日吉・大河原礼三先生
束脩の日は遥かなる初音哉
影山和男、川口憲市、米田繁男氏
この春は命冥加に明けはなれ
松山・北沢十一氏
久堅の光降りくる午後の山の痛みのごとき道なだらけし
桜新町・清水鱗造氏は藪好き河原好き
擲てばつぶての果ての枯河原
篠原町・坂井信夫、鎌倉・日野研一郎氏
蟹といふものを飼ひをり花の春
三茶・駿河昌樹氏
やまなしのもみぢを遠(をち)にあはに見てしぐれ晴れたる簷(のき)ごしの空
(改め)
はぜの木のもみぢを遠くあはくしてしぐれそめたる簷ごしの空
柏・鈴木比佐雄氏との付き合い十年、仲々会えない
かしはなる木の久しさに春会はん
旧年は東山田町・長尾高弘氏と杉山神社を語る
杉山をたれと語らん初茜
千石・天女さんも歌と句をやる
榛原に初音はおちて遠かすむ山影の青いろまさりゆく
朝霞・関富士子さん
赫々とMars輝く昨年の天
王子・前田美智子さん
どこやらで眷属鳴くか杜の春
日吉・浅井洌氏は弓好き
たびごろもきつゝ馴れにし昨のよも闢(ひら)けてけさは目もはるの弓
習志野・末敏樹君、大病から生還
艸庵をしばしこの世に結ばばや
厚木・和田彰氏
相模なる厚木さねさし初茜
柏・高橋正嘉氏と年に一回は酒を飲む
どのへんでちくとやりたき花の春
従姉、塩釜のみちるちゃん
しほがまのいやしるく見る初明りよべうつ鐘を幻にして
芝公園・笹原玉子さんは玲瓏同人
駒形や二日の市の荷を解いて
上星川町・山岸満氏は愚生出世の頃よりの読者
こぞことし命をからむつたかづら
新宿・下落合の落合美江さん、初孫誕生
水落(おちあひ)の流れさやかに春聞かん
杉並・新間弘子さんの御夫君、病を養う
老鶴の幽かを家に置かうもの
旧年は片倉町・水島英己氏と両吟を巻く
初茜一酔の間の一歌仙
国立・布村浩一氏はワタマシとか
みやこわすれという悲しい名前の花を
氷のいろをしたガラスの器に、妻は
来向かう春のおびただしい光のなかで
盛ったのだ。まるで、花そのものを記憶のうちに
氷らせるかのように
高知出身、酒舗『土佐』元店主・橋本猛老
かつを跳ぶ土佐はるかなる浪の青
市川・青木寛子さん
飲みすぎてしもうた中山花の春
町田・今井正和氏は近藤芳美氏に師事
夢の世を忘れんとすれば鵙のこゑ
富山・田中勲氏
目塞げばうろくずに沸く能登の沖
宇都宮・岡田恵美子さん(鶴見は本当は武蔵だが)
相模より下野までを初茜
板橋・海埜今日子さん
錦木の骨ばかりなる初茜
上池台・大木重雄氏と私は共に黙阿弥好き
くらやみや寒き入谷の直次郎
富山・本田信次氏
渤海の船来し路か雪の海
長崎・今村冬三氏
山影に初茜さす甃(いしだたみ)
八王子・収叔父より寺のことを任される
つかのまの世を出で入るや屠蘇の酔ひ
京・福間明子、冨澤守治氏
辻々のよべうつ鐘をまぼろしにみやこの空の明けやすきかな
相模原・富永たか子さん
さねさし相模の小野にもゆる火のほのにあけゆく初明りかも
足立・田川紀久雄氏は絵が上手
初鏡やしろの主は猿田彦
伊丹・高堂敏治氏
屠蘇にして酌まばや升の伊丹酒
須磨・紫野京子さん(芭蕉、ふかぬ笛きく、の剽窃)
須磨寺に無き一管の初音きく
港南台・浦上和子さん
群れさわぐ尾長のはらの白(しる)き見ゆる身を歩まする叢林の午後
仲町台・藤井裕一氏
たまづさにほのに偲ぶもあらたまのとしのはじめに顕(た)つさはのゆめ
ゆぎょう十号2004・1月
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