
どうしてこの星に本部を構えたのかしら。
銀河系の中心部から3万光年も離れた辺境でしょう。
この星の生物種の文明も
特別に高度っていうほどじゃないみたいだし。

位置も距離も文明の程度もあまり関係ないのよ。
管理局のある領域は厳密にはこの宇宙とも別世界。
多種多様な異世界との交差点のような空間にある。
本部をこの銀河系宇宙のどこに置くかは
ほとんど局長の趣味なんじゃないかな。
あああの人ね。天使族の。
お姉さんをスカウトしにきた時、
一度会っただけだけど、あの時私も勧誘されたのよ。
ふーんそうだったの。
基本私たちって顔だけじゃなくて
考え方も似てるからね。
そーなのかなー。
などと二人の会話は続いていた。



解説)
続きます。
Posted at 20:32 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 18, 2025

ホテルでの会合

a1

サラたちがハリーたちの部屋に行くと、
フラハが何やら話していた。
サラがカコとルースを紹介し終わると、
フラハが再び口を開いた。


a2

さて、いまの話の続きだが。
私がこの土地にやってきて
先住部族の長老から、やがてやってくる精霊の
出現を待つようにと言われて、
この土地を譲り受けたというところまで話したね。
空き地にあるあの岩はその頃からあったんだ。
変わった形をしたすごく目立つ岩だろう。
元々先住民の祭祀に使われていたらしいが、
そんな言い伝えだけが残っているような状態だった。
出現したというプレートは、ここに来る前に
シーザーと確認してきたが、確かに
私もみたことがないものだったね。


a3

どうやらみなさん、
あの転送装置のことで、お騒がせしているようですね。
とルースが言った。
実は、あの岩にプレート部分を出現させたのは私たちです。
昨晩、この星に来るのに使ったんですよ。
あの岩全体が転送装置になっているんです。

装置があの場所に設置されたのははるか昔のこと。
この星の魔族の住む都が栄えて、
レプテュリアンと交流があった頃のことだと聞いています。
その頃には他の天体からの訪問者も多く、
ああした転送装置があちこちに作られていたのですよ。
そのほとんどは破棄されたり、その存在さえ
忘れ去られてしまったようですが。


a4

ふむ。今のご説明でプレートが出現した理由がわかりました。
ところで転送装置とおっしゃいましたが、
あなた方は、その装置でどこか別の場所から移動してこられた。
それは、われわれ魔族が魔法で出現させることのできる
鏡の扉によく似ているようですな。


a5

確かに似てるわね。
あの転送装置は、レプテュリアンたちが作ったもので、
その頃彼らと交流があったあなたたち魔族の使っていた魔法から
転送の原理のヒントを得た可能性はあるわ。
ただあれはレプテュリアンの転送装置としては大昔のもので、
あの巨大な岩全体の内部が精密機械になっているの。
今ではもっとコンパクトなものが使われている。

呪力だけで生み出せる鏡の扉に
近づいていると言うことですかな。

そんなふうにも言えるわね。
ただし、広大な宇宙には無数の異なる文明があって、
その中には生物進化の果てに生まれた
想像を絶するような高度な精神文明も含まれます。
精神ということでいえば、あなたたち魔族の持つ呪力もそう。
レプテュリアンたちの一部はまだその秘密を知りたがっている。
でもご自分たちの尺度だけで世界を押しはかるのは危険ですよ。
ご自身にとって危険というだけですが。

カコさん!
いま思い出したんだけど、
あなたって、顔立ちが管理局に勤める
ミラっていう人にそっくりね。
おっしゃってることも、壮大なようで、
さりげなくアドバイスするところは局長にも似てる。
とサラが言った。

あら。
ミラや管理局の局長を知ってるの?

ええ、特に局長とは仲良しよ。
去年は草冠をプレゼントしてもらったし。

ふーん。ミラは私の姉なの。
姉が管理局にスカウトされて随分になるけど、
どんな環境に派遣されてるのか
ずっと興味があってね。
ルースがこの星の鶏のことを調べたいっていうので、
便乗してきたのよ。


a6

お二人とも宇宙から来られたんですね。
転送装置で来られたって驚きですけど、
転送装置のすぐ近くにこのホテルができたって、
ご存知だったんですか。

ええ。
一応この星にずっと住み込んでるのはレプテュリアンたちで、
私たちとは友好関係にあるの。過去の内紛の結果、
彼らはこの星の人間や魔族との直接的な接触を
自分たちには禁じているけど、それは建前ね。
ご存知だと思うけれど、彼らは透明なマントを着て、
あなたたちをよく観察してるし、接触している人もいる。
この星にルースの顔立ちに似た鳥がいるっていう情報も
そんなレプテュリアンから聞いたのよ。
ホテルができたことも
リザードっていうレプテュリアンから聞いたの。
とカコが言った。

リザードって、あの人だね。
と一同が言った。

みなさん、リザードも知ってるの?
知能の高い類人猿や魔法生物がやっているホテルだから、
歓迎して泊めてくれるだろうって言ってたわ。


a7

なるほどねー。
リザードがずっとホテルのことを観察してたなら、
犬猫猿鳥同盟が招待券風割引券を送って、
ハリーさんたちや私がホテルに泊まりにくることも
知っていたのかもしれない。
そこにカコさんとルースさんが泊まりに来たら、
当然私たちは出会うことになる。。。
リザードはどこまで予想してたのかな?

