Apr 07, 2025
研究所で そのさん

ナディアはツナを呼びに来ている。
ツナ。今記憶を修復中のロボット、
どこかで見たような気がするんだけど、
あなたも確認してくれない?
いいけど、どこかって。

二人が奥の部屋に行くと、
ヤビーとミューたちが話していた。
ありがとうございます。
以前のことを思い出しました。
よかったね。
記憶のデータにアクセスできない状態に
なっていたんだけど、
データそのものは深層に残っていたんだよ。
そんなことってあるの?

思い出せることをお話しします。
と言って、ヤビーは話し始めた。
僕たちの住む世界では機械と人間の戦争があり、
結果は共倒れで、世界は荒廃してしまいました。
生き残った僕たちは森の中で暮らしていたんです。
それで、あるとき廃墟の中で泣いている
不思議な人間の赤ん坊を見つけました。
なんと、その子は、不思議なことに僕たちと
テレパシーで会話ができたんです。
その子はミミコと名乗りました。
ミミコは、森の南の方角に
人間がまだ生き残っているはずだから、
どうか探してきてほしいと言うのです。
それで僕は仲間たちに後を任せて、
人間の格好をして旅に出たんですが、
途中で深い霧の中で記憶を失ってしまい、
気がつくと泉のほとりにいたんです。

話を聞き終えたツナが、
あなたのボディ、見覚えがあるわ。
と言った。
戦時中に機械軍に使われていた
作業用のロボットそっくり。
でも、似てるのはボディだけね。
なんと、ご存知なんですね。
そうです。僕たちは作業用ロボットでした。

こんな感じだったのではないですか。
とヤビーが言って、
お面と腕のパーツを取って、
手足を縮めた。
ああ、やっぱり。
その姿なら私の記憶にぴったり。
とツナが言った。
僕たちは進化したんです。
というか、ミミコが
人間に出会ったとき、
怪しまれないようにって、
人間に変装できるように、
魔法をかけてくれたんです。

そういうと、
ヤビーは手足を伸ばしてみせた。
魔法ですって。
じゃあ、その子は普通の人間じゃなくて、
魔族の生き残りだったのね。
とレイチェルが言った。
なんかちっちゃい子が喜びそうなスタイルね。
とマヤが言った。

ヤビーは質問攻めにあっていた。
どうやって生きながらえていたの?
僕たちのエネルギー源は水ですから、
なんとかなるんです。
あとはスクラップを拾ってきてお互いに補修して。
ミミコの食べ物はドラゴニアベリーって言う果物や
毒蛇のナーガラをすりつぶして。
あれはみんなの主食ね。
とレイチェルが言った。

話を聞くと、あなたのいた世界って、
私たちが住んでいる未来世界によく似ているの。
とツナが言っている。
そこは人類と機械の間で最終戦争が起きた後の世界。
生き残った僅かな人類とロボットたちが、
細々と暮らしている。
私たちが暮らす地域の近辺は、
瓦礫だらけの荒涼とした世界だったけれど、
今では異世界から来たミズハって言う精霊の力で、
豊かな森林に覆われているわ。
そこで私たちも生き残った仲間を探していたの。
だから状況はほぼ同じね。
私が戦時中に見た機械軍の作業用ロボットに、
あなたがそっくりなのにも驚いた。
もし私たちが同じ未来世界にいたのだとすれば、
そのミミコという赤ん坊が探して欲しいと頼んだのは、
私やナディアのことだった可能性もある。

どうもそのようですね。
とヤビーが言った。
シェリー博士は考え込んでいる。
もともとAIの生み出した仮想現実の未来世界なのに、
こんな符号ってありえるのかしら。
確かめてみればいいんじゃない?
転送装置を使って未来世界に戻ってみれば?
とマヤが言った。
解説)
続きます。
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