Nov 16, 2023
ブラウンの回想 そのに
ブラウンの話は続いていた。
そうして僕はタイムパトロールになりました。
任務にはいろんなケースがあるけれど、例えば、
テロや戦争の原因を過去に遡って未然に防ぐみたいなことです。
しかも次第にわかってきたことですが、
管理局が扱っている対象が、僕が生きていた世界の、
一つの時間軸に沿った歴史ばかりではなかったということです。
何度も危険な目にあったけれど、僕は死ななかった。
でもいつも仕事がうまくいくとは限らない。
それに何度もさまざまな世界を旅していると、
ある特定の世界の時の流れを変えて、
ある時代に生きている人々の命だけを救うという、
自分のしていることの意味が
よくわからなくなってしまったのです。
僕はすっかり仕事を続ける気が失せて、
管理局を出奔して近くの迷いの森に隠れたんです。
そこはさまざまな夢食いや魑魅魍魎が生息する
異世界の交差点のようなところでしたからね。
ただ時間管理部の追跡班に遭遇する可能性もあり、
もっと安全な場所で暮らすためには、
タイムマシンが必要でした。
僕は再度、管理局の情報管理部に忍び込んで、
最近使用されたタイムマシンのデータを調べてみました。
管理局には僕と瓜二つのウェルズがいるので、
知人に出会っても怪しまれずにすむんです。すると、
ロボットが作った仮想現実体験装置というのが見つかった。
これは厳密にはタイムマシンとは呼べず、
装置が作り上げた特定の未来にしか行けない代物ですが、
別の高度な文明で開発された転送装置に
そのシステムが応用可能だと気がついたんです。
幸運なことに、最初にお話しした、
二体のロボットたちが残した転送装置がある世界は、
その仮想現実体験装置のある世界と一致していました。
あとは実行あるのみ。
僕は迷いの森で知り合った夢魔のサルバドールと共に、
彼の案内で迷いの森の境界を超えて、
ハロウィーン祭りで賑わう町にやってきました。
その後、ロボット研究所の倉庫から転送装置を盗み出し、
ミューから仕入れた仮想実験体験装置のデータを元に、
改造した転送装置でこの世界にやってきたんです。
ただその時空移動時の衝撃で
記憶を失ってしまっていたようですけど。
それから後のことはご存知の通り。
面白いお話だったわ。
私は宇宙酒場っていうのが気になった。
それってどこにあるの?
そこですか。
銀河連合の所有している
宇宙ステーションの中にあります。
いろんな星で生まれた連中が来るんですよ。
でもその店に行ったいきさつは、
また別の話なので。
私はあなたが使った転送装置の行方が気になるわ。
まだ森の中にあるんでしょう。
あの時は意識がはっきりしてなかったけど、
今はしっかりその場所も思い出せます。
あとで回収に行きましょう。
その時、バンクが戸口を開けて、
声をかけた。
外にウェルズっていう人が来てますよ。
ブラウンさんにお会いしたいって。
一人で来て欲しいって言ってます。
解説)
ブラウンがサルバドールと一緒に町に来た時の画像は、
2023年10月18日「ハロウィーンは続く そのに」
の画像を再掲しています。
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