サラ、考えすぎじゃない?
あなたがホテルに泊まりに来たのはたまたまでしょ。
私たちもそうよ。誘ってもヴィヴィアンは来なかったし。
とカーミラが言った。


a8

やがて会合が終わった。
ルースはフンボルトに勧誘されている。

犬猫猿鳥同盟に入りませんか。
宿泊料金無料の特典が付きますよ。
それって何する団体?
時々集まってお茶を飲む会です。


カコ、あなたはこれからどうするの?
よかったらミラのところに案内するわよ。
そうねえ。
姉に内緒で来て、
環境の様子だけ見て帰るつもりだったので、
姉がどこに住んでるかも調べていなかった。
サラが、姉を知ってるとなると、
会ってみてもいいかな。


a9

サラは、とりあえずコートやマフラーを羽織って、
カコをミラのもとに案内することにした。
二人は鏡の扉のあるフラハの家に
やってきた。

やあ、先ほどはどうも。
あの鶏みたいな顔の人は一緒じゃないのかい?
ルースは、自分によく似た魔法生物たちに
興味を持ったみたいで、ホテルに残るって。
人間たちの町に行くことも気にしてたみたい。

あの町の広場界隈なら、
一年中なんでもありのコスプレコンテストやってるから、
変わった顔してても誰も気にしないのに。
ふーん。楽しそうなところね。
じゃ行きますか。



解説)
続きます。
Posted at 20:23 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 17, 2025

調査の結果

a1

サラたちは
フラハの家の前を通過して、
マークの集落にある
豹変亭を目指している。


a2

メインストリートにさしかかった。
もうこの先よ。


a3

豹変亭に到着した。
だれかいませんかー。


a4

店主のローズが出てきて、
サラから事情を聞いて、
ルースに鶏を見せてくれた。

毎朝卵を探すのが大変だけど、
それがけっこう楽しいのよ。
と言っている。


a5

ルースは真剣な面持ちで
雄鶏を手にして食い入るように見つめている。
様々な思念を投射しているようだ。

あまりの真剣さに、
ローズから、よろしければ
その雄鶏差し上げますよ。
と言われている。


a6

調査結果はどうでした?
残念ながら、頭部の見かけは
私とそっくりですが、
これはという構造的な
類縁関係は見つかりませんでした。

構造的な類縁関係ですか?


a7

サラさん。
もうお気付きかと思いますが、
私もルースも別々の星から来たのです。

ルースの住む星では、
みんなルースのような外見をしています。
この星に、ルースたちと頭部がそっくりな、
鶏と呼ばれる鳥類の生物種がいると聞いて、
はるばる調べにきたと言うわけ。

そーだったんですか。

残念だけど、別々の星で進化を遂げた生物種の
外見だけがよく似ると言うのは、よくあることね。
私が生まれ育ったのも
この星からはるか遠いところですが、
この宇宙ではヒト型生物に分類されて、
外見はあなたたちとそっくり。

そーなんですね。
そういえばレプテュリアンの人たちも
顔は爬虫類のトカゲそっくりですねー。


a8

一行はホテルに戻ることにした。

あの雄鶏どうしたんですか。
結局お店にお返ししました。
あそこにいた方が幸せだろうし。


a9

ホテル前に着くと、
シーザーと出会った。
フラハが来て、
ハリーたちと話し合っている最中だという。



解説)
続きます。
Posted at 20:21 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 16, 2025

訪問客と話す

a1

一晩で円形の床みたいなものが出現するなんて、
誰かが魔法でも使ったのかしら。
とカーミラが言った。
ふむ。その可能性はあるな。
大きな岩の地下に埋まっていた部分が、
隆起したようにも見えるわね。

この岩のことなら、
フラハさんがご存知かもしれません。
とシーザーが言った。


a2

あれこれ考えてたら
お腹が空いちゃった。
とりあえずホテルに戻って
朝ごはん食べましょう。
ドルチェのチョコパフが美味しいのよ。
ダリオさんから仕入れたんですよ。
サラさんもいかがです?
私は外食するつもり。


a3

フラハに報告に行くというシーザーと別れて、
一行はホテルに戻った。


a4

朝食を摂るというハリー夫妻と別れて
サラがロビーに行くと、
朝方見かけた二人連れがいたので
サラは思い切って声をかけてみた。

こんにちわ。
私はサラと言います。
いいお天気ですね。
こちらへは観光ですか?


