Jun 08, 2010

さいけつ

採血はかならず失敗される 
もちろん痛い
どこの病院でも
だれがおこなってもかならず一度ではいかない
不安でまず左腕をさしだし
「あ」という声を聞いてから
右腕をだす(こころの準備はできている)
みんないろいろな理由をいいながら謝ってくれるから
すこし笑顔をつくったりなんかする

看護士は首をかしげながら
試験管の中に溜まった血液を振り混ぜている
ようやく採取した戦利品のようだ

両腕の絆創膏をはがしながら
「もう充分に生きたつもり」とじぶんが書いたことを
ふと思い出してはガラス窓を見る
そういう夜は
たいていいつも六月だ
試験管の中で振り混ぜられる血の記憶が鮮やかで
どうにかやりすごしたはずの五月が
予測してはくりかえす失敗のように
どこまでもおいかけてくる
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