くらい索引をひくように目覚めのなかにあらわれている 
わたしがあらわされてしまう 朝ごとに還元されている夢のさむい情景へ 
うしなわれた影の胸囲を埋めるはるかな疲労の環のなかに 
世界を錠のように開ける極微の意味が切り火の音をたてている 
たえまない風のまぼろしのうちにわたしの死者が結晶する 
わたしは冷えるものを知った 秋はむすうの生きている線で占められてしまう! 
わたしの時間(とき)が気温のなかでふかく曲げられ 
視えない内臓のように風を封鎖するわたしの空へ 
空気の視力に充ちたまばゆい雨が書きこまれて近くなる 
望まれたものと拒まれたものが圧しだす重いヴィジョンの路の 
はげしい水の過ぎてゆく視覚のうちでわたしが生きている 
  
〈いっとき世界はあらゆる表面をたわませている〉 
その雨を起点にしてわたしの来歴が断たれてしまう 
ひとりでに風景が囲むほのぐらい余白の睡眠から 
あらゆる音楽を拒みながらわたしの生きものの鼓動がみちびかれ 
みしらぬひとの想起の底へわたしの影がむらがりおこるのであろう 
死んだものらに喩えられてわたしが聴いているとおい血液 
死んだものらだけが赦されている秋! 純粋な痛みで活写されるわたし 
たえまなく季節の乾湿にかけられている部屋の 
四囲の空白には巨きな黄昏の想像がはらまれる 
  
夥しい睡眠の残骸があかるく仕切られたわたしの空を過ぎてゆき 
巨大な嬰児のようにわたしは空間をいとおしむ 
わたしの掌を濡らす冷たい汗とともに季節が降りこめられている 
あらゆるものかげの空気に襲撃をうけている 
はげしく咳き込むひとりのわたしに明白なあしたが知らされてくる 
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