a5

観光?ああそうね。
私はカコっていうの。
よろしくね。
と女性は帽子をとって挨拶した。


a6

サングラスを外したその顔は
誰かによく似ている気がしたが、
サラは誰だったか咄嗟に思い出せなかった。


a7

僕はルース。
僕も観光みたいなものだけど、
ちょっと調べたいことがあって
ここに来たんです。
と鶏顔の男性は言った。


a8

調査ですか。
私も昨日から観光で来てるんですけど、
今日の予定は特にないの。
何かお手伝いできれば。

それはありがたい。
ここには鳥という動物種がいるそうですね。
僕の顔によく似た鳥を知りませんか。
鶏と呼ばれているそうです。
その鳥を調査したいんです。

変な調査だと思われるかもしれませんが、
ルースにとっては結構大事なことなの。


a9

サラはルースの調査を手伝うことにした。
早速別棟にクロを訪ねて、
話を聞いている。

この辺で鶏を飼っている家ねー。
そうそう、卵を取るために豹変亭で
放し飼いにしていたはずよ。



解説)
続きます。
Posted at 20:30 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 15, 2025

空き地の散歩

a1

予約してないんだけど、
お部屋空いてるかしら?
はい。すぐにご用意できます。
ご希望は?
特にないのよ。


a2

リンリンが部屋に案内していった。


a3

今の人、フンボルトさんのお知り合い?
いえ。
あ、散歩に出るから、キーを預かってね。
承知しました。


a4

アフリカの空は綺麗だなあ。
とサラが空を見上げていると、
シーザーがやってきた。


a5

サラさん、今日はどちらへ。
特に決めてないの。
あ、さっきロビーから見てたら、
ホテルの裏に空き地があるのね。
ジャングル地域なのに珍しいでしょう。
行ってみますか?


a6

こっちから行くんですよ。
設定が細かいのね。


a7

この空き地は、
ずっと昔に原住民が開墾したんだって
フラハさんから聞きました。
ふーん。あれはなんだろ。
この辺りでは珍しい巨石ですよ。
大昔からあったって聞いてます。


a8

あら、ハリーさんたちだ。
朝のお散歩のようですね。


a9

おはようございます。
やあサラ。
毎朝このあたりを散歩するんだが、
今朝は不思議なものを見つけてね。
この石造りの基盤のようなものは、
昨日まで、なかったはずなんだが。

ほんとだ。僕も初めてみます。
とシーザーが言っている。




解説)
続きます。
Posted at 20:22 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 14, 2025

ホテルの朝

a1

サラはシャワーを浴びて涼んでいる。


a2

ガラス戸閉めなくちゃ、
と思いながら、眠気に襲われて
サラはすとんと眠り込んでしまった。


a3

早めに眠りについたせいか、
サラは早朝に目覚めた。

綺麗な朝焼け。
どこかで鳥がハヨーハヨーと鳴いている。


a4

シャワーを浴びてシャキッとする。


a5

サラは着替えを済ませた。
今日は何しようかな。


a6

おはようございます。
よくお休みになれましたか。
おはよ。
快適だったわ。


a7

サラはロビーを見て回っている。
ホテルの裏手の一画には空き地が広がっていた。
よく見ると、ドビーとトラが
何か作業しているようだ。


a8

サラさん。おはようございます。
おはよ。
ここからはわりと見通しがいいのね。
周りはすぐジャングルなんですけどね。
あそこにドビーとトラがいるでしょう。
空き地を利用して畑を作っているんです。
朝早くから働きものなのね。


a9

そのとき、
ホテルを二人連れの客が訪ねてきた。

いらっしゃいませ。
とフンボルトが言っている。



解説)
続きます。
Posted at 20:25 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 13, 2025

滝を見て帰る

a1

涼しくていいところね。
前に来た時、
佳奈はこの淵で泳いだんだよ。
あの子らしいわ。


a2

あ、あれは何?
ジャングルでは
たまに見かけるんだ。


a3

しばらく休憩した後、
3人は滝を後にした。

泳がなかったんですね。
水着持ってこなかったからね。


a4

診療所の前を通りかかった時、
ちょうど家の前にアーネストが
葉巻を喫いに出ていた。

おや、珍しいね。
滝見物かい、と声をかけられている。


a5

挨拶が交わされ、
アーネストはサラたちを
部屋に招き入れた。

なるほど、サラさんは、
あのホテルにお泊まりですか。
そういえば数日前に
やはりホテルに宿泊中だという
カップルと知り合ったよ。
名前はなんと言ったかな。
とアーネストが言っている。


a6

アーネストはビールと
簡単な手料理でもてなしてくれた。
美味しそう。
それ何のお肉ですか?


