すべて髪はくらい巣の形へかえる 
いくすじものさけびを織り込んだまま 
風はふかく抽象されていった 
名前をもたない 
もろもろの手が塑像する闇のマッス 
ほのおも棲まぬ漏刻の盤のうえに 
香りたつもの 
生け捕られた果物をめざして 
はるかにおしよせてくる瞳孔の沖 
  
花のような驚愕に彩られた時間にむかって 
まばゆく咲き出る大輪の耳はまたひとつ 
音楽は不安な樹木のように伸び拡がり 
迷宮の空に血脈を走らせてしまう 
はや追われるものは眼 
あけびいろした世界の全円は 
おおきな睡りにつくことができる 
  
みどりなす頭蓋にみちる声の夢 
禁断のブロンズには 
発熱の星座がからんでゆく 
けして芽吹かぬ時計の内壁で 
一個の夜は銀細工のようにこわされた 
爪のようにともされつづける額を 
いかなる指がうったのか 
あきらかな鍵の形で 
少女はひとりつくられていった 
   |