Feb 26, 2005

遠い夕立(1998.7.21)


靄が通り過ぎ
木々が水を含む
遠い建物の向こうに
夕立が
細かいガラスの傷のような
雨線を示すのが見える

猫に半分食いちぎられたカナブンは
壊れたボタンのように床に落ちている
おびただしい風鈴の音は
波になってくるが
風を
送ることはできない
風鈴は求めてもいない
ただせわしなく
7月を占める

遠い夕立が
子どもたちを軒下に
導くにしても
風は左から右へ
ガラスの音を運ばない
有機音を収集した円盤が
短い話のように街を洗い
移動する雨足のなかで
おしゃべりしている

Posted at 09:39 in poem | WriteBacks (0) | Edit
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