a7

サラが集落でダリオやマークと別れ、
ホテル前に帰り着いたのは
夕暮れ時だった。


a8

サラさん、お帰りなさい。
お散歩はいかがでした?
とフンボルトに言われている。

渓流に滝を見に行ったのよ。
それはそれは。


a9

サラがジャングルの夕映を眺めながら、
部屋でくつろいでいると、
リンリンが紅茶を運んできてくれた。
思わず話が弾んでいる。


滝を見に行かれたんですって?
いいところでしょう。
ええ。
でもちょっと驚いたことがあった。
滝の上の空を円盤みたいなものが
飛んでいるのが見えたの。

ああ、あそこではよく見かけるんですよ。
実はあの滝のさらに上流の台地には、
薬草の群生地やリクガメの生息地があって、
カメ好きのレプティリアンが
円盤に乗ってよく飛来するんです。
あ、サラさん、レプティリアンってご存知ですか。

知ってるわ。
フミコのお友達でしょう。
私たちの部屋にもフミコに会いに来たことがある。

そうでしたか。円盤は彼らの乗り物なんですよ。
あ、夕食はどうされますか?
アーネストさんにご馳走になったから、
お腹は空いてないの。
さすがにちょっと歩いて疲れたから、
シャワーでも浴びて眠るわ。

了解しました。
あ、用心のためにガラス戸は閉めて
お休みになった方がいいですよ。
そうね。



解説)
続きます。
Posted at 20:24 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 12, 2025

滝へ行く

a1

ダリオさんはどこにお住まいなの?
僕の家はここから、かなり離れた山の麓にあります。
徒歩だと半日くらいかかりますよ。
でも、アイスが家に鏡の扉を作ってくれたおかげで、
今では魔術劇場経由で簡単に行き来できるんです。

ふーん。アイスともお知り合いなのね。
みんなとどうやって知り合ったのかしら。
話せば長いんですがお話しましょう。

元々私は別世界に住む魔術師で、
魔法の扉を使ってこの世界に移り住んできたんですが、
人里離れたジャングルの奥地に家を建てて
一人で暮らしていたんです。
それが去年の夏の嵐の夜に、
マークと佳奈とジョーとエルザが、
私の家に避難してきたのが出会いのきっかけでした。
話を聞くと佳奈たちも魔法の扉を使って
マークの住む村に来たという。
この世界にも魔族がいるらしいことを知って、
興味を持った私がマークの住むこの村を訪ねて、
さらにあなたたちの暮らす町まで案内され、
アイスやモモコや魔子さんはじめ、
ハリー一家や魔族の方達を紹介されたというわけです。
もちろんサラさんのお宅にも伺って、
お世話になったのはご存知の通り。
なるほどね。


a2

その時、店にマークがやってきた。

やあダリオ。そちらはもしかしてサラさん?
そうだよ。こちらはマーク。
二人は初対面だったの?

多分ね。さっきフラハの家に寄ったら、
サラっていう人がホテルに来てるって言ってたから。
とマークは言った。


a3

マークさんって、この集落を開拓した方ね。
お噂はアイスや佳奈から沢山聞いてましたけど。

僕もお噂はかねがね。観光ですか。
ええ。
何もない村ですけど、
近場であまり危険じゃない場所なら、
滝が見どころかな。
これから行ってみますか。


a4

3人は滝を目指すことにした。

僕は元々この村の住民じゃないし、
その滝に行くのは初めてだよ。
とダリオが言った。

これまで観光で来る人なんて
ほとんどいなかったからね。
これから行く滝はね、
前に佳奈たちも案内したんだ。


a5

ここは渓流沿いのお宅なのね。
アーネストっていうお医者さんの
自宅兼診療所なんだよ。
この渓流に沿っていくんだ。


a6

マークが先導していく。
滑りやすいから気をつけて。


a7

なぜか初めて見る景色という気がしないわ。
使い回しじゃないの?
え。何か言った?


a8

もうこの先だよ。
とマークが言っている。


a9

サラたちが段差を登り切ると、
一筋の白い水流が音を立てて
滝壺に流れ落ちている様子が見えた。



解説)
続きます。
Posted at 21:02 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 11, 2025

