Mar 29, 2023
局長の休暇 そのご
シュレディンガーの周りには
猫たちが寄り添っている。
私は元々太古の人々や精霊たちの想念が生み出した
数々の夢食いのキメラたちと同じように、
夢の共同体の守護者だった。
ある世界では巨大な王の墳墓を守る夢食いとなって、
別の名で呼ばれていたこともあった。
それが別の世界では猫嫌いの人々によって
凶暴な猫たちを操る鬼神のようにも見なされ、
いつの間にか百猫の王の伝説にもなったというわけだ。
私の周りには、さまざまな事情で
亡くなった猫たちの精霊が集まってくる。
正確には生きているとも死んでいるとも言えないのだが、
私の赴く世界では実体化できるので、猫たちの中には、
かって自分の生きていた世界に私を導きたがる者もいる。
私は気ままな性格なので、時にその願いを叶えてやる。
子供の頃のメルティに飼われていたクロという子猫も、
そんな猫だったのだよ。
お茶を飲んでいたサラが、
あ、私ペンギンでコーヒー豆買うの忘れちゃってた。
といった。
じゃあ、私も付き合うから、
一緒に行きましょう。
と局長が言った。
悪いけど異世界関係のことは忘れて、
短い休暇を楽しみたいの。
私たちも外に出ましょう。
そのクロっていう子猫も
私が猫顔の人間に変身させたから、
町のどこかにいるはずよ。
一瞬スルーされたと思ったけど、
君は私の話を聞いていてくれたのか。
とシュレディンガーは
嬉しそうに言った。
一行が広場に戻ると、
まだ歌声が流れていた。
ベランダでは
局長の友達二人が腰掛けて
一休みしている。
アンジーと知り合ったようだ。
あなたたちのお国では、
みなさん、その服装を?
ええ、安くてフリーサイズで
便利なんです。
私も1着欲しいなあ。
セリアで売ってますよ。
などと話している。
素敵な歌声でしょう。
うん。おや、この子は。
ドラコは、
合唱するのをやめて
シュレディンガーを見つめていた。
どうやら警戒している様子だ。
解説)
少しずつ進展しています。
WriteBacks
http://haizara.net/~shimirin/blog/kirita/blosxom.cgi/20230329202844.trackback
writeback message: Ready to post a comment.