Haizara-Cho::Suigara-yama 99[Shinsuke Kirita]

船長の話　そのに

ヴィヴィアンが呪文を唱えると
薄い煙がたちのぼり、
船長の顔から
みるみるマスクが剥がれていった。




おお、私の顔が。




ピエールとラッセルは
唖然としている。




ここまで知られてはお手上げです。
確かに私は亡者の亡霊。
生前は海の上で暮らしてばかりいて、
人恋しさに執着するあまり
いつのまにか夢食いになりかけていたものです。




この町には二度と来ませんから、
どうか見逃してください。
お礼にこのクリスタル真珠を差し上げます。

大丈夫よ。
とヴィヴィアンが言った。




この界隈にはあなたみたいな人が
他にも何人もいるの。
友達が欲しいなら魔術劇場で暮らすといいわ。
でも契約書を交わして魂を盗もうなんて10年早い。
ちゃんと私のように悪魔になってからにしてね。
なれるかどうか知らないけど。
とヴィヴィアンは言った。

うう。ありがたきお言葉。
船長は感涙に咽んでいるが、
頭蓋骨なので涙は見えないのだった。




その頃高台の休憩所では、
ルルと江本友恵が話していた。




このスカーフが、
お弁当の包み紙だなんて、
信じられない。
私は結構よ。




ドルフィンの倉庫に沢山あったから、
分けてもらって、配ってたの。
ピエールさんとラッセルさんにも
差し上げたのよ。
と粉川和歌子が言った。




デジャから出てきた
ピエールとラッセルは立ち話をしている。

何もしないのに
こんなにクリスタル真珠分けてもらっちゃって
ラッキーだったね。
ヴィヴィアンが口止め料だって言ってたよ。
夢でもいいから海の冒険したかったなあ。


解説）
一枚の弁当の包み紙から、
スカーフ四枚分を切り取れました。