集落への散歩

a1

散歩してきたばかりのハリーたちに
負担をかけまいと、
サラは夫妻と別れてきたものの、
この辺のことはわからない。

とりあえずフロントにルームキーを預けて
出かけよう。
良い一日を。と言われている。


a2

ホテルを出ると、
ちょうど森から帰ってきたらしいシーザーと
ダリオに出会った。

二人とも去年のハロウィンの時に、
サラたちの部屋を訪れ、
シーザーには猿の惑星の着付けを、
ダリオにはアフリカの民族衣装の着付けをしたので、
サラとは顔見知りだった。


a3

サラさん、泊まりに来てくださったんですね。
そうなの。ホテルは順調みたいね。
これから散歩に行くんだけど、
このへんのこと全く知らないの。

ここはマークの集落の外れですからね。
集落までちょっとだけ離れていますよ。

ジャングルに迷い込むと危険です。
よかったら僕が集落まで案内しましょう。
とダリオが言った。


a4

良い1日を。
とシーザーが叫んでいる。

助かるわ。
ところで、ダリオさんはどうしてホテルへ?
ホテルに食品を卸すアルバイトを始めたんです。
ふーん。逞しいのね。
食品は向こうの世界から借りてくるんですよ。
それってずるくない?


a5

ここは知ってる。ホテルに来る時通ったわ。
フラハの家に抜ける道です。
道に見えないけど。


a6

フラハの家の前にでた。
会うと足止めされそうな予感がするから、
通り過ぎましょう。


a7

ここからは平坦な道が続きます。
集落の中心部までちょっとあるのね。


a8

いよいよ中心部ね。
この道がメインストリートです。


a9

ここはレストラン?
豹変亭っていう飲み屋を兼ねた食堂ですよ。


a91

一応集落に来る目的を達成したので、
二人は休憩していくことにした。

店の奥から出てきたアンドレアが、
いらっしゃいませー。
と言っている。



解説)
続きます。

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Jan 10, 2025

ホテル・ナジャで

a1

サラは着替えを済ませた。


a2

ガラス戸を開けると、
程よい熱気と風が吹き込んできた。


a3

リンリンが紅茶を運んできてくれた。
ありがと。
ハリー夫妻がお戻りになったようですよ。


a4

サラは挨拶をしに、
フロントまで出て行った。

やあサラ。
今年もよろしくね。
と言われている。


a5

散歩から帰ってきて
一休みしようと思ってたところだ。
もしよかったら僕らの部屋に来ないか。


a6

どの部屋も似た感じみたいだけど、
このテラスからは結構眺めがいいだろう。


a7

私は去年一度アイスとフミコと一緒に、
出来上がったばかりのこのホテルに
来たことがあるんですけど、
その時は山上のストーンサークルから直接魔法で来て、
ホテルを見学してすぐに帰ったので、
このあたりのことは全然知らないんです。

私たちも似たようなものよ。
去年、フミコに招待されて高台の遺跡を訪れ、
近くの山頂にあるというストーンサークルを訪れただけ。
ホテルやマークの集落のあるこのあたりには
初めて来たの。

暮れからずっとホテルに逗留して毎日散歩してるから、
少しづつ様子がわかってきたけどね。
ジャングルの中はとても無理だけど、
マークの集落だったら案内してあげられるよ。
集落の住民たちとも結構知り合いになれたし。
とハリーが言った。

ありがとうございます。
でもちょっとこれから一人でうろついてみます。
成果は明日にでも。

そう言ってサラは席を辞したのだった。



解説)
続きます。
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Jan 09, 2025

ホテル・ナジャへ

a1

サラは鏡の扉を抜けて、
フラハの家の裏庭に出た。
ここには去年の秋に一度来たことがある。
訪問者の気配に気付いたフラハが
早速室内から姿を現した。

やあサラ。
君もホテルへ?


a2

サラは招待券が送られてきたことをフラハに話している。
そうなんだよ。犬猫同盟の連中が考えたんだ。
あれはよく見ると招待券じゃなくて
宿泊料金の割引券なんだけど、
勘違いする人もいるだろうね。

やっぱりそれが狙いなのね。
でもほとんどタダ同然の格安料金よ。
犬猫同盟の連中はホテルの隣の別棟に住んで
畑作ったりして自給自足してるから、
ホテル業は趣味みたいなものなんだよ。
基本魔法生物の彼らはきっと人と交流したいんだね。
犬猫同盟って、もっと長い名前じゃなかったかしら。
ああ、正式の名称は犬猫猿鳥同盟だったっけ。
長いから略したんだ。
あ、道順はわかるかな。
ええ、ここからすぐ近くでしょ。
去年の秋に見に行ったから。


a3

サラは記憶を辿ってホテルに向かった。
近いとはいえジャングルを抜ける。


a4

見覚えのあるゲートだ。


a5

そうそう。確かこの奥。


a6

ホテルはこの突き当たりの建物。
サラの姿に気がついたリンリンが
手を振っている。


a7

去年様子を見に来た時と同じで
ホテルのフロントには
フンボルトが座っていた。

お泊まりですか。
あ、招待券風割引券をお持ちのようですね。
お部屋のご希望はありますか。
じゃあ、去年アイスたちと来た時、
見学させてもらったお部屋がいいわ。
とサラが言った。

