May 18, 2022
家族の再会
叔父さんたち、どんな話するんだろ。
私、見にいってくるね。
というと、黒猫は身を翻して、
魔術劇場の方に走っていった。
これはこれは。
どういう風の吹き回しかな。
とハリーが楽しそうに言った。
ともあれ、カーミラ、再会できて嬉しいよ。
何年ぶりかな。君は全然変わらないし、
ヴィヴィアンも元気そうだね。
10年ぶりくらいになるかしら。
テレビでロボット研究所の宣伝番組を見ていて、
この町が紹介されていたんだけど、
背景にあなたの魔術劇場が映り込んでいたので、
ロボット見物がてら、いってみようっていうことになって。
とカミーラが言った。
お父さんは、いつも魔術劇場で
世界中を回っていて、滅多に会えないからね。
とヴィヴィアンが言った。
なるほど。
長旅で、さぞくたびれただろう。
とりあえず、くつろげる居間へ行こう。
隣の部屋への移動にも「どこにもドア」使うのね。
便利というか、都合がいいというか。
三人がソファーに腰掛けると、
黒猫がハリーの手元に飛び乗って来た。
ちょうど貰い物の
美味しいクリームなしエクレアがあるんだ。
ワインにもよく合うよ。
と言っている。
この部屋の壁紙なんだか懐かしい。
ハリーが指を鳴らすと、
宙空に幻影が現れた。
思い出したかい。
昔、僕たちが暮らしていた城館の
食堂の壁紙を再現したんだよ。
幻影はやがて消えていった。
カーミラが指を鳴らすと、
宙空に幻影が現れた。
あの私たちの肖像画のこと覚えているわ。
そういえば、すっかり忘れてたけど、
この町で部屋を借りて、
しばらく過ごしていたことがあった。
どうして忘れていたのかしら。
あの頃は、二人とも吸血鬼として
あちこちの国や町を旅して、
追われるように生きていた。
それに夜しか出歩かなかったからね。
覚えてないのも無理ないよ。
とハリーが言った。
やがて幻影は消えていった。
解説)
再会したハリー夫妻の
思い出話になりました。
幻影の画像は、2008年に
掲載した画像をトリミングして
使用しています。
額入り肖像画の現物は、
今のところ探せど見つからず。
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