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奥湯河原の湯につかる
妻をゐて隠国(こもりく)にあり山眠る
箱根につづく街道沿いの渓流、千歳川にかかる落合橋を渡るともう静岡県である
おし照るや伊豆境なる寒椿
翌日、快晴の真鶴半島に中川一政の書画を見に行く。魚料理「鯛納屋」にて
昼酒や南に騒ぐ冬の海
むかし土肥郷と呼ばれた湯河原の古社、五所神社から奥の山のほうを宮上、海のほう
を宮下と称する
宮上の峡(かひ)の全霊黄葉して
石橋山合戦に敗れた頼朝は、土肥次郎実平とともに海路房総まで落ちのびたという
冬晴れの波や相模の果てに来つ
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東海道線で横浜から湯河原を目指す。途中まで、海は瞬時にしか見えない
弧をなして海に対へる神奈川のはつか明るむ灘迅く見き
列車が真鶴まで来ると、もう光が違う。真鶴はやはり半島にとどめをさす
もゆる火のさねさし相模妻と往けばいつか指呼たり真鶴の岬
五所神社に残った楠は樹齢八百年。ウロに小さな金剛夜叉が鳥居付きで祀ってある。土
肥郷の歴史は比較的新しく、奈良時代くらいまでしか遡れない
新墾(にひばり)の土肥の郷(こほり)に召ばれ来し神より古き楠の魂
このあたりは楠の北限だが、とりわけその叢生が集中している地域でもあるそうだ
北限に簇がり生ふる楠の海鳴りを聴く国つ神たち
温泉宿の部屋は「せせらぎの間」という。文字どおり
をやみなき細谷川の川音のさやにするどき木隠れの国
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