僕がお部屋までご案内します。
とリンリンが言った。


a8

嬉しいなあ。サラさんが宿泊客第2号です。
ハリー夫妻が泊まってるって聞いたけど。
ええ。去年の暮れからずっと逗留されています。
今はお散歩にお出かけです。

みんな元気なの?
元気ですよ。シーザーは森に。
ドビーやトラは
近くの畑に出ています。
クロは厨房に。
僕は客室係です。
何かあれば呼んでください。


a9

リンリンが部屋を出ていくと
サラはドラス戸に近寄って、
ジャングルの景色を眺めた。

外は夏の日差しね。
室内は冷房が効いて快適だけど、
着替えて風を入れよう。



解説)
続きます。
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Jan 08, 2025

ちょっと動き始める そのに

a1

サラは大道芸人たちの歌を聴いている。

倖せ~ それは~ああ~
そこにいたこと~🎵

なんか懐かしい歌だわ。


a2

あ、サラ。リズの記念写真撮るんで、
悪いけどそこちょっと移動してくれない。
とボニーに声をかけられた。


a3

初七日すぎたし、そろそろ、
門松片付けちゃうそうなので。
急いで撮らないと。


a4

はいチーズ。


a5

サラはアイスに声をかけてみた。
ホテルねー。
ちょうど本部の少佐に呼ばれてるの。
残念だけど、また今度にするわ。


a6

サラは、いつもバー・デジャの
ガードマンをしているヨシフに
声をかけている。

あ、サラさん。
おめでとうございます。
どうぞお通りください。


a7

サラはデジャの常連客のアンジーや
バーテンのジョニーと
年始の挨拶を交わしている。
確か店の奥に
魔術劇場へ通じる鏡の扉があるはず。


a8

あらサラ。今年もよろしくね。
とヴィヴィアンが言った。
その格好、ホテル・ナジャに行くんでしょ。
私たちにも招待券という名前の割引券が送られてきて、
両親が泊まりに行ってるわ。
私はパス。どうも親子一緒だと、
気を使っちゃうから。
ドアはそこの隅よ。


a9

サラが鏡の扉を抜けると、
魔術劇場の室内だった。
尼僧姿のデュアンが切り花の手入れをしていた。

あ、サラさん。ハリーご夫妻は
アフリカのホテルに行ってらしてお留守なんです。
もしサラさんも、ホテルに行かれるのでしたら、
そこの扉です。フラハさんの家の裏庭に通じていますよ。



解説)
続きます。
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Jan 07, 2025

ちょっと動き始める

a1

ジェニーたちの部屋では、
3人がレーズンを食べていた。


a2

モモコは?
探偵事務所に出かけたわよ。
新年の挨拶だって。


a3

モモコは心理カウンセラーのエリスと親しく、
時々ジェーンのすむ世界の話などを
エリスに聞いてもらっている。

ふーん、これがお土産のレーズンね。
噛むと感触が干し柿みたいで美味しいわ。


a5

クリスマスとお正月を
初めてジェーンと一緒に過ごしたのよ。
とモモコが言った。


a4

そうなの。
うちでは暮れからアルが遊びに来ていて
ずっとみんなで飲み続けだった。 
今では胃薬飲んでるよ。


a6

その頃、サラたちの部屋では、
サラが旅行用バッグに衣類を詰めていた。


a7

その格好で行くの?
アフリカはこの時期も暑いんでしょう。
ええ、だから着替えを持っていくのよ。


a8

魔法の扉を出現させましょうか?
あ、魔術劇場の中の扉から行くから大丈夫。
それより同行の希望者はいないの?

今はあんまり旅行する気分じゃないんだ。
ちょっと風邪気味でね。
私は冬っていう季節を味わっていたいな。
温泉付きならねー。
などと言って、みんなは乗り気ではないようだ。


a9

結局サラは一人で広場に向かった。



解説)
続きます。
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Jan 06, 2025

ちょっと昔を振り返る そのよん

a1

ジェニーたちの部屋は、
今日も夕暮れ時。
最近、毎日似ているような。


a2

しかし似ているようで、
今日は雨が降っている。


a3

これ美味しいわ。

たまきとナオミは
お土産の大きなレーズンを食べている。


a4

今日はパソコンのモニターを見ながら
文学青年がマウスを操作していた。

何みてるの?


