May 19, 2023
船長の話 そのに
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ヴィヴィアンが呪文を唱えると
薄い煙がたちのぼり、
船長の顔から
みるみるマスクが剥がれていった。
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おお、私の顔が。
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ピエールとラッセルは
唖然としている。
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ここまで知られてはお手上げです。
確かに私は亡者の亡霊。
生前は海の上で暮らしてばかりいて、
人恋しさに執着するあまり
いつのまにか夢食いになりかけていたものです。
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この町には二度と来ませんから、
どうか見逃してください。
お礼にこのクリスタル真珠を差し上げます。
大丈夫よ。
とヴィヴィアンが言った。
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この界隈にはあなたみたいな人が
他にも何人もいるの。
友達が欲しいなら魔術劇場で暮らすといいわ。
でも契約書を交わして魂を盗もうなんて10年早い。
ちゃんと私のように悪魔になってからにしてね。
なれるかどうか知らないけど。
とヴィヴィアンは言った。
うう。ありがたきお言葉。
船長は感涙に咽んでいるが、
頭蓋骨なので涙は見えないのだった。
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その頃高台の休憩所では、
ルルと江本友恵が話していた。
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このスカーフが、
お弁当の包み紙だなんて、
信じられない。
私は結構よ。
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ドルフィンの倉庫に沢山あったから、
分けてもらって、配ってたの。
ピエールさんとラッセルさんにも
差し上げたのよ。
と粉川和歌子が言った。
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デジャから出てきた
ピエールとラッセルは立ち話をしている。
何もしないのに
こんなにクリスタル真珠分けてもらっちゃって
ラッキーだったね。
ヴィヴィアンが口止め料だって言ってたよ。
夢でもいいから海の冒険したかったなあ。
解説)
一枚の弁当の包み紙から、
スカーフ四枚分を切り取れました。
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