Feb 26, 2008
「スガンさんの山羊」
を町田図書館のパソコンで検索したら、10冊近くタイトルが出ていた。そのうち、岩波文庫の『風車小屋だより』と、新潮社の『世界名作選』を借りて来た。ほかに、「スガンさんの山羊」だけを独立させた子供向けのきれいな絵本を数冊図書館の机で読んで帰った。 桜田佐(たすく)という人のが定訳で、いいと思う。「スガンさんのやぎ」この「やぎ」に点がふってある。訳によって「子山羊」になっていたり「雌山羊」になっていたりする。子供のとき読んだ記憶では「仔山羊」だったように思う。「ヤギ」というカタカナもある。どれでもかまわないだろう。ドーデーのこの短編は、まさしく、ブランケットと名の付いたメスのヤギのあの出っ張ったガラスのような目、真っ白なあごひげやねじったハンカチのようなしっぽがありありと浮かんでくる。草のにおい。澄んだ山の空。すがすがしい自然を味わうことができる。子供たちの間では、あんまり人気がないそうだ。たぶん、悲しい結末が子供の心を傷つけるのだろうと言っている人がいる。たしかに楽しい夢物語ではない。だが何か、人の心の奥底にあるある感情をよびさます。今回戯曲「アルルの女」を読んでいて「スガンさんの山羊」のエピソードに触れると、もういちど読んでみたくてたまらなくなった。フランス文学には児童文学がない。おとぎ話からいきなり恋愛小説に行ってしまう。とは岸田国士の言だそうだが、たしかに「シンデレラ」や「ロバの皮姫」のつぎに思いつくのは「最後の授業」や「レミゼラブル」、「マノンレスコー」かもしれない。「ロランの歌」や「トリスタンとイソルデ」もある。そんななかでも山羊という子供時代に親しい生き物の実在感をこれほどありありと届けてくれる「スガンさんの山羊」は大好きだ。この雌山羊が自分のような気がしてきて、しばしぼおっとしてしまう。
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