Mar 31, 2006

3月が終わっちゃうぞー

ぼーっとしていた。気がついたら3月最終日。わが人生最終日もこんなふうに来るんだろうな。いやだいやだーといってももう遅いとこまで追い込まれているわけ。なぜこんなこと書くかというと、ぼーっとしているあいだに、またひとつカウントが上がったから。まあ、その話は、やめにして。 千鳥ヶ淵は3月28日に花見しました。ちょっと早すぎた。早咲きの銘木は数本堪能したけど、高速道とお濠端のソメイヨシノとの景観はまだ熟していなかった。ライトアップ初日で、まだ試行段階だったから、ライトがきつすぎてまぶしかった。でも、よかったですよ、あのむんむんした花の雲の上を歩く酔い心地はすでに知っているし。昨日今日明日ぐらいは適期だと思う。 ところで、戦没者墓苑が静かでよかった。100円で菊の花を買ってお祈りした。靖国神社のすぐ近く。小泉さん、なぜこっちにお参りしないのかな。隣近所に嫌がられながら、「堂々と」お参りしたってしょうがないじゃないのかな。お参りってひそかにするものでしょう。と言うわたしもお参りしましたなんて、書かなければよかった。
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Mar 25, 2006

ル・クレジオ『パワナ』

ル・クレジオ『パワナ』菅野昭正訳、集英社1995刊を読んだ。 1月29日、東京外語大のセミナーで初めて見たル・クレジオ氏は、長身で金髪、端正な風貌で、例えば軍服を脱いで居間で寛いでいるイギリス軍将校といった感じだった。戦闘的ではなく、父祖以来の職業軍人の職にそのままついているといった感じ。自身、以前に「ぼくのまわりにあるのは、絶えざる戦いの感情です」と対談で語っている、まさにその言葉が風貌に現れているといった感じがした。彼の場合の戦い、とはゆったりした普段の静かなものであるけれども。このセミナーは大盛況で、若い人たちの熱気に包まれていた。グローバル化した人類のモラルの指針がこの中年の作家にかけられている、とまで言えそうだった。私自身も素直にそれに従うことができると思った。例えば、いま、自分の人生に空しさを感じているものにとって、気持ちをやや、和まされる、絶望のほうに煮詰まって行かない何かを感じさせるような。いま、ルーブル美術館を地方都市に移転させる仕事をしているという、ラング元文化相に私は好感をもっているけれども、同類のような気がする。『パワナ』は捕鯨史上名高い、メキシコ湾の鯨の繁殖地の発見と虐殺の話。ごく短編だから、作品を読んだだけでは味わいが薄いかもしれない。幾度も繰り返して読めば、そのよさがじわじわと沁みてくるといった種類の作品。この集英社版では、菅野さんの解説が半分ほどもあって、訳にあたっていかに訳者が勉強しているかが如実にわかる。作者の作風も、代表作の紹介もあり、懇切な解説だ。大切にしたい本。これがブックオフで105円なのだから、いやになる、でも貧乏な者にはラッキー。(複雑だ)。
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Mar 20, 2006

「異邦人」と「変身」

カミュ「異邦人」新潮文庫を読み終えた。薄い本でバッグに入れて外で読みつないでいた。1部のほうはちょっと退屈で、読みにくかった。2部に入って、逮捕された後の話になって、俄然集中した。解説で、「変身」との違いが論じられていたが、ピンとこない。同じような、内向的な青年が、どうしても世間と妥協することができない切なさが迫ってくる点では同じニュアンスに思われる。いま、北村透谷を思っている。第2部のはじめのほうに「この名のない時刻に、沈黙を連ねた刑務所の各階という階から、夕べのものおとが立ち昇ってゆく。…」という文章に出会って、一気に総毛だった。まるで自分がその場のその人であると思わせられた。「夕べのものおと」を自分の詩のタイトルにもらうつもりだ。
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Mar 09, 2006

《詩人のラブレター①》

ふらんす堂のホームページの中に《詩人のラブレター》というタイトルで詩の連載を始めました。きっかけは、社主の山岡さんからモルポワの詩を紹介する欄を作りませんかと、おすすめを受けたこと。モルポワの詩集の中から4行ほどのフレーズを抜き出して、原文も添え、小さいコメントを付けて、1ヶ月に1回更新しようと思う。山岡さんと打ち合わせしているうちに、モルポワだけでなく、いろんな詩人の愛の詩を取り上げようということになって、第1回はやはりモルポワ氏に登場していただくことになった。シンプルなものをわかりやすく、というのがコンセプトです。この小鳥の詩は、さらに2連ほど続き、それもまた取り上げるつもりですが、以前東京新聞のコラムに木坂涼ちゃんが取り上げてくださった。とってもすき、と言ってくれて。いい詩ですよね、ありそうでいて、なかなか見つからないといった感じの。他にも、無辺の会の依頼で訳した嵯峨さんの詩からも、これは逆に日本語が原詩で、と、東西交流でと思っています。次期更新は3月末の予定。ホームページのアドレスはhttp://furansudo.com/ です。
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Mar 05, 2006