a5

去年の出来事の記録を見ていたんだ。
それまでの年と一番違うのは、
生成AIで作った画像との合成が多いことじゃないかな。
すごくメタっぽいレベルの真面目な指摘をするのね。


a6

私が去年の1月に生成AIサイトで作った画像を載せて
口火を切ったのよ。とたまきが言った。
今年もその延長っていうこと?
随分遊んだみたいだから揺り戻しがあるかもね。
もう飽きちゃったっていうこと?
私まだそういう世界に行ってないから、
やめるのは私が行ってからにしてほしい。
行き詰まるときっとまた始めるよ。
などと、みんなで適当に今年の予測をしている。


a7

その頃、サラたちの部屋では、
メアリーの思い浮かべた雪国の宿の幻影が、
フミコの魔法で窓の外に広がっていた。


a8

雪国の露天温泉にはお猿さんたちも
入浴しにくるの。

ふーん。


a9

私ホテル・ナジャに泊まりに行くことにしたわ。
とサラが言った。
そろそろこの繰り返しパターンを
変えないと。



解説)
続きます。



Posted at 20:24 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 05, 2025

ちょっと昔を振り返る そのさん

a1

ジェニーたちの部屋では、
日が傾き始めていた。


a2

今日は日曜日。
何もしないうちに日が暮れるわ。


a3

パソコンのモニターを
ジェニーに代わって
たまきが覗き込んでいる。

今度は何調べてるの?


a4

今の広場や住宅が出来上がってからの4年間、
いろんな異世界との接触記録を調べてみたの。

2021年はアイスとモモコの迷いの森への探索と、
ジャンのジオラマから生まれたフィギアたちの世界との接触ね。
2022年は広場にハリーの魔術劇場がやってきて、
住民に手軽に異世界体験をさせてくれるようになる。
娘のヴィヴィアンも来て魔法が普通に使われるようになった年ね。
暮れにはサラがメルティの夢の世界を体験する。
2023年は、メルティの夢の世界がらみでいろんなことが起きるけど、
6月にミューの仮想現実装置が完成して、
ツナたちの住む仮想現実世界との接触が始まる。
これもSFみたいな異世界体験ね。
2024年は、佳奈の新人研修や
遺跡探索旅行から始まったアフリカとの出会い、
マークの村との接触が大きな異世界体験。

こうしてみると、
迷いの森から始まって、
ジェーンのいる世界、ジャンの兵隊フィギアたちの村、
メルティの住む夢の部屋、ツナたちの住む仮想現実世界、
マークの住むアフリカの町が、
代表的な異世界ということになるわ。

それぞれの世界と接触した住民が違うから、
全部の異世界に行った人っていないんじゃない?
多分私どこにも行ってないよ。
とジェニーが言った。
みんな噂で聞いて知ってるだけなのよ。
記録だと、毎年新しい異世界との接触があるみたいね。
去年あたりから、魔術師も増えたりして。
私は何も起きない日常が平穏でいいけど。
そうかなあ。
今年はどうなるんでしょうね。


a5

その頃、
サラとジェットが部屋に戻っていた。


a6

あれ、あの蛇は?
広場の彫像に絡みついちゃったんだ。
あ、メアリー、
ホテル・ナジャから招待券って送ってきてた?


a7

よくみると宿泊料金割引券だったやつね。
あるわよ。
泊まりに行くの?
私は雪国の温泉付きの宿がいいなあ。


a8

雪国の温泉ってどんな感じなのかしら。
ちょっと想像してみて。
とフミコが尋ねた。
そうねえ。


a9

メアリーは情景を思い浮かべてみた。



解説)
続きます。
Posted at 21:01 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 04, 2025

ちょっと昔を振り返る そのに

a1

ジェニーたちの部屋では、
モモコがジェーンの住む世界から
帰ってきていた。


a2

私まだお屠蘇飲んでないのよ。
今ついであげるから。
このシワシワのものはなあに?
ジェーンがくれたお土産よ。
大きな干し葡萄なの。


a3

昨日から随分調べてるんだね。
何か面白いことわかった?


a4

何年かブランクがあって、
2021年になってからの記録が面白いわ。
広場のドルフィン工房を皮切りに、
2月の終わり頃にだいたい今の家の間取りが出来上がり
3月の終わり頃にカフェ・ペンギンが再開し、
探偵事務所もオーピンしたり、
4月にベーカリーが開店したりして、
町がだんだん変化していくの。


a5

ねー前から時々気になってたんだけど、
この町って何人くらい住人がいるのかしら。


a6

住人の名前を記録を記したファイルを見つけたの。
これ上から足していくと。
広場とこの界隈の住人だけで、
50人くらいかな。
郊外の住人や魔術劇場、異世界の住人、
バービーたちやジェニーフレドまで足すと。
結構な人数になるよ。


a7

その頃広場では。


a8

お雑煮とおせち食べ飽きたから、
トマトがいいね。
甘いですよ。


a9

サラはアイスとルビーに
新年の挨拶をしている。
早いねー
もう三が日も終わって。


a91

あサラ、
ホテル・ナジャから宿泊券届いた?
え、知らないけど。
届いてるはずよ。
特別料金だって。
お客さんが来ないのね。



解説)
続きます。
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Jan 03, 2025

ちょっと昔を振り返る

a1

ジェニーたちの部屋で。
ジェニーはパソコンのモニターを出してきて、
何やら眺めている。


a2

さっきから何見てるの?


