Oct 02, 2024

マリアたちの集い そのに

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魔術劇場の一室では
マリアたちの集いが始まっていた。


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それでは犬猫猿鳥同盟の
臨時のお茶会を始めます。
今日集まってもらったのは、
新メンバーのお二人をご紹介するためです。
とマリアが言った。


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新しく加入してくれたのは、
チンパンジーのリンリンと、
ゴリラのシーザー。
二人ともアフリカのジャングル生まれの
ジャングル育ちです。
見かけはお猿さんそのものですが、
その知能は人間に勝るとも劣らないと言われています。
では自己紹介をどうぞ。

えーっと、僕たちは
アフリカのジャングルで暮らしています。
僕たちが生まれたのはフミコという魔族の女性が、
一帯にかけた魔法のせいだと言われています。
とリンリンが言った。
そこには大昔に魔族の都があって、
フミコは、その都を外敵から守るために
周辺のジャングルに魔法をかけたのです。
その結果僕たちのような知能を持つ動物が
時々生まれるようになったのです。
都はとうの昔に滅び、今では遺跡だけが残っています。
しかし、最近のこと、フミコが蘇生して、
僕たちを自由にしてくれました。
それからアフリカに来たマリアさんたちと知り合い、
この会に招かれたということです。
僕は基本は野蛮な人間が嫌いなんですが、
友人も何人かいます。

僕もリンリンと同じ身の上ですが、
リンリンよりずっと年下で、
人間が大好きで、人間の集落の近くに
家を建てて暮らしています。
あ、ところで、あなた方は人間なんですか。
とシーザーが言った。


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その区別は難しいわね。
とクロが言った。

うまく言えないが、僕たちはみんな
そこにいる悪魔ヴィヴィアンの魔法で、
変身して生まれた魔法生物なんだ。
とドビーが言った。
あ、僕の名はドビー。
工房ドルフィンで飼われている
ベスという犬のイメージが影響して
この体になったんだけど、
ベスは今でも普通に飼われている。
僕とは全く別にね。
だからなぜ僕が生まれたのか、
ベスとどういう関係なのかもよくわからない。
ベスだった時の記憶も全くないんだよ。

あれは事故だったのよ。
と側で聞いていたヴィヴィアンが言った。
人間の脳のニューロンの動きを、
プラネタリウムで会場の壁に投影するっていう、
とんでもない実験をミューっていう
ロボットたちがやっていたの。
その会場に飼い犬のベスが紛れ込んでいて、
私がその犬に注意を集中したために起きたのね。
まだ私が悪魔になる前で、
魔法をうまく制御できなかったのよ。

私の場合は。
とクロが言った。
私は前はメルティっていう女の子に
飼われていた子猫だった。
でもメルティが小さい頃に死んでしまったのよ。
それからメルティも病弱で寝たきりになって、
ずっと長い夢を見続けていた。
私の魂は死んでから幽冥界をさまよっていたんだけど、
メルティのことが忘れられなくて、
夢食いの百猫の王シュレディンガーに、
メルティの夢の世界に連れて行ってほしいって頼んだの。
そこでメルティと再会できたんだけど、
鏡の扉でメルティの夢と、この世界の間が
行き来できるようになって、
ヴィヴィアンが魔法でこの姿にしてくれたのよ。
体が人間で顔だけが猫っていうこの姿、
私が望んだわけじゃないの。

それはそういうものなのよ。
とヴィヴィアンが言った。


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僕の名前はトラ。トラ猫だったからそう呼ばれてるんだ。
前はこの町を徘徊する野良猫グループのリーダーだった。
ジェニーたちの家から盗んだ
ウサギのぬいぐるみと交換して手に入れた
この目出し帽のバラクラバが被りたくて仕方がなかったとき、
ヴィヴィアンが帽子を被れるように、
魔法でこの姿にしてくれたんだ。
今ではもう盗みや悪戯はしてないよ。

私の名前はフンボルト。
元は喫茶ペンギンの木製のマスコット人形に
宿った精霊だったんです。
古くなって店の人がドルフィンに私を洗浄してもらいに行ったとき、
ヴィヴィアンさんが人形に精霊の私が宿っているのを知って、
魔法でこの姿にしてくれたんです。
今でも喫茶ペンギンでマスコット役の仕事をしています。


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なんだかみんなの自己紹介を聞いていると、
みんな私のせいで変身したって言ってるのね。
確かにそれは事実だけど、
みんなの望みを叶えてあげただけなのよ。
あ、ドビーのケースだけは別ね。
あれだけは私にも原因はよくわからないの。
とヴィヴィアンが言った。

事故や手違いで私が無から生まれたんだとしても、
こうして生きているんだから感謝してますよ。
とドビーが言った。


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僕たちは、こんな魔法生物みたいな姿をしてるから、
人間の町には住みにくい。
この界隈の人はほとんど気にしないけど、
広場には観光客が大勢くるからね。
それでジャンのジオラマの村という別世界に
小屋を建ててそこに移住して暮らしているんだ。
周りはフィギアの精霊がほとんどだから、
住み心地はいいよ。
それにみんなが仮装するハロウィーンの時期になると、
広場に出てきても変な風に思われない。
今年もいよいよそんな時期になったんだ。
とトラが言った。


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アフリカのジャングルだったら、
人間は滅多に来ないから、
遊びにおいでよ。
僕の家の近くに小屋を作ってもいい。
とリンリンが言った。

リンリンの家は遺跡の近くにあるから、
きっとジャングルの動物たちや
グリーンマンが嫌がるよ。
僕の家の近くなら、マークの集落の外れで、
鏡の扉のあるフラハの家の近くだし、
交通の便もいいですよ。
とシーザーが言った。


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お言葉に甘えて、アフリカに、
犬猫猿鳥同盟の支部を作りましょうか。
とドビーが言った。

みんなやることなくて
いつも暇そうだから、それもいいわね。
作ってもどうせお茶会を開くだけだけど。

ジャングルって危険じゃないんですか。
とクロが言った。

動物にとっては体が人間みたいに見えるし、
人間にとっては顔つきが動物のように見える。
奇妙すぎて警戒して近づかないんじゃないの。
そうなのかなあ。


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話がまとまったようね。

ヴィヴィアンさんは、
この会の発案者なんでしょう。
参加されないんですか。
とデュアンが言った。

私は悪魔だからね。
会のことはマリアに任せてるの。
でもアフリカはいいところよ。
あなたも人間嫌いで
この魔術劇場に引きこもっているんでしょう。
たまには遊びに行ってみたら。

そうですね。
あ、追加の肉まん持ってきます。



解説)
続きます。

それぞれの自己紹介でのエピソードは、
ドビー、2022年9月11日「ミューと探偵の思いつき」。
トラ、2022年11月28日「対策会議そのに」から。
クロ、2023年2月27日「メルティの世界 そのに」。
フンボルト、2023年3月21日「衣替えとマスコット」。
に掲載されてます。飛び飛びですが。
犬猫猿鳥同盟(旧名 犬猫同盟)の結成のエピソードは、
2022年12月6日「犬猫同盟」に。
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