早春の日曜日の午後

日曜や祝日はわたしにとってわびしい日。 ピクニック日和と予報されてはいたが、散歩にはうら寒げな日差し。夢の本棚詩画集と文庫本の中也詩集とピキエ社の「中也選集」を持って炬燵にもぐりこむ。文庫でまず「山羊の歌」と「在りし日の歌」を読んで、ピキエのその部分を読む。気になった詩を夢の本棚で眺めなおす。文庫には岩佐なおのエッチングやカラー写真などたくさん載っていて、サービス満点。いやではないが、ルフェーブル氏の絵とぜんぜん違うのでくすくすひとり笑いをする。まあ、ルフェーブルさんのほうが、ポピュラーというか、詩の内容にもじゅうぶん沿っていて、分かりやすいわな、などつぶやきつつ、「みんなちがって、みんないい」と楽しい。ピキエ版には好きなシュバちゃんベトちゃんがないなーと思う。選集だから、全部訳があるわけではないのだと、わかる。自分としては「山羊の歌」には退屈な詩もあって、個性豊かな中也詩ばかりとはいえない。また、ビナードさんのこんどの「出世ミミズ」には「在りし日の歌」はあんまり、とあったが、ベトちゃんはこっちの詩集だしナー、とこれも好みは千差万別なことがわかる。中也は朝や夕方や縁側に当たる日差しや、遠い空や、生きている日々をじっくりかみしめていたのだなー。わたしは倍以上生きちゃってすみません。長いから希薄なのだ。楽しい日曜の午後でした。
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Mar 04, 2006

夕陽学舎

有斐学舎創立120周年記念誌が兄弟、いとこに送られて、電話をもらった。3月3日は長兄の命日だし。「夕陽学舎」として、詩の題材に使っていたのを、ネットでみつけてくださって、記念誌に思い出を書かないかと連絡をいただいた。ネットの恵み。ネットさん、灰皿町さん、ありがとう。

《夕陽学舎》
あの厚ぼったいねずみ色の門札は燃やされてしまったか
四〇年後に戻ってみると
人けのないテニスコート

      詩集『雪柳さん』より

連絡を下さった編集委員のお一人の伊藤晴雄さんは、(ネットだから、文字のみのお付き合い、これも不思議だ)私たち一家が去った後に入舎された学生さんだったが、兄君お二人の時代が父親が舎監だった時とかさなる。晴雄さんは現在熊本日日新聞社(通称クマニチ)勤務。遥か昔の春の午後、有斐学舎の舎監宅の応接室でクマニチの記者のひとが余ったフィルムで撮ってくれた写真を載せてくださった。わたしは竹早高校の制服で写っている。
その写真に父親と3人で写っているすぐ上の兄と電話でしゃべる。 びっくりしたのは、おまえ、小平の墓に入っていいぞ、と言ったのだ!以前、お前は入れないぞと念押ししてくれたおせっかいな兄だったのに、どうした風の吹き回し? 電話切ってから、これは遺言だと思った。あの兄にして、この言い遺し。海は怖いから、山に撒かれたい、骨壷はいやだ。お金使わず、ひそかに捨ててほしい(だめ?) 兄は骨壷は墓のサイズにぴったりなんだと言っていたが、サイズがアウと聞いて、とたんに逃げ出したくなった。わたし寸法が合うのだめなのよー。こんな掘り出しをしてくださった伊藤さんって、きっと優秀な新聞人なんだろうなー。
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Mar 02, 2006

幾代昌子さんの詩画集「夢の本棚」

は3分冊で、「ゆめのあしおと」「あいのときめき」「おもいのことのは」、カラーで言えば青、赤、緑の3冊で28日の日付で講談社から出版されました。表紙カバーの裏折込みにはルフェーブル氏の写真入の紹介文があります。日曜日にはもう横浜の書店の詩のコーナーに出ていました。幾代さんが海外の書店で見つけ、感覚にぴたっときた画家です。選詩の基準はわれわれ中年日本女性の記憶に残る名詩たち。暗誦できる、歌える可愛い詩たちです。版権の関係で、新しい詩は選べなかったのが残念ですが、(この線引きでいくと、あまり長生きの人は選べなかった)3冊で100篇ほどですから、とても楽しい作業でした。画と詩の関係を言えば、手に取ると、画がメインだなと感じます。でも、この人は詩を邪魔しないコツを心得ている人で、詩の鑑賞に干渉したりして来ない節度のよさ、生まれ持ってのセンスなのでしょうが、イメージが豊かで、日本の実情と少々ずれているところがあり、そこがまた、奇妙にほほえましく、どのページでも楽しく、ゆっくり詩を楽しむことができます。私自身としても、大事にして折に触れ開いて歌いたい本です。幾代さん、まずはおめでとうございます。
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