Sep 04, 2022

ジルの別荘で そのよん

b1

ハリーたちは、
池のそばにいたヴィヴィアンを呼んで、
ジャンの家に向かうことになった。

すぐ戻ってくるから。
と言っている。


b2

一行がジャンの家に到着すると、
出迎えたジャンはハリーたちを
とりあえず倉庫に招き入れた。

夢見の水を沸かした
コーヒーでも淹れましょうか。

ふむ。今日はちょっと
頼みがあって来たんだよ。

ハリーが言ったのは、
娘に芽生えた魔力を試したいので、
何か一台軍用車両を貸して欲しい
ということだった。
それを実体化させるというのだ。


b3

だったら、
向こうでよく使ってる車がいいわ。
とギルダが言った。
ジャンは棚からキューベルワーゲンの
プラモデルを運び出してきた。


b4

ハリー、私そんなこと
やったことないのよ。
確かに昆虫や鳥を大きくするコツは
覚えたけど、これって生き物じゃないでしょう。

この倉庫にある人形やフィギアだって
そういう意味では生きているわけじゃないよ。
確かにお前のいう通り、命や精霊を宿して
いないものに働きかけることはできない。
だが総統のフィギアのことを覚えているだろう。
あれにも特別な精霊が宿っていたわけではなかった。
しかしお前は実体化できたんだ。
それはね。誤解のないように言っておくと、
命のないものに命を吹き込む力が
お前にあるというわけじゃない。
かすかに宿っている精霊の力を際立たせる力が
お前にあるということなんだよ。
ジャンさんによれば、この倉庫は
かって「人形の家」と呼ばれていて、
前の持ち主のマンスフィールドさんの頃から、
人形やフィギアの保管場所だったらしいね。

そのもっと前から
私がずっと暮らしていたのよ。
とリリスが言った。

そういう場所にまつわる特殊な歴史や、
この建物が立地している迷いの森に近い土地柄が
ものに浸透する精霊の力を増幅させているらしい。
そのことを私はどうも過小評価していたようだ。
ああ、それはともかく、
その模型の車を庭に運んでくれたまえ。


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ジャンの倉庫の前の駐車スペースに
模型のキューベルワーゲンが置かれて、
ヴィヴィアンがじっと注視している。
ハリーも集中しているようだ。

やがて薄い煙が立ち込めて。


b6

キューベルワーゲンが実体化した。
ハリーは飛び跳ねている。


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やはり想像していた通り、
元になった模型は残っている。
これはジャンさんにお返ししよう。
とハリーは言った。
総統のフィギアの時と同じね。
その理由は説明できるの?
とヴィヴィアンが言った。
経験から学べ、というじゃないか。
とハリーが言った。

この車どうするんですか。
別荘に招待してくれたジルさんに
お礼のつもりで考えていたんだよ。
とハリーが言った。
だったらギルダに。
向こうの世界で彼女の愛車だったようだし。
とジルが言った。
嬉しいけど、ジャンさんが使えば?
ここにあれば私たちも利用できるし。

みなさん譲り合いの精神なのね。
だったらジープやオートバイの模型も持ってきて。
とヴィヴィアンが言った。

戦車はだめだぞ。
と嬉しそうにハリーは言った。


b8

やがてキューベルワーゲンに乗った4人は、
別荘に帰り着いた。
ヨシフが待ちわびていたようだ。


b9

こちらの世界でジープが使えるんですか。
とジョー軍曹が訊いている。
町に出るのが便利になったよ。
サイドカー付きのドイツ軍のオートバイもあるの。
今度乗せてね。とリリスが言った。


解説)
ほとんど出番のなかった車両を
使おうという目論みを兼ねた
展開なのでした。
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