Jul 04, 2006
中原中也 悲しみからはじまる 佐々木幹郎
先月二十四日、佐々木幹郎による「中原中也」の講演と、中原中也と小林秀雄との間にいた女性「長谷川康子」のドキュメンタリー映画「眠れ蜜・脚本=佐々木幹郎・一九七六年制作」の上映が神奈川近代文学館で行われました。その折に、わたしは買わず(汗。。)桐田さんがお求めになったこの本をお借りしました。
これは中原中也の小さな評伝であるとともに、中也が昭和二年~五年頃に書いたのではないかと思われる「小年時」と題された詩の創作ノートを画像で紹介し、ノートに書かれた作品の加筆や書き直し、あるいは棒線で消した部分を佐々木幹郎が丹念にたどりながら、作品の推敲の過程を幾通りもの作品として組み立ててみるという試みがなされています。これは作品論とも言えるものでしょうか。中原中也の言葉の熱が佐々木幹郎をとらえて離さないという感じがありました。
一冊全体の印象は、詩人評伝と詩論というよりも、なんだか考古学者が断片を丹念に繋ぎながら、真実により近づこうとしているようで、ちょっと異質な面白さのある本でした。
評伝としては、すでに知られているであろう長谷川泰子や小林秀雄、富永太郎との関係、その人々が中也の作品に与えた影響などは比較的簡略に書かれていると思いました。また「ランボー」の影響についても同じことが言えるでしょう。鈴木信太郎の文語体訳の「ランボー」の「少年期」は中也の「小年時」に大きく影をおとしています。ちょっぴり皮肉を言えば多くの男性詩人が通常辿る詩法はみずからの少年時代から出発することにあるようですね(^^)。
その住む国は、増上慢の蒼空と緑の野辺、無慙にも....
ランボー「少年期」より
(二〇〇五年・みすず書房刊)
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