Dec 23, 2022

別世界の話

b1

第二次世界大戦時にドイツ軍が使用した
サイドカー付きオートバイ、
BMW・R75に興味を持つのは、
事情を知らない普通の住民たちだ。
ミリタリーマニアって凝るのね。
これちゃんと走るのかしら。
とナタリーとレイチェルが話している。


b2

町に買い出しに来たエルヴィンは
アイスやギルダと話し込んでいた。

私たちの世界の元型が
こちらの世界だったなんて、
今でも信じられないのだが、
歴史も細部で随分違うようだ。
私たちの世界では戦時下にあり、
孤立したあの村では例外的に
敵味方が共存しているが、
こちらの世界では
戦争はとっくに終わっていて、
我が軍が敗北したことになっている。


b3

私もこちらの世界に
来られるようになってから、
ジルから聞いたり本を読んで知ったんですが、
総統もそれにあなたと同姓同名の将軍も
戦争で亡くなっているのよね。
でもジルが言うには、
二つの世界は同じ
時間軸にあるわけじゃないから、
どちらが未来だとか
真実だとかいう話ではなく、
あまり気にすることはないって。
それにハリーさんは、
私たちの村のような世界は、
他にも無数にあるって言ってたわ。


b4

エルヴィンは少なからず
ショックを受けた顔をしている。
アイスは、だとすると、
CGなんて組織も存在しない世界もありそうだね。
と取りなすように言ったが、
それがどういう意味なのか、
自分でもよくわかっていなかった。


b5

さゆりさんって、珍しい名前だね。
同じ名前の女優さんいなかったっけ。
そうなの。
祖父がファンでつけたのかも。
などと、
肉まんを買いに来たサラが、
さゆりと立ち話をしていると、
食事中だったハリーに声をかけられた。


b6

やあ、サラ。
この前は、メルティを
お世話してくれてありがとう。
彼女すごく喜んでいたよ。


b7

それはよかったわ。
あの子ちょっと変わったところのある子ね。
なんにでも興味津々で、
驚きの連続だったみたいだし、
一人っきりで生きてるみたいなこと
言ってたし。


b8

あの子はね。
一人きりで自分の世界に住んでいるんだ。
とは言っても、実は
彼女自身がみている夢の世界なんだけどね。
すごくクリアな夢で、
繰り返して同じ夢をみているうちに、
一つの世界として実体化してしまった。
その夢をみている実際のメルティは
昏睡状態でずっと寝たきりなんだよ。
メルティのみる夢の世界が強固になって、
ある日、魔術劇場の魔法の扉と
繋がってしまったんだ。
それで私と話をするようになって、
この町のことを話題にしたら、
ぜひ一度行ってみたいって。
私も魔術劇場の主人だし、
なんとか願いを叶えて
あげたくなってね。
あとはサラが知っている通り。


b9

そんな事情があったとはね。
この世界はスケールが大きいなんて、
変なこと言ってたけど。
それはメルティの見る夢の世界が、
微妙に縮小サイズだからなんだ。
彼女に遊びに行くって
約束したんだろう。
どうしてご存知なの?
彼女すごく楽しみにしてたからさ。
今度、彼女の世界に行ってみるかい?
ええ。
じゃあ、クリスマスにでも、
久しぶりに魔術劇場をオープンしよう。
もちろん、サラだけがお客さんだよ。



解説)
落葉をちぎったり
しょうもないことをしているうちに
思いつきストーリーが
動き始めたようです。
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