たった一度の晴れわたった 七夕の日
天の川で水浴びをし
待ち焦がれた 彦星を待つ
待てども待てども 来ないので
七夕の夜が 終わる直前
彦星を探して 地上に降りる
銀河の果ての 天の川から
六本木ヒルズの53階に
意を決して 飛び移り
キングコングのように
250メートルをソロリと伝って
地上に降りる織姫は おてんば
降りてみると 男は彦星ひとりではない
茶髪でピアスをはめたイケメンの男達が
次々と声を掛ける
織姫は ついつい誘われて
フラリ
ほろ酔い気分
華やかな ときが流れて
祭りが終わってしまったあと
楽しい間はよかったけれど
はてさて どうやって
天の川へ 戻ろう
そこまでは考えていなかった
来年の7月7日まで
地上にいるわけにも いかないし
酔いがすっかり覚めて
みんなが去ってしまったあと
夜風に吹かれて
織姫はひとり途方に暮れる
こんなことになるのなら
地上に降りるのではなかったな
結局 彦星はみつからないし
どうしよう
ヘルプ! ヘルプ!
誰か 助けて!
(2003, 9 , 30 詩脈 93号 所収作品)
|