Jun 10, 2010

変化なし

会社の人や取引先の人たちや、警備員さんや掃除のおじさん、
最初の頃は名前も顔も覚えられなかったけれど、
すっかり覚えたし、辞めてべつの人になったりもしたから
間違いなく順々に覚えて、そしてみんないいひとたちだ。

会社の若い上司に「やめたい」と言い出せない。
一緒に問題解決をしようと試みてくれたこともあったし
そのときはすこし状況が変わったようにも思えたけど
けっきょくダメみたい、となかなか言い出せない。

いつかまた何か状況が変化するだろうか
じぶんができると思うことをしてきたつもりなので
ひたすら静かに黙々と仕事をしていれば
どうにかなるだろうと思っていた。

でも「どうにもならない!」という事を強く思い知る時があり
ひとって変わらないんだな~と思う
わたしはああいうふうにはなりたくない、と思う。

思い知るときと思い直すとき

思い直すときは「もっとひどい場合」を想定する
それからそのこと以外のいいひとたちを思う
とりあえずは必要とされている
そしてわたしには生活がかかっている
Posted at 23:13 in nikki | WriteBacks (0) | Edit

Jun 08, 2010

さいけつ

採血はかならず失敗される 
もちろん痛い
どこの病院でも
だれがおこなってもかならず一度ではいかない
不安でまず左腕をさしだし
「あ」という声を聞いてから
右腕をだす(こころの準備はできている)
みんないろいろな理由をいいながら謝ってくれるから
すこし笑顔をつくったりなんかする

看護士は首をかしげながら
試験管の中に溜まった血液を振り混ぜている
ようやく採取した戦利品のようだ

両腕の絆創膏をはがしながら
「もう充分に生きたつもり」とじぶんが書いたことを
ふと思い出してはガラス窓を見る
そういう夜は
たいていいつも六月だ
試験管の中で振り混ぜられる血の記憶が鮮やかで
どうにかやりすごしたはずの五月が
予測してはくりかえす失敗のように
どこまでもおいかけてくる
Posted at 00:09 in poem | WriteBacks (0) | Edit

Jun 05, 2010

あつまる

おおきくなったこどもたちがかえってくる日 
ひさしぶりにご飯をたくさん炊いた 
みんなが好きだった手巻き寿司の具をいろいろ用意して
むかしとおなじようにそれぞれの席についたら
三人の大きな子供たちがいっせいに歓声をあげた

家族五人、こうして揃うだけで
なにがそんなに嬉しいのかよくわからないまま
みんなで顔を見合わせて笑った

外に出て
傷ついたり悔しかったり悲しかったりしても
かえってくる場所はあるんだよ
まだここにある

小さかったあなたたちのこころとからだが
育っていくのを
この場所で見ていた

手を貸したりなにもできずに見守ったりしていた

たぶんわたしはまだここにいる
もしもどこかほかのところにいても
あなたたちがかえろうと思ったときには
たよりない夕暮れのように
どこからともなくやってきて
なつかしい夕食の席を用意してあげる
Posted at 23:26 in nikki | WriteBacks (0) | Edit

Jun 03, 2010

ろくがつ(2)

ちょっとした不注意で 
古い蛍光灯を割ってしまった
みごとに粉々になった

職場で

ちょうど誰もいなくて
いそいで片付けた
「ガラス 危険」と赤いペンで書いて袋に貼り
ゴミ置き場に持っていったら

掃除のおじさんが汗をかいて黙々と仕事していた

「あとで休憩にきてくださいね」と声をかける

それから
ガラスがまだどこかに落ちていてはタイヘンなので
デスクの下や椅子のところや
キッチンの近くまでかがみこんで念入りに調べた

会社の人が来るはずなのにこない
早く来ればいいのにと思ったり
「まだこないで」と思ったりしているうちに

すっかり夕方になった
掃除のおじさんもお茶を飲んで帰った

昨日みたいに六時がきた
ガラスが気になってやり残した仕事があるようで
ぐずぐずしていた

昨日と今日はべつの一日
まったく違う仕事をして
疲れて帰るときはバスを待っている

だけどきょうも心地よい風が吹いていた
秋が終わるような風だった
あるいは
だれもこないことを知りながら待つときのような

不安のかたちにすっかりなじんで
どこへもいけないときは
どこへでもいけるような気さえして・・・。
Posted at 23:31 in poem | WriteBacks (0) | Edit

Jun 02, 2010

ろくがつ

六月の夕方はあかるい 
六時に仕事を終えて外にでる

この古い自転車にはライトがつかないから
さっさとかえればあかるいうちに
猫の待つところに戻れる

もうわたしとしては
じゅうぶんに生きたつもりなので
死への誘惑がアタマからはなれない


おかしなこどもだったけれど
ちやほやされて青春をすごした
結婚して懸命に家庭をまもった
できるだけのことはちからをつくした

愛することを知り
愛されることを知った

そしてもう
いくべきところがみつからない
ただあの猫がまっていてくれるから
猫とわたしのベッドがあるから

六月のあかるい夕方
風をきって自転車をこいでいく

死にたいと思っているのに
ぜったい言ってはいけないと知っている
知っていることをほめられて
どこまでもどこまでも風が気持ちよい
Posted at 22:28 in poem | WriteBacks (0) | Edit
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