坂は 空に向かって一直線に伸びていた
空と道が交差する場所
私はいつも そこをめざして走る
時速40キロで 傾斜鋭角の道を
きのう叶えられなかった望みも
明日へと続く夢も
あさって出会うだろう人も
きっと そこに待って 在る
道の両側には 小人の家並み
沈黙たちが静謐としてあそぶ
ひとも犬も通らない
坂を登りきったその先には
今日はなにがあるだろう
カメレオンのように保護色だった私が
私の色を探しにいく
遅すぎる ということはない
残された可能性を掘り起こしに
つかみそこねた夢のかけらを
20才の頃の やり直しのようだね
パソコン教室に通いはじめてからだよ
何が糸口になるかわからないね
秋色に染まった木の葉たち
鼓膜の奥底へささやきを落とす
鳥のように羽ばたけるチャンス
あの坂を登りきったら
出会える朝日があるかもしれない
両手を広げて待ってくれている未知
知らないことだらけの空の裏側
道は続いていくだろう
アクセルを強く踏んで 助手席に日常を乗せ
空のど真ん中へと突っ込んでいく
(2004. 1. 25 中国新聞掲載作品
選者; 北川透 )
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