a3

「人形日記」っていうブログの「目次」よ。
過去のデータが載ってるの。


a4

今年は「人形日記」が始まって、
20周年なのよ。
2005年2月28日から始まったの。
これは私が最初に写っている、
2005年の3月25日の画像。
場所はどこだろうね。


a5

古すぎる画像ね。
私も写ってるかな。
とたまきが言った。


a6

2005年4月28日の画像。
たまき、今と変わらないくらい若いね。


a7

20年っていうとすごく長いみたいだけど、
今みたいな町や、毎日何かが起きる
環境世界になったのは
3年前くらいからだよね。
途中で3年近くのブランクもあるし。

そうなのよ。
この3年くらいが明らかに異常なの。
何もトピックやテーマがなくても
毎日掲載するなんて。
そうなのかなあ。


a8

その頃広場には、
サラがジェットと一緒に、
自分の制作した蛇の彫像を見にきていた。


a9

こんなんで良かったかしら。
いいんじゃない。
ちゃんと蛇に似てるよ。
とその時。


a91

なんとダリオの置いていった蛇が
ジェットの肩から彫像に飛び乗って
絡みついて動かなくなった。


a92

ふーん。
どうやら、ずっと
そこに居たいみたいね。



解説)
続きます。
Posted at 20:22 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 02, 2025

12月のコンテストの結果など

a1

平穏な年始の広場の風景。

た~こ~た~こ~あ~が~れ~🎵
という大道芸人たちの歌声が聴こえる。


a2

子供達が凧揚げをしているのだった。


a3

人力車で郊外まで
人を運ぶ仕事を始めたソローは、
のんびりと客を待っている。

公園の管理は?
エドワードや権太さんがいるからね。
この時期はすごく暇だから、
この仕事を思いついたんだ。


a4

ルビーがマイクを持って
ドルフィンから出てきて、
アナウンスを始めた。

みなさん、新年おめでとうございます。
さっそく昨年12月のコスプレコンテストの
優勝者を発表します。
厳正中立な審査の結果、
優勝したのは、ヘンリー・ソローさんです。


a5

えー僕が?


a6

ソローは、万雷の拍手に迎えられている。


a7

これ思いつきのコスプレだったんですが、
今では実用的な仕事着になっちゃってるんですよ。
全然OKよ。
地味な車夫のコスプレっていうユニークな発想が、
高得点を得たのよ。
そういうものですか。


a8

ドルフィンの二階では
和服姿の駒井姉妹とリズが
ニッキーやペギーと話していた。

12月のコンテスト優勝はソローさんか。
お姉さんの和装も良かったのに。
私は去年のハロウィンでも優勝してるからね。
私たちの新年の和服姿は来月の結果待ちね。


a9

和服の着付けって結構大変なのよね。
リズの花魁姿よく似合ってるよ。
ボニーに記念写真撮ってもらったら?


a91

広場にアルがやってきた。


a92

年の暮れからずっと
探偵事務所で呑んでたんだけど、
流石に店にそろそろ戻らないと。
ビストロまで乗せてくれる?
喜んで。



解説)
続きます。
Posted at 20:23 in n/a | WriteBacks (0) | Edit

Jan 01, 2025

新年の風景

a1

ジェニーたちの部屋では
新年の挨拶を済ませ、
食事前にお屠蘇を飲んでいた。


a2

その盃大きくない?
お相撲さんが使うやつみたい。


a3

今年もどうぞよろしく。
あ、こちらこそ。
モモコはいないんだね。
お正月はジェーンと過ごすって言ってたわ。


a4

ペンギン前では、
エトナが、佳奈とはるなの
記念写真を撮っていた。


a5

はいチーズ。


a6

エプロン取ればいいのに。
元旦もお店開けることになって
仕事中なのよ。
交代でリズが休んでるから。


a7

広場にも新春の日差しが差し入っていた。


a8

ボニーが近所のお稲荷さんに初詣してきた
駒井姉妹の記念撮影をしている。


a9

やっぱり和服が落ち着くわ。
そうでしょ。
私たち土着の野狐ですからね。


a91

子供達はルビーから
お年玉をもらっている。


a92

ソローの曳く人力車が
リズを乗せて郊外に行くようだ。

なんだかレトロでお正月向きの風情ね。
大正ロマンね。


a93

いつもメイド服を着ているリズは
花魁のコスプレをしている。



解説)
続きます。
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February 2025
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