Mar 07, 2025
ペンギンの前で

マスターのおごりだというので、
ルビーたちはコーヒーを飲んでいくことにした。
管理局の人たちと
ゆっくり話すのは初めてかしら。
とルビーが言っている。

ヴィヴィアンに悪魔になったことを告げたみたいに、
あなたたちが、この地上で起きる出来事に
いろんな形で関与しているって思っていたけど、
実情はもっと複雑なようね。
最近知ったことだけど、
地球には随分昔から宇宙人たちが来ていて、
人類や魔族と交流していた。
特にレプテュリアンと呼ばれる
トカゲ顔の宇宙人たちね。
さらに彼らの属する宇宙連合という組織があって、
その組織に加入している様々な星の宇宙人もきて
地球を観察している。
だいたい、そういう理解でいいのかしら。
そういうことみたいね。
管理局って、そういう事柄には
関わらないの?

関わらないこともないけど、
大抵のことにはタッチしない。
世界に対しての考え方が違うのよ。
宇宙連合というのは
銀河系宇宙の諸惑星に誕生した
生命体たちの連合組織。
あなたたちの文明も、
もし滅びることなく発展し続ければ、
いつか加入することができるかもしれない。
でも管理局は別の宇宙の存在によって
銀河系の中に作られた組織なの。

私はサイボーグに改造してもらってから、
ずっと宇宙ステーションで暮らしてますけど、
管理局のことはほとんど聞かなかったです。
ただ、いろんな星から来る人がいますが、
その人の出身の星の神話時代の話になると、
あれは管理局の仕業だったんだろうなんて、
話題になっていましたよ。

いろんな惑星の文明の、
神話時代の出来事に関与してたわけ?
雲を掴むような話ね。
それは考え方次第よ。
関与といっても、
私たちは基本的にアドバイスするだけ。
職員もみんな銀河系宇宙の惑星から
スカウトされたものばかりだから、
個々が飛び抜けた力を持っているわけじゃない。
奇跡を起こすのはその星の生命の力で、
アドバイスはそれを自覚させるため。

そばで話を聞いていたはるなが、
あのー、管理局の局長は、
毎年春になるとフローラっていう女神に頼まれて、
眠っている草花を起こして回ってるって、
聞きましたけど。
と、言った。

ああ、あれね。
冗談みたいに聞こえるかもしれないけれど、
それは本当のこと。
本当と言っても別の世界でのことだけど。
別の世界は無限にあって、
泡のように生まれたり消えたりしている。
早春の草原でまどろんでいる草花に、
そろそろ起きたらいかがですっていうのも、
一種のアドバイスなのよ。

フローラって、
ローマ神話に出てくる春と花の女神ですね。
人類の芸術文化に関心がある
エレナが聞いたら喜びそうな話ですね。
管理局が何してるところなのか、ますます
わからなくなったわ。
あ、いつの間にバナナを。
とルビーは思っている。

今年もそろそろ頼まれた仕事を始めてるはず。
終わったら長期休暇をとって、
またこの町に遊びに来るでしょう。
と、ミラが言った。
局長は肉まんが大好物だし、
特にサラと仲良しみたいだからね。
とバグが言った。
解説)
続きます。
Feb 07, 2025
コレクションを見る

ナオミ、たまき、エレナ、アイスの四人は、
マンゴー亭で肉まんを食べることにした。
またあなたに会えて嬉しいけど、
エレナは普段何してどこに住んでるの?
とたまきが尋ねた。
この星の、というか
文化芸術一般、特に美術に関心があって、
世界中の名所旧跡や美術館などを回ってるのよ。
あなたに会ったのも人形の展示即売会の会場前で、
それから二人でキリコ展に行ったでしょう。
そういえば、そうだったわね。
キリコの絵ってわけわかんないけど面白かった。
私も人形やフィギアは大好き。

文化や美術や人形に興味があるなら、
すごく詳しい人がいるわ。
マンスフィールドさん。
絵画の蒐集家で人形のコレクターでも有名な人よ。
コンテストの審査員やってて、
たいていベーカリーにいるから私呼んでくる。
とナオミが言った。

ナオミが呼びに行って、
マンスフィールドさんを連れてきた。
さっそく席についてエレナと話をしている。
その惑星の科学文明の進展の程度と、
芸術文化の高度化には関連はありますが、
それは抽象思考をどう捉えるかによっていて、
本質的な芸術の価値という問題とは言い難く。。。
その惑星と仰るのがよくわかりませんが。
などと言っている。

マンスフィールドさんの
人形コレクションの一部はドルフィンの2階に
置いてあるんでしょう。
エレナにお見せしたら?
とたまきが言った。
それはいいアイデアね。
家の倉庫に入りきれなくて置かせてもらってるの。
人形や小物集めは趣味なんですけど、
興味がおありなら、ぜひ。
とマンスフィールドさんが言った。

エレナはドルフィンの2階に案内された。
突然の来客に今子は立ち上がっている。

本棚の上には
珍しいテディベアや
ドラゴンの置物が並んでいる。

よくわからない人形や、
骨董品のような象や牛の置物もある。

この絵はアメディオ・モディリアーニが
1917年に描いた肖像画。
マリー・ローランサンの肖像画と言われているけど、
当時マリーはスペインに亡命中だったので、
記憶や写真をもとに描いたとも言われている作品。
もちろんレプリカですけどね。

これはアルフォンス・ミュシャの
リトグラフ「四季」の「春」をフィギアにしたもの。
「四季」は3種類描かれているけれど、
これは1900年のものね。

またうちに泊まっていけばいいのに。
とたまきが言っている。
今回はもうホテルとってあるから。
色々見せてもらって楽しかったわ。
マンスフィールドさんに
よろしく伝えておいてね。
今度また遊びに来るわ。
とエレナは言った。
解説)
続きます。
マンスフィールドさんは、
2021年9月27日からの「モディリアーニ展」に、
コレクション作品を貸与出展したので、
展覧会の後半で時々作品解説をしています。
Jan 07, 2025
ちょっと動き始める

ジェニーたちの部屋では、
3人がレーズンを食べていた。

モモコは?
探偵事務所に出かけたわよ。
新年の挨拶だって。

モモコは心理カウンセラーのエリスと親しく、
時々ジェーンのすむ世界の話などを
エリスに聞いてもらっている。
ふーん、これがお土産のレーズンね。
噛むと感触が干し柿みたいで美味しいわ。

クリスマスとお正月を
初めてジェーンと一緒に過ごしたのよ。
とモモコが言った。

そうなの。
うちでは暮れからアルが遊びに来ていて
ずっとみんなで飲み続けだった。
今では胃薬飲んでるよ。

その頃、サラたちの部屋では、
サラが旅行用バッグに衣類を詰めていた。

その格好で行くの?
アフリカはこの時期も暑いんでしょう。
ええ、だから着替えを持っていくのよ。

魔法の扉を出現させましょうか?
あ、魔術劇場の中の扉から行くから大丈夫。
それより同行の希望者はいないの?
今はあんまり旅行する気分じゃないんだ。
ちょっと風邪気味でね。
私は冬っていう季節を味わっていたいな。
温泉付きならねー。
などと言って、みんなは乗り気ではないようだ。

結局サラは一人で広場に向かった。
解説)
続きます。