Aug 10, 2023

ペンギン前で

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探偵事務所では、
ミューたちが相変わらず
仮想現実体験装置のバグ探しに取り組んでいた。

ミュー、ずっとかかりきりでしょ。
休憩しないとオーバーヒートしちゃうよ。


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大丈夫。それより博士は休んでください。
そうね。二人が心配だけど、
さすがにくたびれて頭も回らなくなってきた。
ちょっと一休みするわ。


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階下のペンギン前では
リズとはるなが話していた。


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夏向きの服装に変えたのね。
店内は冷房ガンガン効いてるので、
ずっとカーディガン着て、
この前、チョコパフ配っていたら、
冷房弱くするから夏向きにって
マスターから言われたの。


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あ、シェリー博士だ。


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シェリーは外気に触れていたくて
店の外のテーブル席で
コーヒーを飲むことにした。


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シェリーは、エリスや翠や探偵から、近くに住む
管理局に勤める人々の噂を聞いていたので、
相席になった人たちがそうとわかると、
挨拶してすぐにうち解けた。

お宅に事務所のデスクを
預かっていただいているとか、
お世話様です。
などと言っている。


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この前エリスさんとここで話していて、
仮想現実体験装置のことが話題になったんですよ。
とウェルズが言った。
あれは体験者のための背景設定システムですが、
システム自体がリアルさを追求するために、
体験者も巻き込んでしまうことがあるんです。


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この人たち、どこまであの装置のことを
ご存じなのかしら。
とシェリーは思った。

巻き込むっていうと、
戻れなくなっちゃったりすることかしら。
そういう場合、どうすればいいんですか?

制御しているのはシステムの意思ですから、
まずシステムが何のためにそうしているのかを
知る必要がありますね。
システムが暴走しているのでなければ、
体験者が戻れないという事態の深刻さは理解しているはず。
戻れなくなったりした場合は、
リアルさの追求という以上の意味があるかもしれません。

それより問題なのは、
設定された仮想世界で生じる時空の歪みです。
その歪みのせいで異世界間の通路が生じて、
システムには制御不可能なカオス状態が生まれることも。
それに逆に通路の生じた異世界に
影響が出ることも考えられます。

体験者を強引に連れ帰る方法は、ないこともないですが。


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ウェルズ。
時間管理部の介入は禁じられているんでしょう。

うん。もちろん。これは一般論ですよ。
というか、今お話ししたことは実はアドバイスで、
私は製作者に注意を促すためにこの町に来ました。
管理局としては、それ以上のことはしない決まりなんです。

ただ一言付け加えると、
このケースについては、仮想現実体験システムは
装置を開発したミューさんの人工知能と
今でも密接に関わりがあるのですよ。
ミューさんには是非そのことをお伝えください。



解説)
行きつ戻りつしていますが、
また仮想世界へ。
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