Aug 10, 2024

鳥を探しに そのよん

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一行は屋内に招かれた。

このあたりは天候が変わりやすくて、
雷雨が多いんだ。
何もないジャングルで危険だし、
滅多に人は来ないんだよ。

私たち、大きな鳥の羽根を拾って、
その本体である鳥の存在を
確認しに来たんです。


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それで、見つけたのかな。

はい。見つけました。
正体は大きな九官鳥でした。

ふむ。
それはラッキーだったな。
ともあれ、この風雨はやみそうもない。
今夜はここに泊まっていくといいだろう。


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翌朝になった。
空はすっかり晴れている。

すごくいい天気よ。
あーよく寝た。
昨日は体力消耗したからね。


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おはよう。
エルザたち、
もう起きてコーヒー飲んでますよ。


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佳奈は深呼吸している。

おはよ。
ダリオさんが、朝食済ませたら、
帰る前にお話ししましょうって。

あの人、ダリオっていうんだ。
そう言ってたわ。


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ここに一人でお住まいなんですか?

そうなんだ。
人里離れていても、自給自足、
食べ物には事欠かないからね。
気楽なものだよ。

私も沼地をこえたジャングルの向こう、
半日ほど行ったところに居を定め、
開墾して、今では小さな集落になった場所に
住んでいるんです。
とマークが言った。

地元の原住民とも多少の付き合いはあるんですが、
沼地の近くに人が住んでいるという話は
聞いたことがなかったなあ。
それはともかく、
一人で人里離れたジャングルの中に
暮らしたいという気持ちはわかります。
初めは私もそうでしたから。

でもすごく立派で快適そうなお家ですね。
建築資材や家具なんてどうやって運んだんですか。
とエルザが聞いた。

ふむ。どこまで話していいものか。
君たちは魔族というものを知っているかね。

ええ。
と4人は頷いた。
親しい友人に魔族の人がいます。
彼は私たちの集落に住んでいるんですよ。
とマークが言った。

実は私は別の世界から来たんだ。
その世界は実に生きにくくてね。
私はその世界で、いわばこの世界でいわれる、
変わり種の魔族だった。
そういえばわかってもらえるかな。
魔法で作った特別な扉を通って来たのさ。

わかるわかる。
と4人は頷いた。
私たちもその手の魔法の扉の恩恵に
預かって、遠いところを移動して来たんです。
とエルザが言った。
でもそんな力をお持ちなら、どんな世界でも、
生きにくい、なんてことないように思えますけど。
と佳奈が言った。


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そうでもないんだよ。
私のいた世界には、私たちとは別の種族がいた。
昔は共存していた時もあったんだが、
やがて彼らが全てを支配するようになったんだ。
体がずっと小さかった私たちの種族は、
片隅に追いやられて隠れて生きるしかなかった。

巨人の支配する世界だったのね。

この世界に魔族がいるように、
私もたまたま特殊な能力を持って生まれてきた。
だから巨人たちの住む家に潜んで
彼らのものを借りて住む生活が嫌になって、
魔法の扉を作って、この世界に逃れて来たというわけさ。
巨人たちと共存するサバイバル生活が好きな仲間もいるが、
今や絶滅危惧種状態だ。

巨人たちって、どのくらいの大きさなんですか?

ふむ。
君たちは昨日、
巨大な九官鳥を見たと言っただろう。

はい。

あれがその世界では普通のサイズの九官鳥なんだ。
あの九官鳥は、私のいたその世界から、
そのままの大きさでこの世界に現れたんだよ。

お話を聞いていて、もしかしたら、
ダリオさんが魔法で大きくしたんじゃないかと思ってた。
と佳奈が言った。

そうじゃない。
あれは砂漠の嵐の中から現れた。
砂漠を越えてジャングルに飛んできたんだ。
大きな樹木があっただろう。
あれは昔は原住民に生命の木と呼ばれていた
神聖な樹木らしい。
そこが気に入ったらしくてずっと
住み着いているんだ。

九官鳥は別世界に転生したんですね。
まるで私の身の上とそっくりだ。
とマークが言った。

転生したのが私が来た世界と同じだったのに驚いたが、
あれはものまね鳥で、
意味のあることを話しているんじゃない。
前に生きていた世界で、
巨人たちに教え込まれた言葉を
繰り返しているだけなんだ。

別世界に転生しても、
昔習った言葉を忘れないなんて、
なんだか切ないですね。

ふむ。
さて、随分長話をして、足止めしてしまったようだね。
これから沼地とジャングルを越えるんだろう。
玄関先まで見送ろう。


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ダリオは、裏庭にある
小さな小屋を見せてくれた。
その中に魔法の扉が設置してあると言ったが、
遠目から屋内は暗くてよく見えなかった。


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お世話になりました。
私たちの集落にもぜひ遊びに来てください。
とマークが挨拶して、
4人はダリオの家を出たのだった。

巨人たちの住む世界か。
すごい話だったね。
その世界からすれば、
私たちの世界は小人たちの住む世界なのね。
ジャンのジオラマの村みたい。
などと話している。



解説)
続きます。
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