Haizara-Cho::Suigara-yama 99[Shinsuke Kirita]

広場にて　そのに

ギターのチューニングをしていたドミノに、
鈴木すずが話しかけている。

ねえ、ドミノの歌も聴かせて。
そーねえ。
じゃあ、久しぶりに一曲歌うか。
ちょっと準備するね。




ドミノはベーカリーの屋根から
拡声器を外してくると、
ルビーからマイクを借りてきて歌い始めた。




みんな驚いて聴き入っている。




いい声してるけど、なんだか、
思いつきみたいな急な展開だね。
いつもそうじゃない？




エトナとボニーも聴き入っている。
あの拡声器は？
ああいうの、流行ってるんだよ。




そこにギルダの運転する
キューベルワーゲンが走り込んできた。




エルヴィンとギルダが、
小走りにマンゴー亭に向かっていく。
どうやらエルザのお祝いに
駆けつけたようだった。




ねえ。
見て見て。
優勝したエルザと同じ女優さんに似てるって、
あの人、ギルダのことなの。
とエトナがボニーに言っている。

ああ、この前、郊外のバービーハウスに
下見に行った時も運転してくれてた人だね。
あの時はオレンジ色のゴーグルつけてたから、
顔がよく見えなかったんだけど。
あ、今も向こう向いてて、よく見えない。




エルザは、
ギルダとエルヴィンから、
優勝おめでとうと言われている。

ドイツ軍の皆さんからもお祝いされるなんて。




広場で毎月やってるコンテストに優勝するって、
そんなにおめでたいことなんですか？

この町に異世界の村から引っ越してきた
私たちフィギアの精霊が、
コンテストに優勝したのは初めて。
これで住民同様に認められて、
市民権を得たようなことだからね。

そうか、みんなをうまく騙せたっていうことなのね。
そういう言い方は良くないと思うが。


解説）
時の経過とともに、
それとなく続いています。