みひらいたまま入る
影に充ちて惨事がむすばれる
おおきな日向のほうへ
鳥のように汚れたかたちのまま入る
どこまでも閉じられぬ季節のまなざしから
暗くひしめいてくる周囲
わたしからちかく　みしらぬ通路が続くほうへ

みひらいたまま向かう
のびてくる日のなかで
苛酷に拡がりつづける沈黙の部屋
たくわえられた渇きで撓う背に
毎夜
はげしく掻きたてられている火の雨がある

あつい実在に囲まれて想い出してゆく
何が視える？　喚び込んでくるいくつもの夜
描かれぬ画布のなかで
いちじるしく変わっていった旱魃の顔にはくぐもる地平を
くろいゆめのなかで
膨大に昏れていった火事場のこえにはとおい水を

前方へ　わずかに予定されている炎熱
一歩踏み入れば　わたしがくらがりになっている
むすうに分かれてゆく欲望の影
めまいのように風景をわたる明るい擾乱に
呼吸（いき）よりもふかく
まだ聴きとられぬ世界がむらがりながら過ぎてゆく

たちくらむ日差しのおくで
いちばん後からやって来る者と出遇うため
とおくまで封印された正午のほうへ
みひらいたまま入る
無形の斧がとどめられた青空のしたに　それまでは
はじめに　ひとつの暗黙が
つぎに　あまたのちいさな颶風が生まれている