Jul 22, 2021

ペンギンでの会話

d1

二階のフロアを下見にきたんですけど。
と夏木さんがいい、
ナオミは、車返しに来たんですけど、
と言っている。


d2

最近は常設スペースが多くて、
空いてる場所がみつからなくてね。
と夏木さんはいった。
ここも常設の洋室だったんだけど、
段ボール箱、じゃなかった。
仮設の住居を借りて
一時的に住人に移ってもらうことで、
ようやく確保できたのよ。


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そこのステンドグラスの窓を
ボードで覆ってしまって、
そこにスクリーンを置いて、
作品を映写したらどうかなと考えてるの、
そうすれば沢山みせられるし。
と夏木さんはアイデアを披瀝した。
それいいかも。
スライドの上映会みたいな感じね。
とたまきがいった。


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さっそく内装工事を
ドルフィンのマスターに依頼する、
という夏木さんと別れて、
四人でお茶でも飲もうと
いう話になった。
ベーカリーは相変わらず混み合っている。
じゃあ久しぶりにペンギンにいこう。


d5

運良くというか、
最近のペンギンはすいているので、
四人はすぐに座ることができた。
さっそくジャンはジルに、
夢見の水を飲んで三人で体験したことを
うちあけている。


d6

あの水のせいだけといえるのか、
ちょっとわからないところもあるけど、
あの水が引き金になっていたことは確かだと思う。
密猟者たちの間でも、
世界を変える力があるとか、
噂になってるってアルが言ってたよ。
と話し終えたジャンがいった。

ジルはなにかしきりに考え込んでいる様子で、
しばらくして、ようやく口をひらいた。


d7

その噂は僕も聞いていて、
何か強い力があるかもしれない
とは思っていたんだ。
空想や想像力の質をクリアにして、
リアルさを高めるような力といったらいいか。
それが、君の想像力を刺激して、
あのジオラマ村の存在感や
現実感を高めることにつながれば
さぞ愉しいだろうなと思って、
君にあの水を大量に進呈したんだよ。
ふつうに飲んでもおいしいしね。
まさかそんな形で異界が出現するとは、
思ってもいなかったけど。

でもそれだけじゃなくて、
とジャンはいった。
思いも寄らないことが他にも起きた。
さっきもいったみたいに、
あの世界には、ジオラマ村とは関係ない、
リリスっていう人形も関わっていたんだ。
うーん。
それは君がその人形のことを思い出すという形で、
想像の世界に呼び出したんじゃないのかな。
思い出すって事は、
あるいみ創造するっていう
ことでもあるからね。


d8

そういえば、リリスは、
最初にでてきたとき
「ジャン、私のこと、やっと思い出してくれたのね」
って言ってたね。とたまきがいった。
あれはこわかった。
最初だけだったけど。
とナオミがいった。

今のジルさんの言葉で思いついたんだけど。
あの倉庫のドアはもとは人形の家のドアで、
リリスの世界と現実をへだてる境界だった。
でもジャンさんの関心はジオラマの村だから、
リリスはずっと忘れられていたの。
そんなとき、夢見の水の力が作用して、
あのドアの境界としての力が変化して、
異界とつながるようになったの。
それにはジオラマの村のことを思う
私たちの想像力も影響してたけど、
リリスの、自分を思い出してほしいっていう
思いもかなり影響してたんじゃないかな。


d9

じゃあ、目的を達して
家もつくってもらったリリスは、
もう扉をとじちゃったのかな。
とナオミが言った。

あっちの世界が、
拒んでるわけじゃない。
準備不足だっただけで、
準備できるかどうかは、
私たち次第だってリリスはいってたね。
こういう話、長々としてること自体、
なにかの準備になってるのかもしれない(^_^)。
とたまきがいった。


e1

たまきのいうように、
リリスは、自分のことを思い出して
ほしかっただけなのかもしれないな。
と、ジャンは、昨晩みた
窓明かりのことをふと思い浮かべていた。


解説)
どうも錯綜した会話が進行していますが(^_^)、
四人の話はもうすこし続きます。
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